11 / 263
助けてくれたのは.....
しおりを挟む(寒っ....早く帰ろう....)
風邪を引かない内に寮へ戻ろうと、足早に噴水の前を通り過ぎようとした時だった。
「うわっ!」
突然周りを人に囲まれ、咄嗟に後ずさる。
そして周りを囲んだ人達の顔を見れば、俺と同じ悪役令息の取り巻きのモブ共だった。
(まさか.....)
「やぁ、クレノ・シアくん。」
そう言ってモブ達の間から出てきたのは、やはり悪役令息ノア・カーティスだ。
「...これは一体どういう事ですか?」
「どういう事かは君が一番良く分かってるんじゃない?」
「俺には分かりませんが?」
(まぁ、検討はついてるけど。)
「なら単刀直入に言わせてもらうけど、今すぐ自分から退学届を出してこの学園から消えてくれないかな?」
笑顔を貼り付けながら、悪役令息は悪びれる事なく俺に言い放った。
「一体君がどんな手を使って僕のレイ様に近付いたのかは知らないけれど、レイ様に近付いて犬のように媚びを売ってさ。君みたいな人間が学園にいる事が僕は本当に気に入らないし、不愉快なんだ。
だから僕が君を強制的に退学させる前に、自分自身で退学届けを出してよ。
そうすれば君の実家の子爵家にまでは手を出さないからさ。」
そう笑顔で当たり前のように悪役令息は脅してくる。
今まで退学した生徒達の事も、こうして実家を出し脅迫して退学に追い込んできたのだろうか。
大抵の生徒は実家の事で上の爵位にいる人間に脅されると抵抗できない。
だから今回、俺に対しても実家を使って脅してきたのだろう。
(本当にどうしようもないクズだな。
それに媚なんて売ってないし、近付いてきたのは俺じゃなくて第二皇子の方だし、つーか第二皇子がいつからお前のモノになったんだよ!)
勝手に第二皇子を自分のモノのように発言する悪役令息に対し、次第に怒りが込み上げてきた。
「......嫌です。」
「....は?今なんて?」
俺の言葉が予想外だったのか、目を見開いて聞き返してくる。
「だから、嫌です。
どうして俺が性根の腐ったクズの為に学園を退学しなければいけないんですか?」
「性根の腐ったクズって.....僕の事か?!!」
「そうですけど?」
お前以外に誰がいるんだよ。
「この際なのではっきりと言わせてもらいますけど、これまでノア様がしてきた我儘のせいで俺や他の人達がどれだけ迷惑をかけられてきたか分かってますか?
第二皇子の事だってそうですよ。完全に迷惑がられて嫌われるっていうのに毎日毎日付き纏って。
ノア様は光に群がる蛾ですか?」
にっこりと微笑みながら、悪役令息に向かって毒を吐く。
「なっ.....!!」
内心怒りで頭が沸騰している俺の口は、まだまだ止まらない。
「それに先ほどから第二皇子殿下を自分のモノかのように言っていますが、ノア様は毎日凝りもせずに振られてるじゃないですか。
別に殿下が誰と居ようが何をしていようが殿下の勝手で、ノア様は恋人でも婚約者でも親しい間柄でもなんでもない赤の他人。
それなのに殿下を自分のモノのように言って....
そういう自分勝手なところが、殿下に嫌われている原因なのでは?」
俺は怒りに任せ、今まで思っていた事をすべて伝えた。
言い終わった後少し冷静になった俺は、ちょっと言い過ぎたかな...と悪役令息を見た。
その顔は怒りで赤くなり、今にも俺に殴りかかりそうなほど拳を握っている。
(あ....やば......)
そう思った時にはもう遅く.....
「僕に....伯爵家の次男であるこの僕に、たかが貧乏子爵の次男風情が!!!」
そう叫んだ瞬間、悪役令息が俺の目の前で拳を振り上げた。
俺は訪れるであろう痛みと衝撃に耐えるべく、ぎゅっと目を瞑る。
(う.....あれ?)
痛みと衝撃に耐えようと力を入れていたのだが、一向にそれがくる事はない。
俺は恐る恐る瞑っていた目を開いた。
「これは一体どういう事だ。」
その声と共に、自分より体格の良い背中と一つに結んである美しい白銀の髪が俺の視界一面に広がった。
718
お気に入りに追加
6,691
あなたにおすすめの小説
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
男だけど幼馴染の男と結婚する事になった
小熊井つん
BL
2×××年、同性の友人同士で結婚する『親友婚』が大ブームになった世界の話。 主人公(受け)の“瞬介”は家族の罠に嵌められ、幼馴染のハイスペイケメン“彗”と半ば強制的に結婚させられてしまう。
受けは攻めのことをずっとただの幼馴染だと思っていたが、結婚を機に少しずつ特別な感情を抱くようになっていく。
美形気だるげ系攻め×平凡真面目世話焼き受けのほのぼのBL。
漫画作品もございます。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?


とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~
無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。
自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる