目覚めたら7歳児でしたが、過酷な境遇なので改善したいと思います

瑞多美音

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第2章

24 強面おにーさんがやってきた!

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 「……ひっ!」
 「ん?」
 「うぉっ」
 「……んん?」

 わたしが瞑想をはじめたと思ったら……なんだか、周囲が騒がしい。
 目を開け、みんなをみると……みんなはひとかたまりになっていた。なにごとっ?
 えーっと……みんなの視線は出入口の方に固定されてる……ん?

 「おお、カベができてる!」

 というのは、嘘で……

 「ひとがカベにうまってる!」

 というのも、嘘で……部屋の入り口に立ちふさがるひとがいた。

 「メリッサ、ひとりでふざけてないで」
 「メリッサちゃんこっちにきて」
 「はーい」
 「お主、誰かに会いにきたのかのぉ?」
 「……ああ」

 あの巨体、首に見える模様……それに、毒草の混じった腰簑に不格好なわらじ……わたし、知ってるな。
 全然、中に入ってこないけど……遠慮してるのかな?

 「ね、ねぇ、メリッサちゃん……あ、あのひとって」
 「うん」

 フランカお姉ちゃんは気づいたみたい。他のみんなはなんだか、警戒してるね?
 そりゃ……薄暗い中、頭のない体が入り口にあるとか普通に怖いか……ただ、でかくて顔が入り口より上にあるだけなんだけどね。

 「こわもておにーさん!」
 「強面?」
 「おにーさん?」
 「……入ってもいいか?」

 おばばさまはわたしを見た。

 「メリッサ、こやつ……入れても平気かい?」
 「ん?なんで?だめなの?」

 そこで……自由時間は見張りに見つからなければうろうろできるという事実をはじめて知った。
 おばばさまは言葉を濁していたけど……どうやらその時間、物陰で子作りしてることも多いみたい……奴隷の数を増やさせるためにあえて見逃されているともいう感じかな。だから、自由時間にうろうろできると子どもには教えられていないのか……

 うろうろしてもよかったなんて知らなかった!……そう知っていれば朝の自由時間に雑草採取できたのに!夜は薄暗いし草の見分けが難しいからあんまり関係ないけど……

 
 いわゆる夜這いに来たのではと警戒していたらしい。
 ああ……通りでグウェンさんとおばばさま、マイケルじいちゃんがわたしたち……主にマチルダさんとフランカお姉ちゃんのことをかばうように移動したのはそういうことか。
 で、わたしが入り口にいる人物を知っているようなので、入れてもいいか聞かれたと。

 「んー……よばいならおことわりします!」
 「……違う」
 「ちがうってー!それならわたしは入れてもいいとおもうけど、みんながいやならやめとく?」

 その間も律儀に待つおにーさん。うん。今は顔を見せないほうが懸命かも……見せたら強面に警戒されて入れてもらえないかもね?

 「だ、大丈夫だと……お、思います」
 「メリッサちゃんとフランカちゃんがそう言うなら私も問題ないわ」
 「そうかい……入っていいよ」
 「ただし、入り口で止まれよ!」
 「……失礼する」

 そうして、入り口をくぐり入ってすぐのところで立ち止まったんだけど、暗さと相まって強面が強調されている……あ、マチルダさん。入れていいっていったのちょっと後悔したね?

 「おや?お主……ロランか?」
 「む……まさか、マイケルさん?」
 「おおー!でっかくなったの!だが、面影はあるの!」
 「マイケル、知り合いなのかい」
 「うむ!生まれた時から知っておる!儂も子育てに参加しておったわ」
 「へぇ……」

 強面おにーさんもなんだか、嬉しそうだ……

 「な、なんだか大丈夫そうですね」
 「ええ」

 マイケルじいちゃんの知り合いだとわかり、やっと緊張が少しほどけたようだ……

 「こやつはの……」

 ふむ。マイケルじいちゃんの話を要約すると……

 マイケルじいちゃんはかつて、魔石班に所属していた。
 その部屋には強面おにーさんの両親もいて……そのうち強面おにーさんを身ごもった。
 その頃はまだ、養育班などなく部屋のみんなで育てていた時代。部屋のひとの妊娠は他人事じゃなかったとか……わりと良好な関係だったことでみんな協力的だったとか。
 しかし、強面おにーさんのお母さんのフランさんは出産後すぐに亡くなってしまった……今よりもっと出産は命がけだったみたい。

 「それで、部屋のみんなでこやつを育てたんじゃ!」
 「へぇ……」

 強面おにーさんが幸いだったことといえば、お母さんが亡くなったのは強面おにーさんが隷属の儀式を受ける前だったので、隷属の魔方陣は受け継がなかったことらしい。
 

 「うむ。両親から名前だけでなく容姿も受け継いだんじゃの……よく似ておるわ」
 「……そうですか」
 「ローマンはどうしておる?」
 「……魔石1班に」
 「おお、一緒におるか!それはよかったのぉ」

 十数年前、養育班などができた頃、奴隷たちも魔力量や体格などで仕事の班など大幅に移動させられた時、マイケルじいちゃんも違う班になったんだって。
 強面おにーさんはその頃から体格がよかったが、魔力量が奴隷のなかでもトップクラスだったため、魔石班のまま残ったらしい。

 「懐かしいのぉ……」
 「はい」

 で、結局何のためにきたんだろ?

 「そっかー……わたしメリッサです。よろしく」
 「……ロランだ」
 「俺はグウェンだ!」
 「どうも」

 それぞれが自己紹介を終え……

 「で、ロランさんは何しにきたの?」
 「……これ」

 ロランさんが差し出したのはカビの生えていないきれいなパンだった……

 「こ、こここれって!食べ物?」
 「ああ。雑草を食べてるみたいだったから……」
 「でも、魔石1班のひとが困るんじゃないかい?」
 「そうじゃ!」
 「……いや。うちの部屋、人数少ないわりに食料が多いんだ」

 な、なんだってー!!あ、わかった!見張りもビビって食料減らしてないとか?

 「それに、このサンダルとか色々気になった」
 「ほぉ……じゃ、そのパンはみんなでありがたくいただくとするぞ」
 「ああ」

 うわ、パンの固さまで違う気がする……もぐもぐ。
 どうやら、いろいろ教えたので会いに来たらしい……雑草食べてるのも心配されたみたいだけど。
 死にかけの場所は有名だし、受け渡し会場で見張りに名乗っているのを聞いていたのでわかっていたみたい。

 「あー、おいしかった!ありがとう、ロランさん!」
 「……いや。それが本来の姿か?」
 「ん?」

 本来ってなんだ?いつもこうだけど?

 「ほ、ほら……メ、メリッサちゃんいつも見張りにあ、怪しまれないようにあ、あほの子のふりしてるからじゃないかな?」
 「「「「あほの子……?」」」」

 あー、そうだった!

 「あれは、みはりの目をごまかすためのフリだよ!」
 「そうか……よかった」
 
 ふぅ……誤解は解けたようだ。

 「そうだ!あのね、たしかに雑草もたべるけど、この草はべつ!ポーション草なの!」
 「……ポーション草?」

 部屋にあったポーション草をみせつつ説明する。

 「うん、このギザギザした赤い葉がとくちょうなんだけど、ポーションのざいりょうになる草なの!これを魔石でごりごりして飲むとこうかあるの」
 「そ、そうか……」
 「見た目は悪いし、味も不味いが効果はあるぜ!」
 「そうね」


 実はポーション草をゴリゴリする用の魔石をひとつくすねたのは大分前のことだ。自由時間にポーションもどきを作るとなるとどうしても必要だったのだ。普通の石で作って効果がなくなるのも不安だったので……見張りには全くバレなかった。
 毎日、ノルマチェックで余剰分がかなりあったので大丈夫だとは思っていたけど、わたしの拳サイズはバレそうな気がして全体の真ん中くらいの大きさのものだ。

 「あとそれ、サンダルじゃなくてわらじっていうの!すごいね!見ただけでつくれたの?」
 「わらじ……ああ。これは父が面白がって」
 「ほう!ローマンが!」

 へえ!ロランさんのお父さんが作ったんだ……面白がって?珍しくてってことかな?

 「その、わらじ……メリッサは精霊のお導きで知ったそうだよ」
 「……精霊のお導き?」
 「そう!そのくびのもようも精霊の加護のしるしだって!」
 「……精霊の加護?」
 
 マイケルじいちゃんが嬉しそうにロランさんに精霊について教えはじめた。ところどころ説明が足りていないところはおばばさまがカバーしている……
 ロランさんはなんとなく精霊について理解したようだ……

 カーン、カーン……カーン、カーン……カーン、カーン……
 カーン、カーン……カーン、カーン……カーン、カーン……
 あ、就寝時間……
 
 「もう、そんな時間か……あっという間じゃったのぉ」

 マイケルじいちゃんは名残惜しそう……

 「また、くる……」
 「そうか!」
 「はーい!よばいじゃ……」
 「ない!」

 そう言うとロランさんは自分の部屋へと帰っていった……

 「……あいつ、顔で損するタイプだな」
 「グウェンさんもね……」
 「俺?俺は損なんかしてねえぞっ!」
 「……そう」


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