9 / 28
諦めてないから。【手嶋×相田】
しおりを挟む
僕、手嶋恭介が顧問を務める吹奏楽部には少し困った女子生徒がいる。
「ダーリンおはよ!」
朝から僕の方に走ってきてハイテンションで挨拶をするこの生徒が問題児、相田心美。
うちの高校の2年生だ。
「おはよう。先生をそんな呼び方するんじゃないぞ。」
「えー、いつも呼ばせてくれるじゃないですかー。夢の中で!」
「夢と現実の区別くらいつけなさい。」
「はーい。」
「ほら、早く教室に行かないと遅刻なるぞ。」
「あ!ほんとだ!じゃあね、ダーリン!」
相田は下手くそな投げキッスをして教室に走って行った。
相田は僕のことが好きらしい。
先生として好きなのであればこれほど嬉しいことは無いが、相田は違う。
異性として好きらしい。
嬉しくないかと言われると正直悪い気はしない。
しかし正しいことではないのは明確だ。
だから彼女には諦めてもらわなければならない。
最悪、僕の教師人生が終わるかもしれないのだから。
日中の授業が全て終わり、音楽室には吹奏楽部の部員達が続々とやってくる。
部員が全員集まるとミーティングを行い、各々練習に向かう。
今日は各教室で楽器毎に別れて練習だ。
こういう時、僕は各教室を廻って練習を見てやるようにしている。
クラリネットの教室に着くとヤツの声が響く。
「ダーリンだ!待ってたよー!!!」
「だからその呼び方やめろ。1年生がマネするだろ。」
「なんで?私以外に先生のことダーリンって呼ばせないよ?それともまさか、浮気...」
「ちげーよ。ってか浮気も何も付き合ってすらないだろ。」
「私とは遊びだったのね。あんなに愛し合ったのに。」
「はいはい、練習練習。わからないところはないかー?」
「あー!今無視したー!ダーリンひっどーい!」
本当にめんどくさい。
1人1人の課題に答えていると相田が俺を呼んだ。
「何がわからないんだ?」
「どうすれば先生に私の愛が届くのかがわかりません。」
「届くことはありません。他にわからないところある人いないかー?」
「あ、ちょっと待って!じょーだんだって!」
「なんだ、まだなんかあるのか。」
「クラリネット吹いてる姿って、ちょっとエロくなーい?」
「エロくない。もう他の教室行くぞ。」
「えー、あと3時間くらいいてよー。」
「その時間は部活終わってるだろ。じゃあ次の教室行くから、みんな聞きたいことがあったら来いよー。」
さっさと教室をあとにする。相田が何か言っていたが聞こえないフリをした。
一通り全ての教室を廻り音楽室に戻ると、相田が俺の椅子に座っていた。
「相田何してるんだ。練習は。」
「先生に会いに来たの。悪い?」
「聞きたいことであるのか?」
「うーん、じゃあ」
相田は椅子から立ち上がると、俺の方に歩いてきた。
「私、先生のこと本気で好きなんですけど、どうしたら振り向いてくれますか?」
「あのなあ。」
相田の真剣な表情に、俺はあしらうことを躊躇した。
「先生と生徒の恋愛は問題でしかない。最悪俺にその気が無くても教師を辞めさせられるかもしれない。だから俺は何をされても振り向かない。」
「じゃあ私の気持ちはどうすれば良いんですか。」
泣きそうな目をするなよ。
俺が悪いみたいじゃないか。
「まあ諦めるしかないな。」
「先生、恋ってそんなに簡単に諦められないですよ。」
「だけど諦める以外はない。」
「それだけで諦められるなら恋じゃないです。」
「16年そこそこしか生きてないガキが恋を語るな。大人になればわかるさ。」
「私が大人になったら、チャンスはありますか?」
「さあな。」
音楽室にクラリネットの1年生が入ってきた。
「相田先輩、パートで合わせるんで来てください。」
「わかった!ありがとね。」
1年生が出ていくと相田も音楽室の出口に向かう。
音楽室を出る寸前に相田が笑顔で振り向いた。
「私、諦めないから。」
ガチャリとドアが閉まると俺は大きくため息をついた。
「めんどくさい。」
「ダーリンおはよ!」
朝から僕の方に走ってきてハイテンションで挨拶をするこの生徒が問題児、相田心美。
うちの高校の2年生だ。
「おはよう。先生をそんな呼び方するんじゃないぞ。」
「えー、いつも呼ばせてくれるじゃないですかー。夢の中で!」
「夢と現実の区別くらいつけなさい。」
「はーい。」
「ほら、早く教室に行かないと遅刻なるぞ。」
「あ!ほんとだ!じゃあね、ダーリン!」
相田は下手くそな投げキッスをして教室に走って行った。
相田は僕のことが好きらしい。
先生として好きなのであればこれほど嬉しいことは無いが、相田は違う。
異性として好きらしい。
嬉しくないかと言われると正直悪い気はしない。
しかし正しいことではないのは明確だ。
だから彼女には諦めてもらわなければならない。
最悪、僕の教師人生が終わるかもしれないのだから。
日中の授業が全て終わり、音楽室には吹奏楽部の部員達が続々とやってくる。
部員が全員集まるとミーティングを行い、各々練習に向かう。
今日は各教室で楽器毎に別れて練習だ。
こういう時、僕は各教室を廻って練習を見てやるようにしている。
クラリネットの教室に着くとヤツの声が響く。
「ダーリンだ!待ってたよー!!!」
「だからその呼び方やめろ。1年生がマネするだろ。」
「なんで?私以外に先生のことダーリンって呼ばせないよ?それともまさか、浮気...」
「ちげーよ。ってか浮気も何も付き合ってすらないだろ。」
「私とは遊びだったのね。あんなに愛し合ったのに。」
「はいはい、練習練習。わからないところはないかー?」
「あー!今無視したー!ダーリンひっどーい!」
本当にめんどくさい。
1人1人の課題に答えていると相田が俺を呼んだ。
「何がわからないんだ?」
「どうすれば先生に私の愛が届くのかがわかりません。」
「届くことはありません。他にわからないところある人いないかー?」
「あ、ちょっと待って!じょーだんだって!」
「なんだ、まだなんかあるのか。」
「クラリネット吹いてる姿って、ちょっとエロくなーい?」
「エロくない。もう他の教室行くぞ。」
「えー、あと3時間くらいいてよー。」
「その時間は部活終わってるだろ。じゃあ次の教室行くから、みんな聞きたいことがあったら来いよー。」
さっさと教室をあとにする。相田が何か言っていたが聞こえないフリをした。
一通り全ての教室を廻り音楽室に戻ると、相田が俺の椅子に座っていた。
「相田何してるんだ。練習は。」
「先生に会いに来たの。悪い?」
「聞きたいことであるのか?」
「うーん、じゃあ」
相田は椅子から立ち上がると、俺の方に歩いてきた。
「私、先生のこと本気で好きなんですけど、どうしたら振り向いてくれますか?」
「あのなあ。」
相田の真剣な表情に、俺はあしらうことを躊躇した。
「先生と生徒の恋愛は問題でしかない。最悪俺にその気が無くても教師を辞めさせられるかもしれない。だから俺は何をされても振り向かない。」
「じゃあ私の気持ちはどうすれば良いんですか。」
泣きそうな目をするなよ。
俺が悪いみたいじゃないか。
「まあ諦めるしかないな。」
「先生、恋ってそんなに簡単に諦められないですよ。」
「だけど諦める以外はない。」
「それだけで諦められるなら恋じゃないです。」
「16年そこそこしか生きてないガキが恋を語るな。大人になればわかるさ。」
「私が大人になったら、チャンスはありますか?」
「さあな。」
音楽室にクラリネットの1年生が入ってきた。
「相田先輩、パートで合わせるんで来てください。」
「わかった!ありがとね。」
1年生が出ていくと相田も音楽室の出口に向かう。
音楽室を出る寸前に相田が笑顔で振り向いた。
「私、諦めないから。」
ガチャリとドアが閉まると俺は大きくため息をついた。
「めんどくさい。」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
完結【R―18】様々な情事 短編集
秋刀魚妹子
恋愛
本作品は、過度な性的描写が有ります。 というか、性的描写しか有りません。
タイトルのお品書きにて、シチュエーションとジャンルが分かります。
好みで無いシチュエーションやジャンルを踏まないようご注意下さい。
基本的に、短編集なので登場人物やストーリーは繋がっておりません。
同じ名前、同じ容姿でも関係無い場合があります。
※ このキャラの情事が読みたいと要望の感想を頂いた場合は、同じキャラが登場する可能性があります。
※ 更新は不定期です。
それでは、楽しんで頂けたら幸いです。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【ショートショート】おやすみ
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
◆こちらは声劇用台本になりますが普通に読んで頂いても癒される作品になっています。
声劇用だと1分半ほど、黙読だと1分ほどで読みきれる作品です。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる