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友達になりたい理由
しおりを挟む自分の考えていた事とはまったく違う言葉がアメリア・クロンディアから発せられ、何を言われたのか理解できずに思考が停止する。
「....え、えっと....?」
「私とお友達になりましょう。」
「友達....ですか?」
最初は冗談を言っているのかと思ったが、あまりにも真剣な皇女の表情を見て、どうやら本気で俺と友達になりたいと言っているようだった。
「あの....どうして俺なんですか?」
まずそこだ。
一国の皇女とただの子爵令息の俺じゃ、身分的にも容姿的にも不釣り合いだろう。
それなのに、どうして他の誰でもない俺に友達になろうだなんて言うのだろうか。
「......実は私、お菓子作りが趣味なんです。」
「え?」
(皇女様が?お菓子作り?)
一国の第二皇女が?
「昔からお菓子作りが好きで、幼少の頃は作ったお菓子をお兄様に差し上げたり、お茶の席で私が作ったものだと気付かれないようにこっそり出したりしていました。
ですが勝手に厨房を借りてお菓子を作っている事を両親にバレてしまって、皇族としてあるまじき行為だと作るのを禁止されてしまいました。」
皇女はそう言って、分かりやすく肩を落とす。
「それでしばらくは諦めていたのですが.....この学園に入学してからはどうしても作る事を我慢できなくなってしまって、最近は学園の厨房を夜中にこっそりお借りしてお菓子を作っているんです。
でも....作るのは良いのですが、食べてくれる人が誰もいなくて.....」
「お兄様には差し上げないんですか?」
「お兄様は忙しいようで、私が学園に入学してからはほとんど顔を合わせていなくて.....
同じクラスの方々や先生、使用人達にも勇気を出して声を掛けたのですが、なぜか逃げられてしまって.....」
「えーっと....それは......」
(みんな恐れ多くて食べられないだけじゃ.....)
「一人では食べられる量も限られてますし......
私は自分が作ったお菓子を美味しそうに食べてくれる人がいないと嫌なんです!!」
「あ....はい......」
皇女のあまりの熱量に圧倒され、椅子を少し後ろへ引いた。
「そこで子爵令息です!」
「お、俺!?」
いや、なんでそこで俺?
「この間、子爵令息がシャーロット様とエッグタルトを食べている姿を目撃しました。」
「あぁ。あのエッグタルトすごく美味しくて....」
(もう一回食べたいなぁ......)
「その時のクレノ様の美味しそうに食べている姿を見て、私の作ったお菓子も食べてほしいと思って.....友達になりたいと思ったんです!」
「そ、そうですか....」
「だからシア子爵令息!私と友達になって、私が作ったお菓子を一緒に食べてください!」
「....えっと.....」
(うーん.....)
確かにお菓子は大好きだ。
でも正直、これ以上ゲーム内の主要メンバー達と関わりたくない。
「ダメ.....でしょうか.....?」
ゲーム内での悪役だとは思えないほど、皇女の俺を見つめる瞳は不安そうに揺れていた。
(~~~あぁ!もう!!)
「分かりました。皇女様の友達になります。」
(どうして俺って、こういう人ほっとけないんだろ.....)
平凡を願っていたのに、どんどんそれが遠ざかっていく。
でも仕方ない。だってほっとけないんだ。
「っ!ありがとうございます!!」
「おわっ!」
俺の返答を聞いた皇女は嬉しそうに俺の両手を強く握り、ぶんぶんと振り回す。
「これからよろしくお願いしますね!クレノ様!」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
(はぁ....なんか、また変なのに巻き込まれる予感がするな.....)
こうして俺は、少しの不安と共にアメリア様と友達になったのだった。
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