異世界トリップしたら女神(見習い)でしたが一般人として自由に生きていこうと思います

瑞多美音

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第5章

58.女神見習い、ギルド公認になる(3)

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 面倒ごとは1日で済まそうと冒険者ギルドよりも少し裕福な地区にある商業ギルドへ登録に向かう……なんか、このまま行かずに放っておいたらサブマスが暗躍して余計に面倒なことになりそうな気もするからさ……
 あ、荷車と木箱はとりあえず冒険者ギルドに預けてきたよ。

 
 さっそく商業ギルドの扉をくぐるーー
 おぉー……なんか冒険者ギルドと比べると高級感漂ってるし、何よりほとんどキレイな格好をした人ばかり……冒険者ギルドは魔物の返り血や泥など結構汚い人も多いから余計にそう感じる。
 決して悪い人じゃなくてもそういう時は遠巻きにしてしまいがちなんだよね……カーラさんとはそういう鉢合わせをしたことないけど、そうなったらどうしようとか、つらつらと考えてみる。
 ……というのもなんか、ギルド内へ入った途端にほぼ全員から値踏みされているような視線を感じるんですよ……やっぱ冒険者の服のままじゃ目立つのかな? 
 はぁ……ワンピースにでも着替えればよかったかもしれない。
 でも、出直すの面倒だし……帰ったらもう1度ここまで来るの嫌になりそうだからなぁ。

 商業ギルドも造り的にはやはり役所のようだったけど、高級感が段違いだった。
 パッと見渡した限り、食堂のような飲食スペースはないみたい。お茶くらいなら飲めそうだけど。でも買い取りカウンターはあるかな。

 正面にカウンターがあるところも一緒だな……さて、大人しく列に並びましょう……と思ったら知らない人に声をかけられてしまいましたよ。

 「お嬢さん、ここに何しにきたんだい?」
 「えっと、商業ギルドへ登録しにきました」

 すると周りにいた数人が馬鹿にするように鼻で笑った。なんですかー、あなたたちは。

 「ふっ、お嬢さん。ギルドをお間違えじゃないかい? ここは冒険者ギルドじゃなくて商業ギルドだ。登録するにもかなり金がかかるんだよ」
 「はぁ……」

 なんだ?この脂ギトギトのぽっちゃりおじさんは。さっき商業ギルドに登録に来たって言ったじゃないか。耳が悪いか妄想癖があるんだな、きっと。うんうん。
 ……知らないうちに周りの人も野次馬が増えてるし。馬鹿にしたような人もいるけど、中にはぽっちゃりおじさんの言葉に顔をしかめている人もいる……てことはやっぱこれ、絡まれてるのか、はぁ。

 「ほら、わかったらさっさと出て行きなさい……それに、たとえお金を持って商業ギルドへ登録をしにきても紹介状がなければ登録は難しいよ。商人は評判が重要視されるからね」

 へぇ、そうなんだ。

 「あ、あります。紹介状……っていうか受付空いてるなら進んでもいいですかね?」
 「っ……誰の紹介状なんだい? まさか冒険者のお友達かい?」

 また、どこからかくすくすと笑い声が聞こえる。ねえ、これいつまで付き合わなきゃいけないの? 
 冒険者ギルドの時はこんな突っかかられることなかったんだけど……はぁ、めんどくさい。

 「いいえ、お友達ではないです……知り合い? の人になんか、無理やり持たされたんですよねー」

 そう、私はほぼ無理やり紹介状を持たされたのだ……うん、拒否権はなかったと思う。

 「とりあえず受付させてやればいいではないか。そうすれば受付がきちんと対処してくれるさ」

 あ、さっき顔をしかめていた人だ……ぽっちゃりおじさんは対処が追い出されるという風に取ったみたいだけど、裏を返せば紹介状が本物ならきちんと登録できるということだ。

 「ふんっ!☆3つが偉そうにっ。俺は☆4つだぞ!」

 星3つとか4つとか……なんのことだろ。思わず料理番組を思い浮かべてしまった私は悪くないと思う。
 星4つのぽっちゃりおじさんの方が偉いってことみたいだけど……まぁ、いいや。とりあえず受付へ進もう……ってまだ邪魔すんのかいっ! 
 あ、ぽっちゃりおじさんのせいで、私より後から来た人が先に受付に並んだじゃないかぁ。なんでその人のことは囲まないんだよー。ずるいぞー。
 よそ見をしていることが気に入らなかったのか

 「おい、優しくしてたらいい気になって!お前の紹介状なんて偽物だろうがっ」

 なんて言ってくるんですよ……ねぇ、ぽっちゃりおじさん。つば飛ばさないでほしいんですけど。
 まぁ、透明な結界があるから被害はないんですけどね……魔力消費激しいけど初めていく場所だから念のため結界張っといてよかったよ。触れられたらバレるけど、てか相手突き指するけど……見た目だけならバレないはず……

 「はぁ……いい加減にしてくれませんか? 紹介状を見せたら通してくれるんですね?」
 「ふんっ、そんなに自信があるなら見せてみるがいいっ!」

 ぽっちゃりおじさんも何故か自信満々だし、なんか野次馬もジリジリと寄って来て包囲網が狭まってるし……あー、そのせいで止めに入ろうとしたらしき職員さんがもみくちゃにされてますね。うん、もう少し早くに止めに入ってくれたらそうなってないと思うよ。だって、さっきの人は普通に通って受付してたもんね。

 このままじゃラチがあかないので、仕方なくサブマスとマルガスさんのサイン入りの紹介状をゴソゴソとバッグからそれぞれ取り出してぽっちゃりおじさんに突きつける……もちろん手には取らせませんよ。持たせたら最後、偽物だとかいってビリビリに破られそうだもの。
 まぁ、破られたとしてもサブマスとマルガスさんにもう1度お願いすれば書いてくれそうだけど……そういうの面倒だから破らせないよ!
 あれ? 見せた途端ぽっちゃりおじさん含め周囲を囲んでいる大多数の人がなんか固まったな……見えなかったのかな? いやいや、ちゃんと書いてあるし。1通はちょっと変だけどね。

 「おい、あれって……」
 「うわ、まじかよ……やべぇわ」
 「誰かメリンダさん呼んでこいよ」
 「お前が言えよ」
 「いやっ、お前が……」
 「俺ちょっと用事を思い出したわ」
 「「「俺もっ」」」

 何人かが用事を思い出したらしく帰っていったおかげで、職員さんがようやくこちらまで来てくれた。なんだか気弱そうな男の人だ。

 「すいません。紹介状を拝見してもよろしいでしょうか?」
 「ええ、どうぞ……」

 2枚の紹介状を受け取って確認した職員さんが……ブルブル震えだした。え、なんで?

 「少々、お待ちくださいっ……」
 「はぁ」
 
 なんか、奥の部屋へ慌てて飛び込んでいったよ……その時の周りの人の動きったら割れるように道ができたよね……私もこのまま受付に進みたい。ちっ、閉まりやがったぜ。 
 あれ、そういえばさっきのぽっちゃりおじさんいなくない? まさか、逃げたの……騒ぎ起こしたくせにずるいぞ。
 多くの視線を集めながらしばらく待っていると先ほどの職員さんが戻ってきた。

 「お待たせいたしました。こちらへどうぞ」
 「はい」

 そのまま付いていくと奥の部屋だった……あれ、なんでだ?


 「はじめまして、メリンダと申します。かなり強烈な歓迎にあったそうで……」
 「ええ、まぁ……そうですね」

 案内された部屋にいたメリンダさんは濃いブルーの髪を綺麗にまとめ、同じ色の瞳をした真面目そうな女性だ。さっきの職員さんはさっさと部屋を出て行ってしまい2人きりだ。

 「それで、こちらの紹介状なんですが……」
 「はい。まぁ、その内1つは悪ふざけしか書いてないですよね? これで紹介状と言えるんでしょうか……」

 そうなのだ……サブマスの紹介状は何故かラブレター形式なんだよ。
 『愛する君へ~中略~面白い子いるから紹介するね。エルネスト』みたいな感じ……もちろんマルガスさんの方はしっかりした紹介状をくれたから……最悪サブマスの紹介状はなかったことにしてマルガスさんの方だけでも問題ないはず。

 「ええ、本当に申し訳ないです……あれ、わたくしの夫なんです」
 「……え?」

 ……あれ、おかしいな。いまサブマスがメリンダさんの夫って聞こえたんだけど……いやいや、まさか。

 「ええ、信じたくありませんが……あれがわたくしの夫なんです」
 「はぁ……まじか」

 うん、サブマスの性格さえ知らなければすごくお似合いの夫婦なんだけど……

 「とにかく、紹介状は本物ですので商業ギルドに登録することができます。外はなにかとうるさいので、このままこの部屋で手続きしてもよろしいでしょうか?」
 「あ、おねがいします」
 「かしこまりました。では冒険者ギルドのカードをお預かりしますね。こちらに情報を書き加える形になりますので。それと、年会費として金貨1枚いただきます」

 うっ、年会費高いよ……はぁ。
 でも……さっき沢山ポーション売ったおかげでこれが出せちゃうんだよねー。ま、支払ったのは金貨じゃなくて銀貨10枚だけど……
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