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第1章
1 ここはどこ、わたしは……
しおりを挟む「うぅ……ん……うぅ………はっ」
息苦しくて、目を覚ますと……数人の男女がこちらの様子をうかがっていた。えっーと、どちらさまでしょうか……
「おお、よかった……目が覚めたようだね」
「は、はい!よ、よかったです!う、うなされていてし、心配しました」
「……うむ。これでひとまずは安心じゃの」
「はっ。そのままくたばった方が楽だったかもしれねぇけどなっ」
「これ、グウェン!お前さんが一番心配してた癖にそんな口聞くもんじゃないよ!」
「……ふんっ」
「はぁ……素直じゃないね、まったく」
「うむ。いつものことじゃ、仕方ないのぉ……」
「あ、汗びっしょりだとよ、よくないですよ。あ、汗拭きましょうね」
そう話すひとたちの背後に見慣れない光景が目に入った。
ぼんやりとした視界に入るこの部屋はなんだろうか……病院とかかな?
「……んん?」
どこか違和感を覚えた。
そして、違和感の正体を確かめようと布団から起き上がろうとしたのだけど……腕や体にまったく力が入らないということに気づいた。すとんと力が抜けてしまう……あれー?インフルエンザにかかったときよりも辛いんですけど……
よし、起き上がるのは一旦あきらめよう。
多分、ひとりじゃ無理だわ。病院なら電動ベッドのリモコンがあるはずだけど……床に寝ている気がする。あれれー?
いまだに視界がぼやけてるのは顔に張り付いた髪の毛のせいかも……とりあえず払いのけたい所存。というかペターッとくっついて鬱陶しい。
なんとか手を顔の前に持ち上げてみる……あれれー、おかしいなぁ。なんだか手が小さいような気がするぞ?それに腕が棒のように細い。ほとんど骨と皮じゃないか。え、激やせ?いやいや、痩せても手が子どもみたいな小さな手になったりしないって!骨格が違うでしょうがっ。
次第に腕がプルプルしてきたのでそっと下ろす……やっぱり色々とおかしいなー。こわいなー。夢かなー?
そして違和感の極め付けは顔にかかっている髪の毛の色が記憶と違うんですが……あれー、幻覚なのかなー。
光の加減でそう見えるのかなーって一縷の望みをかけたけど……だんだん視界がハッキリしてきたのに見える色が変わらないんですよ。こわいなー。見なかったことにしたいなー。
だってね、仮に毛染めをしていたとしても間違ってもこんなに鮮やかなオレンジ色の髪にしていた記憶はないんですよ……ブリーチすらしたことなかったもの。せいぜいが茶髪だったはずだ。
しかも、髪の毛は潤いがなくキシキシしているのに汗でベタベタという訳のわからない状態だ……あんなに頑張ったトリートメントの効果はどこへ行ったのか?はぁ……なんだか頭も痒いような気がするし……やだなぁー。
「……あの、ここは」
『どこですか?あなたたちはどちらさまでしょうか?もしかして私の寝てる間にドッキリで髪の毛をオレンジ色に染めたりなんかは……してないでしょうか?』と思いつく限り現状についての質問へと続くはずだった言葉は……
ひと言つぶやいた途端に頭に激しい痛みが走り、頭の中に見知らぬ記憶と体験が流れこんできたことで中断された。
「ぐぅっ……」
「お、おいっ!」
「あ、ど、どうしましょうっ」
頭を抱え、冷や汗がどっとあふれでて、気分が悪くなり吐き気をもよおしたが……
吐くほど胃に何かが入っていることもなく、何度か胃がギュウッと締め付けられたものの……どうにか吐かずに済んだ。
うずくまった体勢で耐えていると、時間が経つにつれ徐々に頭の中がクリアになり、気分や体調も落ち着いてきた……ちょっと、くらくらするけど。
多分、長くても数分だったと思うけど……数時間に感じるほど辛かった。
「平気かい?」
「だ、大丈夫ですか?」
「……は、はい」
そうか……ひとまず深呼吸しよう。すーっ、はぁー。あ、ちょっとマシになってきたかもしれない……
「急に頭抱えて苦しみだしたから驚いたじゃねぇかっ!」
「きっと、突然知らないひとたちに囲まれて混乱したのよ」
「うむ。そうかもしれんのぉ」
すーっ、はぁー……すーっ、はぁー……すーっ、はぁー。
何度も深呼吸を繰り返していくうちに私は理解した。
いや、理解してしまった。
どうやら私は転生してしまったようだと……
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