異世界トリップしたら女神(見習い)でしたが一般人として自由に生きていこうと思います

瑞多美音

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第2章

26.女神見習い、愛の女神と出会う

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 ランヴィの街にもすっかり馴染み、ギルドでいつも通り依頼の納品を済ませてたら……聞き覚えのある鐘の音が辺りに響いた。

 「あ、この音って……もしかして神様降臨したのかな?」

 鐘の音が聞こえた途端、街の人(冒険者多数)がいきなり教会の方へと駆け出していく。うわー、圧力がすごい。

 「おぉ、すごい」
 「ああ、女神様が降臨したんですねぇ……まあ、この時期に街にいる冒険者はかなり熱烈ですし、中には毎日教会で張り込む冒険者すらいますからね……降臨したからといってそんなに急いで向かわなくてもいいと思いますよ」

 そういえば、最近あまり見たことのない冒険者が多いなと思っていた。
 どうやらその人たちは女神様の熱狂的な信者さん(ファン)らしい。
 そして今、教会に向かったとしても熱烈なファンの皆さんにもみくちゃにされ教会内に入ることすら難しいみたい。へー。

 それならと街で買い物などを済ませ時間をつぶしてから教会を訪ねてみた。
 降臨からだいぶ時間を空けたにもかかわらず、教会はむさくるしい人でいっぱいだった。

 若干もみくちゃにされながら、ようやく教会の隅に居場所を確保した。

 「ふう……疲れた」

 ふと、周りの熱気が増したように感じ、視線をあげると遠目に赤く艶やかな長い髪をなびかせたセクシーな女神様が見えた。
 あの女神様がアルさんの言ってた神様か……
 

 「はーい、お待たせー。じゃあ行くよー」
 「「「「「「「うおぉおおおぉお」」」」」」」

 女神様が腕を振ると教会がキラキラした空気に包まれ皆が歓喜する。すごい、範囲魔法かな……

 「うん、けが人もいないみたいだから気をつけて帰るのよ」
 「「「「「「「はいっ!」」」」」」」

 ざわざわと興奮が冷めやらない空気の中、美しい笑顔とともに女神様は奥に引っ込んでしまった。
 あれだけぎゅうぎゅうだった教会も女神様の言うことを聞いたのか、ほとんど人がいなくなった。なにこの統率力……すげー。

 「あー、どうしようかな」

 今日はこれで終わりみたいだし……女神様には会えそうにないかな?

 「何がどうしようかな、なの?」
 「女神様に会いに来た……って、えっ?」 

 振り向くと女神様なんだけど女神様じゃないきれいな女の人がニコニコしている。

 「わかるかしら? ワタシさっきあそこにいた女神ね。今は認識阻害が掛かってるからわかりずらいかも……」
 「初めまして、エナです。わかります……何となくですけど」
 「あー、そっか。神同士だと本能的に認識できちゃうのよね。お腹もすいてきたし、とりあえずこのむさくるしい場所から移動しましょう」

 女神様について、近くのちょっとお高めな食事何処へ。ふんふん。ここは秘密の会話やカップルなどに人気な半個室が売りのお店らしい。

 「じゃあ、改めまして。女神見習いのエナと申します。まあ、いまは冒険者兼ポーション職人(予定)ですが……」
 
 女神様はさっそく運ばれてきたお酒をあおりながら

 「ワタシは愛の女神のメルディーナよ。メルお姉ちゃんて呼んでね! ……それにしてもあの問題児ずいぶん盛ったのねえ」
 「メルさん、盛ったとはどういうことでしょうか」
 「むー、お姉ちゃんでいいのに。ああ、盛ったっていうのはねぇ……あの子実際はそんなに凹凸ないのよ。ちんちくりんだし」

 凹凸がない……だと。

 「つまり……つるーん、ぺたーんなんですか?」
 「そうそう。まあ、後世に残る姿だから見栄を張ったんでしょうねえ」

 はあ……それなら尚更誰でもよかったじゃないか。

 「そうですか……そういえば先ほど認識阻害がかかっているからわかりずらいとか、本能的に認識できるというのはどういことでしょうか?」 
 「ああ、それはねぇ……エナちゃんは特別かしら。ワタシたちは降臨した時、自由に行動できるよう自分で認識阻害がかかるようにしているんだけど、エナちゃんは女神として降臨したときの服に認識阻害の効果が付与されていたみたいねぇ」

 へー、あの女神の服にそんな効果があったとは……
 つまり、女神の服を着ることで正しく認識できず、服を脱いでしまえば別人として認識されるらしい。
 女神の服には認識阻害の魔法(なんか神々しく、認識して見えてるんだけどなにかズラされているような感覚らしい)が付与されており脱いでしまえば、早々女神とはわからない仕様だそう。

 とはいえ顔自体が変わるわけではなく、私自身には認識阻害の魔法は効かないため……初日に衝撃を受けた容姿はまぎれもなく本物で……美人さんにかわりはない。
 でも……女神だとバレるかもしれないという心配事も減り、女神の服さえ着なければ問題ないと分かっただけでだいぶ気が楽になった。

 ただし、雰囲気や声、仕草などは変わらないのでよほど観察眼の鋭い人や親しい人などにバレる可能性はあるらしい。
 それと万が一、女神の服を他人が着てしまっても効果はないそう。


 「はぁ……今までバレないようにしてた私の苦労っていったい……」
 「まぁまぁ、細かいことは気にしないで」
 「えぇ……そうですね」


 そうそう、体力といえばこの世界では体力や魔力の平均が子供を除いて
 体力、魔力共に500~1000ぐらいで、ほんの一握りが1000を超えるらしい。


 私のステータスといえば……

 体力:280/280
 魔力:55000/55000

 あれ、おかしいな……体力は平均の半分以下しかないけど魔力が何十倍もあるよ?

 「ああ、それも女神仕様よ。魔力がなかったら範囲魔法とか使えないじゃない」
 「範囲魔法……あっ、さっきメルさんが教会で使ってたやつですね」
 「そうそう。アレがあると1発で終わるから楽でいいのよねー。加護はほぼアレで済ませてるわ。でも体力は女神仕様でもなんでもないわよ」
 「……え?」
 「んー、エナの元々の体力がないか……あの子がミスったか」
 「へ、へぇ」

 多分、私の体力が無いんだ。この世界の人と比べたら、ね。だって電車やバス、車があったんだもの……


 「まぁ、10日くらいは居るからなんかあったら連絡してね」


------

【交信】
 新たな連絡先 《愛の女神 メルディ―ナ》が登録されました。

------

 「ありがとうございます」
 「ふふっ、これでアルに自慢できるわっ」
 「アルさんに自慢……ですか?」
 「だってアルったら、さんざんエナのこと自慢してきたのよぉ。でもアルもご飯は一緒に食べてないでしょう」
 「はい」
 「だから、帰ったらエナとご飯食べたことを自慢するのよっ」

 それが、自慢になるのでしょうか……
 
 こうしてまたひとり、心強い味方を手に入れた。
 アルさんと違って少しだけ振り回されそうなのは内緒ですよ。



◆ ◆ ◆ 


【ステータス】 
 種族:女神(見習い)/人族
 氏名:エナ・ハヅキ
 状態:通常
 体力:280/280
 魔力:55000/55000
 運:77 (+2)
 冒険者ランク:E

 スキル 
 ・火属性魔法レベル2
 ・水属性魔法レベル3
 ・風属性魔法レベル3
 ・地属性魔法レベル2
 ・光属性魔法レベル3
 ・回復魔法レベル3
 ・状態異常無効レベル1
 ・接触防衛レベル1 
 ・火属性耐性レベル1 
 ・水属性耐性レベル1
 ・風属性耐性レベル1
 ・地属性耐性レベル1
 ・光属性耐性レベル2
 ・闇属性耐性レベル2
 ・体力自動回復(中)
 ・魔力自動回復(大)
 ・成長経験値上昇(大)
 ・精霊魔法 レベル2

 特殊スキル
 ・女神の祝福レベル3
 ・女神の浄化レベル2
 ・女神の調合レベル2
 ・女神の心眼レベル3
 ・女神の聖域レベル2
 ・言語翻訳
 ・感謝ポイント〈1956ポイント〉累計〈4421ポイント〉


 ー称号ー
 巻き込まれし者・当選者・女神見習い・新人冒険者

 ー加護ー
 慈悲の女神フィラの加護・慈悲の女神の部下コルドの憐憫・大地神アルネルディの加護・愛の女神メルディ―ナの加護


 その他機能【交信】【履歴】


◆ ◆ ◆ 
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