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拗ねた俺と母
しおりを挟む「ちょっとあんた、何をそんなに拗ねてるよの。」
「.....うるさい。」
「は?」
「母さんには分からないよ...俺の気持ちなんて....」
俺は別に第二皇子が何か隠しているとか、尾行がなかなか上手くいってないとかで拗ねてる訳じゃない。
俺は.....
「殿下、今日はお時間空いてますか?」
「...すまない、クレノ。今日も忙しくて一緒にいられそうにない....」
「...そう...ですか....」
(仕事が落ち着いてきたからって、秘書の人が言ってたのにな....)
第二皇子があからさまに俺を避ける事に拗ねてるんだ。
(確かに皇子だし俺に言えない事なんて沢山あるだろうし、殿下の事を信じてるから隠し事もしていいとは思ってる。でも、理由も分からないまま避けられるのは不満だし嫌だ。)
「なんで俺の事、避けるんだろう...避けられるような事した覚えないのに....」
「面倒くさいわね。そんなに悩んでるなら、殿下に直接聞けばいいでしょ。」
「聞く前に逃げられるんだよ。」
それに本当に申し訳なさそうに断るものだから、何も言えなくなってしまう。
「一体どうしたら....」
「.....あんた、本当に殿下の事が好きなのね。」
「急になんだよ。そんなの当たり前だろ。」
好きじゃなかったら、平凡を望んでいた俺が第二皇子と付き合う訳がない。
母はどうして、突然そんな事を聞くのだろうか
「我が息子ながら、今までお菓子以外の事に興味がなかったじゃない?
だけど今は、目の前に置いてあるお菓子に手も出さないで殿下の事ばかり考えてるから、なんだかおかしくて。」
「.....なんだよ、それ。」
(母さんだって、お菓子と服と宝石にしか興味ないじゃん。)
なんて事を思ったが、口に出せるはずもなかった。
「...いつの間にか、大きくなったわね.....」
「え?今なんて?」
母が何かを呟いたが聞こえず、俺は聞き返す。
「ん゙んっ....な、なんでもないわ。殿下の話に戻りましょう。」
「???う、うん。」
焦ったように話を逸らす母を不思議に思いながらも、しつこく聞き返すと酷い目に合う事を知っている俺は、素直に返事をする。
「話の中で殿下がおかしくなったと言っていたけど、それはいつからなの?」
「いつからって....確か.....」
(ハンスさんに会ってから.....)
「!!!」
そうだ。ハンスさんだ。
「母さんごめん!俺、用事できたから行ってくる!」
「急ね....まぁ、いいわ。行ってきなさい。」
「うん!」
俺は急ぐように席を立ち、厨房へと走った。
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