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第3章
35.女神見習い、中堅冒険者になる(1)
しおりを挟むようやく小屋での生活にも慣れ、落ち着いてきたので本格的にポーション作りをしたいと思う。
元々、教会から出た時にポーションで生活しようと思っていたけど、実際はそれ以外でも生活が成り立っている。
だから、別にポーションを作らなくても小屋の周りにある薬草を採取して売ることで生活はできると思う。
でも……人を救える力を持ってても使ってないってこと……なんか罪悪感なのかな? そんな気持ちになることがたまにある……まぁ、何様だよって感じなんだけど。
そんななか、ポーションを作ることで少しは役に立ててるっていう実感が湧いて……マルガスさんの奥さんの話を聞いてからは余計に。でも、誰かのためっていうのはおこがましい気がして……
考えた末、誰になんの負い目もなく好きなように暮らすためにポーションを作って売ることにした。それは、誰かのためではなく自分のためだから……
今までも自分で消費できる範囲は作って、お店で買った瓶に詰めて何度かマルガスさんに渡したけど、今回は大量にギルドにも持ち込んでみるつもり。
初級だけでなく中級ポーションの材料も多く採取してあるからたくさん作ってみよう。おー。
ようやくあのエプロンが使える。それにドネルさんの犠牲? のおかげで漏斗が予定より早く手に入ったし……瓶詰めに余計な手間も無駄もなくなるし。
「自分用のポーションは今までの瓶を使いまわすからいいとしても、ギルドに持ち込むのはさすがに買わないと」
ドネルさん、安く譲ってくれないかな? ……公認職人だから流石に無理だな。
ひとまず、感謝ポイントで交換した分があるからそれを使おう。
「瓶は調合セットの分を合わせて200本あるから……とりあえず初級ポーションを50本ずつ作ろうかな」
感謝ポイントはまだたくさんあるし、瓶は足りなくなったら交換しよう。
小屋全体に結界を張り、綺麗な刺繍のエプロンをつけてベットがわりの岩の上でポーションを作る。
「今回は素材に浄化をしてからポーションを作って……」
これは今までの経験上、素材自体に『女神の浄化』をかけてから作ると時々品質:優ができると判明したから。
それにレベルが上がったことにより消費魔力は増えるけど、10本同時に作っても品質を保てるようになった……
寸胴鍋にあらかじめ浄化した体力草、ファル草、ラミールの花と魔法で出したきれいな水を10本分放り込み様子を見ながら時々かき混ぜ煮ていく。
色が変わったら火を消して『女神の調合』を使う。
出来上がったポーションを瓶に詰めて……漏斗が大活躍だった。
最後に『女神の祝福』で加護を与え完成。
「出来上がったのは品質:良が7本に品質:優が3本か……もっと丁寧に混ぜないとダメかな」
次の10本は気持ち丁寧にかき混ぜたところ……出来上がったポーションは品質:良が5本に品質:優が5本だった。
「へぇ、ほんの少し丁寧にしただけで結果が違うんだ……」
その後の30本もやはり半々の出来だった……これ以上品質を高くするには、きれいな水などを選ぶ必要があるのかもしれない。
さっと鍋を洗い流し、マナポーションも同じように作っていく。
「地味に腕が疲れてきた……」
朝から続けた作業もマナポーションを作り終えた時にはお腹の虫がうるさくなっていた。
「お昼食べてから再開しよう……」
自身に回復魔法をかけつつ、ストレージに保存してあるご飯を食べながら……調合セットの中級レシピを確認しておく。
「ふーん、中級は材料に木の根があるからそれを先にほぐさなきゃいけないんだ……」
これ、また腕が疲れる予感……
すり鉢と乳棒を使い、浄化したガノン木の根をほぐし……その後は初級と同じようにハイポーションを作っていくーー
念のため10本分ではなく5本分をまとめて作ってみたハイポーションは品質:良が4本、品質:優が1本だった。
「やっぱり、初級と中級じゃ消費魔力も違えば品質も安定しないな……」
とりあえず、出来るだけ丁寧に中級のハイポーションとマナポーションをそれぞれ30本作った結果……
ハイポーション:中級……品質:可が3本、品質:良が20本、品質:優が7本。
マナポーション:中級……品質:可が2本、品質:良が22本、品質:優が6本となった。
本当はもっと作っても良かったんだけど……
「あれ、こんなに大量に作ったはいいけどストレージやマジックバッグを使わずにどうやってギルドに持ち込むの?」
という疑問に行きつき、途方にくれたことは言うまでもない……
◇ ◇ ◇
ギルドにて……目的の人を探す。あ、いたいた!
「カーラさんお久しぶりです!ちょっとお尋ねしたいんですが、今よろしいですか?」
「エナさん、お久しぶりです。ええ、大丈夫ですよ」
「今、ポーションを作っているんですけど……ポーション職人さんはどうやって大量にあるポーションを持ち運ぶんでしょうか?」
「まぁ、エナさんのポーション楽しみです!持ち運びはですね……マジックバッグを使うか、それがなければ荷車か背負子でしょうか……」
やっぱり、そうだよね……わざわざカーラさんに聞いてマルガスさんに聞かなかった理由? そりゃまた呆れられそうだから、かな?
「そうですか……」
「お役に立てたでしょうか?」
「はい!ありがとうございます」
「いえ、たまには宿へも顔を出してくださいね。ミーナも待ってますから……」
「ええ、是非……ちなみに今日は空いてそうですか?」
「んー……大丈夫だと思いますよ」
「では夕方伺いますね。出来れば宿泊も……」
「ええ、お待ちしてますね」
やっぱり、しばらくは背負い袋に入る分だけギルドへ持ち込もうかな……まぁ、実際はストレージから出し入れするんだけど……うーん……
とにかく一旦小屋へ戻って結界を張り直さないと……だってミーナちゃんが待ってますよって言われたら、たとえそれが社交辞令だとしても……宿へ行くしかないよね?
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