39 / 120
第3章
39.女神見習い、神様が泊まりに来る
しおりを挟む------
【交信】
《大地神 アルネルディ》から交信されています。
[はい(許可)] [いいえ(拒否)]
------
「あれ、アルさん? どうしたんだろ……」
とりあえず[はい]を選択する。
『エナちゃん、久しぶりじゃ。元気かの?』
「お久しぶりです。はい、元気にしてます!」
『そうか、それは良かった……わしもちょっと前に降臨しての……エナちゃんがなかなか連絡をくれないから会いに行こうと思っとるんじゃ』
あー、もうアルさん降臨の時期なんだ……え?……会いにくるの?アルさんが?ここに?
「えーと……さすがに距離がありますし……」
そもそも小屋の場所知らないよね?
『なんじゃ、そんなことは問題ないぞ? わし、神さまじゃからの!』
「そうですか……じゃあ夕方お待ちしてますね」
『うむ……で、どこに行けばいいかの?』
やっぱ、知らないんかーい! 移動できるけど目的地がわかってなかったのね……
「えーっと……魔の森の奥の方にある小屋なんですけど」
こんな説明でわかるわけないか……
『ふむ……わかったのじゃ! なんとなく浄化されている土地があるからそこに行ってみるかのぉ』
へー……大地神てそんなこともわかるんだ。すごい……
『じゃあまた、後での!』
「はい。お気をつけて?」
------
【交信】
《大地神 アルネルディ》との交信を終了しました。
------
◇ ◇ ◇
夕方……
「本当にあの説明だけで来れるのかな……」
一応、小屋の掃除もしたし、料理はこの前のブラッドベアの美味しいご飯があるし……顔見てすぐに帰るのかな?ご飯くらいは食べて行くよね?
「ふぉっふぉっふぉっ……なかなか個性的な場所に住んでおるの……」
振り返ると変わらぬ姿のアルさんが立っていた。
「アルさん、お久しぶりです……個性的な場所……確かにそうかも知れません」
だって本来なら魔物がうじゃうじゃいる危険な地域に住んでるんだもの……小屋もボロいし……
「そうじゃ、今日はエナちゃんのお家に泊めてくれい。街の宿は飽きたんじゃ。お忍びもやり尽くしたしのぉ」
「泊めてくれいって言われましても……そもそも泊められる部屋がありませんし……」
そうなのだこの小屋はキッチンやリビング、ベットなどが1部屋に全てが収まっている状況。
ベット以外に寝る場所は……床しかない。というかベットも平たい石だけども。体バキバキになるけども。
神様を床で寝かせるとか……ないな。え? お前が床で寝ろって……えー。
「そうなのか。残念じゃのう……もし、他に部屋があれば泊めてくれるのじゃな?」
うーん。まぁ、同室じゃないなら問題はないけど、まず部屋ないしな。
「まあ、そうですね」
「ちなみにエナちゃん……この小屋の狭さやボロさを気に入ってるとかあるかの?」
「いえ、特にはないです……そもそも1人の空間が欲しかったのと宿代の節約を兼ねているので」
「そうか!それなら簡単じゃ。部屋を増やしてしまおう!他に要望はあるかの?」
部屋を増やす?そんなこと簡単にできないし、リフォームするにしてもここまで大工さん来れないよ……とはいえ……もしリフォームしたら欲しいもの……
やっぱ、お風呂とトイレかな……あとベッド!体がバキバキにならないやつ。
「ふむ、そうか。ではやるかの」
あ、声に出てたみたい。やるって何をやるのかな?
アルさんに促されるまま外に出て待つこと数分……
「ほれ、完成じゃ。これでわしも心置き無く泊まれるわ」
「何が完成なんでしょうか? 泊まれるってどういうことですか」
アルさんはしたり顔で
「入ってみればわかるぞ」
「はぁ……」
とりあえず言われたまま小屋に入ると……なんということでしょう、小屋が家になっているではありませんか!
おかしい……さっきまでワンルームだったはず。外に出て確認するも外観に変化は見られない。ボロい小屋のままだ……
「これなんですか!いきなり部屋が増えてますけど!」
「ちょっとわしの魔法でやってやったわい。ちゃんとお風呂とトイレ、ベッドも付けたぞ? ついでにわしの好きなようにに色々追加したわ。これでわしもお泊まりじゃな。宿泊代は家の改築でええかの」
ホクホク顔の神さま、それを横目に家を見てまわる。
確かに狭いワンルームからリビングダイニングと台所、個室が2部屋、それにトイレとお風呂、物置まである。石のベッドは綺麗なベッドに斜めだったテーブルも水平に、座面の壊れた椅子も真新しい物に変化しており新たな家具もいくつかあるみたい……個室は両方とも寝泊まりできるよう家具が揃ってる。すごい……そして、ボロくない。外と中のギャップよ……
明らかに元の小屋の面積より家の中が広い。どういう仕組みか気になる……しかし、困った。これでイヤとは言えないよね。冗談かと思ったら神様の本気侮るべからず。……少しだけ自分が苦労して掃除したり修繕したのが馬鹿らしく感じた。
「ほんとうに大したことは出来ませんよ。それでもよければ……」
満足そうに頷いているので問題ないんだろう。
「うむ。じゃあ残りの降臨期間中よろしくの!」
え……今日だけじゃないの……そうか、今日だけならこんな本格的に部屋を綺麗にしたりしないか……ご飯のストックそんなにないけど。
とりあえず食事だけでも頑張ろう。主に肉と果物しかないけど。パンとか焼けないけど。
なんならアルさん、テイクアウトしてきてくれてもいいんですよ?……私の分も一緒に。
結局アルさんは残りの降臨期間中、私の家に泊まり、ご飯のストックが無くなった途中からは食事もテイクアウトしてきてくれた。
つまり私の料理がまずいとな……確かにテイクアウトしてきてくれてもいいって言ったけど……毎日同じようなメニュー(味の薄いor濃いスープ、買ってきた果物をカットしたもの、買ってきた肉を焼いたもの……生焼けor丸焦げ)は飽きたってことかな。これは無言の圧力かなにかですか?え、パンだけ食べてたほうがマシ?……た、確かに……反論できなくて辛い。まぁ、いいか……テイクアウトはアルさんのおごりだし節約できたと思えば……
「今度、愛の女神に自慢してやるんじゃ。あやつエナちゃんとの食事をずいぶん自慢してくれたからの! そうじゃ! 今度の降臨期間中もお泊り予約で頼むぞ」
「はぁ……」
アルさんは意気揚々と天界へ帰って行きました。
メルさんに何を自慢することがあるのでしょうか? 私の料理の腕ですか、そうですか。
……え? 好き勝手にしても怒られない空間……そんなの自慢になるかぁい!
そして、なぜか降臨期間中、定期的に神様が私の家に宿泊することが決定したようです。それまでに可及的速やかに食事と呼べるものを作れるようになろうと心に決めた。きっと無理だけど。スキルあるのに全く成長が見られないもの……そうなったらまたアルさんにテイクアウトしてきてもらうからいいもん、ぐすん。
0
お気に入りに追加
308
あなたにおすすめの小説

契約結婚のはずが、気づけば王族すら跪いていました
言諮 アイ
ファンタジー
――名ばかりの妻のはずだった。
貧乏貴族の娘であるリリアは、家の借金を返すため、冷酷と名高い辺境伯アレクシスと契約結婚を結ぶことに。
「ただの形式だけの結婚だ。お互い干渉せず、適当にやってくれ」
それが彼の第一声だった。愛の欠片もない契約。そう、リリアはただの「飾り」のはずだった。
だが、彼女には誰もが知らぬ “ある力” があった。
それは、神代より伝わる失われた魔法【王威の審判】。
それは“本来、王にのみ宿る力”であり、王族すら彼女の前に跪く絶対的な力――。
気づけばリリアは貴族社会を塗り替え、辺境伯すら翻弄し、王すら頭を垂れる存在へ。
「これは……一体どういうことだ?」
「さあ? ただの契約結婚のはずでしたけど?」
いつしか契約は意味を失い、冷酷な辺境伯は彼女を「真の妻」として求め始める。
――これは、一人の少女が世界を変え、気づけばすべてを手に入れていた物語。

久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った
五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」
8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。

いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは

とある婚約破棄の顛末
瀬織董李
ファンタジー
男爵令嬢に入れあげ生徒会の仕事を疎かにした挙げ句、婚約者の公爵令嬢に婚約破棄を告げた王太子。
あっさりと受け入れられて拍子抜けするが、それには理由があった。
まあ、なおざりにされたら心は離れるよね。

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜
ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった!
謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。
教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。
勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。
元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。
力を持っていても順応できるかは話が別だった。
クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。
※ご注意※
初投稿、試作、マイペース進行となります。
作品名は今後改題する可能性があります。
世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。
旅に出るまで(序章)がすごく長いです。
他サイトでも同作を投稿しています。
更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる