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第7章 Memory~二人の記憶~
8 告白
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「……わあっ」
「綺麗だろ?」
「ええ、とても」
アレスに手を引かれ案外あっさりと城の外側へと出てしまい、拍子抜けしてしまったけれど次の瞬間、目に映る光景に驚きの方が勝ってしまった。
雲一つない澄み渡った夜空。
月だけでなく、星々が光り輝き幻想的な景色を見せてくれる。
空なんていつも変わらないと思っていたのは大間違いだって、今更になって気づかされる。
城の中からも見る事は出来たけれど、こうして外から見た夜空はまた違うものに見えた。
それがこの幻想的な夜空のせいなのか、誰かと一緒にこの景色を共有できているからなのかは分からないけれど、一つ分かる事は、私は今凄く感動していて、そして凄く胸が高鳴っているって事。
ずっと胸につかえていたものが無くなったかのように、今は晴れ渡り気持ちまで楽になれた気がする。
「リリーシェもそんな顔をするんだな」
ふと呟かれた小さな声を聞いた私はちらっと隣にいるアレスを見た。
身長が高くて少し見上げるような体制になりながら私は彼を見ていた。
するとアレスはくすっと笑い、つい反応しそうになった私が声を上げようとすると、察したのか彼の方が早くに口を開き私の言葉を止めた。
「馬鹿にしているのか、って言いたそうな顔だが、逆に俺は褒めたつもりなんだが」
「どこが褒めているって言うのよ」
まあ馬鹿にはしていないんでしょうけれど、何か引っかかるのよね、彼の言い方。何と言うか恥ずかしくなるような……。
と言うかそもそも何故私がアレスの言葉に恥ずかしい気持ちになるのよ!
もう!アレスと会ってからの私、変だわ。彼に何か言われるたびに嬉しくなったり、落ち着かなくなったり……。
……振り回されているような気がするわ。
「君、自分の変化に気づいていないのか?」
「え?」
唐突に聞かれた質問に私は首を傾げた。急に何?自分の変化?……気持ちが揺らいでいるような感じ、なら先程からしているけれど。
「やっぱり気づいていなかったんだな。君、俺と話すようになってから表情が豊かになっている」
「そ、そうなの?」
「ああ、初めて会った時は今にも泣き出しそうな、寂しい表情をしていたが、今では笑って明るい表情を見せているな」
そうなんだ。意識していなかったから表情なんていつもと変わらないと思っていたけれど、私ちゃんと彼の前では笑えていたんだ。……そっか。
「無意識だったみたいだが、俺は君の悲しい顔よりも心から楽しそうに笑っている、そんな顔が好きだ」
「すっ、好きって……」
まただ。そう言う意味じゃないって分かっているのに、勘違いしてしまいそうだ。
「ちょっとそう言う事はあまり言わない方が良いわよ」
そう思い私は敢えて気丈に振る舞いつつ彼に控えるように言った。
「どうして?」
それなのにアレスは首を傾げて心底不思議そうにするばかり。
「だ、だって、か、勘違いする人がいるかもしれないじゃない」
調子狂わされるわ!もう、何なのよ!
顔は熱いし、恥ずかしいしで気を抜くと叫んでしまいそう。気持ちを抑える事に必死だ。
そうして私が気を落ち着けている間、何故かアレスは一言も話さなくなった。
……?
急に静かになってしまったアレス。どうしたのかと思ってそうっと顔を上げて見る。
そうしたらアレスから目を離せなくなってしまった。
アレスがいつになく真面目な顔で私を見つめていたからだ。
「勘違いじゃないって言ったら?」
「え……?」
ようやく口を開いたと思ったら聞き間違いかと思う事を言いだして、私は咄嗟に言葉が出てこなかった。
そんな私を余所にアレスは覚悟を決めたと言った顔で言った。
「好きだって」
「……えっ、それは、その、言葉の綾でしょう?勘違いするからやめて……」
耐えきれなくなった私はふっと彼から顔を逸らしてしまう。でも次の瞬間、私の瞳はまたアレスをはっきりと映していたんだ。
彼が私の肩を掴んで来たからだ。
「勘違いじゃないっ、俺は……、リリーシェが好きだ」
……っ!!
至近距離での熱い告白。
勿論私は驚きと彼の迫力に圧倒され固まるしかなかったのだけれど。
それでも少ししていくらか正気に戻った私は何とか震える口で言った。
「そ、そんな事……、いきなり言われても……。それに、まだ私達会って数日なのに……」
「ああ、でも俺がリリーシェを好きなのは変わらない。それに日数は関係ない」
「どうして?」
「一目惚れ、だからな」
言った瞬間、アレスは恥ずかしそうに顔を赤らめて、でも嬉しそうにはにかんだ。
それを見た瞬間私は悟ってしまった。
……ああ、私が感じた気持ちも彼と同じものだったんだって事を。
今思えばもうこの時、いえ、もしかしたら私も彼に会った瞬間に恋、と言うものに落ちていたのかもしれないと。
「綺麗だろ?」
「ええ、とても」
アレスに手を引かれ案外あっさりと城の外側へと出てしまい、拍子抜けしてしまったけれど次の瞬間、目に映る光景に驚きの方が勝ってしまった。
雲一つない澄み渡った夜空。
月だけでなく、星々が光り輝き幻想的な景色を見せてくれる。
空なんていつも変わらないと思っていたのは大間違いだって、今更になって気づかされる。
城の中からも見る事は出来たけれど、こうして外から見た夜空はまた違うものに見えた。
それがこの幻想的な夜空のせいなのか、誰かと一緒にこの景色を共有できているからなのかは分からないけれど、一つ分かる事は、私は今凄く感動していて、そして凄く胸が高鳴っているって事。
ずっと胸につかえていたものが無くなったかのように、今は晴れ渡り気持ちまで楽になれた気がする。
「リリーシェもそんな顔をするんだな」
ふと呟かれた小さな声を聞いた私はちらっと隣にいるアレスを見た。
身長が高くて少し見上げるような体制になりながら私は彼を見ていた。
するとアレスはくすっと笑い、つい反応しそうになった私が声を上げようとすると、察したのか彼の方が早くに口を開き私の言葉を止めた。
「馬鹿にしているのか、って言いたそうな顔だが、逆に俺は褒めたつもりなんだが」
「どこが褒めているって言うのよ」
まあ馬鹿にはしていないんでしょうけれど、何か引っかかるのよね、彼の言い方。何と言うか恥ずかしくなるような……。
と言うかそもそも何故私がアレスの言葉に恥ずかしい気持ちになるのよ!
もう!アレスと会ってからの私、変だわ。彼に何か言われるたびに嬉しくなったり、落ち着かなくなったり……。
……振り回されているような気がするわ。
「君、自分の変化に気づいていないのか?」
「え?」
唐突に聞かれた質問に私は首を傾げた。急に何?自分の変化?……気持ちが揺らいでいるような感じ、なら先程からしているけれど。
「やっぱり気づいていなかったんだな。君、俺と話すようになってから表情が豊かになっている」
「そ、そうなの?」
「ああ、初めて会った時は今にも泣き出しそうな、寂しい表情をしていたが、今では笑って明るい表情を見せているな」
そうなんだ。意識していなかったから表情なんていつもと変わらないと思っていたけれど、私ちゃんと彼の前では笑えていたんだ。……そっか。
「無意識だったみたいだが、俺は君の悲しい顔よりも心から楽しそうに笑っている、そんな顔が好きだ」
「すっ、好きって……」
まただ。そう言う意味じゃないって分かっているのに、勘違いしてしまいそうだ。
「ちょっとそう言う事はあまり言わない方が良いわよ」
そう思い私は敢えて気丈に振る舞いつつ彼に控えるように言った。
「どうして?」
それなのにアレスは首を傾げて心底不思議そうにするばかり。
「だ、だって、か、勘違いする人がいるかもしれないじゃない」
調子狂わされるわ!もう、何なのよ!
顔は熱いし、恥ずかしいしで気を抜くと叫んでしまいそう。気持ちを抑える事に必死だ。
そうして私が気を落ち着けている間、何故かアレスは一言も話さなくなった。
……?
急に静かになってしまったアレス。どうしたのかと思ってそうっと顔を上げて見る。
そうしたらアレスから目を離せなくなってしまった。
アレスがいつになく真面目な顔で私を見つめていたからだ。
「勘違いじゃないって言ったら?」
「え……?」
ようやく口を開いたと思ったら聞き間違いかと思う事を言いだして、私は咄嗟に言葉が出てこなかった。
そんな私を余所にアレスは覚悟を決めたと言った顔で言った。
「好きだって」
「……えっ、それは、その、言葉の綾でしょう?勘違いするからやめて……」
耐えきれなくなった私はふっと彼から顔を逸らしてしまう。でも次の瞬間、私の瞳はまたアレスをはっきりと映していたんだ。
彼が私の肩を掴んで来たからだ。
「勘違いじゃないっ、俺は……、リリーシェが好きだ」
……っ!!
至近距離での熱い告白。
勿論私は驚きと彼の迫力に圧倒され固まるしかなかったのだけれど。
それでも少ししていくらか正気に戻った私は何とか震える口で言った。
「そ、そんな事……、いきなり言われても……。それに、まだ私達会って数日なのに……」
「ああ、でも俺がリリーシェを好きなのは変わらない。それに日数は関係ない」
「どうして?」
「一目惚れ、だからな」
言った瞬間、アレスは恥ずかしそうに顔を赤らめて、でも嬉しそうにはにかんだ。
それを見た瞬間私は悟ってしまった。
……ああ、私が感じた気持ちも彼と同じものだったんだって事を。
今思えばもうこの時、いえ、もしかしたら私も彼に会った瞬間に恋、と言うものに落ちていたのかもしれないと。
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