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第10章 アマビリスの乙女
9 学院の宴
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近々学院主催のパーティーが催されるのだが、そこが勝負だと私は思っている。
学院で開催されるパーティーは日頃勉学に励む生徒達を労うものでもあり、息抜きの場でもある。
その為自由参加であるにもかかわらず、生徒達の間で大人気のイベントと化しており参加人数も多数。
しかも学年関係なく集まるので、誰とでも交流を持てる社交の場でもあった。権力を狙い媚びを売ろうとする者、唯々パーティーを楽しもうとしている者、将来の為に社交の場に慣れておこうと何となく参加する者等、それぞれ多種多様な理由でこの宴に参加するのだ。
そんな中私はと言えば勿論楽しむ為、ではなくベラ先輩達の動向を探るべく参加するのだが。
そしてあわよくば何かしらの情報が掴めればそれは大収穫となる。こんな好機見逃す理由はなかった。
ちなみに保護者同伴可なので、今回は母様にも参加をお願いしようと考えている。母様は普段はふんわり優しい人だけどその反面起こるとそれはそれは怖い。それが娘の事ともなれば尚更に。
ただ味方としてこれ程までに心強い人はいないだろう。
それに学院で開催されるから、ユキ達にも参加をお願い出来るのが有難かった。何が起こるか分からないし、味方は出来るだけ多い方が良い。
これ以上姉様を悲しませない為にも全力を尽くすのみだ。
こうして迎えたパーティー当日。
開場されると続々とこれでもかと着飾った人々が入場をしてくる中、私達もその人集りに紛れるようにして入出を果たした。
今回のメンバーは姉様と私を除くと、ユキ、アリンちゃん、母様とそして――。
「はぁ…」
この場には不釣合いな大きな溜息を吐き、如何にも不満な態度を取っている彼――。
「ちょっとレヴィ君、そんなに嫌そうな顔しないで下さい」
パーティー等華やかな場をあまり好まないでお馴染み、友人のレヴィ君。
「嫌にもなるだろ。ただでさえそこら辺から容赦なく刺さる視線にイライラしているって言うのに。こんなパーティーなんて面倒なだけだろ」
彼は心底嫌だと嫌悪感だだ漏れの顔で言った。
まあ気持ちは分からなくもないけれど、今は我慢だよ、我慢。それにパーティーは慣れるしかないもの。最早貴族の嗜み。貴族である以上は仕方の無い事だ。
「全く、本当に子供ね。仕方ないのだから我慢なさい」
「おい、誰が子供だ!」
ユキの挑発にまんまと反応を示してしまうレヴィ君。ユキはその様子に可笑しいと言わんばかりの含み笑いを浮かべ、レヴィ君は眉が吊り上がり怒りモードに。
あーあ、いつもの展開になってしまった…。
二人のやり取りに私は苦笑する他なかった。
「あらあら楽しそうね。私も混ぜてちょうだい」
とそこへ自らその嵐の中に飛び込もうとする、本当の怖いもの無しが現れる。
「母様…」
「そんな顔しないでエル。半分は冗談よ、冗談。楽しそうだったものだからつい。
仲が良いのはとても素晴らしいことよ」
なんて母様がそう言うと、その場の空気が一気に和んでしまうのだから凄い。
言い争いをしていた当の二人も、母様の言葉にお互い言い争いをやめて何とも言えない顔をしている。
母様、流石です!
「もう母様ったら、本当にブレないんだから」
「ふふふ。アメリア、彼の前でもこれくらいの戯れが出来なくては駄目よ?今のままではまだまだね」
「か、母様っ…!」
‘‘彼‘‘と言う言葉が誰を指すのか思い至ったらしい。姉様の顔がみるみるうちに赤く染まっていく。それに対し母様は、そんな娘の様子を目を細め、微笑ましそうに見つめていた。
姉様可愛いな、なんて思ってしまった私も同様で人の事言えないな。
「まあ普段通りの感じになってしまいましたが…。
同じく宜しくお願いしますね、アリンちゃん」
この成り行きを静観していたもう一人、アリンちゃんにお願いね、と声を掛ける。
口数少ない彼女はそれにコクリと頷く事で答えた。
さて、そろそろ時間だ。絶対に何かしら情報を掴むんだ。
楽しい雰囲気とは正反対に、私はこれでもかと真剣な気持ちを胸に、直に始まるパーティーに臨むのだった。
学院で開催されるパーティーは日頃勉学に励む生徒達を労うものでもあり、息抜きの場でもある。
その為自由参加であるにもかかわらず、生徒達の間で大人気のイベントと化しており参加人数も多数。
しかも学年関係なく集まるので、誰とでも交流を持てる社交の場でもあった。権力を狙い媚びを売ろうとする者、唯々パーティーを楽しもうとしている者、将来の為に社交の場に慣れておこうと何となく参加する者等、それぞれ多種多様な理由でこの宴に参加するのだ。
そんな中私はと言えば勿論楽しむ為、ではなくベラ先輩達の動向を探るべく参加するのだが。
そしてあわよくば何かしらの情報が掴めればそれは大収穫となる。こんな好機見逃す理由はなかった。
ちなみに保護者同伴可なので、今回は母様にも参加をお願いしようと考えている。母様は普段はふんわり優しい人だけどその反面起こるとそれはそれは怖い。それが娘の事ともなれば尚更に。
ただ味方としてこれ程までに心強い人はいないだろう。
それに学院で開催されるから、ユキ達にも参加をお願い出来るのが有難かった。何が起こるか分からないし、味方は出来るだけ多い方が良い。
これ以上姉様を悲しませない為にも全力を尽くすのみだ。
こうして迎えたパーティー当日。
開場されると続々とこれでもかと着飾った人々が入場をしてくる中、私達もその人集りに紛れるようにして入出を果たした。
今回のメンバーは姉様と私を除くと、ユキ、アリンちゃん、母様とそして――。
「はぁ…」
この場には不釣合いな大きな溜息を吐き、如何にも不満な態度を取っている彼――。
「ちょっとレヴィ君、そんなに嫌そうな顔しないで下さい」
パーティー等華やかな場をあまり好まないでお馴染み、友人のレヴィ君。
「嫌にもなるだろ。ただでさえそこら辺から容赦なく刺さる視線にイライラしているって言うのに。こんなパーティーなんて面倒なだけだろ」
彼は心底嫌だと嫌悪感だだ漏れの顔で言った。
まあ気持ちは分からなくもないけれど、今は我慢だよ、我慢。それにパーティーは慣れるしかないもの。最早貴族の嗜み。貴族である以上は仕方の無い事だ。
「全く、本当に子供ね。仕方ないのだから我慢なさい」
「おい、誰が子供だ!」
ユキの挑発にまんまと反応を示してしまうレヴィ君。ユキはその様子に可笑しいと言わんばかりの含み笑いを浮かべ、レヴィ君は眉が吊り上がり怒りモードに。
あーあ、いつもの展開になってしまった…。
二人のやり取りに私は苦笑する他なかった。
「あらあら楽しそうね。私も混ぜてちょうだい」
とそこへ自らその嵐の中に飛び込もうとする、本当の怖いもの無しが現れる。
「母様…」
「そんな顔しないでエル。半分は冗談よ、冗談。楽しそうだったものだからつい。
仲が良いのはとても素晴らしいことよ」
なんて母様がそう言うと、その場の空気が一気に和んでしまうのだから凄い。
言い争いをしていた当の二人も、母様の言葉にお互い言い争いをやめて何とも言えない顔をしている。
母様、流石です!
「もう母様ったら、本当にブレないんだから」
「ふふふ。アメリア、彼の前でもこれくらいの戯れが出来なくては駄目よ?今のままではまだまだね」
「か、母様っ…!」
‘‘彼‘‘と言う言葉が誰を指すのか思い至ったらしい。姉様の顔がみるみるうちに赤く染まっていく。それに対し母様は、そんな娘の様子を目を細め、微笑ましそうに見つめていた。
姉様可愛いな、なんて思ってしまった私も同様で人の事言えないな。
「まあ普段通りの感じになってしまいましたが…。
同じく宜しくお願いしますね、アリンちゃん」
この成り行きを静観していたもう一人、アリンちゃんにお願いね、と声を掛ける。
口数少ない彼女はそれにコクリと頷く事で答えた。
さて、そろそろ時間だ。絶対に何かしら情報を掴むんだ。
楽しい雰囲気とは正反対に、私はこれでもかと真剣な気持ちを胸に、直に始まるパーティーに臨むのだった。
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