目覚めたら7歳児でしたが、過酷な境遇なので改善したいと思います

瑞多美音

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第1章

14 グウェンさんと雑草

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 「なぁ、今日は俺がメリッサと水汲みやら行きたいんだが……いいか?」
 「急にどうしたんだい」
 「いやぁ、じっくり探してみたらもっと食える草があんじゃねぇかと思ってさぁ」
 「た、確かに。わ、私も森での記憶も曖昧なので……ポ、ポーション草のように特徴があるものならまだしも、そ、そうでなければ見てもよくわからないかもしれません」

 そうか……【採取、狩猟グループ】にいたグウェンさんならではの視点でみたら別ものもが見つかる可能性もあるか。

 「私も今日は体調がいいから、フランカちゃんが基盤作りを手伝ったらどうかしら?」
 「マイケル、どうだい?」
 「うむ。儂のほうもフランカちゃんが手伝ってくれるなら問題ないかの……」
 「そうだねぇ……念のためグウェンがメリッサと行動するのは食事の後にしたらどうだい?」

 確かにそれならば、午前中に頑張ればノルマの心配も少し減るかも……

 「俺はそれでも構わないぜ」
 「うむ。儂もそれでいいぞ」
 「ええ」
 「わ、わたしも大丈夫ですっ」

 とのことで午後はグウェンさんと行動が決定した。

 ・
 ・
 ・

 「じゃあ、いくか」
 「うん」

 「「「「いってらっしゃい」」」」

 「おう、期待してろよ!」
 「いってきます!」

 バケツと雑草採取用のぼろ布をもって出発……よし、見張りはいないね。ここで見張りがいると動き回れないからひと安心だ。

 「メリッサ、いつもはどの辺を探してるんだ?」
 「えっと、トイレと水くみルートしゅうへんかなぁ?あ、でもポーション草はちょっとはなれたとこ」
 「そうか……まずは水汲みがてら探してみるか」
 「うん」

 グウェンさんは大股でさくさく移動しては、ポーションの材料になるものや食べられる草があるかあちこちをチェックしている……その間、わたしはいつもの採取ポイントで雑草を確認し、採りきらないように注意しながら集めていく……いくら雑草とはいえ念のためね。

 「うーん……この辺はポーションの材料になるもんはねぇな」
 「そっか……」
 「ただ、この草。今はねぇが、花のつく時期があんだ。そんときは花ごと食えるぞ」

 グウェンさんが見せてくれたのは地面を這うように生えている雑草だった。前世の世界のクローバーをもっと大きくして、青みがかった色にした感じかな?よし、クローバーもどきと命名しよう。

 「おおー!……花がないとダメなの?」
 「おう、なんでも草だけ食うと、具合悪くなるんだが花と一緒に食うと平気なんだとよ」
 「へぇ……」

 花には毒を中和する効果でもあるのかな?

 「ただ、花だけ食っても具合悪くなるらしくてな……手を出すやつはいねぇわな」
 「ほー」

 とりあえずクローバーもどきは花と草がセットで必要なのね……わたしはともかくみんなのためにもしっかり覚えとこ。

 「この辺はもうねぇな……ちょっと違う方向に行ってみっか」
 「うん」
 
 その後も水汲みをしつつ(グウェンさんがするとわたしの半分以下の時間で水瓶がいっぱいになった)……いままで行ったことのない方面を捜索した……

 残念ながらポーションの材料とされる他の薬草はみつからなかったけれど、根っこや若葉だけ食べられるもの、ポーション草の新たな生息場所を発見。

 「でも、ここ結構遠いよな?水汲みのついでで来れるか?」
 「うーん……毎日はしんどいかなぁ?」

 ま、1度採ったらしばらく採取できないから問題ないっちゃないか。

 「あ。これ、育てられる?」
 「あぁ?どうだろうなぁ?」

 栽培失敗したら採取出来なくなってしまうデメリットと栽培成功ですぐに採取できたりうまくいけば増やせるかもっていうメリット……むむ。

 「あ!ほかの雑草持って帰って育てればいいんだ!」
 
 失敗しても大して問題ない雑草をうまく育てられれば、ここまでポーション草を採取しに来る時間ができるかも?

 よく食べる雑草をいくつか根っこごと掘り返し、部屋から出たすぐの場所に植えてみよう。あの辺りはなんでか毒草ばっかりだし、ちょうどいいよね!
 クローバーもどきはどうしようかなぁ……今は確実に食べられるものにしとくか。

 「メリッサ、ひとりでニヤニヤしてねぇで教えてくれや」
 「うん!あのね……」

 思い付いた名案をグウェンさんに伝え……

 「ほう。それなら俺や部屋のやつでもすぐに採取出来ていいな!爺さんやマチルダもみんなの役に立てることが増えて喜ぶかもな」
 「じゃあ、持って帰ろう!」
 「おう!」

 ふたりでたくさんの雑草を抱えて帰宅し、雑草の生命力を信じて部屋の外に植えておいた。
 部屋の外なら部屋の中で育てることに比べてメリットが多い。見張りも道端の雑草に見向きもしないはずだし、土や水を用意する必要もないから楽チンだ。

 「というわけで、へやを出たすぐのところに食べられる草うえておいたよ!」
 「そうかい」
 「ほう……」
 「お疲れ様」
 「わ、わかりました!」

 ホトケノザもどきも一緒に植えておいたのでハワードも喜んでくれるだろう。

 みんなの方はフランカお姉ちゃんが魔道具の基盤作りを、マチルダさんが魔石作りを頑張ってくれたらしく……わたしたちがいつもより長い時間を外で行動していてもノルマぶも無事に達成できたらしい。

 今日はみんなの協力のおかげでいくつか食べられるものを新たに発見することができた。
 採取してはいけない毒草など(半分くらい食べたことのあるものだったのは秘密)わたしの知らないものもあったけど、新たに増えた雑草のおかげで、栄養不足もほんの少し改善できるだろう。
 カサカサでハリのなかった肌も少しずつ改善してきているし、ちびっこならではのぷるもち肌が楽しみだ。
 それに、食料が増えて心に余裕がでてきた気がする。
 

 それからもフランカお姉ちゃんとふたりで毎日少しずつ食べられるものを集めたり、いままで行ったことのない方向へ探索することも増えた。
 そして、水汲みやトイレの際にはまんべんなく探せるように毎回ルート変えて、見つけ次第ササッと採取している……手際がどんどんよくなって雑草採取のプロみたいだもん。
 心底見張りがサボり魔でよかったわー。
 そして、トイレ帰りのハワードの手にホトケノザもどきがあることが増えたため、ホトケノザもどきを部屋の周囲にたくさん植えることとなった……だってハワードが採り尽くす勢いなんだもん。ホトケノザもどきって雑草みたいに繁殖力強いのかな?他の雑草に負けるようならこまめに周辺チェックしないとなぁ……
 念のため、他にも嗜好品となる草や花を探しだしたいところだ。

 他の死にかけグループのひとたちにも食用可能な雑草のことを教えたいところだけど、水汲みの時間が違うのか全く会わないんだよね。トイレは使っているひとと遭遇したことないし……

 遠目に多分、あのひとは死にかけグループかな?って見かけるることがあっても話せる距離のときはだいたい見張りのいる場所だから、どうしようもできない……おばばさまやグウェンさんたちが隙をみて伝えてくれる予定らしい。え、なんで遠目でわかるかって?明らかにボロボロの服だから。
 ただ……ほかの部屋のひとたちがわたしたちの言葉を信じて雑草を食べるかはわからないし、毒草を見分けられなかったら本末転倒になってしまう不安もある。
 まずはわたしの手の届くひとたちを優先すると割りきるしかないのかも……

 旧広場地区への道中は見張りがいることも多いから……見たことのない草があっても採取するの我慢しているのだ。美味しそうな花とかあるのに!ポーション草っぽいのもあそこに見えるのに!いつか目を盗んで採取してやるんだからっ!

 こうして食べられる雑草の種類が増えたことで、食生活がほんの少し改善し……命の危険もその分だけ遠ざけることができたのだった。
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