目覚めたら7歳児でしたが、過酷な境遇なので改善したいと思います

瑞多美音

文字の大きさ
上 下
7 / 29
第1章

7 食事抜きを回避するためには?

しおりを挟む

 ……カーン、カーン……カーン、カーン……カーン、カーン……

 「し、食事のじ、準備できました」
 「え?」
 「おう、いつも悪いな!」
 「フランカちゃん、助かるわい」
 「ありがとう」
 「い、いえ」

 いつのまにかフランカお姉ちゃんが食事を受け取りに行っていたようで、気づいたときには配膳まで済んでいた……しまった!魔石作りに集中し過ぎたようだ……

 鐘が12回鳴ると食事の時間である。
 ちなみに朝の6時には6回鐘が鳴り、1時間ごとに鐘の鳴る数が1回増え、夜の9時には21回鳴る。夜9時以降は朝6時まで鐘は鳴らない仕組みだ。
 夕方や夜なんかは鐘が長いこと鳴るため、何時なのか混乱するけど、やはり時間がわかるというのは重要だと思う。
 だから、みんなも21までは数が数えられるんだよね。ノルマの数を数えるときも20が何個って数えかたをしていたから間違いないと思う。


 「フランカ、いつも助かるよ……さて皆、食べようか」
 「「「「「「神よ、日々の恵みに感謝します」」」」」」


 食事は事前の脅しにあった通り1日1食で、固いパンが3個とスープ2杯だった。
 パンは固いだけでなく、カビが生えていることも日常茶飯事で、スープはクズ野菜が入っていればいい方な上、味が薄い。
 パンはまとめて焼いて保管しているため、最後の方はそうなってしまうらしい。まぁ、カビが生えたやつは優先的にこちらへ渡されてる可能性もあるけどさぁ。

 7人でわけるとあっという間になくなってしまう……前世で飽食に慣れ親しんだりさにとっては食事はひもじいとしか言えないし、正直あまりおいしくない。
 わたしが覚えている限り肉や魚が出されたことはないと思う。
 ただ、メリッサにとってはそれさえも貴重な栄養源だ。しっかり食べないと。
 

 「ほら、あんた達がたくさん食べるといいよ」
 「そうさ、儂ら老いぼれなんかより若いおぬしらが食いなさい」
 「私の分もどうぞ」
 「マチルダは駄目だよ!少しでも食べなさい」
 「そ、そうです!そ、それなら私の分をわけますからっ」
 「わかったわ」

 そういってわずかな食事をわけてくれようとしたが、遠慮しておく……ただでさえ病みあがりってことでみんなより多くわけてもらったんだからこれ以上はもらえない。
 数日まともに食べていなかったけど……幸いにも胃が受け付けないということもなく、気持ちいつもよりよく噛んでしっかりと自分の分は完食した。
 はぁ、日本食が恋しい……いや、洋食でも中華でもお腹がいっぱいになるならなんでも構わない。今なら、苦手だった青汁すら美味しくいただけそうだ……

 いつもこうしていては駄目だ。誰かが栄養不足で倒れかねない……でも、わたしが増えたためにみんなの食事の量が減ったのは事実なんだよね。
 この部屋の場合、人数が増えようが減ろうが出される食事の量に変わりはないようだから……なにか手を考えないといけないなぁ。


◇ ◇ ◇

 
 午後もやることは変わらず魔石作りだ。
 時々、ハワードの持つ魔石を交換しながら自分も魔力を込めていく……
 鉱山から掘り出された魔石は元々くすんだ色をしていて……それが透き通ると魔力がきちんと込められた証拠とされている。
 自分の魔石が出来たときにハワードの手元をチェックして、魔石が透き通っていたら新たなものに交換するという流れだ。
 魔石が粉々に割れたりしていなければ、多少欠けがあっても再度魔力をこめられるようだ。
 もし、割れていた欠片が最小サイズの魔石ぐらいの大きさがあれば普通に魔石として利用できるらしい。どうやら、わたしの親指の爪くらいのサイズがないと魔力が込められないらしいためにそれが最小サイズとなっているみたい。

 なかには帝国から使用済みのものも混ざっているらしい。多分、大きな魔石は半分以上がリサイクルかな?

 うーん……魔力を込めるといっても特別なにかをしている訳じゃないんだよなぁ……
 今まではなにも考えず、言われるがまま魔石作りをしていたけど、この魔力は何処から来ていてどうやって魔石に入っていくのだろう?
 
 かといって魔石に魔力を吸い取られているわけではなさそう……もし勝手に吸い取られているのならば手に持つ必要などなく、そばに置いておけば作れるはずだから。
 多分、無意識に魔力を注いでるんだと思うけど……これがきちんとわかれば魔石作りの効率がよくなったり、外に魔法を出せるようになる可能性あるかも?

 「メリッサ、どうだい?もう少し任せても平気かい?」
 「だいじょうぶです!」
 「じゃあ、これもお願いするよ」
 「はい」

 今日は運がいいといわれたけど、それは昼までだったのさ……ははっ。
 食器の片付けはフランカお姉ちゃんにお願いして一緒にやったところまではなんの問題もなかったんだ……
 
 でもその道中で見張りに呼ばれて……ノルマの追加を言い渡されてしまったのだ……どうも今朝、わたしがノルマの受け渡しに姿を表してしまったことが原因のようだ。
 お、死にかけ部屋のあいつ!死んでなかったのか……じゃあ、ノルマ追加だ!って感じだろうか。

 やはり基本的には部屋の人数などでノルマを決めているみたいで、わたしが増えたことによってノルマも増やされたのでバタバタしている。おばばさまは全体を見つつ仕分けもやり直しをしている。

 食事は増えないのにノルマは増えるのか……世知辛いなぁ。
 食事抜きはつらいから頑張らないと。ただでさえ少ないのに抜かれたら本気で飢える……ぐうぅー。さっき食べたのにな……

 
 「おなかすいた……」

 おなかすくとさ集中力って切れるよね……

 「おう!奇遇だな。俺もだ!」
 「そうじゃの」
 「話すと余計に腹が減ってしまうよ! 水でも飲みな」
 「はーい」

 お腹がちゃぽちゃぽするくらい水を飲んだら空腹感は少しマシになったかな……
 
 「あ、おみず入れてきます」

 たくさん飲んでしまったから水汲みしてこないと。ノルマも大事だけど水が少ないと気になって余計に集中できない。
 水だけは水汲みさえすれば飲み放題だから、みんなも食事の時や手が空いたときには飲んでいたし結構減ってきてるのね……空っぽにはなってないんだけど、減ってくるとなんとなく不安なんだよね。
 あ、片手に魔石握っていけば一石二鳥じゃないかっ?うーん……片手で水汲めるかな?

 「そ、それなら私がい、行ってきますっ」
 「でも……」
 「い、いえ!私よりメリッサちゃんのほうが魔石作りが早いみたいですしっ!」
 「……メリッサ、そうしてやんな」
 「い、いってきます!」

 半日過ごしてわかったんだけど……フランカお姉ちゃんは魔石作りやトイレ処理、食事配膳など自分が出来ることはなんでもやろうとするみたいなんだよね。
 わたしの方が魔石作りが早いっていうけど、そんなに差はないと思うし……

 常に何かしていないと不安なようで、わたしや他のひとに手を出されるのは内心嫌みたいだ。
 でも、教えることや世話することは好きなのかもしれない……聞けば優しく教えてくれるから、教えてもらいつつ、フランカお姉ちゃんの負担が少しでも減らせるようにこっそり手伝えるようになればいいかな。
 まずはどこまで踏み込んでいいかのラインを探らないとなぁ……おばばさまはフランカお姉ちゃんとの付き合いが長いからか……うまく誘導している節がある。観察して参考にしよう。


 「も、戻りましたー」
 「あっ!フランカお姉ちゃん、ありがとうごじゃいました!」
 「い、いえ!」
 
 また、噛んでしまった……たくさん話していけば噛まなくなりそうだけど、その分エネルギー消費してお腹が減りそうだ……
 よし、まずは魔石作りのノルマ達成を目指すことにしよう。噛んでも実害は……わたしが恥ずかしいだけだからほぼナシということで。それならば体力温存を最優先したいと思う。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼女に転生したらイケメン冒険者パーティーに保護&溺愛されています

ひなた
ファンタジー
死んだと思ったら 目の前に神様がいて、 剣と魔法のファンタジー異世界に転生することに! 魔法のチート能力をもらったものの、 いざ転生したら10歳の幼女だし、草原にぼっちだし、いきなり魔物でるし、 魔力はあって魔法適正もあるのに肝心の使い方はわからないし で転生早々大ピンチ! そんなピンチを救ってくれたのは イケメン冒険者3人組。 その3人に保護されつつパーティーメンバーとして冒険者登録することに! 日々の疲労の癒しとしてイケメン3人に可愛いがられる毎日が、始まりました。

このやってられない世界で

みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。 悪役令嬢・キーラになったらしいけど、 そのフラグは初っ端に折れてしまった。 主人公のヒロインをそっちのけの、 よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、 王子様に捕まってしまったキーラは 楽しく生き残ることができるのか。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

ボッチの少女は、精霊の加護をもらいました

星名 七緒
ファンタジー
身寄りのない少女が、異世界に飛ばされてしまいます。異世界でいろいろな人と出会い、料理を通して交流していくお話です。異世界で幸せを探して、がんばって生きていきます。

お前など家族ではない!と叩き出されましたが、家族になってくれという奇特な騎士に拾われました

蒼衣翼
恋愛
アイメリアは今年十五歳になる少女だ。 家族に虐げられて召使いのように働かされて育ったアイメリアは、ある日突然、父親であった存在に「お前など家族ではない!」と追い出されてしまう。 アイメリアは養子であり、家族とは血の繋がりはなかったのだ。 閉じ込められたまま外を知らずに育ったアイメリアは窮地に陥るが、救ってくれた騎士の身の回りの世話をする仕事を得る。 養父母と義姉が自らの企みによって窮地に陥り、落ちぶれていく一方で、アイメリアはその秘められた才能を開花させ、救い主の騎士と心を通わせ、自らの居場所を作っていくのだった。 ※小説家になろうさま・カクヨムさまにも掲載しています。

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

処理中です...