目覚めたら7歳児でしたが、過酷な境遇なので改善したいと思います

瑞多美音

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第1章

8 魔石作り

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 地道にひとつずつ魔石を作っていく……意外と暇だな。
 うーん。魔石……魔力ねぇ……まずは小説でよくある瞑想とか試してみるべきかな?
 瞑想ってどうやるんだっけ?……えっーと、何も考えずリラックスしたり、何かに心を集中させることとか?だったような気がする……
 よくわからないので、とにかく無心で集中するイメージでいいかな?自己流でやっていこう!
 すでに無意識に使えているってことは、血液が流れているのが見えないのと同じで魔力も循環していたりするのかな……よし、試してみよう。

 まずは深呼吸……
 すぅー、はぁー……すぅー、はぁー……

 目をつぶり自分の心音に集中する……トク、トク……トク、トク……
 そして、魔力が血液とともに流れるイメージを意識しながら魔石に魔力を込めてみる……魔石ができた頃を見計らい目を開く……が、透き通るまでの時間が特に早くなったりはしてない様子。それに、全くといっていいほど、魔力というものを感じとることは出来なかった。
 ただ、目をつぶっていても魔石ができることは確認できた。実験の副産物だね。

 うーむ……手に持つことが重要なのか確かめるために両足の裏ではさんでみたが……魔石は無反応だった。なんだよぉ!みんなに変な目で見られただけかよぉ。
 でも、ちゃんと右手に持っていた魔石は出来上がっていたから、問題なし!

 次に小さな魔石を両手にひとつずつ握ってみる……今度はどうだろうか?

 おお?少し時間はかかったものの、魔力を込めることができたみたい。両手の魔石はきちんと出来上がっている。
 ひとつずつ魔力を込めるよりも、ふたついっぺんにやる方がほんのわずかだけど早い気がする……ちょっと疲れるけど。
 パッと見、ひとつ作るのに時間がかかってみえるけど、出来上がるのはふたつで、ひとつずつ作るよりも短時間てことは……効率的なんじゃない?……これって、新発見ではっ!

 「メリッサ、魔石を足にはさんだかと思えば……今度は両手に持って何してるんだい?」
 「あ、遊んでるわけじゃなさそうですけど……」
 「ええ。魔石はきちんと作っていたものね」

 もしかして変なことしてるけど、ちゃんと魔石は出来てるから見て見ぬふりしてたの?
 ちゃんと理由があるんだから!

 「あの……こうしたら魔石どうなるかなーってためしてみたんです!……足はしっぱいしたけど、両手にもつやつ。これはたぶんはやくなったとおもいます!」
 「「「えっ?」」」
 「早くなった?間違いじゃなくて?」
 「うん……たぶん?みんなもためしてみたらどうかなぁ?」
 「そうだね。それで魔石作りが早くなるなら、やってみる価値はあるよ」
 「そうね。試してみましょう!」
 「は、はい」
 「どうすればいいんだい?そうやって両手にひとつずつ握ればいいのかい?」
 「はい!両手にもっていつもとおなじかんじでつくれるはず……」

 みんなも魔石を両手に持って試している……あ、ハワードにも持たせてみよーっと。一応、説明してから持たせたけど、反応はないな……まぁ、ちゃんと握ってるしいっか。

 「メリッサ、本当に早くなったのかい?変わらない気がするが……ただ、両手でも作れるとわかったのは大きいかもしれないね」
 「えぇ?かわらないんですか?」
 「わ、私もあまりか、変わってないかな」

 おっかしいなぁ……わたしの勘違いだったの?まぁ……魔石作りは感覚だしなぁ。時間とかきっちりはかってないからそういうこともあるのかも……みんなに無駄な期待させちゃったかぁ……
 

 「私は少し早くなった気がするわ」
 「ほんとっ?」
 「ええ」

 間違いじゃない?じゃあ、ハワードは?

 「ハワード、もうできたの?おばばさま、やっぱりはやくなってるみたい!」
 「……そのようだね」

 なんでだろう?
 
 「もしかしたら、魔石の大きさに関係があるのかしら?」
 「確かに私やフランカは小さいものだったね」
 「は、はい」
 「おおきさかぁ」

 魔石の大きさに関係しているんじゃないかという話にはなったが、よくわからないことに違いないままだ。

 「といっても、私やフランカがこれ以上大きな魔石を担当しても逆に効率が悪いね」
 「じ、時間がかかりすぎてしまいます」
 「そっかぁ……」

 ともかくハワードには魔石を両手に持たせることが決定した。
  
 「マチルダとメリッサは無理をしない程度に試してみておくれ」
 「ええ」
 「わかりました!」
 「私とフランカも時間は変わらないけど両手に持っておこう。交換の手間が減るからね」
 「わ、わかりました!」

 はぁ……前世でもっと小説を読んでおくんだったな……どこかにヒントが転がっていたかもしれないのに。私の記憶ではなかなか思い付かないや。
 魔力か……地道に確認するしかないのかぁ。がんばろ。


◇ ◇ ◇


 先程から存在感の薄かったマイケルじいちゃんとグウェンさんはというと……
 魔石作りには参加せず、魔道具の基盤に魔方陣を刻み込む(素材によって彫りこんだりインクで描くこともある)という仕事を担当していた。

 あれ?……見張りってさ、この仕事も考慮して魔石のノルマ決めてるのかな?
 単純に部屋の人数で決めていそうで怖いが……わたしにはどうすることもできないので気づかなかったことにする。見て見ぬふりだ。

 魔道具の基盤作りというものがどんなことをするのか気になったので、両手で魔石作りに励みつつ見学……まぁ、邪魔にならない位置に座って魔石を握りながらチラチラ見たともいうんだけどね……

 ふたりは見本の模様が書かれた板(汚したり破った場合は罰がある)を確認しながら慎重に刻み込んでいる。

 「こんなの前のへやでも見たことない……」
 「そりゃ、そうさ。これは本来俺たちの仕事じゃねぇんだから」

 ん?本来ならさせない作業をさせてるわけ?

 「え?じゃあどうして……」
 「本来ならの……この仕事は奴隷が反乱などを起こす危険性があるとかで、させていなかったらしいんじゃ。だが、いつからだったか……そんなこと起こるはずないと任せはじめたんじゃよ」
 「……え、そうなの?」

 これが反乱を起こせるような代物だというの?
 見た目は様々な模様やぐにゃぐにゃした文字らしきものが組み合わさっている板だけど……物によっては比較的模様が少ないものや複雑なものなどいろいろあるみたい。

 「もちろん儂らは魔道具の基盤?らしいということは知っておるが……これになんの効果があるかわからないまま作るんじゃ。それに念のためか知らんが死にかけグループにしか任されていないようじゃがの……今のところは、の」
 「ふん。死にかけなら反乱する危険性が少ないとでも思ったんだろ。それに元々魔力が少ない俺と魔力枯渇と言われる爺さんでは万が一にでも魔方陣を起動することなどできないとたかをくくったのさ」

 ふーん。一応、この仕事を任せる人は選んでいるようだ……とはいえ、フランカお姉ちゃんも手が空けば手伝うこともあるというで、死にかけグループなら任せて大丈夫という認識なのかもしれないな……
 だから、道具の受け取りにもグウェンさんが行ってたんだね……納得である。
 というか、帝国。なんでもかんでも奴隷にやらせすぎじゃないか?
 こういうのは帝国の魔道具職人が弟子とかに教えて大事にするやつじゃないのか?
 もしくは、国が主体となって魔道具職人を育てる機関を作ったりとかしないのか?……そもそも、魔道具職人がいるかも知らないけれど、魔石がノルマになるくらいだ。いてもおかしくない……あ、あれか?それでも魔道具の数が足りないからこっちに任せてるのかも?
 この死にかけグループが国お抱えの魔道具職人ってか!確かに他の国に魔道具の秘密が漏れることはないだろうけど。なんせ、奴隷なのでね!けっ……

 「うむ。帝国は隷属の魔方陣に多大な信頼を寄せているのじゃろうな」
 「それはそうだろうな!隷属の魔方陣さえあれば俺たちなんてどうとでもできると思ってんだろ……け、胸くそわりぃ」
 「へぇ……」

 
 ちなみにこの間もふたりの手は止まっていない。
 先のとがった彫刻刀のようなもので削ったり、ノミを木槌のようなものでコンコン叩いたり……
 なにやら文字を刻み込んでいるみたいだけど、読めないなぁ。うーん?いくつかの模様が組み合わさっている気もするけど……基本的にはぐにゃぐにゃした模様だよなぁ。規則性を見いだそうと観察してみるが……形が見えるような見えないような?とにかく複雑なのだ。
 それなのにふたりは見本と寸分たがわず仕上げていく。
 見本と瓜ふたつの魔方陣が出来上がっていく様は圧巻だ。まさに職人技って感じ……わたしだったら真っ直ぐな線を刻むことすら難しいだろう……ましてや正確な円を刻むなんて到底できないわぁ。複雑すぎて見本の線を見間違えそうだもん……
 
 「ふたりともすごい!」
 「あ?こんなの慣れだ、慣れ」
 「うむ。多少、力はいるがの。慣れるとコツのようなものがわかって少ない力で刻めるんじゃよ」
 「ほぇー……」
 「ま、メリッサには道具がでかすぎで使いこなせねぇよ」
 「うむ」
 「ぬ……たしかに」

 でもなぁ……このぐにゃぐにゃたちが理解できればこの生活が変えられるかもしれないって気持ちもある。
 まずは線の少ない簡単そうなものを観察して規則性を探し出したいところ……
 手首の魔方陣にも文字っぽいものがあるし、これがどういうものかわかればいいのに……あーあ、これが神様とか転生担当さんに見送られたパターンなら言語理解とかいう標準装備があって文字なら何て書いてあるか読めたかもしれないのに……残念だ。
 たぶん、今こうして話すのに苦労しないのは今世のわたしのおかげかな?
 これがもっと小さいときに前世の記憶を思い出してたら言葉を覚えるところからだから苦労してたかも……だって外国に突然放り込まれるようなものでしょ。
 無い物ねだりしたってしょうがないし、今世のわたしのおかげで話せるだけありがたく思おう。

 ふと、魔力を自在に操ることができればこの魔方陣が起動できるかも……と考えついた……けど、内容がわからないビックリ箱とか恐ろしすぎる。
 やった、魔力を込めることが出来ました!爆発しました!じゃ、目も当てられないし、そもそも魔力を自在に操るってところでつまずいてるや。
 うーん……それでもやっぱり自分の魔力を感じるための瞑想は続けてみようかな?寝そうな予感しかしないけど……さっきも眠たくなったし。作業中だから、頑張ってたえたけど!
 試してみたいことばかり増えていくなぁ……優先順位を考えなくちゃいけないかな。

 その後も集中して頑張った結果、なんとか今日のノルマは達成できた。わたしの増えた分がかなりギリギリだったよ……
 夜8時になる前にフランカお姉ちゃんと提出しに行き、チェック後は自由時間となる。

 旧広場地区の朝と同じ建物へ魔石の入った木箱を持っていく……朝よりもひとはまばらだ。
 ふんぞり返っている見張りの元へ向かうと……

 「班は?」
 「し、死にかけ3班です」
 「そこに置け」
 「は、はい」
 
 言われた場所に置くと見張りが器を使って数え始めた……ほうほう。やっぱり器でチェックしているのか……いーち、にーい、さーん……隣の木箱に移しかえていく。器1杯がノルマひとり分かな?あ、でもあっちにはサイズの違う器がつんであるな……
 そのまま待っていると……

 「よし。合格だ」
 「は、はい」

 おいおい、まだ木箱に残ってますけど?まさか……その最後に余ったやつ見張りが多く入れすぎたやつなのかっ!
 フランカお姉ちゃんに続いてさっさと退室。

 「あの、あまった魔石……」
 「え、ええ。み、見張りが多く入れすぎたものです」
 「やっぱり……」
 「い、いつものことですよ」
 「そうなんだ」

 絶対、魔石くすねてもわからないし、ノルマ間に合わない!ってなってもダメ元で、できてる分だけ持っていったら普通に合格できそうなんだけど……

 基本的に朝7時から夜の8時までが仕事の時間である。夜9時が就寝時間となっているので、朝と夜に1時間ずつ自由時間がもうけられているが……ノルマの進行状況によって休めるかどうかはかわってくる。
 一応、夜9時までに持っていければノルマ達成とされる仕様だが……それがあまりにも続くと罰になったりするみたいだ。

 ちなみに食事の時間は昼の12時から20分程しかない。
 なので、必然的に自由時間は朝か夜しかないが……
 ここでもノルマのチェックがあるので、それが長引くと自由時間が削られていく仕組みなのだ。
 ノルマ分ができたら他のひとたちよりほんのすこし早めに行くのが吉らしい。しかし、あまりにも早く持っていくとノルマを増やされる可能性があるので、時間の見極めが重要である。
 時にはわざとノルマ提出で混み合う時間に行って『ギリギリできました』というアピールも必要らしい。

 「お疲れさん。あとはすきに過ごしな」
 「はーい。おやすみなさい」

 体力回復には睡眠がいちばん!
 それに頭使ったから疲れちゃった。こういうときは寝るとスッキリするよね?……瞑想はどうしたって?今日は横になって試してみるよ?ほら、深呼吸して心音に集中……
 え?それ、ただの睡眠だろうですって?それに最初におやすみなさいって言ってる?あら、ばれちゃった……
 正解でーすっ!わたし幼児なので!大事なことなので2回言います。幼児なのでっ!それに病み上がりなので仕方ないのですよぉ……ふぁあ……ぐぅ。

 ・
 ・
 ・

 ごそごそ……もぞもぞ。ぺた。

 「ふふ、小さい子ってあったかいわね」
 「寒さが軽減するならよかったじゃないか」
 「そうね……可愛らしい寝顔だこと」

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