異世界トリップしたら女神(見習い)でしたが一般人として自由に生きていこうと思います

瑞多美音

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第3章

28.女神見習いと瞬間移動(2)

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 「あー、疲れた……って、ここに人いたらアウトじゃん」

 危なかったー……最後まで凡ミスばっかりだったな……はぁ。

 さて、気を取り直し広場で休憩しつつ、薬草を分けようかな。

 グキュルルル……

 「そういえばご飯食べてない……」

 瞬間移動に夢中になりすぎてお昼のことすっかり忘れてた……ひと段落ついたせいかお腹の虫が激しく主張している。

 「……まずはご飯食べてからにしよう」

 以前、街で買ってから時々購入している屋台のスープと串焼き、パンも出して……
 
 「いただきます」

 もぐもぐ……やっぱ美味しい。温かい料理っていいよね。

 「ふー、ごちそうさまでした!」

 お腹もいっぱいになったし、腹ごなしに薬草を頑張って分けよう、おー。
 え? 座ったままじゃ腹ごなしにならない? いいんですよ……こういうのは気分だよ、気分。

 深い霧や森の中で採取した薬草は、それぞれ結構な量があるので半分くらい自分用に分けておく。

------

〈サーシュ草〉
 ポーションの材料になる草 病気に効果を発揮する。

〈ベニーの花〉
 ポーションの材料になる花。集中力を上げる効果がある。
 蕾のままでないと効果がなくなるため注意が必要。

〈パーシュの花〉
 ポーションの材料になる花。効果の底上げと麻痺小回復が期待できる。
 根はさらに効果が高くポーションに使用できる。

〈ファルシュ草〉
 ポーションの材料になる草 魔力全回復の効果が期待できる。
 繁殖力が弱く、ファル草と間違われやすい。

------


 「ふむふむ。掲示板に依頼があるといいけど……まぁ、なかったらその時考えよう」


 早速ギルドへ向かい掲示板をチェックーーあ、もちろん歩いてだよ?
 
 うーん、採取依頼があるにはあるけど……わたしのランクでは受けられないものばかり。

 「どうしようかな……」

 ちょうどマルガスさんが買い取り受付に戻って来たので聞いてみようかな。

 「お、エナどうした? またポーションか」
 「いえ、そうじゃなくてですね……依頼書に書かれている素材を持ってるんですけど冒険者のランクが足りなくて。その場合はどうしたらいいですかね? やっぱり諦めるしかないですよね……」
 「……どの依頼だ?」
 「えーっと……Bランクの薬草採取?」
 「はぁ……ちょっと来い」
 「……はい」

 また奥の部屋へご招待ですか……そうですか。
 
 「ちょっと待ってろ」
 「はい」

 しばらく待つと……今度はサブマスさんもいるじゃないですかー。やだー。

 「サブマス、こいつが例のエナです」
 「ああ、はい」

 例のって何だろう……わたし有名なの?
 はっ、もしや問題児認定されてるのっ!? いやいや、まさか……ね。

 「はじめまして、エナです」
 「はい、どうも。冒険者ギルドでサブマスやってるエルネストです」
 「サブマスは俺の上な。買い取り部門や受付など総括的な責任者だ」
 「はぁ……」
 「で、エナ。お前なんの薬草持ってるんだ?」
 「えーっと……前にも買い取りに持っていったパーシュの花が株ごとと、ファルシュ草……とサーシュ草とベニーの花かな?」
 「おいおい、まじかよ……どれもポーション上級以上の材料じゃねぇかっ」
 「まあまあ、マルガス落ち着いて」
 「……すまん」

 あれー、これってあんまり量があるとか言わない方がいい系?

 「それで、エナくん……いくつあるのかな」
 「あー……ふたつずつ?」

 マルガスさん、お前絶対嘘だろって顔しないでよ……嘘だけどさ。

 「……そう」
 「はい」
 「うん、状態が良ければ依頼書と同じ価格で買い取ろう。ただ、依頼は受けたことにならないけど、それでもいいなら見せてくれるかな?」
 「はい、大丈夫です」

 さすがにBランクの採取依頼を私が受けられるとか、そこまでは望んでない……これが売れるだけいいと思ってる。
 たとえギルドに買い取ってもらえなかったとしても、ストレージに保存して(ほら、腐らないし萎びないから)必要な時に自分で使うからいいんだけど……ま、買い取ってもらえるならそれはそれで助かるんだよね、金銭的に。

 とりあえず、パーシュの花とファルシュ草をふた株、サーシュ草とベニーの花を2本ずつ出してマルガスさんに渡す。

 「マルガスが鑑定してる間、少し聞いてもいいかな?」

 ぎくっ
 
 「はい、なんでしょう」
 「うん、これどこで採取したのかと思って」
 「これですか? 森のちょっと奥にあったんですよ……多分」
 「多分?」

 ぎくっぎくっ……

 「いえ、恥ずかしいんですけど……調子に乗って森に入ったら迷子になりまして」

 ええい! この際、嘘を突き通してやるわっ。

 「ふーん、そういうこと。いや、これ森の浅い部分じゃ滅多にとれないからBランク推奨なんだよ」
 「へ、へぇ……」

 おかしいな……なんだか喉がカラカラになってきた。

 「サブマス、間違いない。状態もいいぞ」
 「わかった。エナくん、あと何個あるの?」

 ぎくっ……

 「……な、ないですよ?」
 「お前わかりやすすぎ……さっきから丸わかりだぞ?」

 むー、マルガスさんそういう事言っちゃう?

 「はぁ……あと何個ほしいですか?」
 「うーん、そうだね……あと3つずつかな?」

 思ったより少ないな……いや、採取してギルド用に分けたやつその倍以上残るからね。

 「わかりました……ただし、わたしから買い取ったことは内密にしてください。目立ちたくないので」
 「まさか、本当にあるとはね。カマかけただけなんだけどな……うん、わかったよ。エナくんから買い取ったことは漏らさないから安心して」
 「お前、大概にしてくれ……」
 「……すいません」

 もう少し嘘をつく練習しときますね。え、そこじゃない?
 
 パーシュの花が5株で銀貨1枚と小銀貨5枚、ファルシュ草が5株で銀貨45枚。
 サーシュ草は5本で銀貨5枚、ベニーの花を5本で銀貨1枚と掲示板に貼ってあった依頼書のとおりだ。

 ファルシュ草はどうやら前回の株が取り合いになるほど人気だったため状態の良い株のみ買取価格が上がったらしい。へー。


 「あの……お金はできれば細かい硬貨でお願いします」
 「わかったよ」

 つぐづくファルシュ草の株って規格外なんだな……
 計 銀貨52枚と小銀貨5枚、あとは通常依頼が小銀貨3枚……え、あれれ、わたし大金持ちじゃない? これだけあればお金気にせず宿に泊まれる。わーいわーい!

 帰り際にサブマスさんからなぜか貴重な薬草の絵や説明が書かれた紙をもらった……へぇ、木の根とか木ノ実もポーションの材料になるんだ。盲点だったわ……え、これ採取して持って来いってこと?

 女神様の気まぐれも時には役に立つんだなとか失礼な事を考えつつ、便利な魔法をありがとうございます。これでこの前の恨みは無くなりましたよ。と心の中でお礼を言っておいた。



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