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第2章
21.女神見習い、コツコツ採取に励む(3)
しおりを挟む「そうか」
マルガスさんはそれだけ言うと再びファルシュ草の鑑定に戻ってしまう。
「お茶、お代わり入れますね」
「ありがとうございます。そうだ、カーラさんちょっとお尋ねしますが……動物とか魔物もギルドで買い取っていただけるんですよね? その場合って丸々持ち込むんでしょうか? それとも自分で解体とかしなきゃいけないんでしょうか……」
「そうですね……まず動物も魔物も丸々持ち込んでいただいても構いませんが、解体などの手間がかかる為、若干買取価格が下がる傾向にあります。ご自身の欲しい素材などがある場合は解体後、いらない部位や素材だけを売っていただいても構いません。売れる部位がない魔物などは魔核を持ち込んでいただければ買取してますので」
「魔核……ですか? それってどこにあるんでしょうか?」
「魔核はほとんどの場合、魔物の心臓近くにあります。魔核は強力な魔物ほど大きく透き通っています。大きくて透き通っているものほどギルドで高く買い取っていますし、もっと貴重なものなどは数ヶ月に1度あるオークションに出品されます。解体スキルがあれば簡単に解体できるんですが……何度も解体すると時々スキルを手にできる場合もあるので頑張ってくださいね」
「……当分は丸々持ち込ませていただきます」
やっぱ、簡単にはいかないか。解体スキル……欲しいような欲しくないような。つまりは解体するような事態にならなければいいんだ! うん。
しばらくカーラさんとおしゃべりしているとマルガスさんの鑑定が終わったみたい。
「ふむ、どうやら本物のようだな。買い取り価格は銀貨7枚でどうだろうか?」
いや、依頼何回分? って感じですよ……
「はい、それでいいです」
むしろそれでお願いします。
「うむ、大変助かった。これは研究者に売って栽培の道を探ることになると思う。もし、また見つけたら、是非ともお願いしたい」
「わかりました。また、探してみますね」
「エナさん、少々お待ちください。こちらに買い取り料金をお持ちしますね」
「はい、ありが……あ、他の依頼はどうしましょう?」
「では、こちらで一緒に鑑定しよう」
「ありがとうございます。体力草30本と魔力草20本です。確認お願いします」
「常設依頼だな。うむ、状態もいいし銅貨40枚ってところだな」
いつも、依頼書より多くもらってるけどいいのかな……まぁ、貰えるものは貰っておこう、うん。
「ではあわせて持ってきますので少々お待ちください」
「お願いします」
カーラさんが部屋から出ていきマルガスさんと2人きり……き、気まずい。
「なあ、エナ。鑑定してやろうか? 今ならタダだぞ?」
「えっ、いいえ大丈夫です」
鑑定されたら、種族バレちゃうから! 女神見習いってバレちゃうから!
「ふっ、そんなに焦らなくても平気だ。すまない。実はさっきこっそり鑑定しようとしたができなかった。エナ、喜べ。隠蔽スキルがあるみたいだぞ。なんせ俺の鑑定をはじくくらいだからな」
隠蔽スキル……持ってないけど? あっ、もしかしてこれも女神補正かな?
勝手に鑑定されたのは困るけどそのおかげでマルガスさんよりレベルの低い鑑定で女神見習いだってバレる心配がなくなった。
ということはこの街ではマルガスさんレベルはほぼいないので安心していいかも。
では、私も遠慮なくマルガスさんのステータスのぞき見しちゃおう……いやいやいや強すぎじゃない? さすが元冒険者。しかも鑑定のレベル5あるんですけど……私は何も見なかった。心眼なんてしていない。よし。
「ソウナンデスネ……」
「そんな顔するなよ。悪かったって……もう勝手に鑑定しないから」
「……はい」
「お待たせしました。あら、何かあったんですか」
「「いや、何も」」
カーラさん! たすかったー。
「そうですか? ではこちら合わせて銀貨9枚と銅貨40枚です」
「はい、ありがとうございます。では失礼します」
わーい、ファルシュ草のおかげでかなり懐に余裕ができた!
さっきの気まずさなんて忘れ、ウキウキと部屋を後にする。
ひとり部屋に残ったマルガスーー
「何度もファルシュ草を見つけられる力があり、その情報を隠しもしない。その上俺が鑑定できない者か……他に知られる前に囲い込みたいな。これはギルマスに早くランクを上げるように要請すべきかもしれん」
◇ ◇ ◇
数日後ーー
常設依頼の薬草採取の依頼を受け、そばにあった初めて受ける通常依頼。
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【薬草の採取 ランクE リーセ草 10本につき銅貨5枚 最低20本~】
【薬草の採取 ランクE ラミールの花 1本につき銅貨1枚 最低5本~】
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両方とも初級ポーションの材料になるので自分の分も多めに採取できたらいいな……
いつもの草原で常設依頼の薬草を採取しながら、奥の森にあるという群生地を目指すーー
この森は入り口付近なら比較的弱い魔物が多いそうだけど、気を付けつつ採取に励む。
数日前の決意があっさり無駄になるとは知らずに……
「こういうときに限って出くわすんだよなぁ……もう」
魔物との初対面は思っていたのと大分違った。
初めての戦闘に苦戦しながら魔法とか使うのかなってなんとなく想像していたけど……私、魔法ひとつも使ってないよ。
事の顛末は……
森の入り口付近で採取に励んでいたら、興奮した魔物のワームが地面から飛び出してきて私のそばにあった岩に激突して勝手に自滅した。以上。
目の前には息絶えた魔物。
「はあ、どうしよう……」
放置することも考えたけど、いくら魔物とはいえ命を無駄にする気がして……かといってギルドに丸々持ち込むには大きすぎてストレージにしか入らないけどストレージ持ちとバレるのは困るし……
素材に関してはよくわからないため、仕方なく魔核だけを抜き土に埋めることにした。
これ心臓なんてどこにあるか分からず、最悪だった。結局何度もナイフを入れるハメに。
「できればもうしたくないな……」
この1回で解体スキルゲットできないかな。なんて考えながら精神的にも肉体的にも疲れた体を叱咤して宿へ向かう。
こういう時はミーナちゃんに癒されよう、そうしよう。
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