209 / 227
第10章 アマビリスの乙女
14 接触…アメリアside
しおりを挟む
まるで緊張感なく自分の口から零れた言葉に、自分でも多少は驚いたものの、思ったよりもすんなりと告白をしてしまった、と思ったのが正直な感想だった。
私ここで告白する気なんてなかったんだけど、考えるよりも先に言葉が口をついて出てしまったのだから仕方ない。
ある意味無意識だった。
そしてそれと同時にいつも以上に頭が冴えて、冷静に皆の様子を観察していた。
伯爵やスレインさんに限らず、エルも驚いたような顔をしていたけれど、それもまあ当然の反応よね。
ただルカだけはそうでもなく、溜息を吐いて呆れていたようだったけれど。とは言えこれも相変わらずの反応と言われればそう感じる。
それにしても今までは、あれだけ彼の事となると恥ずかしい気持ちの方が勝ってしまい、どうしても素直になれなかったと言うのに、一体どうしてしまったのか。
しかもこうして気持ちを打ち明けたからか、何処か気持ちもすっきりしていた。
と言っても未だ問題を解決した訳ではないので、これ以上浮ついてはいられないね。
私は気持ちを切り替えると伯爵に今一度向かい合う。
伯爵は未だ若干躊躇いながらもその口を開いた。
「分かった。君に任せよう」
先程の私のお願いを汲んでくれた形となった事に、私は内心嬉しく思った。
「ありがとうございます」
それに対し私も誠意をもって感謝の意を伝えたのだった。
「姉様…」
まだ不安そうに小さな声で愛妹が私を呼ぶ。
振り返れば何か言いた気な表情をしているけれど、その口は噤んだままエルは私の事を真っ直ぐに見つめていた。
エルの不安も尤も。当初は一人でフランに会う予定ではなかったのだから。
それに、もしかしたらルカのあの呆れたような態度も、私がした告白の事だけではなくて、一人で彼に会おうとする、傍から見たら無謀とも取れるような行動の事も含まれているのかもしれないわね。
まあ何も考えずに言ったわけではないから無謀ではないと思うけれど。
それはさておき、今は人の気持ちに機敏でとても心配性な、けれど心優しい可愛い妹を宥めないと。
「心配いらないわ、エル。彼と少しお話ししてくるだけよ。だから姉様に少しだけ時間を頂戴」
つい幼子に言い聞かせるような口調になってしまうが、私がエルを溺愛しているという事は今に始まった事ではないので、これはある意味いつも通りよね。
エルは小さい頃から大人びいているところがあったけれど、本来はまだ甘えても良い年頃の女の子。
ましてや自分の妹なのだから甘やかしたいし、もっと甘えてくれても良いのに、と常日頃から密かに思っているのも確かだった。
「…分かりました。姉様がそう言うのでしたら。でも姉様、何かあれば直ぐに呼んで下さいね」
納得――は言っていなさそうだけれど、それでも渋々頷いてくれたエルに、私は微笑みながら小さな頭を撫でた。
私が言うのもなんだけど、聞き訳が良すぎるのも困ったものね。
「良い子ね。
私も何かあれば直ぐに声を掛けるから心配しないで。
それじゃ、貴方はルカと一緒に待っていてね。ルカ、エルをお願いね」
可愛い妹からルカへ視線を移す。
愛しい妹の事を頼めば彼は、分かりました、と二つ返事で了承してみせる。
ルカの事だから頼まれなくともそう言うだろう事は分かっているけれど。
全くもって頼もしい従者だこと。本人には言わないが。
先程の話し合いの通り、皆には一度離れてもらい今は私一人だけ。
皆は別室で待機してもらう事になっていた。
皆には気を使わせてしまうけれど、これも彼との話し合いに集中したいが為。
さてと。いよいよね。
少しの緊張感の中、私は深呼吸をすると意を決して扉をノックし、中にいるであろう人物に声をかける。
「フラン?アメリアよ。中にいるんでしょう?
話をしたいのだけれど、少し良いかしら?」
そう言っては見たものの、残念ながら私の問いに彼からの返事はなかった。でもこれは想定内。伯爵から彼の様子を伺っていればこうなる事も想像出来る。
だからと言って諦める訳もないが。
すこし品位に欠けるが、強引に行かせてもらう事にしよう。
「悪いけれど扉を開けるわね」
一応断りは入れてから私はそっと扉を開けた。
中へ足を踏み入れると、何とも言い難い、肌を摩るような寒気を感じて思わず身を震わせる。
部屋の中は薄暗く明かりが灯っておらず、扉を閉めると真っ暗とまではいかないが、少し不気味な雰囲気を醸し出していた。
一瞬本当にフランがいるのか、と疑ってしまう程に。
が、しかしその人物は直ぐに見つかった。
目を凝らすと寝台の上、そこに件の彼の姿があった。
ただ学院で私に見せてくれていた、あの明るい笑顔ではなく、膝を両手で抱え込み、まるで何かに怯えるかのように体を小さくし、その様子は元気だった頃の彼からは、とても想像が付かないくらい変わり果てた姿だった。
それを見て私は衝動的に駆け寄りたい気持ちをぐっと堪え、彼を怯えさせないように注意しながらまずは声を掛けてみる。
「フラン?こんにちは。
勝手に入ってごめんなさい。少し貴方の顔が見たくて今日は屋敷にお邪魔させてもらったのよ」
「……」
少し離れた距離から話しかけてみるも、またしても返事はなく動く様子もない。それでもめげずに私は更に話しかける。
「伯爵やお兄さんも心配しているわよ。勿論私も…。
ねえそっちに行っても良い?」
そう言って一応返事を待ってみたが、やはり彼からの反応はない。
流石に少し悲しく思うが、それを表に出す事はせずに、今度はゆっくりと彼の方へと歩いていく。
幸いな事に彼は反応こそしてくれないものの、私が近づいても驚いたり混乱や錯乱等はしなかった。
そうして私は無事蹲る彼の元まで辿り着く。
「フラン」
愛しい人の名前を呼びながらゆっくりと手を伸ばした。
俯いていて見えない彼の顔が見たくて恋しくて、私も内心必死だったのだと思う。私の伸ばした手は振り払われる事もなくフランの頬にそっと触れる。
暗く冷たい部屋にずっといたせいか、頬がとても冷たかった。
きっと体も大分冷えてしまっている事だろう。そう思うと思わず彼を抱きしめたくなる。
このまま私の体温がフランに移ってくれたら良いのに…。
そう思うくらい私は彼が好きだ。
「フラン」
いつも通りのフランに早く戻って欲しい。あの笑顔が見たい。
彼を見た途端、心の内に隠していた感情が溢れかえる。
そんな思い、願いを込めてもう一度名前を呼んだ。するとある変化があった。
彼が私の呼びかけに答えるかのように、ゆっくりとだが顔を上げたのだ。感情のない空虚な目。正直目が合っているのかも定かではない。
それでも反応があった事は素直に嬉しい。
ただあまり長いは出来ないし、フランの傍にずっといたいけれど今はそれは叶わない。それがただ悲しい。
でもいつまでもこうしている訳にもいかないし、フランと会えて様子を見る事が出来ただけでも今は良しとしよう。
「フラン。来たばかりだけれど、私そろそろ行くわね。名残惜しいけれど、貴方もまだゆっくり休まないといけないもの。
けれどまた会いに来るから……待っていて」
名残惜しく感じながらも私はそう言うと彼からそっと離れた。それに彼からの反応は何もないが仕方ないと気持ちを切り替える。
そして最後に、彼の姿を目に焼き付けるように見つめてから私はその部屋を後にしたのだった。
どうやら自分でも気が付かない内に酷く緊張していたらしい。部屋を出れば自然と身体の力が抜けていくのが分かって思わず苦笑してしまう。
「どんなに見栄を張っていようとも結局これでは、私もまだまだね」
そう独り言ちる。
そして皆と合流する為、私は長く伸びる屋敷の廊下を歩いて行った。
その後そこまで時間は経っていないはずだが、皆と合流した途端伯爵には大丈夫だったかい?と心配をされ、エルからも伯爵同様、私を案じるような視線を向けらる始末。
何で皆してこんなに心配性なのかしら、と思わず笑ってしまいそうになった。
一先ず私は大丈夫ですと気丈に返し、そして次に私が見て来たフランの様子を伝えた。コンタクトはそこまで取れなかったけれど、少しの反応があった事等はしっかりと。特に気になっていたであろう、伯爵とスレインさんにはちゃんと伝えないといけない。
二人は私の話を聞くと少しほっとしたみたい。顔色はまだ悪いが、彼の様子を聞けて安心したのだろう。
それから私達は迷惑になるのであまり長居はせず、丁重に今日のお礼を二人に伝えると早々にシェルバート伯爵家を後にしたのだった。
二人はもう少しゆっくりして行ってくれて良いと言ってくれたのだが、今回はフランと会う事が目的みたいなものだったし、元々長居する気はなかったのだ。
それに幸運にも直接会えて、一瞬でも受け答えのような事も出来たのだから最初としては上出来だろう。
更に今日彼に会って分かった事もあった。
魅了の魔法はその名の通り心を引き付けて虜にする魔法。でも今日のフランのような会話もままならない程の効力を果たして発揮するものなのか……いや、魔法書にも記載されていた通り、相手の意識をかけた者に一時的に向けさせる程度の魔法であり、普通なら精神的にも身体的にも害はないもののはず。
それなのにフランの様子は正直言って異常だった。明らかに精神的にも身体的にも害が出ていて普通ではなかった。伯爵達が心配するのも無理ないくらいに。
つまり使用された魔法が魅了魔法でも、普通の魅了魔法ではないという事になるのではないか。そう私は判断する。
下手に改良した魔法か、はたまた違法や、禁忌とされているものに手を出した故の魔法効果か否か、と言ったところだろう。
……これはもう一度調べてみる必要があるわね。
シェルバート伯爵家を後にした私は心の中でそう呟いたのだった。
私ここで告白する気なんてなかったんだけど、考えるよりも先に言葉が口をついて出てしまったのだから仕方ない。
ある意味無意識だった。
そしてそれと同時にいつも以上に頭が冴えて、冷静に皆の様子を観察していた。
伯爵やスレインさんに限らず、エルも驚いたような顔をしていたけれど、それもまあ当然の反応よね。
ただルカだけはそうでもなく、溜息を吐いて呆れていたようだったけれど。とは言えこれも相変わらずの反応と言われればそう感じる。
それにしても今までは、あれだけ彼の事となると恥ずかしい気持ちの方が勝ってしまい、どうしても素直になれなかったと言うのに、一体どうしてしまったのか。
しかもこうして気持ちを打ち明けたからか、何処か気持ちもすっきりしていた。
と言っても未だ問題を解決した訳ではないので、これ以上浮ついてはいられないね。
私は気持ちを切り替えると伯爵に今一度向かい合う。
伯爵は未だ若干躊躇いながらもその口を開いた。
「分かった。君に任せよう」
先程の私のお願いを汲んでくれた形となった事に、私は内心嬉しく思った。
「ありがとうございます」
それに対し私も誠意をもって感謝の意を伝えたのだった。
「姉様…」
まだ不安そうに小さな声で愛妹が私を呼ぶ。
振り返れば何か言いた気な表情をしているけれど、その口は噤んだままエルは私の事を真っ直ぐに見つめていた。
エルの不安も尤も。当初は一人でフランに会う予定ではなかったのだから。
それに、もしかしたらルカのあの呆れたような態度も、私がした告白の事だけではなくて、一人で彼に会おうとする、傍から見たら無謀とも取れるような行動の事も含まれているのかもしれないわね。
まあ何も考えずに言ったわけではないから無謀ではないと思うけれど。
それはさておき、今は人の気持ちに機敏でとても心配性な、けれど心優しい可愛い妹を宥めないと。
「心配いらないわ、エル。彼と少しお話ししてくるだけよ。だから姉様に少しだけ時間を頂戴」
つい幼子に言い聞かせるような口調になってしまうが、私がエルを溺愛しているという事は今に始まった事ではないので、これはある意味いつも通りよね。
エルは小さい頃から大人びいているところがあったけれど、本来はまだ甘えても良い年頃の女の子。
ましてや自分の妹なのだから甘やかしたいし、もっと甘えてくれても良いのに、と常日頃から密かに思っているのも確かだった。
「…分かりました。姉様がそう言うのでしたら。でも姉様、何かあれば直ぐに呼んで下さいね」
納得――は言っていなさそうだけれど、それでも渋々頷いてくれたエルに、私は微笑みながら小さな頭を撫でた。
私が言うのもなんだけど、聞き訳が良すぎるのも困ったものね。
「良い子ね。
私も何かあれば直ぐに声を掛けるから心配しないで。
それじゃ、貴方はルカと一緒に待っていてね。ルカ、エルをお願いね」
可愛い妹からルカへ視線を移す。
愛しい妹の事を頼めば彼は、分かりました、と二つ返事で了承してみせる。
ルカの事だから頼まれなくともそう言うだろう事は分かっているけれど。
全くもって頼もしい従者だこと。本人には言わないが。
先程の話し合いの通り、皆には一度離れてもらい今は私一人だけ。
皆は別室で待機してもらう事になっていた。
皆には気を使わせてしまうけれど、これも彼との話し合いに集中したいが為。
さてと。いよいよね。
少しの緊張感の中、私は深呼吸をすると意を決して扉をノックし、中にいるであろう人物に声をかける。
「フラン?アメリアよ。中にいるんでしょう?
話をしたいのだけれど、少し良いかしら?」
そう言っては見たものの、残念ながら私の問いに彼からの返事はなかった。でもこれは想定内。伯爵から彼の様子を伺っていればこうなる事も想像出来る。
だからと言って諦める訳もないが。
すこし品位に欠けるが、強引に行かせてもらう事にしよう。
「悪いけれど扉を開けるわね」
一応断りは入れてから私はそっと扉を開けた。
中へ足を踏み入れると、何とも言い難い、肌を摩るような寒気を感じて思わず身を震わせる。
部屋の中は薄暗く明かりが灯っておらず、扉を閉めると真っ暗とまではいかないが、少し不気味な雰囲気を醸し出していた。
一瞬本当にフランがいるのか、と疑ってしまう程に。
が、しかしその人物は直ぐに見つかった。
目を凝らすと寝台の上、そこに件の彼の姿があった。
ただ学院で私に見せてくれていた、あの明るい笑顔ではなく、膝を両手で抱え込み、まるで何かに怯えるかのように体を小さくし、その様子は元気だった頃の彼からは、とても想像が付かないくらい変わり果てた姿だった。
それを見て私は衝動的に駆け寄りたい気持ちをぐっと堪え、彼を怯えさせないように注意しながらまずは声を掛けてみる。
「フラン?こんにちは。
勝手に入ってごめんなさい。少し貴方の顔が見たくて今日は屋敷にお邪魔させてもらったのよ」
「……」
少し離れた距離から話しかけてみるも、またしても返事はなく動く様子もない。それでもめげずに私は更に話しかける。
「伯爵やお兄さんも心配しているわよ。勿論私も…。
ねえそっちに行っても良い?」
そう言って一応返事を待ってみたが、やはり彼からの反応はない。
流石に少し悲しく思うが、それを表に出す事はせずに、今度はゆっくりと彼の方へと歩いていく。
幸いな事に彼は反応こそしてくれないものの、私が近づいても驚いたり混乱や錯乱等はしなかった。
そうして私は無事蹲る彼の元まで辿り着く。
「フラン」
愛しい人の名前を呼びながらゆっくりと手を伸ばした。
俯いていて見えない彼の顔が見たくて恋しくて、私も内心必死だったのだと思う。私の伸ばした手は振り払われる事もなくフランの頬にそっと触れる。
暗く冷たい部屋にずっといたせいか、頬がとても冷たかった。
きっと体も大分冷えてしまっている事だろう。そう思うと思わず彼を抱きしめたくなる。
このまま私の体温がフランに移ってくれたら良いのに…。
そう思うくらい私は彼が好きだ。
「フラン」
いつも通りのフランに早く戻って欲しい。あの笑顔が見たい。
彼を見た途端、心の内に隠していた感情が溢れかえる。
そんな思い、願いを込めてもう一度名前を呼んだ。するとある変化があった。
彼が私の呼びかけに答えるかのように、ゆっくりとだが顔を上げたのだ。感情のない空虚な目。正直目が合っているのかも定かではない。
それでも反応があった事は素直に嬉しい。
ただあまり長いは出来ないし、フランの傍にずっといたいけれど今はそれは叶わない。それがただ悲しい。
でもいつまでもこうしている訳にもいかないし、フランと会えて様子を見る事が出来ただけでも今は良しとしよう。
「フラン。来たばかりだけれど、私そろそろ行くわね。名残惜しいけれど、貴方もまだゆっくり休まないといけないもの。
けれどまた会いに来るから……待っていて」
名残惜しく感じながらも私はそう言うと彼からそっと離れた。それに彼からの反応は何もないが仕方ないと気持ちを切り替える。
そして最後に、彼の姿を目に焼き付けるように見つめてから私はその部屋を後にしたのだった。
どうやら自分でも気が付かない内に酷く緊張していたらしい。部屋を出れば自然と身体の力が抜けていくのが分かって思わず苦笑してしまう。
「どんなに見栄を張っていようとも結局これでは、私もまだまだね」
そう独り言ちる。
そして皆と合流する為、私は長く伸びる屋敷の廊下を歩いて行った。
その後そこまで時間は経っていないはずだが、皆と合流した途端伯爵には大丈夫だったかい?と心配をされ、エルからも伯爵同様、私を案じるような視線を向けらる始末。
何で皆してこんなに心配性なのかしら、と思わず笑ってしまいそうになった。
一先ず私は大丈夫ですと気丈に返し、そして次に私が見て来たフランの様子を伝えた。コンタクトはそこまで取れなかったけれど、少しの反応があった事等はしっかりと。特に気になっていたであろう、伯爵とスレインさんにはちゃんと伝えないといけない。
二人は私の話を聞くと少しほっとしたみたい。顔色はまだ悪いが、彼の様子を聞けて安心したのだろう。
それから私達は迷惑になるのであまり長居はせず、丁重に今日のお礼を二人に伝えると早々にシェルバート伯爵家を後にしたのだった。
二人はもう少しゆっくりして行ってくれて良いと言ってくれたのだが、今回はフランと会う事が目的みたいなものだったし、元々長居する気はなかったのだ。
それに幸運にも直接会えて、一瞬でも受け答えのような事も出来たのだから最初としては上出来だろう。
更に今日彼に会って分かった事もあった。
魅了の魔法はその名の通り心を引き付けて虜にする魔法。でも今日のフランのような会話もままならない程の効力を果たして発揮するものなのか……いや、魔法書にも記載されていた通り、相手の意識をかけた者に一時的に向けさせる程度の魔法であり、普通なら精神的にも身体的にも害はないもののはず。
それなのにフランの様子は正直言って異常だった。明らかに精神的にも身体的にも害が出ていて普通ではなかった。伯爵達が心配するのも無理ないくらいに。
つまり使用された魔法が魅了魔法でも、普通の魅了魔法ではないという事になるのではないか。そう私は判断する。
下手に改良した魔法か、はたまた違法や、禁忌とされているものに手を出した故の魔法効果か否か、と言ったところだろう。
……これはもう一度調べてみる必要があるわね。
シェルバート伯爵家を後にした私は心の中でそう呟いたのだった。
0
お気に入りに追加
136
あなたにおすすめの小説
老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜
二階堂吉乃
ファンタジー
瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。
白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。
後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。
人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。

隠密スキルでコレクター道まっしぐら
たまき 藍
ファンタジー
没落寸前の貴族に生まれた少女は、世にも珍しい”見抜く眼”を持っていた。
その希少性から隠し、閉じ込められて5つまで育つが、いよいよ家計が苦しくなり、人買いに売られてしまう。
しかし道中、隊商は強力な魔物に襲われ壊滅。少女だけが生き残った。
奇しくも自由を手にした少女は、姿を隠すため、魔物はびこる森へと駆け出した。
これはそんな彼女が森に入って10年後、サバイバル生活の中で隠密スキルを極め、立派な素材コレクターに成長してからのお話。

異世界で温泉はじめました 〜聖女召喚に巻き込まれたので作ってみたら魔物に大人気です!〜
冬野月子
恋愛
アルバイトの帰り道。ヒナノは魔王を倒す聖女だという後輩リンの召喚に巻き込まれた。
帰る術がないため仕方なく異世界で暮らし始めたヒナノは食事係として魔物討伐に同行することになる。そこで魔物の襲撃に遭い崖から落ち大怪我を負うが、自分が魔法を使えることを知った。
山の中を彷徨ううちに源泉を見つけたヒナノは魔法を駆使して大好きな温泉を作る。その温泉は魔法の効果か、魔物の傷も治せるのだ。
助けたことがきっかけで出会った半魔の青年エーリックと暮らしながら、魔物たちを癒す平穏な日々を過ごしていたある日、温泉に勇者たちが現れた。
※小説家になろう、カクヨムでも連載しています

私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシャリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

精霊が俺の事を気に入ってくれているらしく過剰に尽くしてくれる!が、周囲には精霊が見えず俺の評価はよろしくない
よっしぃ
ファンタジー
俺には僅かながら魔力がある。この世界で魔力を持った人は少ないからそれだけで貴重な存在のはずなんだが、俺の場合そうじゃないらしい。
魔力があっても普通の魔法が使えない俺。
そんな俺が唯一使える魔法・・・・そんなのねーよ!
因みに俺の周囲には何故か精霊が頻繁にやってくる。
任意の精霊を召還するのは実はスキルなんだが、召喚した精霊をその場に留め使役するには魔力が必要だが、俺にスキルはないぞ。
極稀にスキルを所持している冒険者がいるが、引く手あまたでウラヤマ!
そうそう俺の総魔力量は少なく、精霊が俺の周囲で顕現化しても何かをさせる程の魔力がないから直ぐに姿が消えてしまう。
そんなある日転機が訪れる。
いつもの如く精霊が俺の魔力をねだって頂いちゃう訳だが、大抵俺はその場で気を失う。
昔ひょんな事から助けた精霊が俺の所に現れたんだが、この時俺はたまたまうつ伏せで倒れた。因みに顔面ダイブで鼻血が出たのは内緒だ。
そして当然ながら意識を失ったが、ふと目を覚ますと俺の周囲にはものすごい数の魔石やら素材があって驚いた。
精霊曰く御礼だってさ。
どうやら俺の魔力は非常に良いらしい。美味しいのか効果が高いのかは知らんが、精霊の好みらしい。
何故この日に限って精霊がずっと顕現化しているんだ?
どうやら俺がうつ伏せで地面に倒れたのが良かったらしい。
俺と地脈と繋がって、魔力が無限増殖状態だったようだ。
そしてこれが俺が冒険者として活動する時のスタイルになっていくんだが、理解しがたい体勢での活動に周囲の理解は得られなかった。
そんなある日、1人の女性が俺とパーティーを組みたいとやってきた。
ついでに精霊に彼女が呪われているのが分かったので解呪しておいた。
そんなある日、俺は所属しているパーティーから追放されてしまった。
そりゃあ戦闘中だろうがお構いなしに地面に寝そべってしまうんだから、あいつは一体何をしているんだ!となってしまうのは仕方がないが、これでも貢献していたんだぜ?
何せそうしている間は精霊達が勝手に魔物を仕留め、素材を集めてくれるし、俺の身をしっかり守ってくれているんだが、精霊が視えないメンバーには俺がただ寝ているだけにしか見えないらしい。
因みにダンジョンのボス部屋に1人放り込まれたんだが、俺と先にパーティーを組んでいたエレンは俺を助けにボス部屋へ突入してくれた。
流石にダンジョン中層でも深層のボス部屋、2人ではなあ。
俺はダンジョンの真っただ中に追放された訳だが、くしくも追放直後に俺の何かが変化した。
因みに寝そべっていなくてはいけない理由は顔面と心臓、そして掌を地面にくっつける事で地脈と繋がるらしい。地脈って何だ?
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。

薬屋の少女と迷子の精霊〜私にだけ見える精霊は最強のパートナーです〜
蒼井美紗
ファンタジー
孤児院で代わり映えのない毎日を過ごしていたレイラの下に、突如飛び込んできたのが精霊であるフェリスだった。人間は精霊を見ることも話すこともできないのに、レイラには何故かフェリスのことが見え、二人はすぐに意気投合して仲良くなる。
レイラが働く薬屋の店主、ヴァレリアにもフェリスのことは秘密にしていたが、レイラの危機にフェリスが力を行使したことでその存在がバレてしまい……
精霊が見えるという特殊能力を持った少女と、そんなレイラのことが大好きなちょっと訳あり迷子の精霊が送る、薬屋での異世界お仕事ファンタジーです。
※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

プラス的 異世界の過ごし方
seo
ファンタジー
日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。
呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。
乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。
#不定期更新 #物語の進み具合のんびり
#カクヨムさんでも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる