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第8章 ノスタルジア
14 早朝の探索
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その日事態は急展開を迎える。
早朝。
私達は再び森へと足を運んでいた。
今回こそは森の奥まで進むつもりで。
前回は魔物の襲来と言う予想外の事態に断念せざるを得なかったが、今日はそれを踏まえて対策もばっちりしてきた。
私達の他に、城から魔法士、騎士を派遣してもらい不測の事態にも対応できるようにしたのだ。
彼らには周囲を警戒してもらいつつ、敵が攻めて来た時には壁となって立ちはだかってくれる。
だから私達は何としてでも目的地まで辿り着かなければならない。
…出来る事なら今日中に解決したいところだけど。
そしてそれとは別に私には気になっている事があった。
『ウル、本当にこの森には精霊がいるのでしょうか?』
心の中で近くにいるだろう彼女に語り掛けた。
今私達が足を踏み入れているのは別名『精霊の森』とも呼ばれている場所。
名前からして適当に名付けたのではなく、何かしらの由来がありそうだが、どうもこの森からは精霊の存在が感じられない。
私とて全ての精霊の気配を感じ取れるわけではないけど、こんなにも静かで何も感じないなんて事が果たしてあるのだろうか、とずっと不思議に思っていたのだ。
その問いにウルの返答が返ってくる。
『いるわ。ただ今は瘴気が強すぎて身を隠している状態のようね』
『そうだったんですね。無事なようで良かったです。それならどうにかして彼らの力を借りられないものでしょうか?』
『それもそうね。私が協力を要請すれば応じてくれるでしょうし』
自分の呼びかけに応じない者はいないと言わんばかりに自信満々なウルの声に、思わずくすっと笑ってしまった。
『ただ精霊と言うのは気まぐれな存在なのよね。住んでいる土地に住めなくなれば去って行くと言うのが殆ど。
私のようにその土地に思い入れがあるものも中にはいるけれど…』
『きっと大丈夫ですよ。私も協力しますし、それに今は非常事態です。何としてでも協力していただかないと!』
呑気にしているようで本当はそこまで余裕はない。ある意味精霊の浄化の力に頼り切っている面があるのが現実だ。
私も魔法を極めて使えたらよかったのにな。
『そうよね。今は一刻を争う時。助け合わないと』
『はい!
では私達は一度別行動をしましょう。そうした方が堂々と会話も出来ますし』
『分かったわ』
ウルとの話が纏まったところで早速その旨を殿下とレヴィ君に耳打ちし状況を伝えた。
私が精霊を見えると言う事を知っている二人には事情を話しても問題ないしね。まあそう言う意味ではルカとアリンちゃんもなんだけど、こそこそ話しているとリッカさんに怪しまれちゃうかもしれないからね。
殿下達に後で伝えてもらえば大丈夫だよね?
ついでにリッカさんにも上手く言っておいてもらえると助かるんだけど。
「事情は分かったが本当に一人で大丈夫か?」
特に騒ぎ立てる事もなく静かに頷いてくれる殿下。ただ私が皆と離れて別行動する事は納得していないみたいだ。
でもこれは私にしか出来ない事だから譲れませんよ。
「大丈夫です。それに一人ではありませんから」
告げた瞬間光が瞬く。きっとウルだ。
それを見た殿下は溜め息一つ。
「分かった。くれぐれも気を付けてくれ」
「はい」
「迷子になるなよ」
「もう!なりませんよ……たぶん」
素直に心配してくれる殿下に対し、レヴィ君は相変わらず。
心配してくれているのだか、ただの冷やかしなのか……。
まったく。可愛くないんだから。
でもこれが彼の通常運転なんだよね。
「では後でまた会おう」
「はい、また後で」
そうして軽く言葉を交わし、私はウルと共に別行動を開始した。
まずはウルに精霊の気配を教えてもらいながら接触する必要がある。
その為にも今私にできる最善の事を考えながら先を急いだ。
早朝。
私達は再び森へと足を運んでいた。
今回こそは森の奥まで進むつもりで。
前回は魔物の襲来と言う予想外の事態に断念せざるを得なかったが、今日はそれを踏まえて対策もばっちりしてきた。
私達の他に、城から魔法士、騎士を派遣してもらい不測の事態にも対応できるようにしたのだ。
彼らには周囲を警戒してもらいつつ、敵が攻めて来た時には壁となって立ちはだかってくれる。
だから私達は何としてでも目的地まで辿り着かなければならない。
…出来る事なら今日中に解決したいところだけど。
そしてそれとは別に私には気になっている事があった。
『ウル、本当にこの森には精霊がいるのでしょうか?』
心の中で近くにいるだろう彼女に語り掛けた。
今私達が足を踏み入れているのは別名『精霊の森』とも呼ばれている場所。
名前からして適当に名付けたのではなく、何かしらの由来がありそうだが、どうもこの森からは精霊の存在が感じられない。
私とて全ての精霊の気配を感じ取れるわけではないけど、こんなにも静かで何も感じないなんて事が果たしてあるのだろうか、とずっと不思議に思っていたのだ。
その問いにウルの返答が返ってくる。
『いるわ。ただ今は瘴気が強すぎて身を隠している状態のようね』
『そうだったんですね。無事なようで良かったです。それならどうにかして彼らの力を借りられないものでしょうか?』
『それもそうね。私が協力を要請すれば応じてくれるでしょうし』
自分の呼びかけに応じない者はいないと言わんばかりに自信満々なウルの声に、思わずくすっと笑ってしまった。
『ただ精霊と言うのは気まぐれな存在なのよね。住んでいる土地に住めなくなれば去って行くと言うのが殆ど。
私のようにその土地に思い入れがあるものも中にはいるけれど…』
『きっと大丈夫ですよ。私も協力しますし、それに今は非常事態です。何としてでも協力していただかないと!』
呑気にしているようで本当はそこまで余裕はない。ある意味精霊の浄化の力に頼り切っている面があるのが現実だ。
私も魔法を極めて使えたらよかったのにな。
『そうよね。今は一刻を争う時。助け合わないと』
『はい!
では私達は一度別行動をしましょう。そうした方が堂々と会話も出来ますし』
『分かったわ』
ウルとの話が纏まったところで早速その旨を殿下とレヴィ君に耳打ちし状況を伝えた。
私が精霊を見えると言う事を知っている二人には事情を話しても問題ないしね。まあそう言う意味ではルカとアリンちゃんもなんだけど、こそこそ話しているとリッカさんに怪しまれちゃうかもしれないからね。
殿下達に後で伝えてもらえば大丈夫だよね?
ついでにリッカさんにも上手く言っておいてもらえると助かるんだけど。
「事情は分かったが本当に一人で大丈夫か?」
特に騒ぎ立てる事もなく静かに頷いてくれる殿下。ただ私が皆と離れて別行動する事は納得していないみたいだ。
でもこれは私にしか出来ない事だから譲れませんよ。
「大丈夫です。それに一人ではありませんから」
告げた瞬間光が瞬く。きっとウルだ。
それを見た殿下は溜め息一つ。
「分かった。くれぐれも気を付けてくれ」
「はい」
「迷子になるなよ」
「もう!なりませんよ……たぶん」
素直に心配してくれる殿下に対し、レヴィ君は相変わらず。
心配してくれているのだか、ただの冷やかしなのか……。
まったく。可愛くないんだから。
でもこれが彼の通常運転なんだよね。
「では後でまた会おう」
「はい、また後で」
そうして軽く言葉を交わし、私はウルと共に別行動を開始した。
まずはウルに精霊の気配を教えてもらいながら接触する必要がある。
その為にも今私にできる最善の事を考えながら先を急いだ。
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