42 / 120
第4章
42.女神見習い、呪われた少女と出会う(1)
しおりを挟む日も暮れかけた頃、外で何か物音がした……
「まさか、魔物?……でも結界は害意があれば入れないはず……」
そっと扉を開くと……やせ細った真っ黒な髪の少女とその肩には白い鳥がいた。どうやらお腹が空いて畑の実を食べてたみたい。
畑の実を食べられてしまったのは少し残念だけど、少女の細さを見るとそれも吹き飛んだ。
……どうやってここに来たんだろう?
びくっと肩を揺らした少女……なんかオーラみたいなのが見えるけど……あ、引っ込んだ。
しばらくの間見つめ合った後
「……私はエナ。ここに住んでるんだけど……お腹すいてるのかな? なんか食べる? あ、料理の腕はあんまり期待しないでね」
とりあえず、小屋の中から比較的上手くできたスープと街で買ったパンを少し多めに持っていく。
お、逃げ出さずに待ってる……よかった。
「……どうして」
「ん?」
「……みんな、こわがるのに」
それってさっきのオーラみたいなやつのことだよね?
「うーん、まずは食べようか。話はそれから……ね?」
だって今にも倒れそうなくらい細いんだもん……先に食事をしてほしい。
魔法で《灯》をつけ、毒を入れてないことをアピールするために先に口にする。すると少女より先に肩にとまっていた白い鳥がパンを食べた。それを見て安心したのか少女もスープを口に運ぶ。
ひとまずお腹いっぱいになったようなので
「改めて、私はエナ。よろしくね」
少し迷った様子を見せたあと
「……リディア。この子はブラン」
「さっきのってみんな怖がるの?」
「気分が悪くなるって……髪と瞳もお前は呪われてるからだ、呪われたお前を生んだせいで母親は死んだとか、だから捨てられたんだって……」
淡々と無表情で答える少女…… なんか必死に感情を殺してるみたい……
「呪いかぁ……」
悪いとは思ったけど、無断で『女神の心眼』……
-----
【ステータス】
種族:人族
氏名:リディア
状態:疲労/忘我の呪い[9578923]
体力:10/320
魔力:400/670
運:3(ー64)
スキル
・火魔法レベル1
・水魔法レベル2
・風魔法レベル2
・闇魔法レベル1
・闇属性耐性レベル1
・隠密レベル3
・気配察知レベル2
ー称号ー
呪われた少女
ー加護ー
献身の騎士の守護
-----
【ステータス】
種族:キラーバード
氏名:ブラン/?????
状態:通常
体力:280/460
魔力:350/350
運:28
スキル
・風魔法レベル2
・状態異常耐性レベル3
・隠密レベル5
・気配察知レベル3
ー称号ー
献身の騎士
ー加護ー
????の加護
-----
忘我の呪いを女神の知識で調べると……
説明では負の感情が高まると周囲に瘴気が発生する。瘴気が発せられるとともに数字が増え、数値が9999999以上になってしまうと死亡し全てを忘れ体を異形に乗っ取られてしまうらしい。
こんな呪いがあるなんて……
「私は怖くないし、気分も悪くならないみたいだから……我慢しなくていいよ」
そっと少女を抱きしめる。びくっと体を硬直させた後、次第に力が抜けていった……
瘴気が発生したって、数値が超えてしまうと死んでしまうとはいえ……1度くらい感情を押し殺したりせず、思いっきり泣いたっていいじゃないか。ここでは誰にも害を及ぼすことはないのだから。
「……っ」
しばらくボロボロと泣いた少女は安心したのか泣き疲れたのか眠ってしまう。日も暮れてきたので客間に運ぶ……私でも簡単に抱えられるほど軽くてびっくりした。
魔物らしき鳥もおとなしく付いてくるので部屋に通す。
「じゃあ、ブラン? 一応扉は開けておくから何かあったら知らせてね?」
返事をするかのように私の周りを1周した。
部屋に戻り……
------
【交信】
連絡先一覧
《慈悲の女神 フィラ》
《慈悲の女神部下 コルド》
《大地神 アルネルディ》
《愛の女神 メルディ―ナ》
《大地神 アルネルディ》を選択しますか?
[はい][いいえ]
------
アルさんを選んだのは、1番気心が知れていて、聞きやすいから……好き勝手にお泊まりもしてたぐらいだもの。
『ほーい、アルさんじゃぞ。エナちゃん、さみしくなって連絡してきたのかの……まだ数日なのにわし困っちゃうな』
全然困ってなさそうですけど……
「いえ、そうでなくて……ちょっとアルさんにしか聞けないことがありまして」
『なんじゃ?』
「あの、いま家に忘我の呪いという呪いを受けた少女となんか意思のあるっぽい鳥の魔物がいてですね……どうにかしてあげられないかなって……」
できれば何か力になりたい……アルさんなら何か知ってるんじゃないかな?
『ふむ……その呪いはかなり強力じゃ。呪われたらすぐに死んでしまうはず……』
「でも、あの子しばらく森をさまよっていたみたいですし、呪われたお前を生んだせいで母親は死んだとか、お前は呪われてるからだ、だから捨てられたんだって……」
『そうか……ならば答えはひとつじゃな。ごく稀に母親が呪いを受けた時に胎にいる子も呪いがうつることがあるのだ……ほとんどは生まれる前に母親が死ぬか、死産だが……胎児のため順応したんじゃろうよ』
「そんな……」
『ただの呪いなら教会でなんとかしてもらえたかもしれぬが……その子は教会ではどうにもならんじゃろうな』
「何か方法があるんですよね?」
無いとか言われたらどうしよう……
『うむ。安心せい……エナちゃんにしかできないことがあるぞ』
「私にしかできないこと……何ですか?」
『浄化するんじゃ! エナちゃんが女神見習いだからこそできることじゃ……』
こんなところで女神見習いが役に立つなんて……
「ありがとうございます!早速試してみます!」
『ふむ。困ったらいつでも連絡してくるんじゃぞ!』
「はい!」
------
【交信】
《大地神 アルネルディ》との交信を終了しました。
------
早速、『女神の浄化』が効果があるかもしれないので、寝ている少女に試してよう……部屋を訪ねると鳥が少女を守るかのように立ちはだかった……まさに献身の騎士。
「ブラン、一応説明するね? 私の魔法がリディアの呪いに効くかもしれないの……決して傷つけないから、試させてくれない?」
すると、ブランはもし嘘だったら殺す的な視線を私に向け横にずれた……そこで監視するようだ。
理解してるかわからないと思ったけど多分わかってるっぽい……
献身の騎士の許可も得たので、『女神の浄化』を少女にかける。
白っぽい光に包まれた少女に苦しむ様子はない……よかった。
心眼で確認するとすると数値が
忘我の呪い[9578923]→ 忘我の呪い[9578823]と減っていた。
「おっ、ちょっとは効果あるみたい……じゃあもう1度」
かけてみたが今度は効果が得られなかった。
「うーん……1日に1度しか効果がないのかもしれない。ブラン……今日はこれでおしまい。明日また試してみようか……ゆっくり休んでね」
やはりブランは私の周りを1周した。
0
お気に入りに追加
308
あなたにおすすめの小説
拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~
藤原ライラ
ファンタジー
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――
子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。
彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。
「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」
四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。
そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。
文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!?
じれじれ両片思いです。
※他サイトでも掲載しています。
イラスト:ひろ様

いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った
五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」
8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜
ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった!
謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。
教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。
勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。
元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。
力を持っていても順応できるかは話が別だった。
クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。
※ご注意※
初投稿、試作、マイペース進行となります。
作品名は今後改題する可能性があります。
世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。
旅に出るまで(序章)がすごく長いです。
他サイトでも同作を投稿しています。
更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね

私は女神じゃありません!!〜この世界の美的感覚はおかしい〜
朝比奈
恋愛
年齢=彼氏いない歴な平凡かつ地味顔な私はある日突然美的感覚がおかしい異世界にトリップしてしまったようでして・・・。
(この世界で私はめっちゃ美人ってどゆこと??)
これは主人公が美的感覚が違う世界で醜い男(私にとってイケメン)に恋に落ちる物語。
所々、意味が違うのに使っちゃってる言葉とかあれば教えて下さると幸いです。
暇つぶしにでも呼んでくれると嬉しいです。
※休載中
(4月5日前後から投稿再開予定です)

放置された公爵令嬢が幸せになるまで
こうじ
ファンタジー
アイネス・カンラダは物心ついた時から家族に放置されていた。両親の顔も知らないし兄や妹がいる事は知っているが顔も話した事もない。ずっと離れで暮らし自分の事は自分でやっている。そんな日々を過ごしていた彼女が幸せになる話。

異世界でフローライフを 〜誤って召喚されたんだけど!〜
はくまい
ファンタジー
ひょんなことから異世界へと転生した少女、江西奏は、全く知らない場所で目が覚めた。
目の前には小さなお家と、周囲には森が広がっている。
家の中には一通の手紙。そこにはこの世界を救ってほしいということが書かれていた。
この世界は十人の魔女によって支配されていて、奏は最後に召喚されたのだが、宛先に奏の名前ではなく、別の人の名前が書かれていて……。
「人違いじゃないかー!」
……奏の叫びももう神には届かない。
家の外、柵の向こう側では聞いたこともないような獣の叫ぶ声も響く世界。
戻る手だてもないまま、奏はこの家の中で使えそうなものを探していく。
植物に愛された奏の異世界新生活が、始まろうとしていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる