93 / 120
第7章
93.女神見習い、少女の料理を堪能する
しおりを挟む「ただいまー」
「ん、おかえり」
「「おかえりー」」
「留守番ありがとね」
「ん」
「しばらくはのんびり家で庭をいじったり、ポーション作りをしようと思ってるから。リディのポーションも作り溜めたいしね」
「ん」
「留守番中、困ったこととかなかった?」
「ん、平気」
「そっか」
数日ぶりのお茶を楽しみ、少しゆっくりしつつメンバーと分けた素材でいっぱいのストレージを売るものと使う予定のもの、ユリスさんに使うか聞くものなどに整理した。
「結構たくさんある魔結晶の他の色ってなんか使い道あるのかな……」
ま、一応残しておこう。んー、まだ日も高いしダンジョン産の土だけでも畑にまいとこうかな……庭に出て結界をチェックし張り直すと……
「ん、何か手伝う?」
「ありがと、リディ。これさ、ダンジョンで手に入れた土なんだけど、なんか畑に良さそうだからもらってきたんだよねー」
「……ん」
「でも、畑全部にまいて失敗したくないから、今日は1部の区画だけにしようとは思ってるんだけど……」
「ん、野菜畑もまく?」
「そうだねー。野菜畑はリディに任せてもいいかな?」
「ん、わかった」
ストレージから土を出して私は薬草畑、リディは野菜畑に少しずつ……全体の3分の1くらいにまくことにした。
「ふむ。どうやらわしらの出る幕はないようじゃな」
「そうねー……ふたりを眺めるのもいいけど……正直、ヒマだわ」
「……そうじゃ!おーい、エナちゃん!」
「アルさん、なんですかー?」
「あそこに積んである丸太を使ってもいいかの?」
「あー、どうぞどうぞ!好きに使ってください」
「ねぇ、アル……どうするつもり?」
「ふむ……アレを作るんじゃよ」
「アレってもしかしてアレのこと?」
「うむ、そうじゃ」
「いいわね!乗った!」
なんのことやらさっぱりわからないけど、アルさんとメルさんのやることだから悪いことにはならないだろう、多分。
ふたりして丸太で何かを作り出したみたい……なんだか張り合って楽しそうだ。ま、いっか。
リディを見るとすでにほとんどまき終わっているようだった。
何気にリディの方が畑仕事に慣れている気がする。それだけ熱心に世話をしてくれたんだなぁ……美味しいもんね、やっぱ。
うまくいって美味しい野菜が育つといいなぁ。
「リディ、今日はこのくらいにしとこうか……」
「ん」
「もし、畑に何か変化を感じたら教えてほしいな」
「ん、わかった」
「あ、ユリスさんにごはんもらってくるの忘れちゃった……まだ食べるものあったっけ……」
んー……街で何か買ってくるしかないかな。え?私が作ると言う選択肢は早々に除外だけど、何か?
「ん、任せて」
……ん?任せて?ってどういうことだろう?
そう言うとリディはブランとひと言、言葉を交わし家へと入っていった。食べるものの心当たりがあるのかな?
私もリディに続いて家へ入ろうとすると……あ、あれ、おかしいな。ブ、ブランさん?なんでおうちに入れてくれないのかな?アルさんもメルさんも助けてくれる気は無いみたいで、ふたりは揃って家に入っていった。
……いじめ?いじめなのかな?
まぁ、なんかしら理由はあるんだろうけど、ヒマだしブランと家に入る攻防をしつつ時間をつぶしながら庭で待機すると……
「ん、エナもう入っていいよ」
「う、うん……」
すんなりと通してくれたブランの横を通り過ぎ、リディについてリビングへ行くとテーブルには美味しそうな料理が並んでいた。
「あれ、これって……」
「ん、お母さんのレシピ作ったの」
「えっ!これ全部リディが作ってくれたの?」
「ん、そう」
「わぁ、すごいね!」
早速、テーブルにつきリディの手料理(ここ重要だよ!)を食べる。
「いただきます」
「ん、どうぞ」
……もぐもぐ……スープはポトフっぽい味だ。胃に染み渡るよう……目玉焼きも上手に焼けてるし、ブラッドベアのステーキも美味しい。私がやると丸焦げなのに……
メルさんが持ってきたというジュースやパンも美味しい。アルさんは材料を持ってきてくれたんだって……ふたりに自慢されました。
私の作る料理の100倍はおいしかった。
「すごく美味しい」
「ん、よかった」
「美味しいじゃろ?リディちゃん一生懸命練習してたんじゃぞ」
「そうよ、私たちも協力したんだから」
「へぇ、そうなんだ……リディありがとね」
「ん」
アルさんやメルさん、そしてブランまでもがうらやましそうにこちらを見ている。リディの料理の練習でたくさん食べたんじゃないの?
「はぁ……少しだけならいいですよ」
「おお、そうかの」
「え、いいの? らっきー」
その途端目の前にたくさんあった料理が消え去った……私もまだ少ししか食べてないのに。ぐすん。食べ物の恨みは恐ろしいんだぞー。
リディが慌てて追加してくれました。わーい。
アルさんやメルさんたちも畑の手伝いや宿の掃除を手伝ってくれたらしいので、一瞬頭をよぎったけど出禁にはしなかった。なによりお世話になってるしね……
「このスープ、トマトを入れて味を変えるっていうのも美味しそうだよね」
「……なにそれ?」
「トマト風味にしたら味が変わって新鮮でしょ?」
「ん、わかった。明日はそうしてみる」
「おおー、明日もリディの料理が食べれるってことだね」
「ん」
リディが嫌じゃなければユリスさんが忙しいときはリディに作ってもらうのもありだよね……うん、ますます自分でご飯を作ることがなくなりそうだなぁ。
0
お気に入りに追加
308
あなたにおすすめの小説

契約結婚のはずが、気づけば王族すら跪いていました
言諮 アイ
ファンタジー
――名ばかりの妻のはずだった。
貧乏貴族の娘であるリリアは、家の借金を返すため、冷酷と名高い辺境伯アレクシスと契約結婚を結ぶことに。
「ただの形式だけの結婚だ。お互い干渉せず、適当にやってくれ」
それが彼の第一声だった。愛の欠片もない契約。そう、リリアはただの「飾り」のはずだった。
だが、彼女には誰もが知らぬ “ある力” があった。
それは、神代より伝わる失われた魔法【王威の審判】。
それは“本来、王にのみ宿る力”であり、王族すら彼女の前に跪く絶対的な力――。
気づけばリリアは貴族社会を塗り替え、辺境伯すら翻弄し、王すら頭を垂れる存在へ。
「これは……一体どういうことだ?」
「さあ? ただの契約結婚のはずでしたけど?」
いつしか契約は意味を失い、冷酷な辺境伯は彼女を「真の妻」として求め始める。
――これは、一人の少女が世界を変え、気づけばすべてを手に入れていた物語。

久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った
五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」
8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。

いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜
ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった!
謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。
教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。
勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。
元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。
力を持っていても順応できるかは話が別だった。
クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。
※ご注意※
初投稿、試作、マイペース進行となります。
作品名は今後改題する可能性があります。
世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。
旅に出るまで(序章)がすごく長いです。
他サイトでも同作を投稿しています。
更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる