異世界トリップしたら女神(見習い)でしたが一般人として自由に生きていこうと思います

瑞多美音

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第2章

15.女神見習い、新人冒険者になる(1)

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 「着ーいーたー!」

 まだ少し遠いものの、門が確認できた。何事もなく街へと移動できホッとひと安心。

 あ、そうだ女神ってバレずに無事に街についたからネックレス外しておこう。万が一に備えて魔力節約しないと。

 「おおー、意外と待ってる人がいるなぁ……」

 門の外には馬車や荷車が多く並んでいる。
 うーん、馬車や荷車の人と一緒のところに並べばいいのかな……どうしよう……ウロウロ……

 「おや、お嬢さんお困りかな?」

 振り返ると馬車の御者台に乗った中年の男女がいた。

 「あ、すいません。道をふさいでしまって……これって、このまま並べばいいんでしょうか」
 「気にしなくていいわ。ね、あなた」
 「ああ。門は一応、馬車や荷車、貴族、徒歩で分かれているんだがな……この辺はあまり厳しい取り締まりは行ってないから、貴族専用以外は空いているところに並んで問題ないぞ。ただ、荷物の多い馬車の後ろとかはチェックのためにかなり待たされることがあるから見極めは重要だがな」

 よかったー、こっちの街に来て。
 王都と周辺の街のことは聞いてたけど、取り締まりの厳しい街だと知らずに目指してようやく着いてはじかれたらきっと挫けて路頭に迷ったかも……丁寧に教えてくれて助かります。

 「そうなんですね。わざわざ教えていただきありがとうございます」
 「お嬢さんはしばらく滞在するの?」
 「ええ、その予定です」
 「そう……私たち、元はここの出身でね、店が軌道に乗り王都に店を持つことができたのだけど、主人が老後は娘のいる生まれ故郷で過ごしたいって王都の店を息子に任せて帰ってきたのよ。近々この街でも店を開く予定だから、是非いらしてね」
 「はい、近くに寄ったら行かせてもらいますね」

 商人さんか……王都にお店があるくらいだからきっとやり手なんだろうな。お金に余裕があったらその時は行きたいな。

 列に並びつつご夫婦と話していると、あっという間に自分の順番がやってきた。

 「色々とありがとうございました!」
 「ええ、またね」
 
 
 門の中へ進むと門番さんに身分証の提示を求められた。

 「身分証はあるか?」

 お兄さん顔が怖いよ。子供がギャン泣きするレベルだよ。あ、子供の相手は他の門番さんがしてるっぽい。なるほど、だからここは大人ばかりが並んでいたのか……

 「……無いです」
 「そうか、まずはこのプレートに触れてくれ」

 強面お兄さんに言われた通りプレートにそっと触れると……白く光った。おお、すごい。

 「よし、犯罪歴はないようだな。身分証がない場合は街に入るときに保証金として銀貨1枚をもらうぞ」
 「はい」

 バッグから銀貨を1枚取り出し、門番のお兄さんへ渡す。これってお金なかったらやばかったよね……ポイント交換しておいてよかったよ。

 「じゃあ、これ木札な。身分証を作ったら3日以内に木札と一緒に持ってきてくれれば銀貨は返却するから。ただし3日以上過ぎると銀貨は帰ってこないから気をつけろよ」
 「わかりました」

 おー、お金返してくれるのか……優しい。
 とにかく何をするにしてもまずは身分証が必要みたいだね。

 「じゃあ、説明するぞ。いいか?」
 「はい、お願いします」
 「身分証を手に入れる方法は主に3つあってな……ひとつは生まれた時に国に登録を申請する。これは除外だよな?」

 あったら、この場で身分証を出してますよね……

 「そうですね」
 「ふたつ目は貴族や王族に保証人になってもらい登録する。これは保証金や貴族への礼金がかなりかかる。保証人の署名入りの書類なんか持ってるか?」
 「いえ、ないですねー。貴族の知り合いすらいませんし、ましてや保証人なんて……」

 神様の知り合いならいますけどね!
 頼んだら多分保証人? 神? になってくれそうだけど……大騒ぎになるし却下で。

 「そうか……最後の選択肢は冒険者ギルドで登録することだな。流民や貧民街の孤児などが身分証を得られるような仕組みになっているから安心していいぞ。冒険者ギルドの他にもギルドはあるが、まず身分証がないと登録できないからな」

 選択肢はまたしてもひとつということですね。 

 「わかりました。冒険者ギルドはどこにありますか?」
 「冒険者ギルドはこの門から大通りを真っすぐ歩いていけば左手に見えるはずだ。大きな看板もあるから、すぐわかると思うぞ」

 顔は怖かったけど親切な門番のお兄さん

 「ありがとうございました」
 「おう、気をつけてな」

 
 ということでまずは冒険者ギルドで身分証を作ろう。おー

 言われたように大通りを真っすぐ進む。
 テクテク……
 大通りにはギルド、教会、広場、商店や宿屋さんなど立ち並んでいるみたい。土地を有効利用するためかな? 家は2階建てや3階建てが多いみたい。

 「前の街よりものんびりとした雰囲気で過ごしやすそうかも……」

 しばらくすると門番のお兄さんの言う通り、左手に看板が見えた。建物も周りよりふた回りほど大きい。

 「ふぅ……よしっ」

 少しドキドキしながら冒険者ギルドのドアをくぐる。

 冒険者ギルドへ入ると、そこは広く活気にあふれていた。
 入った時に多くの人の視線を感じたけど気のせいだよね、うん。
 私の前にいるムキムキの人が有名だとかそういう理由だよね、うんうん。
 道中はフードやネックレスがあったし視線もあまり気にならなかった。
 ギルドでフードかぶるのも不審者っぽいしそれで絡まれるのも嫌だから、フード外したんだけど……意外と慣れないもんだね。
 自意識過剰なのか何となく気になってしまった……はぁ。

 正面にはいくつかカウンターがあり、受付には数人の人が並んで順番を待っているみたい。私もそれに並びながらギルドを観察してみた。

 造り的には役所のようだったけど、そこにいる人たちは様々。
 防具や剣などを身に着けた明らかに冒険者の風貌の者、商人や市民らしき普段着の人まで……なにか困ったときはここに来ればだいたい解決できそうな感じ。
 端のほうには別のカウンターが設けてあり、そこでは買い取りをしているようだ。さらにその奥には倉庫があるみたい。
 今も若そうな冒険者がカウンター越しに草を渡している。


 飲食スペースもあるようでかなり賑わっている。すでにベロベロに酔っ払っている人もいるけど……
 その隣では売店業務も行っているのかな? あの雑貨店みたいな感じ……

 「次の方どうぞ」

 呑気に辺りを観察しているとすぐ自分の番が来たので受付に進む。
 受付にはムキムキスキンヘッドのいかにもなおじさんや真面目そうで美人な女性などがいる。
 そして、私の進んだカウンターには栗色の髪をふんわり束ね、小柄だけど出るところは出ている可愛らしい受付嬢が笑顔で迎えてくれた。

 「ようこそ、冒険者ギルド ランヴィ支部へ」
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