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助けてくれたのは.....
しおりを挟む(寒っ....早く帰ろう....)
風邪を引かない内に寮へ戻ろうと、足早に噴水の前を通り過ぎようとした時だった。
「うわっ!」
突然周りを人に囲まれ、咄嗟に後ずさる。
そして周りを囲んだ人達の顔を見れば、俺と同じ悪役令息の取り巻きのモブ共だった。
(まさか.....)
「やぁ、クレノ・シアくん。」
そう言ってモブ達の間から出てきたのは、やはり悪役令息ノア・カーティスだ。
「...これは一体どういう事ですか?」
「どういう事かは君が一番良く分かってるんじゃない?」
「俺には分かりませんが?」
(まぁ、検討はついてるけど。)
「なら単刀直入に言わせてもらうけど、今すぐ自分から退学届を出してこの学園から消えてくれないかな?」
笑顔を貼り付けながら、悪役令息は悪びれる事なく俺に言い放った。
「一体君がどんな手を使って僕のレイ様に近付いたのかは知らないけれど、レイ様に近付いて犬のように媚びを売ってさ。君みたいな人間が学園にいる事が僕は本当に気に入らないし、不愉快なんだ。
だから僕が君を強制的に退学させる前に、自分自身で退学届けを出してよ。
そうすれば君の実家の子爵家にまでは手を出さないからさ。」
そう笑顔で当たり前のように悪役令息は脅してくる。
今まで退学した生徒達の事も、こうして実家を出し脅迫して退学に追い込んできたのだろうか。
大抵の生徒は実家の事で上の爵位にいる人間に脅されると抵抗できない。
だから今回、俺に対しても実家を使って脅してきたのだろう。
(本当にどうしようもないクズだな。
それに媚なんて売ってないし、近付いてきたのは俺じゃなくて第二皇子の方だし、つーか第二皇子がいつからお前のモノになったんだよ!)
勝手に第二皇子を自分のモノのように発言する悪役令息に対し、次第に怒りが込み上げてきた。
「......嫌です。」
「....は?今なんて?」
俺の言葉が予想外だったのか、目を見開いて聞き返してくる。
「だから、嫌です。
どうして俺が性根の腐ったクズの為に学園を退学しなければいけないんですか?」
「性根の腐ったクズって.....僕の事か?!!」
「そうですけど?」
お前以外に誰がいるんだよ。
「この際なのではっきりと言わせてもらいますけど、これまでノア様がしてきた我儘のせいで俺や他の人達がどれだけ迷惑をかけられてきたか分かってますか?
第二皇子の事だってそうですよ。完全に迷惑がられて嫌われるっていうのに毎日毎日付き纏って。
ノア様は光に群がる蛾ですか?」
にっこりと微笑みながら、悪役令息に向かって毒を吐く。
「なっ.....!!」
内心怒りで頭が沸騰している俺の口は、まだまだ止まらない。
「それに先ほどから第二皇子殿下を自分のモノかのように言っていますが、ノア様は毎日凝りもせずに振られてるじゃないですか。
別に殿下が誰と居ようが何をしていようが殿下の勝手で、ノア様は恋人でも婚約者でも親しい間柄でもなんでもない赤の他人。
それなのに殿下を自分のモノのように言って....
そういう自分勝手なところが、殿下に嫌われている原因なのでは?」
俺は怒りに任せ、今まで思っていた事をすべて伝えた。
言い終わった後少し冷静になった俺は、ちょっと言い過ぎたかな...と悪役令息を見た。
その顔は怒りで赤くなり、今にも俺に殴りかかりそうなほど拳を握っている。
(あ....やば......)
そう思った時にはもう遅く.....
「僕に....伯爵家の次男であるこの僕に、たかが貧乏子爵の次男風情が!!!」
そう叫んだ瞬間、悪役令息が俺の目の前で拳を振り上げた。
俺は訪れるであろう痛みと衝撃に耐えるべく、ぎゅっと目を瞑る。
(う.....あれ?)
痛みと衝撃に耐えようと力を入れていたのだが、一向にそれがくる事はない。
俺は恐る恐る瞑っていた目を開いた。
「これは一体どういう事だ。」
その声と共に、自分より体格の良い背中と一つに結んである美しい白銀の髪が俺の視界一面に広がった。
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