3 / 120
第1章
3.女神見習い、爆誕?(3)
しおりを挟む「そうだっ」
廊下に人の気配がなくなったのを確認し、面倒な編み上げサンダルを履き直してそーっと辺りを伺いつつ部屋を抜け出し……トイレへダッシュ。
忍び足で部屋に戻り、体がベタついて気持ち悪かったため試行錯誤しつつ、さっと汗を流し、ベットに腰を下ろす。
「ふぅ……疲れた。女神様に今後のこともどうしてこうなったのか。とか色々と聞きたいけど、どうやすれば連絡取れるのだろうか?」
すると突然、目の前に透明な板のようなものが現れ……さらにその画面に【交信】と浮かび上がってきた。
「そういえば今日、加護や回復魔法ってどうやって使うのかな? って考えた時もこんな感じだったっけ……」
あの時はいっぱいいっぱいで余裕がなかったから助かった! なんとかなるかも。って飛びついた記憶があるけど、冷静に考えたらおかしな話だよね……まあ、私がここにいることを考えたら不思議でも何でもないか。
「それはともかく【交信】ってなんだろう?」
------
【交信】
神やその部下(眷属)との連絡手段として使用できます。
ただし、相手と連絡先を知らなければ使用不可。人間相手には使用不可。
------
「おお、説明出てきた」
試しに「女神見習いとは?」とつぶやいてみた。
------
【女神見習い】
女神の代わりに仕事を代行する存在。
女神ができることは多少劣るもののある程度、使用可能。
魔法レベルが上がれば上がるほど本物の女神に近い効果が出るようになる。
------
「これ、便利機能っぽいな?」
何回か試すうち、声に出す必要はないようで、例えば女神見習いについて知りたい場合には……
『女神見習い 調べる』
『女神見習い 検索』
『女神見習い 参照』
『女神見習いとは?』
『女神見習いって何?』
すべて試した結果、問題なく辞書のように詳細が表示されたので特定するワードさえあれば基本的に何でもいいのかもしれない。
しかも、タッチパネルみたいに触れることもできた……が、人前では不審者になりかねないので十分気を付けた方がいいかも。
ある程度のことはこの画面でわかるようなので、できる限り活用していこうっと。
「あ、もう。また忘れるところだった。女神様に聞きたいことが山ほどあるのに」
------
【交信】
連絡先一覧
《慈悲の女神 フィラ》
《慈悲の女神部下 コルド》
《慈悲の女神 フィラ》を選択しますか?
[はい] [いいえ]
------
「えーっと……[はい] これでいいのかな?」
本当にこれで連絡できるの? それに会ったことないけど知り合いってことでいいのか……
『はぁ~い。女神様ですよ~。見習いちゃんなかなか使いこなしてるね~』
おっ、すごい! ちゃんと連絡できたっ!
ただ頭の中で声が響いているのはちょっと違和感あるね……
「女神様、あのどういうことですか? きちんと説明してほしいんですけどっ。それになんで私が女神見習いになったんですか?」
『まぁまぁ、見習いちゃん落ち着いてよ~。はい! 説明するよ。え~っとね……コルドが「女神見習いでもいれば仕事が楽になるかもしれないのに」って言ってたからそれ採用してみた。えへっ、私って部下思いだよね~? それで適当にくじ引きしてみたらあなたが当選者たっだの~。でもね、せっかくあなたを女神見習いにしたっていうのにコルドったら全然喜んでくれなかったの~「私の仕事を減らすどころか余計な仕事が増えただけです」かいうのよぉ』
まさかのくじ引きですか……運がいいんだか悪いんだか……
「それで、私はこれからどうすればいいんでしょうか?」
『う~ん、それはわかんないよ~。さっきはしっかり女神様してねって言ったけどアレ強制じゃないから~。無理して私の代わりはしなくておっけ~ってことでよろしくねぇ。とりあえず私はまだまだ降臨しないつもりだし好きにしたらいいよ! うん! 全部、見習いちゃんに任せるね~。困ったら部下のコルドに連絡してね~じゃあね~』
「えっ、ちょっ、ちょっと待って! まだたくさん聞きたいことがっ。それに女神を絶対やる必要ないんだったらさっさと元の世界に返してくだ……あっ、切れた」
全部任せるわ~って、女神様放り投げすぎ……はぁ、なんか一気に疲れが……なんの解決にもなかってないし。
------
【交信】
《慈悲の女神 フィラ》との交信を終了しました。
------
「へぇ、お知らせ機能までついてるんだ……でも【交信】て傍から見たらひとりでぶつぶつ話してちょっと不審者ぽいな」
【交信】するときはなるべく人気の少ないところでしようと心に決めた……するかわかんないけど。
「ん?」
-----
【交信】
《慈悲の女神部下 コルド》から交信されています。
[はい(許可)] [いいえ(拒否)]
------
「選べるんだ。 [いいえ]とか押してもいいのかな?」
なんかさっきの女神様ならやりかねないような気が……
容易に想像できてしまい、苦笑いを抑えつつ、画面の[はい]を押す。
『先ほどは大変失礼いたしました。改めまして、わたくし女神様の部下をしておりますコルドと申します。まさかわたしが呟いたひと言を女神様が実行なさるとは夢にも思わず……エナ様にはご迷惑をおかけして申し訳なく思っております。女神様には後でしっかり話しておきます』
部下のコルドさん、心なしか声が疲れている気がする……苦労が絶えないのかな?
まあ、コルドさん私にとっては女神様の次に元凶とも言える存在なんだけど……なんかコルドさんを責めるのもお門違いな感じがするんだよねぇ。
「いえ……コルドさんが止める間も無かったようですし、仕方ないというかなんというか……ところで、先ほど女神様には好きにすればいいと言われたのですが、本当にそれでいいんでしょうか? それともうひとつ、私は元の世界に戻ることは可能なんでしょうか? 女神様に質問する前に【交信】が切れてしまったので」
『女神様がそう仰ったならば、エナ様好きにしていただいて結構です。ただし、こちらの世界の法に触れない程度にお願いいたします。基本的にはエナ様のいらした世界よりも法規制は緩いので元の世界でしてはいけないことはしない。程度で大丈夫です。そして、エナ様が元の世界に戻れるかどうか。ですが……なにぶんわたしの権限外でして……これからこちらで詳しく調べて何か分かり次第報告ということではいかがでしょうか。それまではこちらの世界で過ごしていただきたく……』
すぐに元の世界に帰れるかもしれないというわずかな望みかけて質問してみたけれど、答えは何とも微妙なものだった。なんにせよ、時間がかかりそう。
「……わかりました。ありがとうございます。またご連絡しますね」
落胆が隠せなかったけど、仕方ない。仕方ないったら仕方ない……
『わからないことなどがあればステータスプレートや心眼で調べてみてください。それ以外で質問や困ったことなどあればいつでもご連絡ください。それでは失礼します』
------
【交信】
《慈悲の女神部下 コルド》との交信を終了しました。
------
ステータスプレートってさっき出てきた板と似たようなものだよね? 一応確認しておこう。
「ステータス……やっぱ出てきた!」
------
【ステータス】
種族:女神(見習い)/人族
氏名:エナ・ハヅキ
状態:通常
体力:20/230
魔力:48770/55000
運:75
スキル
・火属性魔法レベル1
・水属性魔法レベル1
・風属性魔法レベル1
・地属性魔法レベル1
・光属性魔法レベル1
・回復魔法レベル3
・状態異常無効レベル1
・接触防衛レベル1
・火属性耐性レベル1
・水属性耐性レベル1
・風属性耐性レベル1
・地属性耐性レベル1
・光属性耐性レベル2
・闇属性耐性レベル2
・体力自動回復(中)
・魔力自動回復(大)
・成長経験値上昇(大)
特殊スキル
・女神の祝福レベル3
・女神の浄化レベル2
・女神の調合レベル1
・女神の心眼レベル1
・女神の聖域レベル1
・言語翻訳
・感謝ポイント〈106ポイント〉
ー称号ー
巻き込まれし者・当選者・女神見習い
ー加護ー
慈悲の女神フィラの加護・慈悲の女神の部下コルドの憐憫
その他機能【交信】【履歴】
-------
「魔力多っ! それにやたらスキルがあるんだけど、これって普通なのかな? 絶対使いこなせないよ……」
気になったところはとりあえずタップ!
火魔法レベル1《火》となっている。
もう一度タップすると詳しい説明が表示された。そのほかにもイメージ次第でかなり自由が利く様子。
「あー、使える魔法がわかるのか……便利だね。それにしてもなんで既にレベルが上がってる魔法があるんだろ?さすがに1日で上がらないよね……」
コルドさんの言っていた心眼というのは特殊スキルの女神の心眼というもののようだ。
アイテムの名前や効果、人物の詳しい情報を調べられるみたい。かなりレベルに左右されそうだけど。
次に【履歴】を確認してみると……
-----
使用者登録完了【エナ・ハヅキ】
初期設定より一部女神仕様に変更し、補正が入ります。
【交信】
連絡先一覧
《慈悲の女神 フィラ》
《慈悲の女神部下 コルド》
ー履歴ー
【女神の知識】が付与されました。
【感謝ポイント】1ポイント獲得しました。
【感謝ポイント】2ポイント獲得しました。累計 3ポイント
【感謝ポイント】1ポイント獲得しました。累計 4ポイント
【感謝ポイント】1ポイント獲得しました。累計 5ポイント
【感謝ポイント】1ポイント獲得しました。累計 6ポイント
【感謝ポイント】1ポイント獲得しました。累計 7ポイント
【感謝ポイント】1ポイント獲得しました。累計 8ポイント
【感謝ポイント】2ポイント獲得しました。累計 10ポイント
【感謝ポイント】1ポイント獲得しました。累計 11ポイント
【感謝ポイント】3ポイント獲得しました。累計 14ポイント
【感謝ポイント】1ポイント獲得しました。累計 15ポイント
・
・
・
-----
その後もずらっと主にポイント獲得の履歴が続いていた。
どうやらこの【女神の知識】っていうもののおかげで検索とかできてたみたい。
それに、最初からレベルが上がった魔法があるのを不思議に思ってたけど、履歴にある一部女神仕様に変更ってとこで女神として最低限、加護や回復魔法が使えるように補正がかかったのかな……
うん、女神なのにそこらの人より魔法が使えないんじゃ目も当てられないしね。
「【履歴】をずっと見てたら、なんか目がチカチカしてきた……時々確認する程度でいいや」
0
お気に入りに追加
305
あなたにおすすめの小説
【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜
ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった!
謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。
教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。
勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。
元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。
力を持っていても順応できるかは話が別だった。
クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。
※ご注意※
初投稿、試作、マイペース進行となります。
作品名は今後改題する可能性があります。
世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。
旅に出るまで(序章)がすごく長いです。
他サイトでも同作を投稿しています。
更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。
家の猫がポーションとってきた。
熊ごろう
ファンタジー
テーブルに置かれた小さな瓶、それにソファーでくつろぐ飼い猫のクロ。それらを前にして俺は頭を抱えていた。
ある日どこからかクロが咥えて持ってきた瓶……その正体がポーションだったのだ。
瓶の処理はさておいて、俺は瓶の出所を探るため出掛けたクロの跡を追うが……ついた先は自宅の庭にある納屋だった。 やったね、自宅のお庭にダンジョン出来たよ!? どういうことなの。
始めはクロと一緒にダラダラとダンジョンに潜っていた俺だが、ある事を切っ掛けに本気でダンジョンの攻略を決意することに……。
神様のミスで女に転生したようです
結城はる
ファンタジー
34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。
いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。
目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。
美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい
死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。
気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。
ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。
え……。
神様、私女になってるんですけどーーーー!!!
小説家になろうでも掲載しています。
URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」
異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ
トール
恋愛
会社帰り、駅までの道程を歩いていたはずの北野 雅(36)は、いつの間にか森の中に佇んでいた。困惑して家に帰りたいと願った雅の前に現れたのはなんと実家を模した家で!?
自身が願った事が現実になる能力を手に入れた雅が望んだのは冒険ではなく、“森に引きこもって生きる! ”だった。
果たして雅は独りで生きていけるのか!?
実は神様になっていたズボラ女と、それに巻き込まれる人々(神々)とのドタバタラブ? コメディ。
※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています
巻き込まれた薬師の日常
白髭
ファンタジー
商人見習いの少年に憑依した薬師の研究・開発日誌です。自分の居場所を見つけたい、認められたい。その心が原動力となり、工夫を凝らしながら商品開発をしていきます。巻き込まれた薬師は、いつの間にか周りを巻き込み、人脈と産業の輪を広げていく。現在3章継続中です。【カクヨムでも掲載しています】レイティングは念の為です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる