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第6章 魔法乱舞
10 ソロ戦
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姉様のチームが勝った!
試合を観客席で見ていた私はその勝利を自分の事のように喜んでいた。
疲れた顔をせずに笑顔で観客席の方へ手を振る姉様。そして立ち上がっていた私に気づいて私にも手を振ってくれた。
嬉しいな。それにチームメイトの先輩達も息が合っていて連携が凄かった。
一人四年生の方もいたけどそれが気にならない程実力があったし。
やっぱり優秀な人達だったな。
相手の魔法も威力はあったけどそれを二人が防御で守り、すかさず残りの二人で攻撃とはね。
判断の速さもだけど、姉様の指示がいかに的確なのかを思い知ったね。流石は私の尊敬する姉様です!
「流石ね、貴方のお姉様は」
「そうでしょう!なんたって私の姉ですから。尊敬していますよ」
私が褒められたわけじゃないのに、ユキにそう言われたら気が良くなってしまってついドヤ顔で答えてしまう。
「噂に聞く実力、もう上位クラスね」
私のドヤ顔を気にする事なくユキの視線は姉様に向いたまま。顎に細い指を置き、不敵な笑みを浮かべていた。
わあ、久しぶりに見たなユキのこの笑み。
「私達も負けていられないわね」
「そうですね。気合を入れ直さないと」
そう話していたところで急にユキが何かを思い出したようにはっとした様子でこちら見る。
「そう言えば次って彼の試合じゃなかったかしら?」
「彼?」
何やら含みのある笑みまで向けられるけどその笑みとユキが言う彼が誰の事なのか分からず、私は首を傾げるばかり。
そんな私の様子を見たユキは今度は堪えきれないと言わんばかりの表情で笑う。私の慌てようが面白いのでしょうね、とは思っても笑われている本人としてその様子は面白くない。
私はあからさまに頬を膨らませて不満だとユキに訴えた。
「ごめんなさい。反応が面白かったから、つい」
「もう、ついじゃないです。それより彼って?」
そんなに笑う要素があった?と言いたくなる。涙をぬぐっているユキに私は話題を戻すように質問を投げかけた。
「レヴィの事よ」
「レヴィ君?……あっ、そう言えば次、ソロ戦だって言ってましたっけ」
彼の名前を出された途端そう言えば、と私も思い出した。
次の試合がチーム戦ではなくソロ戦だという事を。
ちなみに魔法乱舞が始まってからレヴィ君、何回かもう試合自体は行っていてその全てに勝ってるし、今のところ順調に勝ち進んでいる。けどその試合があまりにも速攻で終わってしまうから、私が偶々席を立っている時とか、後は気づいた時には既に終わってしまっていて、応援している暇すらなかった。
勝負を長引かせたくないって言うのは分かるんだけど、それにしたってレヴィ君の試合だけ開始から終了までの時間が異様に早い。
まさに電光石火の如く、だよ。
「急がないと彼の事だからまたきっと速攻で終わっちゃうわね」
「そうですね。急ぎましょう、次こそ応援する暇があれば良いのですけど」
そう言って私とユキはもっと試合が見えやすい位置へと移動するために席を立つ。
隣にいたアリンちゃんとエミリーさんにも、話は聞こえていただろうけど一応断りを入れてからその場を離れた。
そうして後ろの席から移動して一番前の席までやって来た私達は、ちょうど二つ開いている椅子を見つけて腰かける。
そして会場の方を見れば――。
「どうやら間に合ったようね」
「そのようですね、良かった」
私達と同じ紫のケープを羽織ったレヴィ君が真剣な表情で立っていた。
対戦相手の男子生徒も既に待機していて、その羽織っているケープの色が赤だと言う事から六年生だという事が一目で分かる。
今までの試合を見れていないから分からないけど、もしかしたら六年生と対戦するのはこれが初めてかもしれない。
それにいくらレヴィ君の魔法が二年生の中でも優れていると言っても、相手は最上学年の六年生。容易に勝利とは行かないかもしれない。四年も年上の先輩なわけだし……。
そう思うのも本心だけど、レヴィ君ならきっと勝てる、そう相反する気持ちもある。
彼は贔屓無しで、本当に強い。それは訓練等、近くで見ていた私が一番良く知っている。
それにこういう大会興味なさそうにしながらも影では努力を重ねているんだろうなって思うから。
それを表には出さないところがまた彼らしいけど。
「レヴィ君なら六年生にだって勝てます。そうですよね、ユキ」
「そうね。また瞬殺かもしれないわね」
私の気持ちを悟ってか、ユキは気遣うような、それでいてどこか楽し気にそう呟いて見せた。
ユキの言葉に頷き私は視線を会場の二人へと移す。
……何だろう。自分の試合よりも何故か緊張するような……。
急に湧いてきた緊張と不安を打ち消すように、私は胸の前で手を組みただただレヴィ君の勝利だけを願った。
レヴィ君なら勝てるって信じていますから――。
試合を観客席で見ていた私はその勝利を自分の事のように喜んでいた。
疲れた顔をせずに笑顔で観客席の方へ手を振る姉様。そして立ち上がっていた私に気づいて私にも手を振ってくれた。
嬉しいな。それにチームメイトの先輩達も息が合っていて連携が凄かった。
一人四年生の方もいたけどそれが気にならない程実力があったし。
やっぱり優秀な人達だったな。
相手の魔法も威力はあったけどそれを二人が防御で守り、すかさず残りの二人で攻撃とはね。
判断の速さもだけど、姉様の指示がいかに的確なのかを思い知ったね。流石は私の尊敬する姉様です!
「流石ね、貴方のお姉様は」
「そうでしょう!なんたって私の姉ですから。尊敬していますよ」
私が褒められたわけじゃないのに、ユキにそう言われたら気が良くなってしまってついドヤ顔で答えてしまう。
「噂に聞く実力、もう上位クラスね」
私のドヤ顔を気にする事なくユキの視線は姉様に向いたまま。顎に細い指を置き、不敵な笑みを浮かべていた。
わあ、久しぶりに見たなユキのこの笑み。
「私達も負けていられないわね」
「そうですね。気合を入れ直さないと」
そう話していたところで急にユキが何かを思い出したようにはっとした様子でこちら見る。
「そう言えば次って彼の試合じゃなかったかしら?」
「彼?」
何やら含みのある笑みまで向けられるけどその笑みとユキが言う彼が誰の事なのか分からず、私は首を傾げるばかり。
そんな私の様子を見たユキは今度は堪えきれないと言わんばかりの表情で笑う。私の慌てようが面白いのでしょうね、とは思っても笑われている本人としてその様子は面白くない。
私はあからさまに頬を膨らませて不満だとユキに訴えた。
「ごめんなさい。反応が面白かったから、つい」
「もう、ついじゃないです。それより彼って?」
そんなに笑う要素があった?と言いたくなる。涙をぬぐっているユキに私は話題を戻すように質問を投げかけた。
「レヴィの事よ」
「レヴィ君?……あっ、そう言えば次、ソロ戦だって言ってましたっけ」
彼の名前を出された途端そう言えば、と私も思い出した。
次の試合がチーム戦ではなくソロ戦だという事を。
ちなみに魔法乱舞が始まってからレヴィ君、何回かもう試合自体は行っていてその全てに勝ってるし、今のところ順調に勝ち進んでいる。けどその試合があまりにも速攻で終わってしまうから、私が偶々席を立っている時とか、後は気づいた時には既に終わってしまっていて、応援している暇すらなかった。
勝負を長引かせたくないって言うのは分かるんだけど、それにしたってレヴィ君の試合だけ開始から終了までの時間が異様に早い。
まさに電光石火の如く、だよ。
「急がないと彼の事だからまたきっと速攻で終わっちゃうわね」
「そうですね。急ぎましょう、次こそ応援する暇があれば良いのですけど」
そう言って私とユキはもっと試合が見えやすい位置へと移動するために席を立つ。
隣にいたアリンちゃんとエミリーさんにも、話は聞こえていただろうけど一応断りを入れてからその場を離れた。
そうして後ろの席から移動して一番前の席までやって来た私達は、ちょうど二つ開いている椅子を見つけて腰かける。
そして会場の方を見れば――。
「どうやら間に合ったようね」
「そのようですね、良かった」
私達と同じ紫のケープを羽織ったレヴィ君が真剣な表情で立っていた。
対戦相手の男子生徒も既に待機していて、その羽織っているケープの色が赤だと言う事から六年生だという事が一目で分かる。
今までの試合を見れていないから分からないけど、もしかしたら六年生と対戦するのはこれが初めてかもしれない。
それにいくらレヴィ君の魔法が二年生の中でも優れていると言っても、相手は最上学年の六年生。容易に勝利とは行かないかもしれない。四年も年上の先輩なわけだし……。
そう思うのも本心だけど、レヴィ君ならきっと勝てる、そう相反する気持ちもある。
彼は贔屓無しで、本当に強い。それは訓練等、近くで見ていた私が一番良く知っている。
それにこういう大会興味なさそうにしながらも影では努力を重ねているんだろうなって思うから。
それを表には出さないところがまた彼らしいけど。
「レヴィ君なら六年生にだって勝てます。そうですよね、ユキ」
「そうね。また瞬殺かもしれないわね」
私の気持ちを悟ってか、ユキは気遣うような、それでいてどこか楽し気にそう呟いて見せた。
ユキの言葉に頷き私は視線を会場の二人へと移す。
……何だろう。自分の試合よりも何故か緊張するような……。
急に湧いてきた緊張と不安を打ち消すように、私は胸の前で手を組みただただレヴィ君の勝利だけを願った。
レヴィ君なら勝てるって信じていますから――。
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