異世界トリップしたら女神(見習い)でしたが一般人として自由に生きていこうと思います

瑞多美音

文字の大きさ
上 下
12 / 120
第1章

12.女神見習い、初めての買い物(3)

しおりを挟む

~雑貨店~

 かなり荷物が多くなった……主にジャガイモと玉ねぎの重さでふらつきながら大通りの端にあった雑貨店へーー

 雑貨店の店内は衣料品店や食料品店よりも雑多に物が積みあがっていた。
 何がどこにあるんだろうか……全くわからないな。こういう時はさっさとお店の人に聞こう。

 「いらっしゃい、気になるものがあったら声かけとくれ」
 「あのー、旅に必要なものってどこにありますか?」
 「旅か……宿には泊まるのかい?」
 「うーん……できたら泊りたいですけど、状況次第でどうなるかわかりませんね」

 するとおかみさんが商品の山からゴソゴソと何かを引っ張り出してきた。こんなに雑多でもきちんと把握してるんだ……すごい。

 「これなんかどうだい? 野営に必要なものをセットにしてあるんだ」
 「……野営セットですか」

 おかみさんの見せてくれた野営セットにはテント、毛布、水袋が2つ、火打石、ロープが数本、魔よけ香、簡易コンロ、ハイポーションとマナポーションの初級が1本ずつ、鍋や食器まで付いていてかなりお得みたい。
 魔よけ香っていうのは小さな巾着袋に入っていて身に付けるだけで、弱い魔物なら近寄ってこないというもの。ただし、嗅覚が鈍い魔物や強い魔物には効かないらしい。
 うーん……

 「この野営セットのテントって組み立てるの大変ですか?」

 何せ、生まれてこのかたテントなんて組み立てたこともない。いざというときに困るのでは本末転倒だし……

 「いや、慣れてしまえば簡単だよ。何なら、店の裏で試してみるかい?」
 「……いいんですか?」
 「ああ、ついといで」

 おかみさんは息子さんに店番を任せ、店の裏にある洗濯などを干すためであろう小さなスペースへ案内してくれた。

 「狭くて悪いけど、早速試してみるかい」
 「お願いします」
 「これ……ちょっとボロいけど野営セットのテントと同じ型だから、やってみな」
 「はい」

 おかみさんに教えてもらいながらテントを組み立ててはバラすこと数回……だんだんとコツがつかめてきた気がする。最初より半分以下の時間で組み立てられるようになった。

 「うん、それだけできれば十分さ」
 「ありがとうございます」

 道中に宿があるらしいので、テントは必要ないかもしれないけど、万が一のことを考えて購入することにした。 
 何といっても別々に買うよりもだいぶ安いし、ここまでしてもらって要りませんとは言えない。
 おかみさんについて店内に戻り……

 「野営セット以外になにか買った方がいいものはありますか?」
 「そうだね……あとはランプと革袋はあった方が便利だね。あんた魔法は使うのかい?」
 「人並程度には使います。剣とか武器を使うものはからっきしですね」

 おお、こんなこともあろうかと事前に考えてきたおかげでスラスラ答えられたよ。

 「だったら……魔力効率の上がる指輪と護身用にナイフくらいは持っといたほうがいいんじゃないかい?」
 「へー、そんな指輪があるなんて初めて知りました」
 「魔力効率が良くなって、威力が上がったり消費魔力が少なくて済むんだとさ。指輪は真ん中にはめ込まれた魔核で全然効果が違うからね。高いのもあれば安いもんもある。ま、うちには安いものしか置いてないけどね」

 おかみさんが見せてくれた指輪はほとんど同じ形だったけどはめてある魔核? の色が違った。

 「この色が違うのは何か意味があるんですか?」
 「ああ、それはどの魔物から取れたかによって違うだけで、ここにある指輪に関しては効果はほとんど変わらないね」

 どれを選んでも一緒なら、いちばん透明度が高い指輪にしよう。その方がきれいだし……あ、なんかこれだけ透き通ってる。

 「そうなんですね。じゃあ、この琥珀色の指輪にします」
 「ふーん、あんたいい目してるね」
 「え?」
 「いや、なんでもないさ。ランプはどうする? 魔核交換型か魔力注入型があるけど」

 ランプはどちらにするかで値段が違うんだけど、魔力が多いなら魔力注入型の方がお得らしいのでそちらにした。ランプの石に触れ魔力を込め、はめてある石が光ったら満タンになったってことみたい。


 ナイフはいくつか種類があったが、よくわからないのでおかみさんのオススメの数本から刃渡りが手の平ほどあり、持ち手が白いナイフを選んだ。
 い、色で選んだわけじゃないんだからねっ!

 革袋はひとつ買うよりもまとめて買うと安くなるという誘い文句に見事はまり複数購入。
 余ったら仕分け袋にするから問題ない、はず。

 あと、シュービッツとスポンジも購入した。

 結構な量になったな……まぁストレージさんのおかげで問題ないけど。

 街からの移動に何が必要で何を買えばいいのかわからなかったし相談に乗ってくれて正直助かった。

 「計算するからちょっと待ってて」
 「はい」

 買い物の計算を待つ間、カウンターの隅に物が雑多に詰め込まれた箱が目に入る。
 その視線に気づいたのか、おかみさんは

 「ああ、その箱かい? 亭主が使えもしないガラクタばかり集めちまってねえ……そこにあるものは何でもひとつ銅貨1枚だよ。気に入るもんがあれば言っとくれ」
 「そうなんですか……手に取ってみてもいいですか?」

 そう言うとおかみさんは見やすいように箱を持ってきてくれた。ありがとうございます。

 気になるものを心眼でチェック……
 宝石の取れた指輪、穴の開いたマジックバッグ(使用不可)、ナイフの鞘のみなど使えそうにないものが多い中、気になるものがあった。

----- 

〈幸運(微)のリボン〉
 運の値が2上昇する。

〈???石〉
 ???石。※レベルが不足しています

〈変容のネックレス〉
 細いチェーンの先に魔石がついたネックレス。
 身につけている間、魔力を消費し瞳の色を自由に変えられる。

-----

 〈幸運(微)のリボン〉は少しでも運が上昇すればいいなと思う。魔物とか野盗に会う確率が減れば万々歳だし。
 〈???石〉は何なのか気になるし、心眼レベルが上がったら確かめてみたい。
 とりあえず頑丈そうなのでまとめ買いした革袋のひとつに入れて、いざという時には振り回したい。
 〈変容のネックレス〉は瞳の色だけでも変えられるなら印象が変わって旅の間女神だとばれないかもしれない。でも……

 「あの……このネックレスはどうしてこの箱に入っているんですか?」
 「ああ、それかい? つけている間、目の色を好きな色に変えられる魔道具ってんだけどねぇ……魔力消費が半端なくてね。よっぽど魔力のある人か、それに複数人を雇って魔力を込められる金持ちくらいしか興味を持たないねぇ。一応小さいながら魔石がついてるってんで効果は期待できるんだけど……ま、これに魔力を使うくらいなら他の魔力消費の少ない魔道具に使った方がいいって私ら庶民にとってガラクタ同然てわけさ」
 「へー、そうなんですね……じゃあ、このリボンとこの石とこのネックレスも追加でください」
 「その説明を聞いて諦めたやつも多かったんだけど、あんた変わり者だねぇ。気に入った! ナイフホルダーおまけしてあげるよ! さっきのナイフにぴったりなはずだからね」
 「わー、ありがとうございます!」


 会計を済ませ店を出る。荷物が増え、腕はプルプルし、歩くのがやっとだけど……どこかの路地まで我慢がまん。

 ここでも店を出た後、こっそりおかみさんと息子さん、お店に女神の祝福をかけた(3回目 え、しつこい?)






 *○*○*○*○*○*○*○*○*○*○*○*



 ーエナが店を出た直後ー

 「かあちゃんっ! あれ、いいのか?」

 息子が駆け寄ってくる。理由はわかっているが、あえて知らないふりをする。

 「……なにがだい?」
 「だってあの指輪、ウチに唯一あった高ぇ方の指輪だろっ! それにナイフホルダーまでっ」

 おかみは昔を懐かしむように

 「昔、じいさんに言われたんだよ……もし、お前がこの人ならと思ったら安い指輪に混ぜて出してみなって……今まではみんな安い指輪を選んで行ったんだけどねぇ」
 「あの娘は高ぇ指輪を選んだってわけか……」
 「ナイフホルダーは本当にあの娘を気に入ったから、私からの選別だよ」
 「はー、珍しいこともあるもんだ」
 「うるさいよ……あの娘、将来大物になるかも知れないね」
 「かもしれねぇな……」

 あの娘なら本当になにかをやってのけるかもしれないと親子はそっくりな顔で笑ったーー


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った

五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」 8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。

転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく 公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった 足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で…… エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた 修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく…… 4/20ようやく誤字チェックが完了しました もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m いったん終了します 思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑) 平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと 気が向いたら書きますね

私は女神じゃありません!!〜この世界の美的感覚はおかしい〜

朝比奈
恋愛
年齢=彼氏いない歴な平凡かつ地味顔な私はある日突然美的感覚がおかしい異世界にトリップしてしまったようでして・・・。 (この世界で私はめっちゃ美人ってどゆこと??) これは主人公が美的感覚が違う世界で醜い男(私にとってイケメン)に恋に落ちる物語。 所々、意味が違うのに使っちゃってる言葉とかあれば教えて下さると幸いです。 暇つぶしにでも呼んでくれると嬉しいです。 ※休載中 (4月5日前後から投稿再開予定です)

異世界でフローライフを 〜誤って召喚されたんだけど!〜

はくまい
ファンタジー
ひょんなことから異世界へと転生した少女、江西奏は、全く知らない場所で目が覚めた。 目の前には小さなお家と、周囲には森が広がっている。 家の中には一通の手紙。そこにはこの世界を救ってほしいということが書かれていた。 この世界は十人の魔女によって支配されていて、奏は最後に召喚されたのだが、宛先に奏の名前ではなく、別の人の名前が書かれていて……。 「人違いじゃないかー!」 ……奏の叫びももう神には届かない。 家の外、柵の向こう側では聞いたこともないような獣の叫ぶ声も響く世界。 戻る手だてもないまま、奏はこの家の中で使えそうなものを探していく。 植物に愛された奏の異世界新生活が、始まろうとしていた。

処理中です...