異世界トリップしたら女神(見習い)でしたが一般人として自由に生きていこうと思います

瑞多美音

文字の大きさ
上 下
35 / 120
第3章

35.女神見習い、中堅冒険者になる(1)

しおりを挟む


 ようやく小屋での生活にも慣れ、落ち着いてきたので本格的にポーション作りをしたいと思う。

 元々、教会から出た時にポーションで生活しようと思っていたけど、実際はそれ以外でも生活が成り立っている。
 だから、別にポーションを作らなくても小屋の周りにある薬草を採取して売ることで生活はできると思う。
 でも……人を救える力を持ってても使ってないってこと……なんか罪悪感なのかな? そんな気持ちになることがたまにある……まぁ、何様だよって感じなんだけど。
 そんななか、ポーションを作ることで少しは役に立ててるっていう実感が湧いて……マルガスさんの奥さんの話を聞いてからは余計に。でも、誰かのためっていうのはおこがましい気がして……
 考えた末、誰になんの負い目もなく好きなように暮らすためにポーションを作って売ることにした。それは、誰かのためではなく自分のためだから……


 今までも自分で消費できる範囲は作って、お店で買った瓶に詰めて何度かマルガスさんに渡したけど、今回は大量にギルドにも持ち込んでみるつもり。
 初級だけでなく中級ポーションの材料も多く採取してあるからたくさん作ってみよう。おー。


 ようやくあのエプロンが使える。それにドネルさんの犠牲? のおかげで漏斗が予定より早く手に入ったし……瓶詰めに余計な手間も無駄もなくなるし。

 「自分用のポーションは今までの瓶を使いまわすからいいとしても、ギルドに持ち込むのはさすがに買わないと」

 ドネルさん、安く譲ってくれないかな? ……公認職人だから流石に無理だな。
 ひとまず、感謝ポイントで交換した分があるからそれを使おう。

 「瓶は調合セットの分を合わせて200本あるから……とりあえず初級ポーションを50本ずつ作ろうかな」

 感謝ポイントはまだたくさんあるし、瓶は足りなくなったら交換しよう。


 小屋全体に結界を張り、綺麗な刺繍のエプロンをつけてベットがわりの岩の上でポーションを作る。

 「今回は素材に浄化をしてからポーションを作って……」

 これは今までの経験上、素材自体に『女神の浄化』をかけてから作ると時々品質:優ができると判明したから。
 それにレベルが上がったことにより消費魔力は増えるけど、10本同時に作っても品質を保てるようになった……

 寸胴鍋にあらかじめ浄化した体力草、ファル草、ラミールの花と魔法で出したきれいな水を10本分放り込み様子を見ながら時々かき混ぜ煮ていく。
 色が変わったら火を消して『女神の調合』を使う。
 出来上がったポーションを瓶に詰めて……漏斗が大活躍だった。
 最後に『女神の祝福』で加護を与え完成。
 
 「出来上がったのは品質:良が7本に品質:優が3本か……もっと丁寧に混ぜないとダメかな」

 次の10本は気持ち丁寧にかき混ぜたところ……出来上がったポーションは品質:良が5本に品質:優が5本だった。

 「へぇ、ほんの少し丁寧にしただけで結果が違うんだ……」

 その後の30本もやはり半々の出来だった……これ以上品質を高くするには、きれいな水などを選ぶ必要があるのかもしれない。

 さっと鍋を洗い流し、マナポーションも同じように作っていく。

 「地味に腕が疲れてきた……」

 朝から続けた作業もマナポーションを作り終えた時にはお腹の虫がうるさくなっていた。

 「お昼食べてから再開しよう……」

 自身に回復魔法をかけつつ、ストレージに保存してあるご飯を食べながら……調合セットの中級レシピを確認しておく。

 「ふーん、中級は材料に木の根があるからそれを先にほぐさなきゃいけないんだ……」

 これ、また腕が疲れる予感……

 すり鉢と乳棒を使い、浄化したガノン木の根をほぐし……その後は初級と同じようにハイポーションを作っていくーー

 念のため10本分ではなく5本分をまとめて作ってみたハイポーションは品質:良が4本、品質:優が1本だった。

 「やっぱり、初級と中級じゃ消費魔力も違えば品質も安定しないな……」

 とりあえず、出来るだけ丁寧に中級のハイポーションとマナポーションをそれぞれ30本作った結果……

 ハイポーション:中級……品質:可が3本、品質:良が20本、品質:優が7本。
 マナポーション:中級……品質:可が2本、品質:良が22本、品質:優が6本となった。

 本当はもっと作っても良かったんだけど……

 「あれ、こんなに大量に作ったはいいけどストレージやマジックバッグを使わずにどうやってギルドに持ち込むの?」

 という疑問に行きつき、途方にくれたことは言うまでもない……

 

◇ ◇ ◇



 ギルドにて……目的の人を探す。あ、いたいた!
 
 「カーラさんお久しぶりです!ちょっとお尋ねしたいんですが、今よろしいですか?」
 「エナさん、お久しぶりです。ええ、大丈夫ですよ」
 「今、ポーションを作っているんですけど……ポーション職人さんはどうやって大量にあるポーションを持ち運ぶんでしょうか?」
 「まぁ、エナさんのポーション楽しみです!持ち運びはですね……マジックバッグを使うか、それがなければ荷車か背負子でしょうか……」

 やっぱり、そうだよね……わざわざカーラさんに聞いてマルガスさんに聞かなかった理由? そりゃまた呆れられそうだから、かな?

 「そうですか……」
 「お役に立てたでしょうか?」
 「はい!ありがとうございます」
 「いえ、たまには宿へも顔を出してくださいね。ミーナも待ってますから……」
 「ええ、是非……ちなみに今日は空いてそうですか?」
 「んー……大丈夫だと思いますよ」
 「では夕方伺いますね。出来れば宿泊も……」
 「ええ、お待ちしてますね」

 やっぱり、しばらくは背負い袋に入る分だけギルドへ持ち込もうかな……まぁ、実際はストレージから出し入れするんだけど……うーん……

 とにかく一旦小屋へ戻って結界を張り直さないと……だってミーナちゃんが待ってますよって言われたら、たとえそれが社交辞令だとしても……宿へ行くしかないよね? 


 

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界にアバターで転移?させられましたが私は異世界を満喫します

そう
ファンタジー
ナノハは気がつくとファーナシスタというゲームのアバターで森の中にいた。 そこからナノハの自由気ままな冒険が始まる。

拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~

藤原ライラ
ファンタジー
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――  子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。  彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。 「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」  四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。  そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。  文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!? じれじれ両片思いです。 ※他サイトでも掲載しています。 イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

公国の後継者として有望視されていたが無能者と烙印を押され、追放されたが、とんでもない隠れスキルで成り上がっていく。公国に戻る?いやだね!

秋田ノ介
ファンタジー
 主人公のロスティは公国家の次男として生まれ、品行方正、学問や剣術が優秀で、非の打ち所がなく、後継者となることを有望視されていた。  『スキル無し』……それによりロスティは無能者としての烙印を押され、後継者どころか公国から追放されることとなった。ロスティはなんとかなけなしの金でスキルを買うのだが、ゴミスキルと呼ばれるものだった。何の役にも立たないスキルだったが、ロスティのとんでもない隠れスキルでゴミスキルが成長し、レアスキル級に大化けしてしまう。  ロスティは次々とスキルを替えては成長させ、より凄いスキルを手にしていき、徐々に成り上がっていく。一方、ロスティを追放した公国は衰退を始めた。成り上がったロスティを呼び戻そうとするが……絶対にお断りだ!!!! 小説家になろうにも掲載しています。  

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

ボルカノダンジョンへようこそ!

ひらえす
ファンタジー
 王都で冒険者をやっていたアレンダンは、諸々の事情でソロ冒険者として再出発する事にした。  ギルドから紹介されたのは、王都から遠く離れた田舎町、火山の町ボルカノ。3年前に発見されたボルカノダンジョンの先行調査およびその他の雑務etc…報酬が異様に高いことを怪しんだアレンダンだったが、一刻も早く王都を離れたかった彼はそれを承諾。 南の果ての火山の町、ボルカノでの生活が始まった……! ※小説家になろう様、アルファポリス様、カクヨム様でほぼ同時投稿しています。 ※残酷描写は保険です。 ※誤字脱字多いと思います。教えてくださると助かります。 ※相変わらずのストックなしの不定期更新ですが、頑張りますのでよろしくお願いします。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

処理中です...