15 / 120
第2章
15.女神見習い、新人冒険者になる(1)
しおりを挟む「着ーいーたー!」
まだ少し遠いものの、門が確認できた。何事もなく街へと移動できホッとひと安心。
あ、そうだ女神ってバレずに無事に街についたからネックレス外しておこう。万が一に備えて魔力節約しないと。
「おおー、意外と待ってる人がいるなぁ……」
門の外には馬車や荷車が多く並んでいる。
うーん、馬車や荷車の人と一緒のところに並べばいいのかな……どうしよう……ウロウロ……
「おや、お嬢さんお困りかな?」
振り返ると馬車の御者台に乗った中年の男女がいた。
「あ、すいません。道をふさいでしまって……これって、このまま並べばいいんでしょうか」
「気にしなくていいわ。ね、あなた」
「ああ。門は一応、馬車や荷車、貴族、徒歩で分かれているんだがな……この辺はあまり厳しい取り締まりは行ってないから、貴族専用以外は空いているところに並んで問題ないぞ。ただ、荷物の多い馬車の後ろとかはチェックのためにかなり待たされることがあるから見極めは重要だがな」
よかったー、こっちの街に来て。
王都と周辺の街のことは聞いてたけど、取り締まりの厳しい街だと知らずに目指してようやく着いてはじかれたらきっと挫けて路頭に迷ったかも……丁寧に教えてくれて助かります。
「そうなんですね。わざわざ教えていただきありがとうございます」
「お嬢さんはしばらく滞在するの?」
「ええ、その予定です」
「そう……私たち、元はここの出身でね、店が軌道に乗り王都に店を持つことができたのだけど、主人が老後は娘のいる生まれ故郷で過ごしたいって王都の店を息子に任せて帰ってきたのよ。近々この街でも店を開く予定だから、是非いらしてね」
「はい、近くに寄ったら行かせてもらいますね」
商人さんか……王都にお店があるくらいだからきっとやり手なんだろうな。お金に余裕があったらその時は行きたいな。
列に並びつつご夫婦と話していると、あっという間に自分の順番がやってきた。
「色々とありがとうございました!」
「ええ、またね」
門の中へ進むと門番さんに身分証の提示を求められた。
「身分証はあるか?」
お兄さん顔が怖いよ。子供がギャン泣きするレベルだよ。あ、子供の相手は他の門番さんがしてるっぽい。なるほど、だからここは大人ばかりが並んでいたのか……
「……無いです」
「そうか、まずはこのプレートに触れてくれ」
強面お兄さんに言われた通りプレートにそっと触れると……白く光った。おお、すごい。
「よし、犯罪歴はないようだな。身分証がない場合は街に入るときに保証金として銀貨1枚をもらうぞ」
「はい」
バッグから銀貨を1枚取り出し、門番のお兄さんへ渡す。これってお金なかったらやばかったよね……ポイント交換しておいてよかったよ。
「じゃあ、これ木札な。身分証を作ったら3日以内に木札と一緒に持ってきてくれれば銀貨は返却するから。ただし3日以上過ぎると銀貨は帰ってこないから気をつけろよ」
「わかりました」
おー、お金返してくれるのか……優しい。
とにかく何をするにしてもまずは身分証が必要みたいだね。
「じゃあ、説明するぞ。いいか?」
「はい、お願いします」
「身分証を手に入れる方法は主に3つあってな……ひとつは生まれた時に国に登録を申請する。これは除外だよな?」
あったら、この場で身分証を出してますよね……
「そうですね」
「ふたつ目は貴族や王族に保証人になってもらい登録する。これは保証金や貴族への礼金がかなりかかる。保証人の署名入りの書類なんか持ってるか?」
「いえ、ないですねー。貴族の知り合いすらいませんし、ましてや保証人なんて……」
神様の知り合いならいますけどね!
頼んだら多分保証人? 神? になってくれそうだけど……大騒ぎになるし却下で。
「そうか……最後の選択肢は冒険者ギルドで登録することだな。流民や貧民街の孤児などが身分証を得られるような仕組みになっているから安心していいぞ。冒険者ギルドの他にもギルドはあるが、まず身分証がないと登録できないからな」
選択肢はまたしてもひとつということですね。
「わかりました。冒険者ギルドはどこにありますか?」
「冒険者ギルドはこの門から大通りを真っすぐ歩いていけば左手に見えるはずだ。大きな看板もあるから、すぐわかると思うぞ」
顔は怖かったけど親切な門番のお兄さん
「ありがとうございました」
「おう、気をつけてな」
ということでまずは冒険者ギルドで身分証を作ろう。おー
言われたように大通りを真っすぐ進む。
テクテク……
大通りにはギルド、教会、広場、商店や宿屋さんなど立ち並んでいるみたい。土地を有効利用するためかな? 家は2階建てや3階建てが多いみたい。
「前の街よりものんびりとした雰囲気で過ごしやすそうかも……」
しばらくすると門番のお兄さんの言う通り、左手に看板が見えた。建物も周りよりふた回りほど大きい。
「ふぅ……よしっ」
少しドキドキしながら冒険者ギルドのドアをくぐる。
冒険者ギルドへ入ると、そこは広く活気にあふれていた。
入った時に多くの人の視線を感じたけど気のせいだよね、うん。
私の前にいるムキムキの人が有名だとかそういう理由だよね、うんうん。
道中はフードやネックレスがあったし視線もあまり気にならなかった。
ギルドでフードかぶるのも不審者っぽいしそれで絡まれるのも嫌だから、フード外したんだけど……意外と慣れないもんだね。
自意識過剰なのか何となく気になってしまった……はぁ。
正面にはいくつかカウンターがあり、受付には数人の人が並んで順番を待っているみたい。私もそれに並びながらギルドを観察してみた。
造り的には役所のようだったけど、そこにいる人たちは様々。
防具や剣などを身に着けた明らかに冒険者の風貌の者、商人や市民らしき普段着の人まで……なにか困ったときはここに来ればだいたい解決できそうな感じ。
端のほうには別のカウンターが設けてあり、そこでは買い取りをしているようだ。さらにその奥には倉庫があるみたい。
今も若そうな冒険者がカウンター越しに草を渡している。
飲食スペースもあるようでかなり賑わっている。すでにベロベロに酔っ払っている人もいるけど……
その隣では売店業務も行っているのかな? あの雑貨店みたいな感じ……
「次の方どうぞ」
呑気に辺りを観察しているとすぐ自分の番が来たので受付に進む。
受付にはムキムキスキンヘッドのいかにもなおじさんや真面目そうで美人な女性などがいる。
そして、私の進んだカウンターには栗色の髪をふんわり束ね、小柄だけど出るところは出ている可愛らしい受付嬢が笑顔で迎えてくれた。
「ようこそ、冒険者ギルド ランヴィ支部へ」
0
お気に入りに追加
308
あなたにおすすめの小説

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく
霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。
だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。
どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。
でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った
五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」
8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。

いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜
ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった!
謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。
教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。
勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。
元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。
力を持っていても順応できるかは話が別だった。
クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。
※ご注意※
初投稿、試作、マイペース進行となります。
作品名は今後改題する可能性があります。
世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。
旅に出るまで(序章)がすごく長いです。
他サイトでも同作を投稿しています。
更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる