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第6章 魔法乱舞

9 連携…アメリアside

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「反撃開始ね。一気に畳みかけるわよ」

エイミィはそう意気込み、続いて静かに魔法を唱える。

「インフェルノ」

彼女が唱えた魔法は火属性の魔法。そして別名地獄の業火と言われる上位魔法。
マグマのように灼熱の炎が相手チームへと迫る。
マグマは一見動きが遅いように見えるけど本当は恐ろしく速い。
それと同じでこの灼熱の炎もスピードが速く、逃げる暇もなくあっという間に一か所に集まっていた男子全員の周りを囲い、逃げられないように逃げ道を塞いでしまった。

触れば火傷では済まないそれを、怪我をさせないようにエイミィは巧みにコントロールしていく。
そう制御されているインフェルノだけど、それでもその中にいる人間にしてみれば直ぐ近くでマグマが流れているようなもので、肌が焼けそうな、いや、肌が溶けそうな程の熱気を感じている事でしょうね。

さてと。これで準備は完了ね。

「後は任せたわよ、アメリア」

「ええ、ありがとうエイミィ」

魔法を展開させたままこちらに視線を向けるエイミィ。私は彼女と顔を合わせお礼を言うと直ぐに新たな魔法を唱えた。

「アイジング」

そう唱え魔法を展開させた瞬間、今度は凍える程の冷気が会場全体を覆っていく。
私が唱えたのは氷の魔法。冷却の魔法とも呼ばれ、あらゆるものから急激に温度を奪ってしまう魔法。
そのため周りを見渡せば震えながらこちらを見ている生徒が結構いる。

ごめんなさい、この魔法は周りにまで影響が出てしまうのよね。
でも直ぐに終わらせるから、少し我慢しててちょうだい。

心の中で謝罪をしながらも視線は相手チームへと向いたまま。

肌が焼けるような灼熱の炎に、身体の芯から凍るような冷却の魔法を合わせたらどうなるか。答えは直ぐに分かるわ。

さっきまで熱くて汗を流していた彼らも、今は急激な気温の低下に可哀想な程身体が震えていて、両腕で身体を抱きしめているけど気休めにもならない。
可哀想だけどもう少し耐えていてもらうしかないのよね。


「そろそろかしら」

私が徐にそう呟くと徐々に変化が現れ始める。

熱い熱と冷たい氷が交わった事によって、氷が溶けだし水蒸気になっていく。それを更に冷やしていくと変化に耐えられなくなりやがては――

――ドガンッ!!!

爆発が起こる。

凄まじい音の爆発音が会場に轟いた。この現象は所謂、水蒸気爆発みたいなもの。
今回は人工的に作り出したけど、自然でも起こり得る現象。

爆発の規模を大きくしないようにコントロールしていたけど、それでも衝撃は結構大きかったわね。
会場からも悲鳴に近い声が多く上がり、その爆発をもろに受けた彼らを心配する声もちらほら聞こえてくる。

爆発の衝撃で宙に舞った砂ぼこりで無事を確認する事が難しく、でもそれも少しすれば落ち着き中の様子が見えてきた。
ようやくクリアになった視界で捉えたその光景に誰もがまたも驚愕の表情を浮かべる事になるんだけどね。

爆発が起こったその場所にはさっきまでなかったはずの氷の壁が立ち並んでいる。
まあ、あれ私が発動させた魔法だけど。

そう、実は爆発が起きる寸前、彼らの周りに氷の防御魔法を展開させていたの。
だってそうしないとあの爆発をもろに受けたら大変な事になるし。

怪我の具合にもよるけど、軽傷なら治癒魔法で治せる。でも重症レベルになってくると優れた治癒魔法士でもなければ治せない傷もある。
それにもしも相手を死なせてしまうような事があれば、そんなのもう大会どころではなくなってしまう。

とまあ、相手を死なせるような魔法は勿論禁止されているけど、軽傷にさせるのも嫌じゃない?
だから敢えて無傷で、でも私達を馬鹿にした事に関しては反省してもらいたいから怪我をしないギリギリを責めたわけよ。
私が作った氷の壁がなかったら今頃彼らは医務室送りか、それとも……、なんてね!

まっ、これでもう私達の勝ちは決まりね。

そう思い、私とエイミィは発動していた魔法を同時に解く。

魔法が綺麗に消え去り、その場に残ったのは腰を抜かして青褪めた男子四人。
全員に目立った怪我はないみたい。ただ腰を抜かした時に手を地面について擦りむいてしまったようだけど。
もう、せっかく怪我をさせないように気を付けていたって言うのに!
あ、でもそれは私達の魔法でついたものじゃないからノーカウントよね。

そんな風に思いを巡らせていると、それに応えるようにして試合終了を告げる銅鑼の音が響き渡り、私達はお互いに顔を見合わせて喜びに笑みを浮かべた。

「やった!勝ちましたね、アメリア様、エイミィ先輩!」

「流石ですアメリア様。あんな上位魔法を瞬時に発動させるなんて」

「あらマリン。私には何もないのかしら?」

チームメイトの皆が各々喜びの声を上げる。まあ若干そうでない人もいるみたいだけど。

「まあまあ。エイミィさっきはありがとう。助かったわ」

「どういたしまして」

マリンの言葉に納得のいっていなかった様子のエイミィも、私が純粋にお礼を言えば機嫌を直してくれた。
それを確認してから今度はサポートをしてくれた二人に視線を移す。

「オリバーとマリンも。サポートありがとう。でも今回はあまり活躍させてあげられなかったわね」

「そんな事ないです。アメリア様の実力を間近で見る事が出来ましたから、とても勉強になりました」

「そうです。それに今回の事でアメリア様の実力を知って周りの奴らも大人しくなる事でしょう」

オリバーとマリンは笑顔でそう答える。オリバーは天然系だし、純粋な子だって分かってるからその笑顔に癒される事もあるんだけど、マリン……、笑顔は素敵だけど言葉に棘があるわね。偶に出てくるその毒舌感は何なのかしら。

そんな事をチームメイトに抱きながらもふと観客席の方へ視線を向ける。

離れているけど直ぐに分かる。天使のような笑みを浮かべてこちらに大きく手を振ってくれている可愛い私の妹。

勝って良かったわ。あの笑顔を見れるのなら何度でも勝つわね。

そう思いながら私も愛しの妹に向かって大きく手を振り返した。
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