幸せな人生を目指して

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第5章 学院生活

13 転入生

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「良かったですね、アリンちゃん。皆もちゃんと歓迎してくれていましたしね」

「……良かった」

アリンちゃんの転入当日、朝から先輩に絡まれ……、あんまり宜しくないね。話をされて複雑な気持ちになっていたけど、こうして毎日通っている教室へ入れば心も落ち着くと言うものだね。

アリンちゃんとは一度分かれてまた後で、って感じになったけど、教室に入って来た時の皆の反応が楽しみだな。
もう転入生が来るって事は皆も知っている事だし。

「おい、転入生ってお前のとこのメイドなんだろう?」

「良く知っていますね。流石情報が早いですね、レヴィ君」

私の後ろの席に座っているレヴィ君が告げ口の様にそっと囁いてくる。
そして何処から聞いたのか、まだ先生しか知らない事実を私に確認してくるし。情報早いな、ってちょっと感心。

「まぁな。それでどんな奴なんだ」

「あれ、レヴィ君が人の事を気にするなんて珍しいですね」

「別にお前のメイドだと言うからどんな奴なのか少し気になっただけだよ。悪いか」

おお!出ました、ツンデレ!と言ってもデレの部分はどこに行ったの?って思うけど……。
顔も赤くなっているし、可愛いな。言ったらまた怒られるから言わないけど。
最近レヴィ君と良く話すようになって気づいたけど、彼って結構表情豊かで、心を開いた人には色々な顔を見せてくれる。顔を赤くするのも良く見るようになったし、前よりも全然明るくもなったとも思うな。
それに安心してしまう自分も居て、これじゃ私友達って言うよりお母さんだな、って自分で良く思ってしまう。

「いえ、ただ興味を持ってもらえて嬉しいなって思っただけですよ」

「何だよそれ」

少し前まで周りに興味がないようだった彼が、今は自分から興味を持って聞いて来るなんて、何か嬉しいじゃない。

「ちょっと貴方達。いつまで話しているの?ほら、お待ちかねの転入生が来たわよ」

ひそひそと二人で話していると、全くと言った顔で横からユキが口を挟む。
ユキに言われて顔を上げて前を見ればちょうど先生が入って来たところだった。

「おはようございます。皆さん、もう知っていると思いますが、今日このクラスに転入生が来ます」

そう前置きをして私達クラスの皆の顔を伺ってから、扉の方へ顔を向けるエレイン先生。

「ではアリンさん、入って来て下さい」

そう先生が声をかけると扉が開いて制服姿のアリンちゃんが入ってくる。

私は朝見ているから驚かないけど、他の生徒は驚いているみたいだった。
それぞれ色々な理由でね。思わず、可愛いって言ってる人もいたし。反応を見る限りどうやら第一印象は好印象を与えられたみたいだね。

「アリンさんです。今日からこのクラスで皆さんと一緒に学びます。仲良くして下さいね」

アリンちゃんの肩に手を置いて笑みを浮かべた先生は簡単に彼女の紹介をした。

「よろしく」

それにアリンちゃんも一言だけど挨拶をすると、クラス中から歓声と拍手が上がった。
凄い!皆大歓迎だね。良かった良かった。

皆の様子に驚いた表情をしていたけど、直ぐに赤くなってでも嬉しそうにそっと微笑むアリンちゃん。

暫くして落ち着いた頃、エレイン先生が事情を知っているためか、私の隣の空いている席をアリンちゃんに勧めてくれて、それに大人しく頷くと隣の席まできてそっと腰を下ろす。
そんな彼女の一挙一動をクラスの皆は息を呑む様に見守っていたけど、残念ながらアリンちゃんは気づいていないみたい。

まぁとりあえず、無事、クラスメイトになった彼女に私は言葉は発せず笑顔を向けて歓迎をしたのだった。




転入初日の授業もあっという間に過ぎて行き、放課後になる。
楽しい時間の終わりに名残惜しく感じるも、そろそろ帰ろうと思い支度をしていると扉から声がかけられた。

「エルっ、いる?」

「姉様!」

扉から顔を覗かせたのは姉様だった。同じ制服に身を包んだ姉様が教室に入ってくる。
今この教室には私とアリンちゃん、ユキとレヴィ君しか残っていないから騒ぎにはならない。
どうして騒ぎになるのか。それは姉様が人気者だからです!

現在五年生の姉様。成績が優秀で将来有望と注目されているだけでなく、その誰にでも分け隔てなく接する性格が人気の一番の理由だったりする。だから女子生徒からも憧れの眼差しを受けているみたい。そして美人でもあるから男子生徒からは熱い眼差しを、ね。

「良かったまだいた。一緒に帰りましょう」

「はい!」

姉様とは毎日は流石に無理だけど、こうして偶に一緒に帰ったりしている。
姉様と同じ制服で、教室は離れているけど同じ建物内で学んでいるんだな、って思うと何だか嬉しくなるんだよね。

ゆっくりとこちらに歩いてくる姉様は、レヴィ君とユキを交互に見ると微笑を浮かべる。

「久しぶりねレヴィ。もう体調は大丈夫なの?」

「まぁ、あの時は心配かけた」

「ふふ、相変わらず生意気ね。元気があって良いわよ」

レヴィ君の態度に気を悪くするどころか、上機嫌になる姉様。逆にからかいに走りレヴィ君は馬鹿にされたと思ったのか頬を少し膨らませていた。その顔、可愛い過ぎるよ。逆効果だってば……。

「ユキも久しぶりね、こうして話すのは」

「ええ、貴方も相変わらずのようで何よりだわ」

姉様とユキも楽しそうに話し出す。この二人年は離れているけど、実は仲がとても良い。
と言っても幼馴染とかではなくて、私が一年生でユキと友達になって、姉様がこうして顔を出し始めた頃にお互い知り合って意気投合したって感じ。元々気が合う仲だったようで、ユキと私の時の様に初めて会ったその日にはもう仲良くなっていた。
それからはこうして姉様が来るたびに何かと話をする事が増えたかな。皆仲良しで良いね。見ていて和むよ。

「アリンも。今日から私達と同じ魔法学院の生徒で仲間ね。私も家族として、先輩として貴方を応援するわ。エル達と頑張るのよ」

「はい」

最後にアリンちゃんに応援のメッセージを送る。笑みを浮かべる姉様とは対照的に、アリンちゃんはとても真剣な表情で答えていた。まだちょっと表情が固いね。まぁまだ初日だからね。これから少しずつ慣れて行ってもらえれば良いかな。焦らずにね。

「あ、それとエルの事を宜しくね。この子ったら目を離したら危なっかしいもの」

「えーっ!酷いです姉様。しっかりしてますよ、私」

「ふふふ、それはどうかしらね」

からかわれているっ、完全に。含みのある笑みはとても美しいのだけどちょっと悔しいような……。
頬を膨らませて周りを見れば、姉様に同意とでも言うようにレヴィ君とユキも何か頷いているし。
もうっ!皆して酷いよ。しっかりしてるもん。

「もう、そんなに膨れないで。可愛い顔が更に可愛く見えるわよ」

「もう姉様っ」

「ふふ、さぁ話はこれくらいにしてそろそろ帰りましょう」

まだ言いたい事はあったけど、それを華麗に回避される。悔しいけど流石です姉様。
これ以上言っていても仕方がないと思い私は負けを認めた。
そしてさぁ行くわよ、と先に行ってしまう姉様の後を追い、私達は早々に教室を後にしたのだった。
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