199 / 263
サプライズ
しおりを挟むコンコン_______
「入ってくれ。」
扉をノックすると第二皇子の声が聞こえ、緊張しながらゆっくりと扉を開く。
「失礼します。」
そこには....
「誕生日おめでとう、クレノ。」
美しく着飾っている第二皇子の姿があった。
「たん...じょうび....?」
「今日はクレノの誕生日だろう?」
「あ....」
そうだ。誕生日なんて祝った事がないからすっかり忘れていた。
「クレノの母君から祝った事がないと聞いてな。」
第二皇子に手を引かれ、豪華な食事が乗っているテーブルへと案内される。
「家族ではなく私と二人きりで申し訳ないとは思ったのだが、誰よりも先にクレノの誕生日を祝いたかったんだ。」
椅子へ座りながら申し訳なさそうに第二皇子は言うが、逆に二人きりで自分の誕生日を祝える事がすごく嬉しかった。
「いえ...逆です。殿下と二人きりでだなんて、すごく嬉しいです。」
喜びを噛み締めている俺を微笑ましく見つめながら、第二皇子は美味しそうなステーキを一口サイズに切り分け、俺の前に差し出す。
そのステーキを口に運んだ瞬間、口の中が幸せで溢れた。
「美味しい!」
何これ、めっちゃ美味しい!
「すごく美味しいです!」
美味しすぎて頬が落ちそうだ。
「それはよかった。作ったかいがあったな。」
「....え?」
(作った?)
「え、もしかしてこの料理、全部殿下が作ったんですか?!」
「あぁ。初めて料理というものをしたが、案外楽しいものだな。」
初めてとは思えないほど完璧な仕上がりの料理を第二皇子が作っただなんて、凄すぎて言葉が出ない。
「クレノの好きな甘いデザートも用意しているから、楽しみにしていてくれ。」
「デザートも!?」
(...あれ?よく見ると手が傷だらけ....
っ!もしかして....!)
「俺を避けていたのって....」
「...バレたか。やはり、何事にも練習は必要だな。」
「やっぱり...!」
第二皇子が俺を避けていた理由が、このサプライズの為だったのだと確信する。
(俺の為に、手が傷だらけになるまで頑張ってくれたんだ....)
「すごく嬉しい...俺の為に、ありがとうございます!」
「クレノが喜んでくれて、本当によかった。今日は邪魔も入らないし、存分に二人の時間を過ごそう。」
「はい!」
俺はそう勢いよく返事をして、第二皇子と談話しながら食事を楽しんだ。
そしてデザートも食べ終えた頃、突然第二皇子が深く頭を下げた。
「クレノを喜ばせる為とはいえ、今まで避けてしまってすまなかった。」
「あ...いえ、俺の方こそすみませんでした....」
勝手に早とちりして拗ねてしまった事を謝罪する。
「いや、不安にさせてしまった私が全面的に悪い。だから....」
第二皇子が立ち上がり近付くと、目の前で跪き、俺の手を優しく包み込む。
「その不安を、今から私に取り除かせてくれないか?」
そう手の甲に口付けされた俺は、恥ずかしがりながらも無言で頷いたのだった。
304
お気に入りに追加
6,691
あなたにおすすめの小説
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
【BL】どうやら精霊術師として召喚されたようですが5分でクビになりましたので、最高級クラスの精霊獣と駆け落ちしようと思います。
riy
BL
風呂でまったりしている時に突如異世界へ召喚された千颯(ちはや)。
召喚されたのはいいが、本物の聖女が現れたからもう必要ないと5分も経たない内にお役御免になってしまう。
しかも元の世界へも帰れず、あろう事か風呂のお湯で流されてしまった魔法陣を描ける人物を探して直せと無茶振りされる始末。
別邸へと通されたのはいいが、いかにも出そうな趣のありすぎる館であまりの待遇の悪さに愕然とする。
そんな時に一匹のホワイトタイガーが現れ?
最高級クラスの精霊獣(人型にもなれる)×精霊術師(本人は凡人だと思ってる)
※コメディよりのラブコメ。時にシリアス。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

うるせぇ!僕はスライム牧場を作るんで邪魔すんな!!
かかし
BL
強い召喚士であることが求められる国、ディスコミニア。
その国のとある侯爵の次男として生まれたミルコは他に類を見ない優れた素質は持っていたものの、どうしようもない事情により落ちこぼれや恥だと思われる存在に。
両親や兄弟の愛情を三歳の頃に失い、やがて十歳になって三ヶ月経ったある日。
自分の誕生日はスルーして兄弟の誕生を幸せそうに祝う姿に、心の中にあった僅かな期待がぽっきりと折れてしまう。
自分の価値を再認識したミルコは、悲しい決意を胸に抱く。
相棒のスライムと共に、名も存在も家族も捨てて生きていこうと…
のんびり新連載。
気まぐれ更新です。
BがLするまでかなり時間が掛かる予定ですので注意!
人外CPにはなりません
ストックなくなるまでは07:10に公開
3/10 コピペミスで1話飛ばしていたことが判明しました!申し訳ございません!!
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる