異世界トリップしたら女神(見習い)でしたが一般人として自由に生きていこうと思います

瑞多美音

文字の大きさ
上 下
27 / 120
第3章

27.女神見習いと瞬間移動(1)

しおりを挟む



 メルさんが天界へ戻ってから数日が経過したーー

 あれだけぎゅうぎゅう詰めでむさくるしかった教会も今では元通りで、既に街を去った冒険者も多いという。
 本当、メルさんに会うためだけにこの街に来てるんだ……


 暑い日差しの中、汗をかきながら森の浅い部分で薬草採取をしていると……

 ちなみに森の浅い部分はかつて村があり広場などの痕跡が色濃く残っていて、井戸の水もまだ生きているので冒険者が採取や休憩によく利用する。遠い昔に森に飲み込まれ村は廃村になったらしい。
 そのあたりでよく薬草が見つかるので度々足を運んでいる。
 閑話休題。


-----

 【交信】
 《慈悲の女神 フィラ》から交信されています。

  [はい(許可)] [いいえ(拒否)]

------

 一瞬、拒否しようかと思ったけど出ることにした……わたしはどこかのつるぺた駄女神様と違って[いいえ]を押したりしないのですよ。


 「はい」
 『見習いちゃん、久しぶり~。なんか知らないうちに冒険者してるのね~?これ多分便利だよ~。じゃあね~』

 と、何かくれたようである。
 こちらが話す間も無く【交信】が切れてしまった。

------

 【交信】
 《慈悲の女神 フィラ》との交信を終了しました。

------

 「何くれたのかな? ……ロクでもないものじゃなきゃいいけど」

 せめて使えるものならいいなと思い、何をくれたのか履歴で確認してみると……

------

ー履歴ー 

 【愛の女神 メルディ―ナの加護】が授けられました。
 【感謝ポイント】1ポイント獲得しました。累計 4444ポイント
 【感謝ポイント】1ポイント獲得しました。累計 4445ポイント
 【感謝ポイント】1ポイント獲得しました。累計 4446ポイント
 【感謝ポイント】1ポイント獲得しました。累計 4447ポイント
 【瞬間移動】が使用可能になりました。

------

 瞬間移動となっていた。

 「……瞬間移動って」

 瞬間移動といえばあの瞬間移動かな?
 もしそうだったらすごいものくれたんだ、駄女神様。ロクでもないとか言ってなんかすいません。

 「瞬間移動かぁ……えーっと、あの木の前に移動したい!」

 これで移動できるのかな? あー、でも自分だけの空間もいいよなぁ。

 瞬間移動と知り興奮した私は、ステータスの説明も読まず、とりあえず目に入った木の側へ移動しようと試してみた……ら案の定使いこなせず、どこかわからないところまで飛ばされた。
 見渡す限りが深い森と濃い霧で全体的にどよーんとした雰囲気だ。

 「ああ、やっちまった……」

 濃い霧を警戒しつつ、生い茂る木々の隙間から差し込むわずかな光を頼りに、かなり魔力を込めた女神の聖域を展開する……これで大分安全が確保できる……はず。

 「とりあえずここに居ても始まらないか……」

 ナイフで木に印をつけつつ、あたりの様子をうかがう。
 歩きながら、目に入った珍しい薬草を袋に入れ探索をしていると……ほどなくして大きな湖に行き当たった。

 「水はきれいそうだけど、なんか魔物に引きずり込まれそうな雰囲気だよね……」

 嫌な想像をしてしまい、湖から一定の距離を保ちつつ探索……そこから歩いて5分ほどの場所かな……小屋?を発見した。

 小屋は朽ち果てているといっても過言でなかった。今はかろうじて雨風がしのげる程度にしか残っていないが、かつては石造りの頑丈な小屋だったことがうかがえる。
 扉を、押すと簡単に開き……中を覗くと埃だらけではあったが、ひと通り家具も揃っていた。

 「うーん、湖があるから釣り小屋とか?」

 しかし家具も所々壊れている様で人の気配はない……少なくともここ何十年も人の手は入っていないみたい。

 「んー、それにしては綺麗なような……」

 小屋を歩き回りつつ、心眼をかけるとひとつ不思議なものを見つけた。

------

 〈????の像〉
 かつて神????が戯れに作ったもの。
 ????の形をしている理由は不明。
 状態維持と魔物よけの効果がある。
 魔力不足によりほとんどの機能が停止しかけている。

------


 「へー」

 レベルが足りないせいでところどころ読めないけどおかみさんが教えてくれた神様が置いてった魔道具ってやつみたい。
 壊れてなければ貴重なんだろうけど、今のところガラクタ同然かな……あ、でも神様の像なら高値がつくかも。よし……マジックバッグにでも入れておこう。


 「とにかく少しここで休憩しよう……しっかり瞬間移動も調べたいし……『瞬間移動 検索』」


------

【瞬間移動】
 移動するときに行き先を強く思い浮かべると魔力と引き換えに移動できます。
 イメージが不確実な場合、瞬間移動の失敗の確率が高まります。失敗した場合、移動がキャンセルされます。
 瞬間移動しようとした場所に人がいたり、物がある場合、移動時に自動的に調節されます。

------


 どうやら移動するときに行き先を強く思い浮かべることがコツみたい。

 「失敗しても移動できないだけでよかった……身体が千切れるとかだったらヤバかったね」

 さっきは家と畑とか自分だけの空間が欲しいなぁと一瞬、考えてしまっていたため、ここに飛ばされた模様……にしてはちょっと距離あったけど。まぁそういうことにしておこう、うん。
 
 「ふーん」

 今度こそ余計なことは考えず、さっきいた広場に戻りたいと念じる。

 「おおっ! 移動できた!」

 ……けどせっかく道に迷いながらも珍しい薬草を見つけては採った薬草袋が無かった。

 「はぁ……こんなことなら売る用と自分用の整理なんて後回しにしてストレージに入れておけばよかった」

 あれ、さっきの小屋に置きっぱなして来ちゃったんだ……もったいない。

 「……戻るか」

 今度はすぐに移動せず、色々チェックしてからにしよう。うん、確認は大事! 
 なんか凡ミスばっかりだし……もうちょっと気をつけないと。

 まずはかなり重たい石を持って広場の端から端に移動しようとしてみた……ら、石はそのままで自分しか移動出来なかった。

 「重量制限があるのかな?」

 ただ、あの小屋にさえ戻れれば薬草はストレージに入れるから、重さは関係ないかな? んー……でもこのままだとまた凡ミスしそうだしなぁ。

 もう少し練習して使いこなせるようになってからにしよう。
 広場は他の冒険者が来ることもあるので、人目につきにくい場所へ歩いて移動する。

 「このあたりなら大丈夫かな……」

 練習しつつも……
 あの小屋に置いたままの薬草袋を取りに行かなくちゃ。
 薬草が枯れるまでにいかなくちゃ。と変な焦りを感じていた。
 歩いて行こうにも道も距離も方角すらわからないから瞬間移動するしかない。

 
 ひたすら練習を続け、ようやく石ごと移動できるようになったので

 「あの小屋へ行きたい、あの小屋へ行きたい! あの小屋へ行きたい!!」

 もう1度あの小屋へ瞬間移動……できたー!
 練習のおかげか問題なく到着した……変なところに着いたらどうしようと心配していただけに小屋についてホッとした。

 「ふぅ……あ、あった!」

 薬草袋を無事回収し、間違いなくストレージへ入れる。かなり疲れたのでさっさと引き上げよう。
 
 一応、ザッと見回し忘れ物がないかチェックーー

 「よし、忘れ物は……ない!」

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

契約結婚のはずが、気づけば王族すら跪いていました

言諮 アイ
ファンタジー
――名ばかりの妻のはずだった。 貧乏貴族の娘であるリリアは、家の借金を返すため、冷酷と名高い辺境伯アレクシスと契約結婚を結ぶことに。 「ただの形式だけの結婚だ。お互い干渉せず、適当にやってくれ」 それが彼の第一声だった。愛の欠片もない契約。そう、リリアはただの「飾り」のはずだった。 だが、彼女には誰もが知らぬ “ある力” があった。 それは、神代より伝わる失われた魔法【王威の審判】。 それは“本来、王にのみ宿る力”であり、王族すら彼女の前に跪く絶対的な力――。 気づけばリリアは貴族社会を塗り替え、辺境伯すら翻弄し、王すら頭を垂れる存在へ。 「これは……一体どういうことだ?」 「さあ? ただの契約結婚のはずでしたけど?」 いつしか契約は意味を失い、冷酷な辺境伯は彼女を「真の妻」として求め始める。 ――これは、一人の少女が世界を変え、気づけばすべてを手に入れていた物語。

久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った

五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」 8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく 公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった 足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で…… エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた 修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく…… 4/20ようやく誤字チェックが完了しました もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m いったん終了します 思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑) 平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと 気が向いたら書きますね

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

彼女はいなかった。

豆狸
恋愛
「……興奮した辺境伯令嬢が勝手に落ちたのだ。あの場所に彼女はいなかった」

処理中です...