幸せな人生を目指して

える

文字の大きさ
上 下
151 / 227
第8章 ノスタルジア

2 同行者

しおりを挟む



◇◆◇◆◇◆◇◆


 えーっと。どういう状態だ、コレ。


「やあ、ルーなんちゃら君。全然お店に来てくれないから、持って来てあげたよ~」
「……何を」


 何故ココに変態が。


「これこれ~」
「あ、板チョコ」
「いたちょ……違うけど、うんそう」


 わざわざ板チョコを配達しに来てくれたのか?
 ディオンと一緒に?


「どうも」
「ね~、それタダであげるから僕と話そうよぉ」
「嫌です」
「ルーカス、仕事があるんだろ。早く兄貴のとこへ戻れ」


 いや、ほんとに何しに来たの。お二人さん。
 変態はニヤニヤ笑ってるし、ディオンは顔の治安が悪すぎるし。


「じゃあ、俺はこれでーーーーわっ」


 そのままフィン兄の仕事部屋に戻ろうとしたら、目の前に変態が居た。
 ナニコレ、デジャブ。


「せっかく来たのに、それは酷くない?」
「ワープ使ったんですか」
「うん」
「……マナの無駄使い」
「何か言ったぁ?」
「いえ、何も。あの、そこ退いて下さい」
「イヤ。僕と遊ぶ約束するなら、良いよ~」


 小学生かコイツは。
 ディオンにどうするか聞こう。
そう思って振り向こうとしたら、人にぶつかった。
……真後ろに立つなよー!


「いてっ」
「悪い、大丈夫か」
「ディオン……もしかして、お前もワープを」
「歩いただけだ」


 ですよね。食い気味で答えなくても良いんじゃないかい。さっきの今だったから、もしかしたらって思ったんだよ。だって、あの変態があんなに簡単に使うから。


「あの人、何しに来たの。てかディオン、仕事は?」
第3騎士団オレたちに喧嘩売るだけ売っといて、ルーカスに土産渡すってほざきやがった」
「??」
「だから、見張りに来た」
「あー、なるほど。さっぱり分からん。よし、なら土産はもらったから、用は済んだな」
「ああ。邪魔して悪かった。兄貴によろしく」
「おう」


 ディオンが連れて帰ってくれるなら一安心、と思ったが、そうは上手くいかなかった。


「だ~か~らぁ、僕と遊ぼうよ。ルーなんちゃら」
「ルーカスです」
「ルーカスくん、遊ぼ。何処が良い?
あっ、僕の職場見学する~?」
「おい、近づくな。嫌がってるだろ」


 ぎゅうっと、隠す様にディオンに抱きしめられる。
うーん。いっそ、このまま運んでもらえば安全なんじゃないか?
 ふわっと香る、石鹸の匂いが俺をダラけさせる。
 そーいや、今日はまだハグしてなかったな。
 屋敷では、わりと今みたいにディオンが抱き着いてくる事が多い。俺のサイズ感がちょうど良いっぽい。
 常に人肌を求めるなんて、可愛い奴め。
 だからか、最近はディオンの匂いで落ち着く様になってしまった。
同じ石鹸なのに、何でこうも違うんだろう。俺も、こんな風に香ってるんかな。


「別にいいじゃん。おーい、ルーカスくん。コッチ見て。何、眠たいのぉ? 僕が抱っこしてあげようか」
「要らないです。俺戻らなきゃいけないんで」
「ふ~ん。つまんないのー。
じゃあ、王様に言っちゃおうかなぁ」


 何を?!


「ルーカスくんが欲しがってるから、薬の材料ありませんっ、て」
「言ってないんですけど!」
「王様どう思うかな~。王妃様のお気に入りだしねぇ。モンフォール伯爵が呼び出されちゃうかな?」


 このヤロウ、なんてセコイ奴なんだ。
 そんなしょうもない理由で、モンフォール家に迷惑かけられるか、馬鹿野郎!


「ルーカス、無視してればいい。陛下は戯言に耳を貸すほど暇じゃない」
「あ、そっか」
「やだな~。僕が作らなければ、手に入らないんだから同じ事だよぉ」


 チョコ作ってんの、変態おまえかー!!
 まさか、こんな小学生がダダこねたみたいな理由で脅される日が来ようとはっ。
 人生って分からない。


「職場見学するんで、もう関わらないでもらえます?」
「ん~明日迎えに行くから、親睦を深めていこうね~」
「え、聞いてました? 関わらないでって言ったんですけど」
「じゃあねー。あ、副団長はお留守番ね。ルーカスくんだけの招待だから」
「あ゛あ?」


 え、本当にあっさり帰るじゃん。
 なんなんだよ、調子狂うなー。


「……ディオンは、帰らなくて大丈夫か?」
「そんなに早く帰って欲しいのか」


 おい、仕事中だろ。
 フィン兄に怒られるぞ。


「言い方に棘があるな。
とにかく、俺戻らなきゃ。サボりは良くないし」
「……今晩一緒に寝るぞ」
「はいはい。甘んじて抱き枕役を引き受けてやるよ」
「約束したからな」
「へーへー」


 ちょいちょい、構ってちゃんモード発動するけど、大丈夫なんだろうか。
 モンフォールの次男は情けないとか噂されてたら、どうしよう。
俺のせい?





ーーーー
ーーー

 
「ルゥ、この書類を経理に。これは、情報処理に持って行ってくれ」
「はい」
「終わったら、食堂の前で待ってなさい。遅くなったが、一緒に昼食をとろう」
「はいっ」
 


 メーシっ、飯、飯!
 腹減ってたんだよー。第1騎士団の食堂はどんな感じだろ。建物と一緒で、食事も豪華だったりして。
……そんなわけねーか。ちんたら、高級食材なんて食ってる暇ないよな。普通。

 まずは、経理だ。たしか、2階だったっけ。





「失礼します」
「あー、団長の! ご苦労様です」


 うわ、爽やかっ。
 書類に追われてるはずなのに、全然疲れが見えない。

 次、情報処理。



「失礼します」
「……え~っと、ルーカス殿。はい、確かにお預かりしました。あ、お茶飲みます?」
「いえ、大丈夫です」


 経理に比べて静かな雰囲気だが、それでも爽やかだ。
というか、余裕を感じる。


 やべぇ、第3騎士団みんなが可哀想に思えてきた。この違いは、何だ。
 1人1人のスペックの違いか、回ってくる仕事の違いか。
ーー謎だな。
 帰ったら、ディオンに聞こう。







しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

処理中です...