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第6章 魔法乱舞
4 皆からの声援
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「エル様」
「あっ、ルカっ!」
ついに私達の出番になり、会場に向かう途中。そこで良く知った人物に会い私はつい表情が緩んでしまった。
従者であり大切な家族でもあるルカが応援に来てくれたんだ。
「来てくれたんですね。それに父様と母様も」
にこやかな笑みを浮かべるルカの後ろから、いつも以上に相好を崩した父様と、いつもと変わらず美しい微笑を浮かべる母様の姿。
それに――。
「私もいるわよ」
「姉様!」
どこからともなくひょっこりと顔を覗かせた姉様も。
「皆、応援に来てくれたんですね」
「エル様の今までの努力を披露する大舞台ですからね。応援するのは当たり前ですよ」
「その通りだな。娘の晴れ舞台なんだ。見に来ない訳ないだろう」
「あらあら、出場するエルよりも張り切っちゃって、貴方達ったら。特にディラン、貴方は本当に娘達の前になると子ども見たいね」
「本当よ父様。まぁエルが可愛いってところは賛同してあげても良いけど」
応援に来てくれた家族。
母様の言う通り、私よりも張り切っている父様に、それに賛同するように頷く姉様、そんな父様を可笑しそうにからかう……コホン、宥める母様、そして私の晴れ舞台?を見れる事がそんなに喜ばしい事なのか、とても嬉しそうなルカ。
「良かったわね。エル、皆来てくれて」
「はい!」
私達のやり取りを見ていたユキがそう声をかけてきて、凛とした目元を細める。
「君が一緒なら安心だな」
その私達を見た父様がふと呟き笑うと私を一瞥してそしてユキへと視線を向けた。
「こんにちは、ユキ嬢。いつもエルが世話になっているようだね」
そう言う父様の視線をしっかりと受け止めたユキは優雅な動きで頭を下げる。
「御機嫌好う閣下。私の方こそエルに良くしていただいているわ」
「閣下なんて堅苦しくしなくて良い。私もユキ嬢と呼んでしまっているんだから。私の事はディランで良い」
「分かりました。公の場以外に限られますが。ディランさんと呼ばせていただきますわね」
「あぁ、その方が私も気が楽だ。それとそちらのお嬢さんは誰だい?」
父様とユキのスムーズすぎる会話を感心して聞いていると、ふと父様の視線が私の後ろで成り行きを見ていたエミリーさんへと向く。
エミリーさん、結構緊張しやすくて顔が真っ赤になってしまっているよ。
そう言えば、エミリーさんは父様とこうして会うの初めてだったっけ。
特訓でシェフィールド侯爵邸に泊まりに来ていたけど、その時は仕事が忙しくて父様と会えなかったんだよね。
だからこの顔合わせが初対面ってわけで、それが前もってじゃなくて急だったものだから心の準備もしている暇もなく御対面になっちゃって……。そりゃあやっぱり緊張してしまうよね。うん、無理ないよ。
「あ、えっと、あの……」
「エミリーさん、大丈夫ですよ。父様は女の人には凄く甘いですから」
「え……?」
「エル様、それは誤解をされかねない言い回しですよ」
「えっ、そうですか?」
エミリーさんが困っているようだったから助け船を出したつもりだったのに、ルカに何だか注意?をされる私。
どういう事?
ルカの言いたい事が理解できず私は首を傾げるしかない。
「あの、わ、私はエミリー・ダグラスと言います」
小声ではあったけど、勇気を振り絞って名乗った彼女に父様は気を悪くした様子もなく、寧ろ嬉しそうに笑っていた。
「これは御丁寧に。私はディラン・シェフィールドだ。君はエルの先輩なんだろう。今回の件でもエルが世話になっているな」
「いえ、寧ろ私の方がエルシア様にご迷惑をかけてしまっています」
「そんな事ないですよエミリーさん。それに私の呼び方、最初の頃に戻っちゃってますよ」
さらっとフォローも入れながら、ちょっと突っ込んでみる。すると分かりやすくおろおろと動揺していた。
この人そう言うところ可愛いんだよね。アリンちゃんやウルとはまた違った可愛さだよ。
「仲が良いみたいで何よりだ。ところでエミリー嬢、ダグラスと名乗っていたが君はダグラス子爵家のお嬢さんかい?」
「あ、は、はい。ご存じなんですか?」
「あぁ、勿論。君の父君、ダグラス子爵とは前に一度仕事で会った事があるからね」
「そうだったんですか」
父様の話を聞いたエミリーさんは何だか少し嬉しそうだった。
やっぱり父様みたいに侯爵の爵位を持つ人と接点があるって言うのは嬉しい事なのかな?
いまいちピンと来ないけど、まぁエミリーさんが良いならいっか。
「今回に限らずこれからも娘と仲良くしてやってほしい」
「は、はいっ、私なんかで良いのでしたら」
彼女の物言いに私は思わず苦笑い。
私なんかって彼女は言うけど、私はエミリーさんだから力を貸したいと思ったし、一緒に戦いたいとも思ったんだからね。
「アリンもエルを支えてくれてありがとう。魔法乱舞でも活躍を期待しているよ」
「……はい」
次にアリンちゃんへ労いの言葉と期待していると言う事を告げれば、アリンちゃんは少し嬉しそうに笑って頷いていた。
父様も期待しているけど、私も凄く期待しているし、頼りにしているよアリンちゃん。
「皆頑張ってね!私も応援しているわ!」
「ありがとうございます。姉様の出番の時は必ず応援に行きますね!」
「ありがとうエル!」
私が勿論とガッツポーズで応援に行くと言うと姉様は感極まったのか、勢い良く抱き着いてきて、危うく倒れそうになる。
皆が緊張する中姉様は相変わらずで、でも逆にそれがいつも通りで落ち着くのかも。
「二人とも頑張って優勝を目指すのよ」
「はい!」
「勿論よ!」
期待をしてくれている母様にも私と姉様はしっかりと頷いて見せた。
「さぁもう時間よ。皆行くわよ」
「はい。行ってきますね」
名残惜しい時間はそろそろおしまい。ユキの声に従って私達は会場へと向かう。
「頑張ってください、エル様」
「ありがとうございます、ルカ」
背中越しにルカの声援が届いて、私はそれに笑顔で応えた。
さぁいよいよ本番だ。皆も言っていたようにこれが私達にとって晴れ舞台になる事を祈り、私は拳を強く握りしめたのだった。
「あっ、ルカっ!」
ついに私達の出番になり、会場に向かう途中。そこで良く知った人物に会い私はつい表情が緩んでしまった。
従者であり大切な家族でもあるルカが応援に来てくれたんだ。
「来てくれたんですね。それに父様と母様も」
にこやかな笑みを浮かべるルカの後ろから、いつも以上に相好を崩した父様と、いつもと変わらず美しい微笑を浮かべる母様の姿。
それに――。
「私もいるわよ」
「姉様!」
どこからともなくひょっこりと顔を覗かせた姉様も。
「皆、応援に来てくれたんですね」
「エル様の今までの努力を披露する大舞台ですからね。応援するのは当たり前ですよ」
「その通りだな。娘の晴れ舞台なんだ。見に来ない訳ないだろう」
「あらあら、出場するエルよりも張り切っちゃって、貴方達ったら。特にディラン、貴方は本当に娘達の前になると子ども見たいね」
「本当よ父様。まぁエルが可愛いってところは賛同してあげても良いけど」
応援に来てくれた家族。
母様の言う通り、私よりも張り切っている父様に、それに賛同するように頷く姉様、そんな父様を可笑しそうにからかう……コホン、宥める母様、そして私の晴れ舞台?を見れる事がそんなに喜ばしい事なのか、とても嬉しそうなルカ。
「良かったわね。エル、皆来てくれて」
「はい!」
私達のやり取りを見ていたユキがそう声をかけてきて、凛とした目元を細める。
「君が一緒なら安心だな」
その私達を見た父様がふと呟き笑うと私を一瞥してそしてユキへと視線を向けた。
「こんにちは、ユキ嬢。いつもエルが世話になっているようだね」
そう言う父様の視線をしっかりと受け止めたユキは優雅な動きで頭を下げる。
「御機嫌好う閣下。私の方こそエルに良くしていただいているわ」
「閣下なんて堅苦しくしなくて良い。私もユキ嬢と呼んでしまっているんだから。私の事はディランで良い」
「分かりました。公の場以外に限られますが。ディランさんと呼ばせていただきますわね」
「あぁ、その方が私も気が楽だ。それとそちらのお嬢さんは誰だい?」
父様とユキのスムーズすぎる会話を感心して聞いていると、ふと父様の視線が私の後ろで成り行きを見ていたエミリーさんへと向く。
エミリーさん、結構緊張しやすくて顔が真っ赤になってしまっているよ。
そう言えば、エミリーさんは父様とこうして会うの初めてだったっけ。
特訓でシェフィールド侯爵邸に泊まりに来ていたけど、その時は仕事が忙しくて父様と会えなかったんだよね。
だからこの顔合わせが初対面ってわけで、それが前もってじゃなくて急だったものだから心の準備もしている暇もなく御対面になっちゃって……。そりゃあやっぱり緊張してしまうよね。うん、無理ないよ。
「あ、えっと、あの……」
「エミリーさん、大丈夫ですよ。父様は女の人には凄く甘いですから」
「え……?」
「エル様、それは誤解をされかねない言い回しですよ」
「えっ、そうですか?」
エミリーさんが困っているようだったから助け船を出したつもりだったのに、ルカに何だか注意?をされる私。
どういう事?
ルカの言いたい事が理解できず私は首を傾げるしかない。
「あの、わ、私はエミリー・ダグラスと言います」
小声ではあったけど、勇気を振り絞って名乗った彼女に父様は気を悪くした様子もなく、寧ろ嬉しそうに笑っていた。
「これは御丁寧に。私はディラン・シェフィールドだ。君はエルの先輩なんだろう。今回の件でもエルが世話になっているな」
「いえ、寧ろ私の方がエルシア様にご迷惑をかけてしまっています」
「そんな事ないですよエミリーさん。それに私の呼び方、最初の頃に戻っちゃってますよ」
さらっとフォローも入れながら、ちょっと突っ込んでみる。すると分かりやすくおろおろと動揺していた。
この人そう言うところ可愛いんだよね。アリンちゃんやウルとはまた違った可愛さだよ。
「仲が良いみたいで何よりだ。ところでエミリー嬢、ダグラスと名乗っていたが君はダグラス子爵家のお嬢さんかい?」
「あ、は、はい。ご存じなんですか?」
「あぁ、勿論。君の父君、ダグラス子爵とは前に一度仕事で会った事があるからね」
「そうだったんですか」
父様の話を聞いたエミリーさんは何だか少し嬉しそうだった。
やっぱり父様みたいに侯爵の爵位を持つ人と接点があるって言うのは嬉しい事なのかな?
いまいちピンと来ないけど、まぁエミリーさんが良いならいっか。
「今回に限らずこれからも娘と仲良くしてやってほしい」
「は、はいっ、私なんかで良いのでしたら」
彼女の物言いに私は思わず苦笑い。
私なんかって彼女は言うけど、私はエミリーさんだから力を貸したいと思ったし、一緒に戦いたいとも思ったんだからね。
「アリンもエルを支えてくれてありがとう。魔法乱舞でも活躍を期待しているよ」
「……はい」
次にアリンちゃんへ労いの言葉と期待していると言う事を告げれば、アリンちゃんは少し嬉しそうに笑って頷いていた。
父様も期待しているけど、私も凄く期待しているし、頼りにしているよアリンちゃん。
「皆頑張ってね!私も応援しているわ!」
「ありがとうございます。姉様の出番の時は必ず応援に行きますね!」
「ありがとうエル!」
私が勿論とガッツポーズで応援に行くと言うと姉様は感極まったのか、勢い良く抱き着いてきて、危うく倒れそうになる。
皆が緊張する中姉様は相変わらずで、でも逆にそれがいつも通りで落ち着くのかも。
「二人とも頑張って優勝を目指すのよ」
「はい!」
「勿論よ!」
期待をしてくれている母様にも私と姉様はしっかりと頷いて見せた。
「さぁもう時間よ。皆行くわよ」
「はい。行ってきますね」
名残惜しい時間はそろそろおしまい。ユキの声に従って私達は会場へと向かう。
「頑張ってください、エル様」
「ありがとうございます、ルカ」
背中越しにルカの声援が届いて、私はそれに笑顔で応えた。
さぁいよいよ本番だ。皆も言っていたようにこれが私達にとって晴れ舞台になる事を祈り、私は拳を強く握りしめたのだった。
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