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サイドストーリー② アメリア皇女の恋
しおりを挟む「はぁ...」
薄暗い空の下、小さな自分の身体をベンチへと下ろす。
「やっぱり、政治絡みの舞踏会は落ち着かないな...」
煌びやかな舞踏会とは裏腹に、貴族達の陰湿な噂話。どうやって小さな子供である私に取り入ろうかと舐め回すような目つき。愛想笑いに頬が痙攣を起こし、すべてが嫌になって逃げ出した。
「お兄様も一緒にいてくれないし...もうヤダ...」
周りに誰もいない事で気が緩んだのか、目尻から涙が滲む。
「う...ぐすっ...、うぅ...」
お兄様だけが私に優しくしてくれる。守ってくれる。私だけのお兄様。
そのお兄様がいない事に寂しくなり、涙が止まらない。
ガサッ....
「っ...誰っ!?」
草木の揺れる音が聞こえると、不意に一人の男の人が現れた。
「...泣いてるの?」
とても美しい容姿をした人は泣いている私の隣に名乗りもせず座り、泣いている私の顔を覗き込んだ。
「なんで泣いてるの?」
「っ...だって、舞踏会嫌いだし...お兄様もいないんだもの...」
早くこんな舞踏会とはおさらばして、お兄様と一緒にいたい。
「...そっか。俺も舞踏会なんて大っ嫌いだよ。なくなればいいのにね?」
「あ、あなたも、舞踏会嫌い...?」
「嫌いだよ。まるで品定めしてるみたいに俺をジロジロ見る目も、媚びを売る大人も大嫌い。嫌すぎて勝手に出てきちゃった。」
「私と一緒...?」
「うん、一緒。だから同じ者同士、ここでお話しようよ。」
「...うん。いいよ。」
初対面だというのに、警戒心もなしに私は名前も知らない人と話し続けた。男の人の話はとても面白く、聞いていて楽しくなるようなものばかり。
「それでね、その執事が「殿下!こちらにいらしたのですね!?」
話の途中、慌てたように現れた執事が男の人に向かって来た。
「あぁ。見つかってしまったか。」
「殿下、陛下がお呼びです!今すぐに来てください!」
「えー、行きたくない。」
「殿下!!!」
「はぁ、分かった分かった。今から行くからって陛下に伝えといてよ。」
「絶対に来てくださいね!」
執事がいなくなると、男の人は嫌そうに顔を歪めながら立ち上がる。
「ごめんね。呼び出されたからもう行くよ。君も早くお兄さんのところに行きなよ?」
「え?も、もう行っちゃうの?」
もっと一緒にいたい。
「うん。でも大丈夫!また絶対に会えるから!」
そう言って男の人は最後にポケットから飴玉を取り出し、私の口へと入れる。
「元気がでる魔法の飴玉!もう泣いちゃだめだよ!」
その時に見た満面の笑顔を...胸が大きく高鳴った笑顔を、私は永遠に忘れないだろう。
「....あ、名前っ...!」
しばらく呆けていた私は、急いで会場に戻り彼を探す。だが結局最後まで見つける事ができず、帰りの馬車で落ち込む事になった。
「アメリア?どうしたんだ?そんなに落ち込んで...」
「...なんでもない。」
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「...好き。」
「え?なんて?」
「な、なんでもない!」
その時、ようやく私はあの男の人に恋をしている事を自覚した。
(また...会えるよね?その時は...)
私の想いを伝えよう。
そして十五年後...
「あなたが好きです!!!」
華やかな舞踏会で再会を果たし興奮したアメリアと、突然の告白に戸惑う王弟カエサルが夫婦になるのは、そう遠くない未来だろう。
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