34 / 259
ざまぁみろ!
しおりを挟む「それで、公爵令嬢はカグラに嫌がらせをしていたのかい?」
俺の怒りにまったく気付かず、平然と口にする皇太子に腹が立つ。
(この馬鹿皇太子....お前の思い通りにシャーロットを退学になんてさせるか!!)
絶対にシャーロットは退学させないし悪役令嬢枠にもさせないと決意した俺は、口を開いた。
「....俺は公爵令嬢と友人になったのもほんの数ヶ月前で、何も知りません。
....ただ、公爵令嬢がカグラに対して嫌がらせをしていたというのは事実です。そこに関しては公爵令嬢も認めていました。」
「!!そうか!なら「ですが!」
俺は嬉しそうに声を上げた皇太子に、被せるように待ったをかける。
「....ですが俺の目には、その頃の公爵令嬢はただの皇太子殿下に恋をする女の子にしか見えませんでした。」
そう俺が言うと皇太子は先ほどまでの嬉しい顔とは違い、驚いた表情で俺を見る。
俺は何か言いたげな皇太子を無視して話を続けた。
「公爵令嬢はただ....皇太子殿下、貴方に自分を見てほしいと思っていただけなんです。
確かに公爵令嬢は以前、カグラ様に対して嫌がらせをしてきたと思います。ですがその嫌がらせのすべてが公爵令嬢のせいではありませんし、それに今は嫌がらせなんてもの一切していません。
公爵令嬢がお二人に言っていたではありませんか。
もう皇太子殿下にもカグラ様にも近付かない、反省していると謝罪していたではありませんか。」
俺がそう言うと、皇太子は焦ったように顔に汗を垂らし始めた。
「そ....それは、公爵令嬢が私達を惑わす企みで....
クレノくんが知らないだけで、本当は今でも嫌がらせを.....」
なんでこの皇太子はシャーロットを悪者にしたがるんだよ。
「それなら嫌がらせの件を報告してきた生徒達に、今でもその現場を見るのか確認してみてください。」
そうすれば俺が言っている事が嘘か本当かなんてすぐに分かるだろうし。
「だ...だが、公爵令嬢は少なくとも以前は嫌がらせをしていたのだろう?
もしもまたカグラが酷い嫌がらせをされたら.....」
「そこはご心配なく。」
なかなか食い下がらない皇太子に対し、俺はニコリと微笑んだ。
「バーベル公爵令嬢が言っていましたよ?
今では二人に興味すらない、自分とは一切関係のない赤の他人だと。
あぁ、二人仲良くお幸せにとも言っていましたね。
それに今では、新しい恋人に夢中みたいですし。」
(なのでどうぞご安心ください。
お前なんかに、もうシャーロットは恋心を抱く事なんてないほど冷めきってるんだよ。)
皇太子に笑顔を見せ続けながら心の中で悪態をつく。
(まぁ、恋人は嘘だけど。秘密裏に会ってるって事にしとけばいいだろ。
それにもう二人に興味ないって言ってたのは本当の事だし。
つーか、まだシャーロットが自分の事を好いてると思ってるとか自意識過剰なんだよ!)
そんな事を思いながら皇太子の顔を見れば、俺の言葉に目を丸くし、唖然とした表情のまま見事に固まっていた。
(勝ったな。それにしてもこの皇太子ほんとダメだな。
子爵令息の俺ごときにここまで言われて不敬だのなんだの言わないのはラッキーだとして、こんな奴が未来の皇帝なんて本当に大丈夫か?)
「そ...そうか....恋人が......
クレノくんの言い分はよく分かった。これからこちらでもっと詳細に調べよう。
今日は話し込んでしまってすまなかったね。貴重な意見をありがとう。」
俺の言葉で固まっていた皇太子が、大量の汗をかきながら逃げるように言う。
そして引き攣った笑顔を見せながら、皇太子が俺を扉まで送ってくれた。
「いえ、俺はただ正直に殿下へ自分の意見をお伝えしただけです。
こちらこそありがとうございました。とても楽しかったです。」
(皇太子殿下のその歪んだ顔が見れて。)
そう思ってしまう俺は、本当に性格が悪いなと自分で思う。
「では、失礼致します。」
「あ....あぁ。それじゃあまたね。」
こうして俺と皇太子の話し合いが終わり扉を出た俺の耳に聞こえてきたのは、生徒会室の中から何かが割れる大きな音だった。
そしてそれと同時に「痛っ!」という声も聞こえてきて、その声を聞いた俺は小さくガッツポーズをした。
(やっぱり皇太子も俺にイラついてたか......
お前の思い通りになんか、話しても動いてもやんねーよ!シャーロットの想いを無下にした罰だ!
ざまぁみろ!)
そう勝ち誇ったように、俺は上機嫌で口笛を拭きながら廊下を歩く。
「クレノ。」
俺を呼ぶ、いつも以上に低い声が聞こえるまでは。
419
お気に入りに追加
6,651
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
R指定はないけれど、なんでかゲームの攻略対象者になってしまったのだが(しかもBL)
黒崎由希
BL
目覚めたら、姉にゴリ推しされたBLゲームの世界に転生してた。
しかも人気キャラの王子様って…どういうことっ?
✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻
…ええっと…
もう、アレです。 タイトル通りの内容ですので、ぬるっとご覧いただけましたら幸いです。m(_ _)m
.
俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き
toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった!
※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。
pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/100148872
氷の華を溶かしたら
こむぎダック
BL
ラリス王国。
男女問わず、子供を産む事ができる世界。
前世の記憶を残したまま、転生を繰り返して来たキャニス。何度生まれ変わっても、誰からも愛されず、裏切られることに疲れ切ってしまったキャニスは、今世では、誰も愛さず何も期待しないと心に決め、笑わない氷華の貴公子と言われる様になった。
ラリス王国の第一王子ナリウスの婚約者として、王子妃教育を受けて居たが、手癖の悪い第一王子から、冷たい態度を取られ続け、とうとう婚約破棄に。
そして、密かにキャニスに、想いを寄せて居た第二王子カリストが、キャニスへの贖罪と初恋を実らせる為に奔走し始める。
その頃、母国の騒ぎから逃れ、隣国に滞在していたキャニスは、隣国の王子シェルビーからの熱烈な求愛を受けることに。
初恋を拗らせたカリストとシェルビー。
キャニスの氷った心を溶かす事ができるのは、どちらか?
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる