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第8章 ノスタルジア

15 急転直下…レヴィside

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(あいつ本当に大丈夫か…)

そう思った瞬間ハッと我に返る。


何がいるか分からない薄暗い森の中。
警戒を怠ってはいけない最中、気が付けばウルティナと別行動をとっているエルの事が頭にちらついて集中できない。
ウルティナが付いているとはいえ、エルはおっちょこちょいで危なっかしいやつだ。だから尚更気にかかって仕方がないのだ。

まあそれは俺に限った事ではないようだが。

「レヴィ。エルは大丈夫だろうか…?」

隣を歩く殿下も気が気でないと心配の色が色濃く顔に出ている。
エルの事を信頼してはいるのだろうが、それでも落ち着かないのだろう。
それは単に友達だからだけではない気もするが。

「まあウルティナが付いているから大丈夫なんじゃないですかね。
それにエルは実力あるし、普段通り力を出せればそこらの魔法士や魔物なんかには負けないと思いますよ」

(冷静に状況を判断して行動出来ればだけど)

と心の中で付け加える。

「そうか、そうだな!お前がそこまで言うなら問題はないな。安心したぞ。
ところで普段通りの話し方で良いぞ。何だか堅苦しいし、お前もその方が良いだろうしな」

どうやら俺の放った言葉で殿下の不安は拭い去れたらしい。
上機嫌に話を続けている。

「そうか。まあ確かに気を遣うからそうしてくれると助かるな」

「ははは。素直だな。
それにしても先程の言葉、余程エルの事を信頼しているんだな。
普段はそんな事言わないだろうに」

何かを探るような目で今度は俺の事を見て来る。
これがこの人の掴めないところだ。
フワフワしているのかと思いきや、鋭く人の心を読んでくる事もある。

…本当にこの王子は、緩いのか鋭いのか分からなくなってくる…。


ただルーカスのように顔は笑っているのに目が笑っていないと言う、あからさまな態度を取られるよりはましか。
あいつは面倒臭い。
今も俺達の後ろをついて来ているが、鬱陶しい程あいつの視線を感じる…。
無視だ、無視。


「確かに普段本人には言わないが、信頼できる相手だって思っている。
助けられた事もあったしな」

「そうか」

本人の前では当然言わない。だけど信頼も信用もしているし、危なっかしい反面、助けられた事があるのも事実。
ただその事を殿下にサラっと言えてしまった事には今、自分でも驚いた。

そしてそれを聞いてきた殿下は、聞いてきた割にそれ以上の追及をしてこなかった。
俺としてもあの時の事は情けない姿を晒したと軽く黒歴史だと思っているから、正直これ以上聞かれなくて良かったと思う。


そう言えばその時からだったか。妙にエルの事を意識するようになったのは。

それに先日アインフェルト王国へ行って女王から昔話を聞いたばかりで、多少混乱していると言う自覚もあるが。
女王の話した事が本当だとしたら、俺とエルは話に出てきた人物の生まれ変わり、と言う事になるのだろうか。
まあ信じがたい話だけど、そうだとしても俺は俺だ。今まで通り、これからも俺の思う道を歩んでいくのに変わりはない。


そんな事を周りを気にしながら考えていると殿下が急に立ち止まった。

「レヴィ。何か来るぞ」

どうした?と問いかける前に殿下が答えた。道の先から目を逸らさずに。
俺もそちらへ視線を向ける。
姿はないが、確かに彼の言う通り微かな音が聞こえてくる。

足音、か…。

微かに聞こえてくるその音はテンポ良く、軽い足取りでこちらに近づいてくる。

魔物ではなく人間。だが問題はそれが敵か味方か。
いや、そもそも人間に害のある霧が発生する森で、しかもこんな早朝に人がいるわけがない。

恐らく――敵。

「……」

緊張感漂う中暗闇からヌッと人影が現れた。

「…ここから先へは行かせない…」

そいつからぼそりと呟かれる言葉。それは思ったよりも高く、声からして子どものようだった。

暗い森に溶け込むように黒いローブを頭被り、身体をすっぽり覆っている為顔は見えず、ただただ更なる不気味さを醸し出しているのみだ。

ただ一つ言える事は、その身なりを見なくとも、この状況でここに現れた時点でこの場にいる全員が思った事だろう。

―――こいつは紛れもなく敵だ、と。


しかも運が良いのか悪いのか、俺は気づいてしまった。
一瞬で全身に鳥肌が立つ程禍々しく、怪しく光る赤い瞳がこちらをじろりと見ていた事に。

抑揚のない声だった割に目は殺伐としていて、只者じゃないと俺の中の警鐘が鳴り響いたくらいだ。


「これはまずいかもな……」

思わずそう声に出てしまう。

そしてそれを裏付けるかのように額からは冷たい汗が伝った。
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