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第3章
38.女神見習いの1日(2)
しおりを挟む「……ふぁああ」
ベットの上でストレッチしたら日課の家の結界のチェック……ついでに昨日刺した枝を見てみるーー
「うーん……7時~8時くらいかな?」
朝食を食べ、準備をしてから森の浅い部分まで瞬間移動……あ、そうそう。ちょうどいいところにかつての倉庫?みたいなのがあってその影に瞬間移動してる……倉庫といっても休憩できるほど整ってないから休憩中の冒険者に会うこともなく……ちょうど死角になる場所があるから便利なんだよねー
そこから歩いて街へ向かうーー
門番の強面お兄さんに挨拶をして、ギルドへ向かっていると……
「あっ、エナお姉ちゃん!」
「ミーナちゃん、おはよう……今日はお勉強の日?」
「うん!そうだよっ……エナお姉ちゃん今日は宿に来る?」
上目遣いで聞くなんてっ、なんて可愛い営業なのさぁ……
「うーん……部屋が空いてたら……かな?」
ミーナちゃんの後方の物陰に見えるのは……親父さん……まだついて行くこと諦めてないのね……
あっ、目が合ってしまった……さらにコクリと頷いたってことは……
「お部屋は大丈夫だよっ、じゃあ帰ったらおかあさんに言っておくから、ちゃんと来てねー」
「うん、わかった。ありがとう……気をつけてね」
「うん、ありがとうっ。エナお姉ちゃん……でもね、おとうさんがいるから平気だよ?」
ミーナちゃんが近寄ってきてそう耳打ちした……親父さん、バレてます。嫌われる前に撤退を!
ばいばーいと手を振って去っていったミーナを見送り……うん、親父さんはスルーで。
◇ ◇ ◇
マルガスさんは……いないな。
掲示板をひと通りチェックしたら受付が空いてきたので
「カーラさん、おはようございます」
「あっ、エナさん……マルガスさんから聞きましたよ」
「あー、そういえば……そんなこと言ってましたね」
「買い取りですか?」
「ええ、まぁ……依頼を受けたいのもあるんですけど」
そう言うとカーラさんは他の人に受付を任せ
「じゃあどうぞ……それも奥で対応しますね」
「はーい」
いつものように勝手にお茶を入れて、椅子に座る。
「な、慣れてますね……」
「そうですかねー」
「では、本日の買い取りはポーションでよろしいですか? それにしてもあのポーションすごいですね! 美味しくて驚きました」
「ありがとうございます……えーっと、今日はポーションの買い取りと魔物の素材の買い取りをお願いしたいです」
「はい」
「で、まずは……ポーションの初級が15本ずつと中級が5本ずつです。あと掲示板の依頼にトレントの木材納品がありましたよね? あれを受けたいです」
「わ、わかりました……」
「あとですね……ブラッドベア? とかいう魔物もあるんですけど掲示板に依頼はなかったですよね?」
「ちょ、ちょっと待ってくださいっ、ブラッドベアですか」
「はい」
「マルガスさん呼んできます……少々お待ちを」
えー、マルガスさん呼んだら絶対呆れられちゃうじゃん……
しばらく待つとやはり呆れ顔のマルガスさんとなぜかサブマスまで……絶対おもしろがってる。
「やぁ、エナくん。また面白いことしたんだって?」
「……面白いこと?」
「まだ、トレントは許容範囲だが……ブラッドベアはヤベェぞ」
「えー、じゃあソレは無かったことにしましょう」
「そんな訳いくかっ……はぁ」
掲示板の依頼書にはトレントはCランク推奨の木材納品クエストだったからまぁ許容範囲なんだろう……Dランクだし。
「いいですか……エナさん。ブラッドベアはパーティでBランク以上推奨、ソロならAランク以上推奨の危険な魔物です。以上というのはそれ以下のランクだと危険なのでランヴィ支部ではそもそも受付で止められます」
「へぇー、えっ?」
「そうだぞ、カーラのパーティメンバーでもソロは厳しいんだぞ……」
ようやく、事の重大性に気づいた……
「ええっ、それってヤバいやつじゃないですかー」
「ようやくわかったか……ブラッドベアの依頼書がないのは指名依頼になるからだ」
「そうだねー、そんなのソロで倒しちゃったら目立っちゃうねー」
サブマス……なんで、そんなにおもしろがっているんですか。
「とりあえず、全部出せ」
「マルガスさん、それは流石に強引すぎると思いますが……」
「カーラ……よく見てみろ。エナのなんとも思ってない顔を」
「えー……こんなに困った顔してるじゃないですかー……そういえば解体スキルゲットしたんですけど普通の木は解体じゃだめなんですねー」
「見たか……しれっと話題変えたぞ」
「はい……」
ん? なんかカーラさん疲れてるな……大丈夫かな?
どうやら木は解体スキルではなく、伐採スキルか剣術スキルや斧術スキル、魔法などで簡単に切ることはできる。ただ、そこからの加工はやはりスキルや熟練の技がいるらしい。へー。
「ほら、早く素材出してくれよ」
「えー、魔核もですか?」
「いや……エナが欲しいものは除いていい」
あ、お茶なくなった……おかわりしよーっと。
「おいっ、聞いてんのか?」
「あ、すいません……えーっとですね……魔核以外には木材は依頼分以外はほしいし……お肉美味しいかな?……毛皮……布団がわりになるかな?カーラさん親父さんにお肉持っていったら美味しくしてくれますか?」
「それはもう高級肉ですから腕によりをかけてくれるはずです! あと……毛皮は布団がわりにするには高級過ぎかと……」
「じゃあ……トレントは依頼分だけで、ブラッドベアはお肉と魔核以外買い取りで」
木材は家の修繕使えそうだもんね……スキルでなんとかなるといいな。
「わかった。カーラ、依頼処理してくれ」
「はい」
ストレージから次々と素材を出していく……
「ねえねえ、私のあげたリストの素材はないのかな?」
「今はないですねー」
「そっか……」
サブマスさん、忙しくないのかな?ただ見てるだけなんだけど……ちょっと圧力が気になるけどそんな素振り見せたら面白がるだろうから外にはださない。
「これ、全部マジックバッグに入ってたのかよ……」
「ちょっと多すぎますよね……」
「まぁ、エナだからな……」
「ええ、エナさんですから……」
「エナくんだからねー」
みんなして何だろう……確かにマジックバッグから出したら量がちょっと多いかもしれないけど……若干馬鹿にされている気がする……
結果……かなりのお値段でした。時々あらぬ方向に魔法を撃ってみようかと思うほどには……
◇ ◇ ◇
少し遅くなったけど、ギルドの食堂でお昼を食べてから買い出しへ……串焼きやスープ、パンなどを調達。
そういえば、以前開店すると行っていた商人さんの店舗をようやく見つけた。
ちょっと高級なお店で魔道具や魔石など色々なものなどを幅広く扱っているみたい……まだ買う勇気は出ないけどいつかゆっくり見てみたい。
少し早めだけど、お肉も渡したいし『黄金の羊亭』へ……
「あっ、エナお姉ちゃん、ちゃんときてくれたんだねっ」
「うん……おかみさんはいるかな?」
「エナちゃん。ミーナから聞いて部屋の用意もできてるよ」
「ありがとうございます……それとカーラさんから何か聞いてますか?」
「あー、なんかエナちゃんが何を持ってきても驚かず美味しい料理にしてほしいって……」
話していると珍しく親父さんが厨房から出てきた……何を持ってきたのか知りたくてウズウズしてるみたい。
「そうですか……えっと、このお肉なんですけど」
ブラッドベアのお肉を取り出すと……親父さんの目が光り
「これは……」
おー、初めて話してるところ聞いちゃった。
「美味しい料理期待してますね? お肉はまだまだ沢山あるのみんなで食べましょう……それと私の数日分のお持ち帰りもお願いします」
「わーい!お肉だー」
「いいのかい?旦那がこんなに興奮するくらい珍しい肉なんだろ?」
「いいですよ……どうせ私が料理したら黒焦げになるので」
その晩、『黄金の羊亭』で出された料理は今まででいちばん美味しかった……この味のためならまたブラッドベアを探そうと思うほどに……
今日はお肉に免じて親父さんからミーナちゃんと一緒にご飯を食べて独り占めする許可が出た……他の人の羨ましそうな視線たらないね。
夕食を食べたあともミーナちゃんやカーラさんとおしゃべりして癒された。
部屋へ戻り、簡易シャワーで汗を流しサッパリして……ベッドに入る。
「今日はよく眠れそう……」
おやすみー……ぐーぐー……
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