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第1章
13 みんな意外と勇気あるね?
しおりを挟むそうだ!よいしょっと……
「おばばさま……これとかこれはたべれる?」
ぼろ布に包んで隠し持っていた雑草たちをおばばさまの前に広げていく。じゃじゃーん!
「うーん、どれどれ……子供の頃の記憶だからねぇ」
「ちょっと、俺にも見せてみな!」
「うん」
どうかな?食べられるものあるかな?わくわく……
「これは食べたことあると思うね」
「お、これは俺もあるぜ!あー、でもこっちは毒草だな……食べたら数日は腹痛で苦しむぞ。あとこれも口にするとしばらく痺れるはずだ」
「そ、そうなんだ……」
ふむふむ。おばばさまとグウェンさんのチェックの元、いくつかのものが食べれることがわかった。そして毒草も……中にはわたしが普通に食べていたものも含まれていた。さっきも無意識でむしゃむしゃしてました……全然お腹もいたくないんですけど。
そもそも、全部食べれると思って持ってきたのに半分くらいは食べちゃいけない草だったなんて地味にショックだ……お腹がいたくなるという草を食べても全然平気だったし、口にすると痺れる草はピリピリしてて、味はマシな方だと思ってたのに……
ふぅ。みんなにむやみやたらに雑草わけなくてよかった。
「あ、でもこれは火を通さないとえぐ味がすごいはずだよ」
「まー、食えねぇことはないけどな」
「でもたべたら、ちょっとはおなかもふくれるし、えいようもあるよね?」
「……えいよう?はなんだか知らないけど、食べないよりは腹が膨れるかもしれないね」
「まぁ、食わないよりは膨れるわな」
そっか、栄養とかの概念はないのか……お腹が膨れるかどうかの方が重要かぁ……
「というかメリッサよ……なんでこんなに雑草を集めたんじゃ?」
「た、確かに。き、今日頑張って集めてました」
「ん?前のへやのときからときどきたべてたから?」
「「「「「え?」」」」」
そんなに驚くことかな?
「それは、前の部屋で食事を分けてもらえなかったとか、そういうことかしら?」
え、マチルダさんなんか怒ってる?ほかのみんなも眉間に皺寄せたりしてどうしたんだろ?
「ううん、ちゃんともらってたよ?でも、おなかすくからむしってたべてたの」
「そ、そう……」
「あれもひじょうしょくにつんできたの!」
「雑草が非常食……」
みんなのために自分の分を減らそうとしたとは知らせない方がいいような気がして、とっさに非常食にしてしまった。間違ってはないか。
気まずい空気が流れるなか雑草の仕分けを再開……ほ、ほらほら、まだあるよー?
「おおっ!こいつはすげぇぞ!」
「んー、それかい?私は知らないねぇ……」
「おう!これは俺たちが森で採取してたもんだ!」
「え、えっと……わ、私も見たことあるような気がしますっ」
グウェンさんが指差したのはギザギザした赤い葉が特徴の草で、他の雑草に埋もれるように生えていたものだ。
赤いから生えていればすぐわかるのに数が少ないのか今日はそれしか見つからなかったんだよね。
それ、珍しかったから採取したはいいものの……今まで食べた記憶はなかったし、色からして食べられるか微妙だったので、あとでほんの少しだけ食べて具合悪くならないか様子見しようと思っていたんだけど……
ちなみに、念のため雑草たちは採取後に水ですすいであるので、すぐに食べられる仕様だ。安心してくれたまえ。
「これは他に似た草がないから間違えようがねぇ!」
グウェンさんがすごく興奮している……珍しい雑草だとは思ったけど、そんなに美味しいのかな?
「えっと……それ、おいしいの?」
「美味いかどうかは知らねぇ……が!これはポーションの材料になる草らしいぞ!」
「へぇ……」
ポーションとかあるんだ……新発見。
「まぁ、採取しかしてないからポーションの作り方は知らねぇけどな!」
「ポーションか。私も知らないねぇ……」
「へぇー」
でも、せっかくあるんだから試してみたいよね。
ということで……
「よし、ポーションつくってみよう!」
「作り方はわかんねぇんだぞ?」
「うん、だからこうやって……」
まず用意しますのは、器と水。そしてポーションの草でごさいます。すりつぶすための石などがあればさらによいでしょう……今日はそこにある魔石で代用します。
ということで……器にポーションの草を入れ、水で洗った魔石でゴリゴリ……
「メリッサ……いくら石がそれしかないからって」
「そうじゃの……」
「ま、魔石は結構頑丈だしいいんじゃねーの?」
「て、手伝いますっ」
「ありがとう……でも、もうできたよ!」
すりつぶした葉っぱに水を加えて……赤茶色のドロドロのポーションもどきが出来上がった。
見るからに美味しくなさそう……
「な、なんとも言えない色味だね」
「おう……」
「うーん……のんでみる?」
当然、断られると思ったのにハワード以外は首を縦に振った。
そうか。みんなが嫌がるなら、わたしだけでも試してみようと思ってたのに……いくらポーションの材料とはいえ、草をすりつぶしたものだよ?みんな意外と勇気あるんだね。
「でも、マチルダさんものんでだいじょうぶかな?」
「そうだね。ポーションなら喜んで飲ませてやれるけど、これはねぇ……」
「大丈夫ですよ。それに、効果がもしあるなら私がいちばんに感じるはずだもの」
「そうかい」
どうやら、マチルダさんの意思は固いようだ。出来上がったポーションもどきの器をガシッと……つかんで離さない。絶対、飲むってことだね?
「う、器にわけましょう」
「そうね」
「うん」
6人でわけたらひと口分くらいの量になった。試してみるにはちょうどいいかな。
ハワード以外(ハワードはいまだに真顔で蜜をチューチューしてる)の全員が車座になって座り神妙な面持ちで……
「「「「「「……いただきます」」」」」」
一気に飲み干した……
「にがーっ!」
「うえぇ……」
「うわっ、苦げぇ……」
「……ごほっ、ごほっ」
まっず!
それぞれが苦味とえぐ味に悶えつつ、少しでも口の中の不快感をなくそうと水を飲んだり蜜をチューチューしたり……
「ふぅー……ようやく苦みが消えてきたぜ」
「強烈じゃったのぉ……」
「ええ」
今まで食べた雑草のなかでもトップクラスに美味しくなかった。
「まずかった……」
……ん?少しだけ怠さが軽減されたような気がするぞ?
「おや……効果ありかい?」
「うむ」
「な、なんか効いてるような気がしますっ」
「ええ……私も少し体調がよくなった気がするわ」
それぞれが体調や調子の悪いところがほんの少し改善したらしい。プラシーボ効果かもしれないけど、本当に効いてるのならすごいことだ……だって、たったひと口でこんなに効果を感じるならたくさん飲んだら……あ、ものすごく苦くて水を飲んでも口の中にずーっと味が残るから大量に飲んだら逆に吐いてしまうか。
難点もあるが、貴重な発見だ。
「メリッサ……これは見つけたらなるべく採ってきておくれ」
「はい!」
「メリッサ、この薬草は全部採り尽くさないよう気を付けろよ。葉を数枚残すことと根を傷つけないよう注意するんだ。そうすればまた採取できるからな!」
「わかった!」
今日、全部採り尽くさないで正解だった。味見程度に考えて採取した数時間前のわたし、ぐっじょぶ!……うん、場所もなんとなく覚えてる。
「わ、私もさ、探してみますっ!」
「2人には苦労かけるが頼んだよ」
「「はい!」」
その後、おばばさまとグウェンさんが食べられると言ったものをみんなでわけて完食……雑草かぁと若干躊躇していたけど、おばばさまの食べられるという言葉を信じ、貴重な栄養源だと食べきった。
そして、さっき不味いのを飲んだせいか普通に食べることができた。味覚が麻痺しているうちに食べたともいう……
え?……ハワード?わたしがもう花を持ってないとわかると雑草には見向きもせずに定位置に戻ったよ。なんだったんだろうね?
毒草は……残念だけどポイした。わたしは食べられるけど、みんなに心配されること間違いないから。
そこの君!真似しようなんて考えないように!
ファンタジーな今世ではたまたま問題なく食べられただけなんだからね!
専門家の指導なしに実際にやったらどうなるかわからないぞ!非推奨だぞ!
◇ ◇ ◇
それから、ポーションの材料となるこの草を見つけたときは葉を数枚残して採取し、みんなで飲むを繰り返す……とマチルダさんが起きあがっていられる日が一段と増えたのだ!顔色も少しよくなってきたし、本当によかった。
あんな適当な作り方でも効果あるなんて実はすごい草なのかもしれない。念のため魔石でゴリゴリするのも続けている……なにが効果をもたらしているかわからないからね。
唯一、ハワードだけ飲んでくれないのが残念だけど。
ちなみにポーション草(赤いギザギザの葉の草をそう呼ぶことに)はすりつぶさずそのまま食べても効果があるみたいだが、数が少ないのでみんなでわけるにはすりつぶして水を加えてかさ増しすることにしている。
そのまま食べても味は変わらないのだ……これは、ほんのわずかの量で味見したので間違いない。
これがすりつぶすことで苦味成分が溶け出して不味くなるとかならそのまま食べたのになぁ……残念。
ポーションもどきの残りかすはそれぞれが器を指でぬぐい自分の体の調子が悪い場所につけたり舐めたりしている。
わたしは主に切り傷かな……飲むより効き目は悪そうだけどもったいないし少しは効果を感じるから舐めるより塗ることが多いかなぁ。
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