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目立たず静かなモブ生活を送りたい
しおりを挟む悪役令息との事件から一ヶ月が経った頃_____
噂によればノア・カーティスは学園を退学した後、俺が予想していた通り父親に勘当され、今は伯爵の紹介で国の最南端にある男爵家で下働きとして働いているそうだ。
しかもその男爵家の当主は身分や男女関係なく美しい者に手を出しまくると噂されている人物らしく、今回の件で伯爵が悪役令息にどれほど激怒しているかを物語っていた。
(真面目で優しい性格だと思っていた可愛い息子が、裏では嫌がらせや暴力を振るって自分を利用していた我儘息子だったなんて知ったら、そりゃ怒るよな。)
そして悪役令息が退学した翌日、同じ取り巻きだったモブ共がものすごい勢いで俺に謝罪してきた。
無理矢理だったとはいえ悪役令息と共に嫌がらせをしてきた奴らを許したくはなかったが、これ以上このモブ共に纏わりつかれても迷惑なので、もう二度と自分に関わらない事を条件にその謝罪を受け入れ、やっと自分が待ち望んでいた静かで平凡なモブ生活が訪れた。
......はずだった。
「クレノ、一緒に食事をしよう。」
(なんで今日も来るの?)
あの事件以降、第二皇子は俺のいる場所へ毎日やって来ては食事や散歩に誘ってきたり、甘いお菓子を持ってきてくれたりする。
嫌がらせの被害に遭った俺を生徒会の副会長として心配しているのは分かるし、第二皇子と一緒にいるのはとても楽しくて居心地も良い。お菓子だって沢山くれる。
それはすごく嬉しい。
ただ.....
(一緒にいると、すごく目立つんだよ!!)
他の生徒や先生達からの、なんでこんな奴と第二皇子が?という目が痛い。
ただでさえ第二皇子の容姿は目立つ。
注目の的になる事だって、第二皇子にとっては日常茶飯事だろう。
だけど俺は違う。
ただのモブで、本来なら第二皇子の隣を歩いたり一緒に食事したりして良いような身分でも容姿でもない。
それに注目される事にもまったく慣れていない。
(悪役令息がいなくなって、今度は取り巻きじゃないモブの一人として目立たずに静かで平凡な学園生活を送るつもりだったのに....)
「何をしている。早く行くぞ。」
「......はい。」
本当は「嫌です。」と断りたい。
でも相手はこの国の第二皇子で誘いを断る事もできず、素直に着いて行くしかなかった。
「はぁ....」
俺は周りから注がれる視線から逃れるように第二皇子の背中に隠れながら、第二皇子の後に続いた。
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