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第1章
7 食事抜きを回避するためには?
しおりを挟む……カーン、カーン……カーン、カーン……カーン、カーン……
「し、食事のじ、準備できました」
「え?」
「おう、いつも悪いな!」
「フランカちゃん、助かるわい」
「ありがとう」
「い、いえ」
いつのまにかフランカお姉ちゃんが食事を受け取りに行っていたようで、気づいたときには配膳まで済んでいた……しまった!魔石作りに集中し過ぎたようだ……
鐘が12回鳴ると食事の時間である。
ちなみに朝の6時には6回鐘が鳴り、1時間ごとに鐘の鳴る数が1回増え、夜の9時には21回鳴る。夜9時以降は朝6時まで鐘は鳴らない仕組みだ。
夕方や夜なんかは鐘が長いこと鳴るため、何時なのか混乱するけど、やはり時間がわかるというのは重要だと思う。
だから、みんなも21までは数が数えられるんだよね。ノルマの数を数えるときも20が何個って数えかたをしていたから間違いないと思う。
「フランカ、いつも助かるよ……さて皆、食べようか」
「「「「「「神よ、日々の恵みに感謝します」」」」」」
食事は事前の脅しにあった通り1日1食で、固いパンが3個とスープ2杯だった。
パンは固いだけでなく、カビが生えていることも日常茶飯事で、スープはクズ野菜が入っていればいい方な上、味が薄い。
パンはまとめて焼いて保管しているため、最後の方はそうなってしまうらしい。まぁ、カビが生えたやつは優先的にこちらへ渡されてる可能性もあるけどさぁ。
7人でわけるとあっという間になくなってしまう……前世で飽食に慣れ親しんだりさにとっては食事はひもじいとしか言えないし、正直あまりおいしくない。
わたしが覚えている限り肉や魚が出されたことはないと思う。
ただ、メリッサにとってはそれさえも貴重な栄養源だ。しっかり食べないと。
「ほら、あんた達がたくさん食べるといいよ」
「そうさ、儂ら老いぼれなんかより若いおぬしらが食いなさい」
「私の分もどうぞ」
「マチルダは駄目だよ!少しでも食べなさい」
「そ、そうです!そ、それなら私の分をわけますからっ」
「わかったわ」
そういってわずかな食事をわけてくれようとしたが、遠慮しておく……ただでさえ病みあがりってことでみんなより多くわけてもらったんだからこれ以上はもらえない。
数日まともに食べていなかったけど……幸いにも胃が受け付けないということもなく、気持ちいつもよりよく噛んでしっかりと自分の分は完食した。
はぁ、日本食が恋しい……いや、洋食でも中華でもお腹がいっぱいになるならなんでも構わない。今なら、苦手だった青汁すら美味しくいただけそうだ……
いつもこうしていては駄目だ。誰かが栄養不足で倒れかねない……でも、わたしが増えたためにみんなの食事の量が減ったのは事実なんだよね。
この部屋の場合、人数が増えようが減ろうが出される食事の量に変わりはないようだから……なにか手を考えないといけないなぁ。
◇ ◇ ◇
午後もやることは変わらず魔石作りだ。
時々、ハワードの持つ魔石を交換しながら自分も魔力を込めていく……
鉱山から掘り出された魔石は元々くすんだ色をしていて……それが透き通ると魔力がきちんと込められた証拠とされている。
自分の魔石が出来たときにハワードの手元をチェックして、魔石が透き通っていたら新たなものに交換するという流れだ。
魔石が粉々に割れたりしていなければ、多少欠けがあっても再度魔力をこめられるようだ。
もし、割れていた欠片が最小サイズの魔石ぐらいの大きさがあれば普通に魔石として利用できるらしい。どうやら、わたしの親指の爪くらいのサイズがないと魔力が込められないらしいためにそれが最小サイズとなっているみたい。
なかには帝国から使用済みのものも混ざっているらしい。多分、大きな魔石は半分以上がリサイクルかな?
うーん……魔力を込めるといっても特別なにかをしている訳じゃないんだよなぁ……
今まではなにも考えず、言われるがまま魔石作りをしていたけど、この魔力は何処から来ていてどうやって魔石に入っていくのだろう?
かといって魔石に魔力を吸い取られているわけではなさそう……もし勝手に吸い取られているのならば手に持つ必要などなく、そばに置いておけば作れるはずだから。
多分、無意識に魔力を注いでるんだと思うけど……これがきちんとわかれば魔石作りの効率がよくなったり、外に魔法を出せるようになる可能性あるかも?
「メリッサ、どうだい?もう少し任せても平気かい?」
「だいじょうぶです!」
「じゃあ、これもお願いするよ」
「はい」
今日は運がいいといわれたけど、それは昼までだったのさ……ははっ。
食器の片付けはフランカお姉ちゃんにお願いして一緒にやったところまではなんの問題もなかったんだ……
でもその道中で見張りに呼ばれて……ノルマの追加を言い渡されてしまったのだ……どうも今朝、わたしがノルマの受け渡しに姿を表してしまったことが原因のようだ。
お、死にかけ部屋のあいつ!死んでなかったのか……じゃあ、ノルマ追加だ!って感じだろうか。
やはり基本的には部屋の人数などでノルマを決めているみたいで、わたしが増えたことによってノルマも増やされたのでバタバタしている。おばばさまは全体を見つつ仕分けもやり直しをしている。
食事は増えないのにノルマは増えるのか……世知辛いなぁ。
食事抜きはつらいから頑張らないと。ただでさえ少ないのに抜かれたら本気で飢える……ぐうぅー。さっき食べたのにな……
「おなかすいた……」
おなかすくとさ集中力って切れるよね……
「おう!奇遇だな。俺もだ!」
「そうじゃの」
「話すと余計に腹が減ってしまうよ! 水でも飲みな」
「はーい」
お腹がちゃぽちゃぽするくらい水を飲んだら空腹感は少しマシになったかな……
「あ、おみず入れてきます」
たくさん飲んでしまったから水汲みしてこないと。ノルマも大事だけど水が少ないと気になって余計に集中できない。
水だけは水汲みさえすれば飲み放題だから、みんなも食事の時や手が空いたときには飲んでいたし結構減ってきてるのね……空っぽにはなってないんだけど、減ってくるとなんとなく不安なんだよね。
あ、片手に魔石握っていけば一石二鳥じゃないかっ?うーん……片手で水汲めるかな?
「そ、それなら私がい、行ってきますっ」
「でも……」
「い、いえ!私よりメリッサちゃんのほうが魔石作りが早いみたいですしっ!」
「……メリッサ、そうしてやんな」
「い、いってきます!」
半日過ごしてわかったんだけど……フランカお姉ちゃんは魔石作りやトイレ処理、食事配膳など自分が出来ることはなんでもやろうとするみたいなんだよね。
わたしの方が魔石作りが早いっていうけど、そんなに差はないと思うし……
常に何かしていないと不安なようで、わたしや他のひとに手を出されるのは内心嫌みたいだ。
でも、教えることや世話することは好きなのかもしれない……聞けば優しく教えてくれるから、教えてもらいつつ、フランカお姉ちゃんの負担が少しでも減らせるようにこっそり手伝えるようになればいいかな。
まずはどこまで踏み込んでいいかのラインを探らないとなぁ……おばばさまはフランカお姉ちゃんとの付き合いが長いからか……うまく誘導している節がある。観察して参考にしよう。
「も、戻りましたー」
「あっ!フランカお姉ちゃん、ありがとうごじゃいました!」
「い、いえ!」
また、噛んでしまった……たくさん話していけば噛まなくなりそうだけど、その分エネルギー消費してお腹が減りそうだ……
よし、まずは魔石作りのノルマ達成を目指すことにしよう。噛んでも実害は……わたしが恥ずかしいだけだからほぼナシということで。それならば体力温存を最優先したいと思う。
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