異世界トリップしたら女神(見習い)でしたが一般人として自由に生きていこうと思います

瑞多美音

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第2章

18.女神見習いと黄金の羊亭

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 あ、そうだ。

 「この辺りでおすすめの食事処とか宿を教えてください」
 「ふふ……そうですねー。1本裏通りになるんですが『黄金の羊亭』という宿屋があります。食事も出来ますし、宿泊なら朝食もついているのでおススメです」
 「ありがとうございます。行ってみますね」
 「あ、エナさん。宿屋でカーラの紹介って言ってもらえればサービスしてくれるはずですから……」
 「いいんですか? では、お言葉に甘えさせてもらいますね」
 「ええ、またあとで……」


    ギルドを後にし、早速カーラさんに教えてもらった宿へーー

    裏通りにあるという黄金の羊亭へ行くのにほんの少しだけ迷ったけど無事に到着できた。よかった。
 店のドアをくぐり中に入ると目の前にカウンターがある。

    店の奥のほうではちらほら食事をしている人もいて、2階部分に宿の部屋があるようだ。
    どちらかといえば、食堂が宿屋も営業している感じかな?

    カウンターの前でボケーっと立っていたら……まだ6、7歳くらいの栗色の髪をツインテールにして小さなポシェットと可愛いフリルのエプロンをつけた女の子が私の存在に気づいて駆け寄って来た。

 「いらっしゃいませ。黄金の羊亭にようこそ! ごしゅくはくでよろしいですか?」
 「はい、冒険者ギルドのカーラさんに紹介されてきました。一泊いくらですか?」
 「カーラ姉の紹介だと朝ごはんがついて、えーっと、小銀貨2枚と銅貨5枚だよ。あとはなんだったっけ? おかーさんっ!」

    一生懸命で可愛すぎなんですけど! ズキューンて胸が撃ち抜かれたよね……

 「はーい! ごめんなさいね。昼と夜もうちで食べるなら1杯飲み物がサービスで付きます。あと夜はお酒も出すからちょっとうるさいかもしれないけど大丈夫かい?」

 この街へ来るときの道中の宿屋もかなり騒がしかったし、多分平気だよね。

 「うん、大丈夫です」
 「あと、お湯が必要な場合、桶1杯につき銅貨3枚だよ」
 「えっと、とりあえず6日宿泊でお願いします。お湯は……桶だけ貸してもらうことはできますか?」
 「ああ、魔法で出せるのかい? 大丈夫だよ、ミーナ桶持ってきてくれるかい」
 「うん、わかったー」
 「6日で銀貨1枚と小銀貨5枚になります」

 ミーナちゃんが小走りで桶を抱えて持ってきてくれたのでそれを受け取ると、キラキラした目で両手を出す。
 おかみさんをチラッと見ると頷いたのでミーナちゃんに宿代を渡す。受け取った硬貨を一生懸命数えてる。うん、とんでもなく可愛い。
 その様子をおかみさんも一緒に確認しており……

 「はい確かに。あとこちらに記入お願いします。書けない場合は代筆しますよー」
 「あ、書けるので大丈夫です」

  宿帳と羽ペンを差し出されたので、さっそく記入して渡す。
 宿帳を確認(お母さんのまね)をしたミーナちゃんは

 「はい、ありがとうございます! では、お部屋にごあんないしますね。こちらへどうぞっ」

   ミーナちゃんについて階段を上がるとズラッと扉が並んでいる。案内された部屋は通りに面した部屋だった。
 日当たりもそこそこいいし、ベットもなかなか清潔で、寝起きする分には全く問題なさそう。
    部屋の広さは5畳ほどで窓の横には小さなテーブルがありちょっとした書き物や作業に使えそうかな。       
 床もギシギシと音が鳴ることもないので、1階を気にしてそーっと歩く必要もなさそう……そりゃあ教会よりは劣るけど教会ではあまり自由がなかったから全くの別物だね。

 「えーっと……これがおへやの鍵です。出かけるときにカウンターで預けてくれれば、お掃除もしますよ。掃除がいらないときは鍵を預けるときに言ってね! あとは……あっ、鍵をなくしちゃったら必ず伝えてね! 鍵のこうかんだいをもらうと思うからっ」
 「うん、わかったよ。ありがとう、ミーナちゃん」
 「じゃあ、お姉ちゃん。どうぞ、ごゆっくりー」

    ミーナちゃんからカギを受け取って、ひと通り部屋をチェックしていたらお腹もグーグー鳴ってきたので早速下の食堂でご飯を頂くことにしよう。
 1階に降りると私に気づいたおかみさんが

 「食事かしら? 朝は3種類から選んでもらうけど昼と夜の食事はメニューから好きなもの選ぶことができますよ」
 「そうですか。うーん、今日の日替わりでお願いします」
 「はいよ。あんたっ、日替わりひとつねー」

 厨房で強面の旦那さん? がコクリと頷いた。

 しばらく待つとミーナちゃんがそろりそろりと食事を運んできてくれた。
 ミーナちゃんは『黄金の羊亭』の看板娘なんだって。他のお客さんも温かく見守ってる。いーなー、この感じ。

 「お待たせしました。きょうの日替わりのホーンラビットの肉の煮込みとパンです。ごゆっくりどうぞっ」
 「ありがとう。いただきます」

 ホーンラビットのお肉が口の中でホロホロと崩れてすごくおいしかった。
 パンもあまり固くなかったし『黄金の羊亭』ますます気に入った。
 あっという間に食べ終えてしまった。

 「ふふ、気に入ってもらえましたか?」
 「あれ、カーラさん」
 「あ、カーラ姉っおかえり!」
 「ただいま、ミーナ」

 突然の出来事に戸惑っていると……

 「ふふ、ごめんなさい。ここ私の家なんです」
 「ええっ」

 ミーナちゃんのカーラ姉の姉は本当の姉妹を指してたとはっ。

 「あれ、エナお姉ちゃん知らなかったの?」

 エナお姉ちゃんですとっ……また胸がズキューンてなったよ。

 ミーナが黄金の羊亭へ来る女の人全員にお姉ちゃん(さん)と呼んでいることを知らないエナ。そのことに気づくのはまだ遠い先のお話。
 
 「うん、知らなかったよ」
 「すいません。騙すような真似して」
 「いえいえ、とても居心地の良い宿ですね」
 「でしょー。ミーナかんばんむすめだからねっ!それにカーラ姉が紹介する人はしんようできるんだよっ」

 ミーナちゃん曰く、紹介するのはカーラさんが見極めた人のみで、実家の宿を紹介しても問題ないと判断した人にしか自分の紹介だとサービスしてくれるって教えないんだって……わー、なんか嬉しい。
 嘘をついてもカーラさんが帰ってきたらバレるので、その時は親父さんに追い出されてひどい時は出禁になることもあるらしい。

 元々、カーラさんの実家というだけで人気の高い宿なんだけど、それでも時々カーラさんが紹介する人が宿泊するから、カーラさんが紹介した人用の部屋がいつでも用意されているとか。

 「紹介してくれてありがとうございます。嬉しいです」
 「いえ、そんなっ」
 「ミーナも嬉しいっ。最近、カーラ姉が紹介した人いなかったもんっ」

 やばい、にやけそう。
 カーラさんとも少し距離が縮まった……気がする。



 
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