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第6章 魔法乱舞
14 みんなの力
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「来るわよ」
「はいっ!」
ユキの声に緊張感が漂う。
今度こそはしっかりとした体勢で攻撃を受けられるように身構える。私だけでなく後衛のアリンちゃんとエミリーさんも凄い集中力。
「うふふ。良い表情ね。じゃあ行くわよ!サンダースピアーっ!!」
ミア先輩が叫ぶように唱えると、彼女の周りを取り囲むようにして槍が宙に具現化された。
雷槍、その字のままだけど雷の槍の事。強力なその槍が私達を狙っている。
あれってもしも当たったら怪我どころじゃないよね……?
「任せて下さい」
「え?」
今度こそ全攻撃を防ぐつもりで構えの姿勢をとっていると不意に横から声が掛かる。
「アリンちゃん?」
いつもは自分から率先して動く子じゃないけど、今日は積極的だね。
そのアリンちゃんは私の呼び声に柔らかく笑みを返すとそのまま私の前に躍り出た。
「あら可愛い子。でも貴方なんかにこれを止められるのかしら?」
私でも分かる程の挑発だ。それに乗るほどアリンちゃんは子どもじゃないけど。その証拠に私の隣を通り過ぎる時、一瞬ふっと笑って悪い顔をしていたから。あんな顔をしたアリンちゃん初めて見たからね。もう勝利確定?
「ふふふ。まあ良いわ。止められるものなら止めてみなさいっ!」
そう言ったミア先輩はこちらに向かって雷槍を放った。数百はあると思うけど、その槍達が滅多刺しするかのように容赦なく私達に迫ってくる。
それをアリンちゃんは特に表情も変えずに見つめた後、
「プロテクション」
そう一言小さく呟いた。
すると次の瞬間には私がいつも発動させるよりも大きい障壁が目の前に現れる。
その障壁にミア先輩の放った雷槍が正面から次々と当たる。目にも止まらぬ早さでぶつかり合う二つの魔法。
先輩の雷槍はスピードが早くて目で追うのはやっとだし、アリンちゃんの障壁は強固で何人たりともここは通さないって感じだし。二人とも凄すぎる……。
目の前でハイレベルな戦いを見せられて圧巻。
暫くの間、二人とも譲る気もなければ勿論負ける気も微塵もないからお互い魔力と気力だけの勝負に突入。
でもその膠着状態がついに終わりを迎える。先に勢いがなくなってきたのはミア先輩の方だった。
「勝負あったようね」
二人の様子を見ていたユキがぽつりと呟く。確かにユキの言う通り、勝負ありだね。
「これで終わり。サンダースピアー」
えっ!?先輩も同じ魔法!
お返しとばかりにアリンちゃんもその魔法を先輩よりも素早く展開させる。
「なっ、なんでっ!」
ほら先輩驚いちゃってる。
雷魔法は前にも言ったけど扱いが難しいのもあって、使える人はあまりいない。
それに先輩は自分の魔法に余程自信があったんだろうね。だからまるっきり同じものを目の前で、それも難なく発動されて動揺しちゃったんだろうな。
先輩は十分強いし、他の生徒だったら勝てなかったかも。でも、申し訳ないけどアリンちゃんはレベルが違うんですよ。
ずるいって言われても気にしないよ。だって今のアリンちゃんは学院に通う一人の生徒、だからね。
あっ、そう言ってる間にも決着が着いたみたい。
「そ、そんな.......、この私が」
アリンちゃんの発動させた強度とスピードを更に兼ね備えた雷槍に、先輩は為す術なく腰が抜けたのかその場に尻もちをついて唖然としていた。
そんな姿に本当に申し訳ないけど、可愛いって思っちゃったけど、それは許して下さい……。
「良くやったわ、アリン」
労いの言葉をかけたユキにアリンちゃんは嬉しそうに表情を緩める。
「さて、アリンに続いて私達も反撃と行きましょうか」
「はいっ!」
そこからの展開は思ったよりも早いものだった。
ユキはロッド先輩を相手に、得意の氷魔法で容赦なく攻め、出来た隙を見逃す事無くそこも容赦なく一撃を入れて戦闘不能にしていた。
私はもう一人、トレイシー先輩の相手をしたけど、アリンちゃんにサポートをお願いしながらどんどん攻めて行って、最初の勢いは何処へやら、連続で魔法を展開させて攻撃していると中々勢いが止まらない私に初めは驚いていたけど、段々とまずいと思ったんだろうね。凄い焦りだしてきて。まあ作戦の内?
という事でその焦りを逆手にとって慈悲などなくねじ伏せ――いや、倒しました!
先輩に罪はないけど、例の伯爵に似ているからつい、力の加減を間違えたかな、なんて。まあ許して下さい。
力の加減を間違えたからって怪我をさせたわけじゃないからね!
そうして最後に残ったのはリーダーであるアンジェリーナ先輩唯一人。流石の先輩も動揺を隠せない様子。
チームのメンバーがピンチになってた時、先輩も加勢しようとしていたけど、アリンちゃんやユキがレベル高いし、瞬殺とまでは行かないけど直ぐに勝負がついちゃったから手を出す暇もなかったんでしょう。まあこれは狙っていた展開なんだけど。
最後はちゃんと面と向かって向き合ってもらわなくちゃいけないからね!
「エミリーさん、頑張って下さい!貴方の気持ちを思いっきりぶつけてあげて下さいね!」
「は、はい!頑張ってきます」
その意気です!
私が声援を送ると緊張しながらも、今まで見た中で一番真剣な表情で頷く。それを見たらエミリーさんなら大丈夫だって思えたよ。
初めて会った時はソワソワしていて落ち着かない様子だったし、魔法にも自分にも自信がなかったエミリーさん。
でもこの数日で大分魔法も使いこなせるようになってきたし、それも影響してか自分にも自信がついたようで本当に凛々しくなったなって思うから。
もう二人を邪魔するものはない。だから思いっきり、思う存分悔いのないように戦ってきて下さいね!
エミリーさんが先輩と仲直り出来ますように――。
「はいっ!」
ユキの声に緊張感が漂う。
今度こそはしっかりとした体勢で攻撃を受けられるように身構える。私だけでなく後衛のアリンちゃんとエミリーさんも凄い集中力。
「うふふ。良い表情ね。じゃあ行くわよ!サンダースピアーっ!!」
ミア先輩が叫ぶように唱えると、彼女の周りを取り囲むようにして槍が宙に具現化された。
雷槍、その字のままだけど雷の槍の事。強力なその槍が私達を狙っている。
あれってもしも当たったら怪我どころじゃないよね……?
「任せて下さい」
「え?」
今度こそ全攻撃を防ぐつもりで構えの姿勢をとっていると不意に横から声が掛かる。
「アリンちゃん?」
いつもは自分から率先して動く子じゃないけど、今日は積極的だね。
そのアリンちゃんは私の呼び声に柔らかく笑みを返すとそのまま私の前に躍り出た。
「あら可愛い子。でも貴方なんかにこれを止められるのかしら?」
私でも分かる程の挑発だ。それに乗るほどアリンちゃんは子どもじゃないけど。その証拠に私の隣を通り過ぎる時、一瞬ふっと笑って悪い顔をしていたから。あんな顔をしたアリンちゃん初めて見たからね。もう勝利確定?
「ふふふ。まあ良いわ。止められるものなら止めてみなさいっ!」
そう言ったミア先輩はこちらに向かって雷槍を放った。数百はあると思うけど、その槍達が滅多刺しするかのように容赦なく私達に迫ってくる。
それをアリンちゃんは特に表情も変えずに見つめた後、
「プロテクション」
そう一言小さく呟いた。
すると次の瞬間には私がいつも発動させるよりも大きい障壁が目の前に現れる。
その障壁にミア先輩の放った雷槍が正面から次々と当たる。目にも止まらぬ早さでぶつかり合う二つの魔法。
先輩の雷槍はスピードが早くて目で追うのはやっとだし、アリンちゃんの障壁は強固で何人たりともここは通さないって感じだし。二人とも凄すぎる……。
目の前でハイレベルな戦いを見せられて圧巻。
暫くの間、二人とも譲る気もなければ勿論負ける気も微塵もないからお互い魔力と気力だけの勝負に突入。
でもその膠着状態がついに終わりを迎える。先に勢いがなくなってきたのはミア先輩の方だった。
「勝負あったようね」
二人の様子を見ていたユキがぽつりと呟く。確かにユキの言う通り、勝負ありだね。
「これで終わり。サンダースピアー」
えっ!?先輩も同じ魔法!
お返しとばかりにアリンちゃんもその魔法を先輩よりも素早く展開させる。
「なっ、なんでっ!」
ほら先輩驚いちゃってる。
雷魔法は前にも言ったけど扱いが難しいのもあって、使える人はあまりいない。
それに先輩は自分の魔法に余程自信があったんだろうね。だからまるっきり同じものを目の前で、それも難なく発動されて動揺しちゃったんだろうな。
先輩は十分強いし、他の生徒だったら勝てなかったかも。でも、申し訳ないけどアリンちゃんはレベルが違うんですよ。
ずるいって言われても気にしないよ。だって今のアリンちゃんは学院に通う一人の生徒、だからね。
あっ、そう言ってる間にも決着が着いたみたい。
「そ、そんな.......、この私が」
アリンちゃんの発動させた強度とスピードを更に兼ね備えた雷槍に、先輩は為す術なく腰が抜けたのかその場に尻もちをついて唖然としていた。
そんな姿に本当に申し訳ないけど、可愛いって思っちゃったけど、それは許して下さい……。
「良くやったわ、アリン」
労いの言葉をかけたユキにアリンちゃんは嬉しそうに表情を緩める。
「さて、アリンに続いて私達も反撃と行きましょうか」
「はいっ!」
そこからの展開は思ったよりも早いものだった。
ユキはロッド先輩を相手に、得意の氷魔法で容赦なく攻め、出来た隙を見逃す事無くそこも容赦なく一撃を入れて戦闘不能にしていた。
私はもう一人、トレイシー先輩の相手をしたけど、アリンちゃんにサポートをお願いしながらどんどん攻めて行って、最初の勢いは何処へやら、連続で魔法を展開させて攻撃していると中々勢いが止まらない私に初めは驚いていたけど、段々とまずいと思ったんだろうね。凄い焦りだしてきて。まあ作戦の内?
という事でその焦りを逆手にとって慈悲などなくねじ伏せ――いや、倒しました!
先輩に罪はないけど、例の伯爵に似ているからつい、力の加減を間違えたかな、なんて。まあ許して下さい。
力の加減を間違えたからって怪我をさせたわけじゃないからね!
そうして最後に残ったのはリーダーであるアンジェリーナ先輩唯一人。流石の先輩も動揺を隠せない様子。
チームのメンバーがピンチになってた時、先輩も加勢しようとしていたけど、アリンちゃんやユキがレベル高いし、瞬殺とまでは行かないけど直ぐに勝負がついちゃったから手を出す暇もなかったんでしょう。まあこれは狙っていた展開なんだけど。
最後はちゃんと面と向かって向き合ってもらわなくちゃいけないからね!
「エミリーさん、頑張って下さい!貴方の気持ちを思いっきりぶつけてあげて下さいね!」
「は、はい!頑張ってきます」
その意気です!
私が声援を送ると緊張しながらも、今まで見た中で一番真剣な表情で頷く。それを見たらエミリーさんなら大丈夫だって思えたよ。
初めて会った時はソワソワしていて落ち着かない様子だったし、魔法にも自分にも自信がなかったエミリーさん。
でもこの数日で大分魔法も使いこなせるようになってきたし、それも影響してか自分にも自信がついたようで本当に凛々しくなったなって思うから。
もう二人を邪魔するものはない。だから思いっきり、思う存分悔いのないように戦ってきて下さいね!
エミリーさんが先輩と仲直り出来ますように――。
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