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お願いだから頭を上げて
しおりを挟むそして彼女達と話している内に、俺が何かされていると誤解した第二皇子が来てしまったという訳だ。
「体育祭の時、俺がカグラに言い返している姿を目撃した人がカグラの被害にあった人だったらしくて....その事を他の被害者達にも伝えたら、みんなで俺に感謝を伝えに行こう。という事になったそうなんです。」
未だこの状況が把握できていないであろう第二皇子に、彼らが俺に危害を加えようとしている訳ではない事を説明する。
「では、この者達はクレノを害そうとしていた訳ではないのだな?」
「はい。」
第二皇子に返事をした俺を、目撃者である令嬢が目を輝かせながら見つめてきた。
「あの時の事は、今でも鮮明に覚えています。」
「鮮明にって....」
「私は婚約者をカグラに奪われたにも関わらず、皇太子殿下やカグラを慕う他の方々の妨害に遭い、カグラに近付く事さえできず悔しい思いをしていました。
ですがあの時、シア子爵令息がカグラに言い放ったこれでもかというほどの罵倒や暴言の数々を聞いて、とても感激しました!」
「いやいや、どうしてあれを聞いて感激するんですか?それに俺は、カグラに言われた事にムカついて言いたい事を言い返しただけで.....」
「それが凄いんですよ!
他の者なら心が折れてしまうであろうカグラのあの罵倒に対して、令息はそれ以上に罵倒していたではありませんか!皇太子殿下の恋人に対して、シャーロット様ですらあそこまで言えていませんでしたよ!
本当にあの時のシア子爵令息の姿は、とてもカッコよかったです!」
「そ....そうですか。」
興奮気味に俺の勇姿を語る令嬢に圧倒され、もうそれしか言えない。
「シア子爵令息。たとえ令息が私達の為にカグラに言った訳ではなかったとしても、私達が何もできない中、令息のあの行動と言葉にとても勇気を頂きました。だから改めて言わせてください。
カグラにあのように言って頂いた事、深く感謝致します。
ありがとうございました。」
そう言って令嬢が頭を下げた瞬間、他の被害者達も一斉に頭を下げ俺に感謝の言葉を伝えてくる。
そんな目立つ光景に焦った俺は、慌てて被害者達に駆け寄った。
「あ....頭を上げてください!
俺は言いたい事を言っただけなので、お礼を言われるような事はしてないですから!!」
(だから、頼むから頭を上げてくれ!
周りにいる他の生徒達が変な目で俺を見てくるんだよー!!)
そう心の中で叫びながら、頭を下げ続ける彼女らを三十分以上必死に説得し続けたのだった。
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