幸せな人生を目指して

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番外編

夏と言えば怖い話?

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実際にはまだ夏ではありませんが、最近暑いのでもう良いかなと思い書いてみたものです!

少し早めの先取りホラー?的な話です。ほのぼのと書いたので怖くはないと思いますが、苦手な方は気を付けてくださいね!










それはある日の事。

「今日は暑いな。涼しくならないのか…」と何気なく発したレヴィ君の一言から始まった。




その日は珍しくいつもより暑い日で、暑さに慣れていない国の人達は少し戸惑っているようだった。

私も夏の暑さは何回も経験しているけど、暑いのに慣れているという訳ではない。どちらかと言えば苦手な方だし。


でも私以上に暑さに参っている人達がここに数名……。


「本当に暑いわね。今日は」

「こんな日が毎日続いたら身体がもたないわ」

「はぁ~外出るの嫌だな」

学院の教室に集まる私を含めた五人の男女。その中には学年が違うのに何故か姉様もいて…。

毎回しれっといるから最近は違和感がないんだよね。他の皆ももう慣れちゃったみたいで何も言わないし。


いつも活気で笑顔を絶やさない姉様も暑さには勝てないのか、顔をしかめて太陽光が降り注ぐ窓の外をじっと見ていた。
その隣には身体がもたないと言いながらも涼しい顔をしたユキ。
私の傍に控える様にして立つアリンちゃんは何も言わず、顔色も変えないで私達の会話を聞いていて、そして一際大きな溜息を吐いて一番嫌そうな顔をするレヴィ君。と言う図。

何というか……新鮮だ。


姉様は肌が焼けたりするのを気にする方で、美容に結構気を付けているから当然の反応かもね。
ユキは美容に対してあまり気にしている風には見えないけど、焼けるのはやっぱり嫌なのかな?でも元から白いから私も羨ましいって思う時あるな。
レヴィ君もユキ程じゃないけど肌白いんだよね。性格がクールって思われているからそれも相まって女子には人気者なんだけど。
本当は慌てたり怒ったり、結構表情コロコロ変わって可愛いところもあるって知ってるけど。
レヴィ君の色々な表情を思い出していたら気づかない内に顔に出ていたみたいで。

「何笑ってるんだ」

「いえいえ。何でもないですよ」

からかいたいと言う気持ちになるけど、彼意外と照屋なのでその気持ちをグッと我慢して私は何もなかったように笑って誤魔化した。

「そうか…。はぁ、それにしても本当に今日は暑いな。涼しくならないのか…」

上手く誤魔化されてくれたレヴィ君に内心ホッとしたのも束の間、その発言からある事を閃いた。

「あの、私良い事を思いつきました!」

「何?」

元気よく言うと皆が顔をこちらに向け、ユキが皆に変わって疑問を投げかけた。

「涼しくなりたいんですよね?それなら私に考えが!こんな時に持って来いな、背筋も凍るような話!
怖い話を皆でしましょう!」

私がそう言うと皆首を傾げていた。


そんなこんなで、レヴィ君の一言と、私の提案により暑さを吹き飛ばせ!第一回怖い話!を開催する事になったのでした。















そして現在――シェフィールド侯爵邸の客間。

そこにルカ、ユキ、レヴィ君、アリンちゃん、姉さま、私の六人が集まり怖い話をしている真っ最中。
ルカにも声をかけてみたらなんと参加してもらえることになりました!
ありがとうルカ!ナイスです。ルカの話期待しています!


そして机には先程ルカが淹れてくれた紅茶が並べられていて、話が始まるとそれに集中する人、その中でも優雅に紅茶を楽しむ人とそれぞれだ。


「――そしてその後、彼女を見た者はいなかったそうです」

そう話を締めくくるルカ。相変わらず説明が上手で聞きやすく、だからこそ怖さが増すと言うもの。

しかも誰も話さないから部屋はシーンとして、話し手の声だけが響く形になってそれも怖さを倍増させていた。思わずナイスと親指を立てたくなるね。

怖い話をするのにあたって雰囲気は大事だから!

と、ここまで話してきたけど……、なんか皆そんなに怖がっているようには見えないんだよね……。少し残念。


ユキはやっぱり涼しい顔して紅茶を堪能しているし、アリンちゃんは何が怖いの?って顔でキョトンとしていて、ルカは怖がるどころか寧ろ楽しんでいるし。


姉様は……ってあれ?姉様顔が強張っている?……これはもしかして…!?

思い返せば確かに元気でおしゃべりをするのが好きな姉様が少し前から静かだったような…気もしなくもない。

と言う事は!――姉様怖いの駄目だったんだ!以外です!

…でもごめんなさい、嬉しいと思ってしまった。私の悪戯心が……。



それとレヴィ君は……?
…っ!

顔青くなっている!必死に隠しているようだったけど顔に凄い出ている!
レヴィ君も怖いの駄目だった…!?

そんな一面を持っていたなんて姉様以上に意外!でもそれはそれで可愛いですよ!!
彼の新たな一面発見です!

どうしようまた悪戯心が……。


……ちょっと落ち着こう私。レディたるもの冷静に淑女らしくするのよ。

話が進む中で私は一人皆とは違うものと心の中で葛藤をしていた。
心を落ちつかせ気づかれないように静かに深呼吸をしてっと。



あ、そうだ。先に言っておくと私は怖いの平気な方です。と言うか寧ろ好き。聞くのも話すのも。
ユキ達には意外って思われるかもしれないけど、本当の事。

前世で怖い本収集したり、テレビ見たりしていたからな?大分耐性ついてるんじゃないかな。
ちょっとやそっとじゃ怖がらないもの!

私にとっても強がれるものがあると気づいたからには強気になってしまう。


「では次は私の番ですね。えっと、ではこんな話はどうでしょう。――それは、ある雨の降る夜の事………」

前世で読んだ事のある話を皆に聞かせる。読み方にも工夫をして強弱をつけたりなんかしながら。

「そこで振り返った彼が見たものは……!」

そして最後の最後で脅かすようにがばっと勢い良く立ち上がり、前世で良くやったお化けのポーズをしてみせる。

そうしたら……。

「きゃあぁぁあ!!」
「うわあぁぁあ!!」

二人の叫び声が響き渡った。その声の主は姉様とそしてレヴィ君。
……見事にハモっていましたね。本当にお見事!

まぁ私としては怖がらせようとしていたので、それに答えてくれたのは凄く嬉しいけど。
期待以上のリアクションありがとうございます、二人共!

二人を笑顔で見つめる私をよそに、他の皆は驚いた顔で姉様とレヴィ君を見る。

「レヴィ。貴方怖いの駄目だったの?」

「アメリア様はともかく、なんと言うか意外ですね」

ユキが珍しいものを見たと言う顔で問いかけ、ルカも楽しそうに呟いていた。

「べ、別に怖かったわけじゃないっ!エルが急に立ち上がったから少し、驚いただけだ。こんな話に俺が怖がるわけないだろうっ」

「そ、そうよ!それにルカ!私はともかくって何よ!訂正しなさいっ!」

二人の発言に強く反対を示すレヴィ君と姉様。
でもレヴィ君は分かりやすく顔真っ赤にしているから図星なんだって誰もが思ってしまうし、姉様もむきになっているから強気になっているだけだってバレバレだよ。

そんな反応を見たら人は悪戯心からその人をからかいたくなるもの。それは仕方のない摂理。

こうなって恐ろしいのは私ではなく、ルカとユキだ。

ルカはレヴィ君と仲が少しだけ良くないみたいだったから、相手の弱点を見つけてしまったルカはちょっぴり怖い、かも……。

そしてユキは姉様と仲良いけど、ユキってどこかからかうのが好きみたいなところがあるからね。
今の姉様を見たらからかい倒してしまいそうだよ……。


だから二人とも、どんまいです……。




そして数時間後。

順番に話をしていっていたけど、途中からルカとユキ中心に話が進んで行き、そろそろお開きにしましょうかとユキが言うまで話は続いた。

ルカとユキはもっと話をしたいと言う顔だったけど、レヴィ君と姉様は漸く終わると、明らかにホッとした顔をしたのだった。




楽しい時間が終わり解散となった為、皆が帰って行くのを見送る為に私とルカ、アリンちゃん、そして姉様も外へと一緒に向かっていた。


その途中の事。

先に歩いていたレヴィ君が急に立ち止まってしまい、私は彼の背中にダイブしてしまった。

「いたた…。ど、どうしたんですかレヴィ君。急に立ち止まったりなんかして」

その事に、何事かと心配した私は聞いてレヴィ君の顔を見る。すると……、

「な、なあ、今、何か見なかったか…?」

と凄く青褪めた表情でそう言うものだから、私は頭にはてなを浮かべながらも彼に答えた。

「…?何も見ていませんよ?何かいたんですか?」

ここでも悪戯心が起こってしまった私は彼の顔を覗き込んで煽るような言い方をしてしまう。


それに歯切れの悪い返答をしたレヴィ君は明らかに怖がりながらも話してくれて、それによると歩いていたら何か影のようなものを見たと言うのだ。
一瞬だったらしいけど確かに何か、得体のしれないものを見たって必死な様子だった。

「大丈夫ですよレヴィ君。きっと見間違いですから。さあさあ行きましょう」

それでも怖がるレヴィ君を引きずるようにして、その場を後にするしかなかった。


初めはここは侯爵邸の中なのだから、誰か使用人の方と見間違えたのかも。とか、或いはもしも誰か侵入したのだとしたらとっくに騒ぎになっているはずだと思っていた。




でも……実のところ、私もその時何か気配を感じたような……気がするんだよね……。

ま、まぁ気のせい、だよね…?うん!そう言う事にしておこうっと…。



秘密と言う訳ではないのにそれからと言うもの、私達はその事に対して絶対に触れようとはしなかった。





――そしてあれが何だったのか、その日の出来事が一体何だったのか謎のまま、未だに解明されていないのだった――――。
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