幸せな人生を目指して

える

文字の大きさ
上 下
77 / 227
第5章 学院生活

15 悩み

しおりを挟む
「はぁ……」

「どうしたの?ため息なんかついちゃって」

昼間の教室。休み時間になり私は机に突っ伏して深くため息を吐いていた。
それを傍にいたユキに聞かれ渋々顔を上げる。

「実は例の先輩の事で、ちょっと……」

「あぁ、あの人ね。また何か言われたの?」

「まぁ、そんなところです」

最初はちょっかい程度の嫌がらせが、ここ最近は日に日に酷くなる一方で……。

はぁ……、私何かしたかな?そんなに恨まれるような事した覚えないんだけどな……。
件の先輩はすれ違ったりしただけで睨みつけて来たり、嫌味を言ってきて、もう敵意剥き出しだよ。
特に帰りの時間になって、私がルカと一緒にいるのを見ようものなら強烈な鬼の形相になるんだから怖いよ。

先日ルカに言われていて、様子からして反省してくれたのかな?ってちょっと思っちゃったけど、全然懲りていないようですね。
むしろ火がついちゃった、みたいで、まさかの逆効果だったよ。

と言うか、ルカと私が一緒にいるのは仕方ないと思うんだけどな。それにルカは仕事で迎えに来てくれているわけだし。
……って言っても駄目なんだろうけど。

とにかく、最近先輩に罵倒される日々を送っている私は疲れ果てているわけです。
周りに誰かいれば庇ってくれる事もあったけど、それでもそろそろ限界だよ……。

「あの人も懲りないわね」

「逆に凄いと思いますよ、はい」

事情を知っているユキには毎回相談して聞いてもらっているから、私がため息を吐くと察して反応してくれる。

「全く腹立たしいわね。私が一緒の時に言ってくれば返り討ちにしてあげるのに」

…………。

冗談っぽく言っているけど全然笑えないよ。可愛らしい顔して毒舌なんだから。ユキを本気で怒らせたら勝ち目なんてない。死を覚悟するよ、私なら。

とは思うものの、本当のところユキが言うように、彼女と一緒にいる時は睨みつけてくる所か、話しかけてすら来ないんだよね。
危機察知能力が優れているのかもね。

「私も不思議に思ってますけど、どうしてなんでしょうね?」

「私が侯爵家の娘だからでしょうね。それに私ってエルと違って優しくないから」

「そんな事ないですよ!ユキは優しいですよ?それと私も一応侯爵家の人間なんですけど……」

ユキは優しいって言うのは本当だから良いとして、私も侯爵家の娘なんだけど?

「エルは人に優しすぎるのよ。悪くいえばお人好しすぎるの。だから下に見られるのよ」

「そう言われても……。それに学院では彼女の方が先輩ですし、この場所で階級は関係ないですし」

「まぁそうね。でもねエル、貴方は優しすぎるのよ。社交の場では舐められたら終わりよ」

「うぅ……」

「貴方も私と同じ侯爵家の娘なんだから、貴族である自覚をしっかり持ちなさい」

「はい……」

あれ?何か相談からお説教に変わってない!?ユキの言い分はごもっともだと思う。
でもね、言い訳にはなるけど私前世が平凡な学生だったから、貴族って言うのが未だにピンと来てないんだよね。

「分かってくれればいいわ。それに丁度良い催しもこれからある事だし」

「え?」

咄嗟に聞き返すとユキは怪しい笑みを浮かべてこちらを見る。

「忘れたの?一週間後に学院主催のパーティーがあるじゃない」

「あっ!そう言えば」

すっかり忘れていたけど、この学院では毎年一度パーティーが開催されている。
新しく入って来た生徒には入学を祝してのパーティー、それ以外の生徒には無事学年を上がれた事を祝してのパーティーと言う訳。
それとは別に勉強漬けの毎日を送る生徒達に少しでもと、気分転換になれば良いなと願いを込めた学院長の心遣いもあっての催しもの。毎年恒例で最早行事だね。

確かに皆楽しみにしていたな。振り返ってみれば一年生の時に私も一度行ってるし、結構楽しかった思い出もある。
何で忘れていたんだろうか……?

「ふふ。その日が楽しみね」

「えぇ……」

更に不気味な笑みを浮かべるユキに私は苦笑い。

学院主催のパーティーまで後一週間。何事も無く過ぎてくれれば良いのにと願わずにはいられなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。

隠密スキルでコレクター道まっしぐら

たまき 藍
ファンタジー
没落寸前の貴族に生まれた少女は、世にも珍しい”見抜く眼”を持っていた。 その希少性から隠し、閉じ込められて5つまで育つが、いよいよ家計が苦しくなり、人買いに売られてしまう。 しかし道中、隊商は強力な魔物に襲われ壊滅。少女だけが生き残った。 奇しくも自由を手にした少女は、姿を隠すため、魔物はびこる森へと駆け出した。 これはそんな彼女が森に入って10年後、サバイバル生活の中で隠密スキルを極め、立派な素材コレクターに成長してからのお話。

異世界で温泉はじめました 〜聖女召喚に巻き込まれたので作ってみたら魔物に大人気です!〜

冬野月子
恋愛
アルバイトの帰り道。ヒナノは魔王を倒す聖女だという後輩リンの召喚に巻き込まれた。 帰る術がないため仕方なく異世界で暮らし始めたヒナノは食事係として魔物討伐に同行することになる。そこで魔物の襲撃に遭い崖から落ち大怪我を負うが、自分が魔法を使えることを知った。 山の中を彷徨ううちに源泉を見つけたヒナノは魔法を駆使して大好きな温泉を作る。その温泉は魔法の効果か、魔物の傷も治せるのだ。 助けたことがきっかけで出会った半魔の青年エーリックと暮らしながら、魔物たちを癒す平穏な日々を過ごしていたある日、温泉に勇者たちが現れた。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシャリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

精霊が俺の事を気に入ってくれているらしく過剰に尽くしてくれる!が、周囲には精霊が見えず俺の評価はよろしくない

よっしぃ
ファンタジー
俺には僅かながら魔力がある。この世界で魔力を持った人は少ないからそれだけで貴重な存在のはずなんだが、俺の場合そうじゃないらしい。 魔力があっても普通の魔法が使えない俺。 そんな俺が唯一使える魔法・・・・そんなのねーよ! 因みに俺の周囲には何故か精霊が頻繁にやってくる。 任意の精霊を召還するのは実はスキルなんだが、召喚した精霊をその場に留め使役するには魔力が必要だが、俺にスキルはないぞ。 極稀にスキルを所持している冒険者がいるが、引く手あまたでウラヤマ! そうそう俺の総魔力量は少なく、精霊が俺の周囲で顕現化しても何かをさせる程の魔力がないから直ぐに姿が消えてしまう。 そんなある日転機が訪れる。 いつもの如く精霊が俺の魔力をねだって頂いちゃう訳だが、大抵俺はその場で気を失う。 昔ひょんな事から助けた精霊が俺の所に現れたんだが、この時俺はたまたまうつ伏せで倒れた。因みに顔面ダイブで鼻血が出たのは内緒だ。 そして当然ながら意識を失ったが、ふと目を覚ますと俺の周囲にはものすごい数の魔石やら素材があって驚いた。 精霊曰く御礼だってさ。 どうやら俺の魔力は非常に良いらしい。美味しいのか効果が高いのかは知らんが、精霊の好みらしい。 何故この日に限って精霊がずっと顕現化しているんだ? どうやら俺がうつ伏せで地面に倒れたのが良かったらしい。 俺と地脈と繋がって、魔力が無限増殖状態だったようだ。 そしてこれが俺が冒険者として活動する時のスタイルになっていくんだが、理解しがたい体勢での活動に周囲の理解は得られなかった。 そんなある日、1人の女性が俺とパーティーを組みたいとやってきた。 ついでに精霊に彼女が呪われているのが分かったので解呪しておいた。 そんなある日、俺は所属しているパーティーから追放されてしまった。 そりゃあ戦闘中だろうがお構いなしに地面に寝そべってしまうんだから、あいつは一体何をしているんだ!となってしまうのは仕方がないが、これでも貢献していたんだぜ? 何せそうしている間は精霊達が勝手に魔物を仕留め、素材を集めてくれるし、俺の身をしっかり守ってくれているんだが、精霊が視えないメンバーには俺がただ寝ているだけにしか見えないらしい。 因みにダンジョンのボス部屋に1人放り込まれたんだが、俺と先にパーティーを組んでいたエレンは俺を助けにボス部屋へ突入してくれた。 流石にダンジョン中層でも深層のボス部屋、2人ではなあ。 俺はダンジョンの真っただ中に追放された訳だが、くしくも追放直後に俺の何かが変化した。 因みに寝そべっていなくてはいけない理由は顔面と心臓、そして掌を地面にくっつける事で地脈と繋がるらしい。地脈って何だ?

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

薬屋の少女と迷子の精霊〜私にだけ見える精霊は最強のパートナーです〜

蒼井美紗
ファンタジー
孤児院で代わり映えのない毎日を過ごしていたレイラの下に、突如飛び込んできたのが精霊であるフェリスだった。人間は精霊を見ることも話すこともできないのに、レイラには何故かフェリスのことが見え、二人はすぐに意気投合して仲良くなる。 レイラが働く薬屋の店主、ヴァレリアにもフェリスのことは秘密にしていたが、レイラの危機にフェリスが力を行使したことでその存在がバレてしまい…… 精霊が見えるという特殊能力を持った少女と、そんなレイラのことが大好きなちょっと訳あり迷子の精霊が送る、薬屋での異世界お仕事ファンタジーです。 ※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。 友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。 マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に…… そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり…… 武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語

処理中です...