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決意
しおりを挟む第二皇子が入って来た瞬間、安堵で涙が溢れた。
「クレノ!」
「っ...レイっ...!こ、怖かっ...た...っ...」
怖かった。
このまま犯されるんじゃないか。もう二度と会えないんじゃないかと、怖くて仕方がなかった。
震え、泣きじゃくるそんな俺を、第二皇子は優しく包み込む。
「もう大丈夫だ。すまないが、私がいいと言うまで目と耳を塞いでいてくれ。」
優しく微笑む第二皇子に言われ、素直に目と耳を塞いだ。
何が起こっているのか分からないが、第二皇子が動いているのを感じる。
(レイの体温、心地いいな...)
男共に襲われた事を思い出さないように第二皇子の体温に集中していると、背中を優しく叩かれた。
「もう大丈夫だ。」
目を開くと動く馬車の中。
俺を膝の上で抱き締め、微笑む第二皇子の姿にまた涙が滲み出てくる。
「レイ...」
「...すまない。」
「え?」
微笑みから一転、眉を下げて俺の涙を指で拭う。
「私がもっと早くクレノを見つけていたら、クレノは傷付かなかった。
遅くなって、本当にすまない。」
「レイが謝る必要なんてない!罠かもしれないと分かっていたのに皇太子へ会いに行った、俺が悪いです!」
自分が悪いと言い返すと第二皇子は眉間に皺を寄せ、真剣な面持ちになる。
「なぜ罠だと思っていながら、兄上の部屋へ行ったんだ?」
「え?そ、それは...」
皇太子の誘いに応じた理由。
それは、前世の事について聞きたかったからだ。
「それは?」
「っ....」
口ごもる俺の手を、第二皇子が握り締める。
「クレノが私に何か隠している事は分かっているし、クレノが話したくないなら話さなくていい。ただ、これだけは忘れないでくれ。
私はどんな秘密を知っても、クレノを信じているし、この気持ちが永遠に変わる事はない。」
こんなにも俺を想ってくれた人が、前世を含めていただろうか。
(この人になら...俺のすべてをさらけ出したい!)
第二皇子の言葉に胸の奥が熱くなるのを感じながら、俺は前世の事を話す決意する。
「俺には、前世の記憶があるんです。」
こうして俺は、前世の事を第二皇子に話し始めた。
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