幸せな人生を目指して

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第6章 魔法乱舞

12 勝負どころ

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「レヴィ君勝ちましたね」

「ええ、少し手間取っていたようだけど。でもやっぱり彼は魔法の才能がずば抜けているわね」

珍しく自然な笑顔を浮かべてこちらに手を振るレヴィ君に私も手を振り返す。
普段の無表情の彼からは想像出来ないような表情に、観客席にいる多くの女子生徒達が目を奪われているようだった。
これはギャップ萌えってやつ!?
レヴィ君って美形だけど、ふとした瞬間に見せる不意打ちの表情は心臓に悪いよね。特に女子には。
まあ私的には凄く目の保養なんだけど。

「さて、彼の試合も見届けた事だし、私達は次の試合に向けて自主練習でもしましょうか」

「そうですね。二人のところに戻りましょうか」

ユキがそう言い立ち上がったので私も後を追うように立ち上がる。そしてアリンちゃんとエミリーさんの待っている観客席へと戻った。


その後の試合は暫く観戦して、他の人の魔法や戦略を観察したりしていた。
それを私よりも親身になって観察していたのはユキの方なんだけどね。

あ、それと言ってなかったけど、魔法乱舞が開催されるのは何も一日だけじゃない。試合の進行にもよるけど、大体三日から四日間の間開催される。
その間は普段の勉強はお休み、と言いたいところだけどそうもいかず、家で自主勉強をするように言われている。
そして実技の方も。自主練習をした分だけその成果はこの魔法乱舞で発揮されるからね。


と言うわけで今日は二日目。
二日目も初日と変わらずどんどんと試合は進んでいく。そして私達も他のチームの試合を観察しつつ、自分達の番になったらユキの的確な指示に従いつつ、順調に勝利を掴んでいった。
とは言っても進むにつれて対戦相手も強敵になってくるから戦闘も長引く事になるし、気を付けないといくら魔力の量が多いと言っても使いすぎたら疲労が大きい。
私はレヴィ君と違って体力があまりないから長期戦は向かないし。
それを考えてチームメイトがフォローをしてくれるから今まで戦ってこれたわけで。
だから戦闘中は気を抜けない、この先は特にね。

そんなこんなで私達のチームだけじゃなく、レヴィ君も姉様のチームも順調に勝ち進んでいた。

そして――。

「ついに来ましたね、エミリーさん。頑張りましょう!」

「は、はい……」

ありゃりゃ。エミリーさん凄く弱気になっちゃってる。でも仕方ないよね、だって……。

「あら、ここまで勝ち進んでくるなんてね。でも、それもここで終わりよ。ねぇエミリー」

「アンジェ……」

目の前には次の対戦相手、エミリーさんと同じ四年生のチームが揃っていた。
そしてそのリーダーであろう人物はエミリーさんの親友だったアンジェリーナ先輩。

先輩のチームは先輩ともう一人女の子がいるけどその人も雰囲気と言うか、オーラが同じような感じで、私は苦手かも……。
そして後の二人は男子生徒。うん、性格はひねくれている事でしょうね。申し訳ないけど見た目から意地悪そうな感じがするし。

「それに、やっぱり貴方もいたのね」

うう……。なんか私にも先輩鋭い視線を送ってくるんですけど……。

周りを誘惑するような優艶な笑みを浮かべる事もあれば、今のように怒りを露にする事もある。
もうここまでくると逆に表情豊かな人だなって思ってしまうよね!

「御機嫌好う、先輩。余裕と言う表情をしていますけど、私達の事、侮らない方が良いですよ」

ユキが満面の笑みを浮かべてあからさまな挑発をすると、向こうもあからさまに機嫌を悪くした。

「あらあら、生意気ね。良いわ、そこまで言うならもう容赦しないわよ」

最初から容赦する気ないくせに。そんな小さな呟きが隣から聞こえて来て私は鳥肌が立ちました……。
ユキと先輩の間にバチバチと火花が散っているのが見える気がするよ……。

「エミリーさん、そんなにかたくならないでください。大丈夫です!私達が全力でサポートしますから!」

二人のやり取りは怖いから放っておくことにして、私は改めてエミリーさんに向き直った。

「はい。エルシアさんお気遣いありがとうございます」

「よし!では行きましょう!」

私の言葉に少しは緊張が解れたのか、いくらか表情も柔らかくなったみたい。
そんなエミリーさんに私は促すように声をかけ、手を差し伸べる。

「はい!」

もう迷いはない。そう言うように決意した表情で私の手を取ったエミリーさんに私は微笑むと、彼女を伴って一歩を踏み出す。

私達の待ち望んでいた瞬間。さあこれからが本当の勝負どころよ!
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