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ごめんなさい、ハンスさん
しおりを挟む「そのハンスとやらは、一体誰なんだ?」
「え?この家の料理人ですけど....」
第二皇子の雰囲気が突然変わり、不安になりながらそう答える。
「昔から働いているのか?」
「はい。俺が小さい頃から料理人として働いている人です。」
ハンスさんはここで働いている人の中で一番年齢も近いし、小さい頃は一緒に遊んでくれて、今でも母への不満を聞いてもらったりしている。
だから俺にとってハンスさんは、親しい第二の兄のような存在だ。
「クレノの表情を見るに、随分と仲が良いみたいだな。」
「仲は良いと思います。俺、ハンスさんが作る料理が好きで、特にお菓子が大好きなんです!」
俺が“大好き”という単語を出した瞬間、第二皇子の眉がピクリと動いた。
「ほう...大好き....か。」
「は、はい....、あの...で...殿下....?」
第二皇子はにこやかに笑ってはいる。
いるのだが....
「私の大切なクレノが大好きだと言うそのハンスとかいう料理人に、是非会ってみたいな。」
目がまったく笑っていなかった。
「そうだ。せっかく美味しい料理を作ってもらったんだ。お礼をしに行かないとな?」
「お、お礼なら俺からハンスさんに言っておきますから....」
「いや、礼儀として私が直接言いに行こう。夕食が食べ終わったら一緒に行こうか。」
「......はい。」
(ごめんなさい、ハンスさん....)
どうやら俺の失態で第二皇子の嫉妬に巻き込んでしまったと、夕食を食べながら心の中でハンスさんに謝ったのだった。
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