上 下
16 / 120
第2章

16.女神見習い、新人冒険者になる(2)

しおりを挟む

 

 「受付のカーラと申します。本日はどういったご用件でしょうか?」
 「身分証を作りたいんですけど……」

 これで出来ませんとか言われたらどうしよう……いや、門番のお兄さんに教えてもらったんだから大丈夫だとは思うけどね。

 「かしこまりました。では、こちらにご記入と手数料として小銀貨1枚いただきます。記入できない場合は代筆もありますのでおっしゃって下さいね」
 「大丈夫だと思います」

 受付のカーラさんに小銀貨1枚を渡す。
 すると、目の前にステータスプレートと同じようなものが現れた……どういう仕組みなんだろう?
 カーラさんに渡されたペンで記入していく。

 [氏名:エナ 種族:人族]

 もちろん種族は女神(見習い)じゃなくて人族ですよ!
 そのほかは任意だといいうのでとりあえず最低限身分証に必要な部分のみ記入した。

 「はい、ありがとうございます。では、次にこちらに手をかざしてください。犯罪歴の有無を調べさせていただきますので」

 言われた通りプレートに手をかざす。さっきの門と同じやつなのかな?

 「はい、犯罪歴はないようですので……このまま手続きに入らせていただきますね」
 「……犯罪歴があると登録できないんですか?」 
 「基本的にはそうなります。門でも調べたと思いますが、あちらは犯罪歴の有無のみで犯罪歴にもよりますが重罪の場合、捕まるか街への出入りを拒否されます。事前に調べておくことでトラブル防止も兼ねていてるんです」
 「そうだったんだ……」
 「こちらのプレートでは手をかざしていただいたときに魔力を識別し、その情報をカードに登録しています。ひとりひとり魔力が違うので、偽造のギルドカードも作れない仕組みなんですよ」
 「へぇ……」

 なんかこういうとこだけすごいよね……その能力をトイレにも活かしてくれたらいいのになぁ。
 その間もカウンターの奥では記入内容や犯罪歴の有無などカードに転写している模様。

 「はい、これで登録は完了です。紛失してしまった場合、再発行に銀貨3枚かかってしまうのでくれぐれもなくさないようにお気を付けください。こちらは身分証のみでなく冒険者のギルドカードとしても使用できますので、その際は受付で毎回提示してくださいね」
 「はい、ありがとうございます」
 「次にギルドの説明をさせていただきますね」

 聞き逃さないようにしないと。

 「お願いします」
 「ギルドカードを登録をすると冒険者ランクというものが付き、最初はGランクから開始されます。基本的には依頼を受けて達成しランクを上げていく形になります。最低でも年に1度は依頼を受けていただかないとカードの身分証としての効力を失いますのでご注意ください。その際受ける依頼はランクさえあっていれば街のお手伝いでも採取でも構いません。依頼は自分のランクの2つ上まで受けることが可能ですが、依頼に失敗すると一定期間同じ依頼を受けられなくなったり罰金やランクダウンなどもございますのでご注意ください。それと、Gランクは見習いのようなものなので討伐依頼は受けられません。ここまではよろしいですか?」
 「はい、大丈夫です」
 「冒険者ランクは最高Sランクまでございますが、Sランクの冒険者はこの国に数えるほどしかおりません。基本的にAランク以上に上がることはほぼ皆無と考えていただければよろしいかと……そしてA、Bランクに上がるためにはギルドの審査がございます」
 「審査ですか……」

 上がれる気は全くしないけどね……

 「A、Bランクつまり上位ランカーですね。上位ランカーになると指名依頼が発生するのでそれを任せることができるかの審査ということになります」

 ああ、いくら強くても信頼がおけない人に指名依頼は任せられないってことか……問題のある人を昇格させてしまうとギルドの信用問題に関わるんだろうな。

 「ちなみにA、Bランクに上がると依頼の報酬や素材の買い取り料金に上乗せがあったり、ギルドと契約の宿や食事処などで割引も受けられます……ギルドで働くことも可能ですよ」

 おや?……ということはカーラさん、上位ランカーだったりして?

 「あちらの掲示板に依頼書が貼ってあります。依頼にはさまざま種類があるので気になるものがあれば、受付で受けたい依頼を申請して開始となります。あとは魔物の討伐依頼の場合、討伐証明はギルドカードに自動的に記録されますので討伐部位などは必要ありません。ただ、討伐した魔物が常設依頼などの場合もございますのでこまめに確認することをお勧めします」
 「はい」
 「素材の買取はあちらの買い取りカウンターまでお持ちください。基本的にどちらの受付でも依頼報告が可能ですが……ほとんどの方が買い取りがあるときは買い取りカウンター、護衛依頼など報告のみの時はこちらのカウンターと分けていらっしゃいます」
 「ありがとうございます。参考にさせてもらいます」

 討伐証明がギルドカードへ記録されるようになったのは過去に大々的な偽装があったとかで、この仕組みで誤魔化せなくしたってことらしい。 
 いや、だから……その能力をトイレにも活かしてくれたらいいのに。

 最後に渡されたカードはよくあるポイントカードぐらいのサイズの透明な板だった。カードには小さく〔G〕と透かしが入っている。

 「ギルドなどに設置してあるプレートの上に置くと依頼内容や討伐記録などが表示されますので、確認したい時などに試してみてください。説明はこれで以上となりますが質問などはよろしいですか?」
 「はい、たぶん大丈夫です。ありがとうございました」
 「いえ、わからないことがあればいつでも聞きに来てくださいね」



 
 早速、依頼書が貼られている掲示板を見てみることにする。
 依頼はわかりやすいようにある程度同ランクにまとめて貼られていた。
 ほとんどがEランク以上の依頼しか貼っていないなぁ……一応受けられるけど、初めてやるならGかFランクの依頼がいいな。
 Gランクはお使いやお手伝い程度のものしかない……見習いらしいから仕方ないけど、せっかくなら冒険者っぽいものを受けてみたいなぁ。でも討伐依頼は受けられないって言ってたっけ……そもそも受けないけどね。

 「おっ、これならいいかも」

 掲示板を隅々まで目を凝らし、ようやく見つけた依頼書は

-----

 【薬草の採取 ランクF 体力草 10本につき銅貨5枚 最低20本~ 】

-----

 依頼書にはわかりやすく、薬草の絵が描いてあった。

 「とりあえずこれ、やってみようかな。探すならしっかり特徴覚えとかなくちゃ」

 依頼書の絵を目に焼き付けてから、再び受付の列に並ぶ……
 ここの受付ってさ、中央に1列に並んで空いた受付に次の人がいくって感じなんだけど、そうなると受付してくれる人はランダムなわけで……並んでる人の中には明らかにやる気がなくなったり、もう1度並びなおそうとする人がいるんだけど、そういう人はだいたいスキンヘッドのおじさんに当たってる……なんでだろ? 頼りになりそうなのに。

 順番が来たので受付に依頼書を持っていき、先ほどのカードも提示する。
 おっ、さっきの受付の人だ。えっと……カーラさん。

 「これお願いします」
 「はい、こちら常設依頼なので期限などはございませんが、薬草が枯れてしまうと買い取り不可になってしまうのでお気を付けください。ちなみに常設依頼は依頼書を受付まで持ってこなくても受けることができますよ。あとこの部分に〔常設〕と記されていますので目印にしてくださいね」

 あー、いちいち張りなおす手間を考えたらそうだよね……あ、ほんとだ。依頼書の隅に〔常設〕ってあった。

 「わかりました。ちなみにこの薬草ってどこで採取できるか教えてもらうことは可能ですか?」
 「こちらは、街の北門外の草原で採取できますよ。頑張ってくださいね」

 かわいらしい笑顔で送り出され……あー、並びなおしてた人はこの笑顔が目的だったのかなと納得しつつ草原を目指す……

 そうそう、門に入る時のチェックは割と厳しいんだけど街から出るときは特にチェックしないみたい。さすがに怪しい人には声かけるらしいけど。

 さっきの強面な門番さんのいた門は西門らしいんだけど……北門でも木札を返すことができるか聞くと問題ないとのことなのでしっかり銀貨返却してもらったよ。お金って大事だもんね。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

巻き込まれた薬師の日常

白髭
ファンタジー
商人見習いの少年に憑依した薬師の研究・開発日誌です。自分の居場所を見つけたい、認められたい。その心が原動力となり、工夫を凝らしながら商品開発をしていきます。巻き込まれた薬師は、いつの間にか周りを巻き込み、人脈と産業の輪を広げていく。現在3章継続中です。【カクヨムでも掲載しています】レイティングは念の為です。

3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜

I.G
ファンタジー
神様と名乗るおじいさんに転生させられること3521回。 レベル、ステータス、その他もろもろ 最強の力を身につけてきた服部隼人いう名の転生者がいた。 彼の役目は異世界の危機を救うこと。 異世界の危機を救っては、また別の異世界へと転生を繰り返す日々を送っていた。 彼はそんな人生で何よりも 人との別れの連続が辛かった。 だから彼は誰とも仲良くならないように、目立たない回復職で、ほそぼそと異世界を救おうと決意する。 しかし、彼は自分の強さを強すぎる が故に、隠しきることができない。 そしてまた、この異世界でも、 服部隼人の強さが人々にばれていく のだった。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール
恋愛
会社帰り、駅までの道程を歩いていたはずの北野 雅(36)は、いつの間にか森の中に佇んでいた。困惑して家に帰りたいと願った雅の前に現れたのはなんと実家を模した家で!? 自身が願った事が現実になる能力を手に入れた雅が望んだのは冒険ではなく、“森に引きこもって生きる! ”だった。 果たして雅は独りで生きていけるのか!? 実は神様になっていたズボラ女と、それに巻き込まれる人々(神々)とのドタバタラブ? コメディ。 ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています

処理中です...