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16 学校にて その1
しおりを挟む「おはー」
「ギリギリせーふっ!あ、おはよー」
「あのさ……」
キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン……
茉由ちゃんにいろいろと話を聞こうと思ってたら茉由ちゃん、遅刻ギリギリで話す暇がなかった。
きっと朝も『Select Life Online』にログインしてきたんだよ……この前もそうだったからね。
「あ、ごめん!お昼に『Select Life Online』のことたっぷり話そうね!」
「りょーかい」
「根掘り葉掘り聞くから覚悟しといてよ!」
「はいはい……あ、茉由ちゃん先生来たよ?」
その途端、茉由ちゃんが優等生に変身した。その身の変わりようすごいね。
茉由ちゃんはゲームに夢中になりすぎて成績を落とした場合、お母さんから1週間のゲーム禁止令が出てるらしい。1週間ぐらい大したことないように思えるかもしれないけど、『Select Life Online』のなかでは半月以上経過しちゃうから大問題なんだって……
だから茉由ちゃんは授業中、ものすごい集中力を発揮し必死に頭に入れてテスト勉強しなくていいように頑張ってるらしい……テスト勉強の時間すらゲームに費やしたいんだとか……最近は学校でしか会えてないし、きっとお家ではずーっとゲームにログインしてるんだと思う。
わたし?可もなく不可もなくだよ?時々、宿題を忘れちゃうから帰ってすぐにするようにしたら忘れなくなったんだー。
・
・
・
「さ、すべて吐いてもらおーか」
「え?まだ食べてないから無理だよー」
「いや、そっちの吐くじゃないから!それは勘弁してくれ、まじで」
「わかってるよー」
お弁当を広げ……いただきまーす……もぐもぐ。
「そういえば由莉奈知ってる?掲示板で最後のゲームを手に入れられなかった人たちの嘆きがすごくて、スレが加速したらしいよ」
「掲示板……あー、ゲームの?」
「そうそう。あの掲示板ってさゲームのアカウントを作ってる人しか書き込めないんだよ?」
「ん?どういうこと?」
「由莉奈も説明の時にアカウント作ったでしょ?だから事前準備は完璧なのにゲームが手に入ってないってこと」
「そ、そうなんだ……」
「そういえば、スレに由莉奈のこともちょっと載ってたよ」
「え、なんて?」
変なことじゃなきゃいいなー……
「うん……福引でゲームを当てた子は1等のタラバ蟹目当てだったとか、転売防止のための登録が怪しいとか言って友だちに電話してたとか……ぷっ」
「なんで笑うのさー……茉由ちゃんもちょっと登場したねー」
あー、だめだ。茉由ちゃんは笑い出したらしばらくはおさまらない。うん、無視してご飯食べよーっと。
「はぁ……疲れた。で、なんかその人たち降臨した運営をあの手この手で質問に攻めしてとりあえず次の発売は決まっていないとか、サーバーを分けるかどうか、国内外への発売へむけ調整するらしい。とか情報ゲットしたみたいだけど……その情報にがっかりしたみたいよ?」
「あー……ゲームがすぐに手に入らなそうだからだね」
「うん、本当由莉奈ってついてるよねー」
「え、全然ついてないよ?ゲームだって荷物が増えて持って帰るの大変だったんだから!」
「あ、そう……」
ううー、茉由ちゃんの目が冷たい……
「で、ゲームはどんな感じ?」
「んー……職業は農家にしたよー」
「え、なんで?由莉奈のことだから服飾系にするかと思ってた」
「えっ?だって畑と家が貸し出されるって聞いたから……スキルは裁縫とったけど」
あれ、茉由ちゃんが固まった……もぐもぐ……
「……は?なにそれ?」
「ははーん、さては茉由ちゃんサポート担当の人の話聞いてないなー?」
「あー、キャラメイクの?ほぼ飛ばしたなぁ?」
「うんうん、だと思ったよー……わたしの担当はとっても可愛い妖精さんのナビさんだったんだけど、色々と教えてくれたんだ。みんな話を聞かずに飛ばすから聞かれないと説明できないこともあるんだってー」
「へー、そんな隠し要素があったんだ……ゲームを早くはじめたくてほとんど覚えてないや」
「うん、ほらチュートリアル終了の記念品あったじゃん?」
「うん。ハイポーションとマナポーションと1000Gだね」
「そうそれ!最後まで話を聞いたおかげでアイテムボックスの容量を大きくしてくれてね、さらにプレゼントももらったんだよー」
あれれ、また茉由ちゃん固まっちゃったよー……もぐもぐ。
「……は?アイテムボックスの容量ってふやせるものなの?」
「ん?ナビさんはギルドなどで簡単に増やせますから気にしないでくださいって言ってたけど……増やせないの?」
「うわー、なにその新情報!これ知り合いに教えてもいい?」
「それはいいけど、詳しいことは全然知らないよ?」
茉由ちゃんはご飯も食べず考え込んでいる。いらないならわたしが食べようか?
「いや、やっぱ情報屋に売るわ……で、その代金は由莉奈にあげる」
「え、だったら半分こしようよー」
「でも……」
「だって茉由ちゃんがその情報売らなかったらゼロなんだし……わたし、情報屋さんに会ったことないから売りようもないし、ね?」
「うー、わかった。兄貴を巻きこんで色々検証してから売ることにする。その方が高く売れるし……他に知ってることは?」
しゅーへいくんそういうの好きそうだもんねー。他に知ってることかぁ……
「あ、そうだ!今、出荷済みの『Select Life Online』に1番最後にログインしたらしくて称号もらったんだー」
「はぁ、もう驚かないぞ……どんな称号なの?」
「遅咲きのラッキースターって名前で賞金7777Gとログイン時キャラクターメイキングの初期ポイントが倍になって……LUCが777で固定されたのとー、NPCの友好度が上がりやすくなるだったかな?」
「……へー。結構すごいね。LUCが高いとモンスターや宝箱からのレアドロップが増えたり、的中率が高くなったりするらしいよ」
「へー、そーなんだ」
あれ?わたし投擲全然上手くないんだけど……的中率が上がってアレなの?がーん。
「ま、そのLUCは異常だねー。1部の極振りの人ぐらいしかいないんしゃない?」
「ほー……」
「てか、キャラクターメイキングの初期ポイントが倍ってすごい羨ましいんだけど!こっちは考え抜いたスキル構成なのにもうすでにポイントが足りなくて困ってるんだから!」
「へー……あ、そうだ!もういっこ称号ゲットしたんだけど、確かスキルポイント3ポイントもらえたよ?」
「まじ?それ誰でも取れる称号?」
「うん。ゲーム内時間の1日に5回以上死に戻れば称号ゲットだよ!」
「へー」
なんだよー……そんな生暖かい目で見て。そうですよー。わたしははじまりの街のよわよわのモンスターも倒せないですよーだっ。
「称号は挑戦者って名前で、スキルポイントが3ポイントもらえて、HPとMPに+5、1日5回まで死に戻ってもアイテムをロストしなくなるだったかなー?あ、でもデスペナは変わらずにあるから気をつけてね?6時間の能力値半減と所持金の2割ロスト、1日に3度以上死ぬとその日はアイテムもロストするようなるだっけ?まあ、わたしは称号のおかげで1日5回までアイテムロストしなくなったけど……」
「ねぇ……それもキャラメイクの時に教えてもらったの?」
「うん、そうだよー。ナビさんに聞いたんだよ」
「はぁ……苦労して特定した検証班の意味」
なんか茉由ちゃんがしょんぼりしちゃった……
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