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第5章 学院生活
11 不思議な花
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日が沈んで辺りが暗くなりだした頃、漸く涙が止まり私はまだ目元に残る雫を指で拭った。
「やっと泣き止んだな」
ずっと傍で宥めていてくれたレヴィ君がほっとしたように呟く。
「すみませんでした。あたりも暗くなっちゃいましたね……」
私が言うと今気づいたのか、ハッとした顔で彼は辺りを見回した。
「……すまない、時間を取らせた。帰るか。侯爵が心配しているだろうからな」
「大丈夫ですよ。父様には連絡しておきましたし、レヴィ君と一緒にいるってことも伝えましたから」
そう事前に連絡しておきましたとも。
この世界にも前世程ではないにしろ、電話のようなものがあるんです!まぁ距離は限られるけど、結構な優れもの!
隣国に行った時には国をまたいでいるし、距離も遠かったのもあって手紙で連絡手段をとったけど、本当はこっちの方が手軽で便利。
その言葉のまま、コールって呼ばれる魔法で大体の人が使っている。今日はこれが役に立ったな。
そう思いながらレヴィ君を見やると、最初安堵した顔をしていたのに、それからすぐにその表情が険しいものに変わった。どうしたのかと思い私が首を傾げると険しい表情のままで告げる。
「侯爵の方は良いとしても、あのルーカスっていうお前の従者、あいつには連絡をしたか?」
「え、しましたけど?」
そう言うと更に強ばる表情。
「後で何か言われるだろうな……、面倒だな」
「ルカがですか?大丈夫ですよ。優しい人ですから、変な事は言ったりしないですよ、きっと」
「……本当に鈍感だなお前は」
「えぇ!何でそうなるんですかっ!」
事実を述べただけなのに、何だか馬鹿にされた気がするんですけど。
そう思って不満な顔を私がしても、それが更におかしいのか苦笑を漏らす彼。
「ほら、そろそろ帰るぞ」
「はーい」
わざとそう返事をして、先に歩き出したレヴィ君のあとを私も追って行った。
そうして少し行った辺りで、急に前を歩いていたレヴィ君が立ち止まったために、私は危うくその背中にぶつかりそうになる。
「どうしたんですか?急に」
「あれ」
「あれ?」
そう言ってある方向を指さす。指された方向に私も視線を向けると……。
「わぁっ!」
思わず声を上げた。
そこには自らの存在を主張するかのように、無数に光り輝く花々が咲いていた。それによく見てみるとどうやら全てがダリアの花みたいだった。
色とりどりだけど、見た感じ白のダリアが一番多いかな。
前に薬草採取の時、一輪だけ白のダリアを見かけたけど、こんなにも咲いてるなんて気づかなかったな。それもあって驚いたけど、でも凄く綺麗。一面がお花畑みたい。
そこまで考えてふと思う。ダリアの花って光らないよね?そもそも花って光らないよね?
前世の常識と、この世界の常識は違うって事?
不思議には思うものの幻想的な花々に、まぁいっかとあっさり考えを放棄した。
私がその光景に見とれていると、振り返ったレヴィ君が神妙な顔で問いかけてきた。
「お前この花を見て何か感じないか?」
「え?」
唐突な質問に意味が理解できなくて言葉に詰まってしまう。
う~ん……、何かって言っても。
「綺麗な光景だなとは思いますけど」
昼間は気づかなかったけど、夜になるとこんなにも美しい光景を見せてくれていたなんてね。
こんな不気味な場所でって思うけど、逆にこういう場所だからこそ綺麗なのが際立つのかもしれない。
明かりがない真っ暗な場所で星空を見ると綺麗に見えるのと一緒だね。
この世界に写真という機能があるのなら、一枚撮りたいくらい綺麗だよ。
まぁ写真はないけどせめて目に焼き付けようと思って、目の前に咲いている真っ白のダリアを見つめた。
…………っ!
一瞬何かに反応するように強い動悸がして、それに私は驚いた。
な、なに……?今の……。
初めての事にどうしたのかと戸惑い、心臓の上に手をそっと置いてみる。でも普段と変わらない一定のリズムで心臓は鼓動を刻んでいて特に変わった様子はなかった。
何だったんだろう?
このダリアを見ていたら急に……。
「どうした?何か感じたか?」
私がその場から動かず、喋らずだったのが気になったのか横から声がかけられた。その声で我に返ると私は何事もなかったように微笑む。
「いえ、特にはないですね。ただ綺麗だなと思って見とれていただけです」
「そうか、それなら良いが」
私の様子を見て気にしてくれてはいるようだけど、それ以上深くは聞いてこようとしないから良かった。
「エル、後でまた話したい事がある」
「さっき話した事ですか?」
家の事でまだ何かあるのかな?と思い聞き返すと彼は首を横に振る。
「いや、俺の家の事じゃない。気になってる事があるんだ。それにそれはエルにも関係ない話じゃないと思うんだ」
理由は分からなくても何かを確信しているようでそう言いきるレヴィ君。
「分かりました。また日を改めて」
「ああ。今日はもう帰ろう。送ってく」
「ありがとうございます。優しいですね」
今日は一段と優しいレヴィ君に素直に感謝を述べると、あからさまに頬が赤くなっていき、つい可愛いなって思ってしまう。
「別に優しくなんかない。俺の話に付き合わせてしまって悪いと思ったからであって」
「ふふ、照れなくても良いんですよ」
「だ、誰が照れるかっ!」
可愛い顔を真っ赤にして声を上げて怒るレヴィ君。でもねレヴィ君、その表情は逆効果ですよ……。
言ったらまた怒られそうだから声に出しては言わない。ただこっそりと心の中で私はそう呟いたのだった。
「やっと泣き止んだな」
ずっと傍で宥めていてくれたレヴィ君がほっとしたように呟く。
「すみませんでした。あたりも暗くなっちゃいましたね……」
私が言うと今気づいたのか、ハッとした顔で彼は辺りを見回した。
「……すまない、時間を取らせた。帰るか。侯爵が心配しているだろうからな」
「大丈夫ですよ。父様には連絡しておきましたし、レヴィ君と一緒にいるってことも伝えましたから」
そう事前に連絡しておきましたとも。
この世界にも前世程ではないにしろ、電話のようなものがあるんです!まぁ距離は限られるけど、結構な優れもの!
隣国に行った時には国をまたいでいるし、距離も遠かったのもあって手紙で連絡手段をとったけど、本当はこっちの方が手軽で便利。
その言葉のまま、コールって呼ばれる魔法で大体の人が使っている。今日はこれが役に立ったな。
そう思いながらレヴィ君を見やると、最初安堵した顔をしていたのに、それからすぐにその表情が険しいものに変わった。どうしたのかと思い私が首を傾げると険しい表情のままで告げる。
「侯爵の方は良いとしても、あのルーカスっていうお前の従者、あいつには連絡をしたか?」
「え、しましたけど?」
そう言うと更に強ばる表情。
「後で何か言われるだろうな……、面倒だな」
「ルカがですか?大丈夫ですよ。優しい人ですから、変な事は言ったりしないですよ、きっと」
「……本当に鈍感だなお前は」
「えぇ!何でそうなるんですかっ!」
事実を述べただけなのに、何だか馬鹿にされた気がするんですけど。
そう思って不満な顔を私がしても、それが更におかしいのか苦笑を漏らす彼。
「ほら、そろそろ帰るぞ」
「はーい」
わざとそう返事をして、先に歩き出したレヴィ君のあとを私も追って行った。
そうして少し行った辺りで、急に前を歩いていたレヴィ君が立ち止まったために、私は危うくその背中にぶつかりそうになる。
「どうしたんですか?急に」
「あれ」
「あれ?」
そう言ってある方向を指さす。指された方向に私も視線を向けると……。
「わぁっ!」
思わず声を上げた。
そこには自らの存在を主張するかのように、無数に光り輝く花々が咲いていた。それによく見てみるとどうやら全てがダリアの花みたいだった。
色とりどりだけど、見た感じ白のダリアが一番多いかな。
前に薬草採取の時、一輪だけ白のダリアを見かけたけど、こんなにも咲いてるなんて気づかなかったな。それもあって驚いたけど、でも凄く綺麗。一面がお花畑みたい。
そこまで考えてふと思う。ダリアの花って光らないよね?そもそも花って光らないよね?
前世の常識と、この世界の常識は違うって事?
不思議には思うものの幻想的な花々に、まぁいっかとあっさり考えを放棄した。
私がその光景に見とれていると、振り返ったレヴィ君が神妙な顔で問いかけてきた。
「お前この花を見て何か感じないか?」
「え?」
唐突な質問に意味が理解できなくて言葉に詰まってしまう。
う~ん……、何かって言っても。
「綺麗な光景だなとは思いますけど」
昼間は気づかなかったけど、夜になるとこんなにも美しい光景を見せてくれていたなんてね。
こんな不気味な場所でって思うけど、逆にこういう場所だからこそ綺麗なのが際立つのかもしれない。
明かりがない真っ暗な場所で星空を見ると綺麗に見えるのと一緒だね。
この世界に写真という機能があるのなら、一枚撮りたいくらい綺麗だよ。
まぁ写真はないけどせめて目に焼き付けようと思って、目の前に咲いている真っ白のダリアを見つめた。
…………っ!
一瞬何かに反応するように強い動悸がして、それに私は驚いた。
な、なに……?今の……。
初めての事にどうしたのかと戸惑い、心臓の上に手をそっと置いてみる。でも普段と変わらない一定のリズムで心臓は鼓動を刻んでいて特に変わった様子はなかった。
何だったんだろう?
このダリアを見ていたら急に……。
「どうした?何か感じたか?」
私がその場から動かず、喋らずだったのが気になったのか横から声がかけられた。その声で我に返ると私は何事もなかったように微笑む。
「いえ、特にはないですね。ただ綺麗だなと思って見とれていただけです」
「そうか、それなら良いが」
私の様子を見て気にしてくれてはいるようだけど、それ以上深くは聞いてこようとしないから良かった。
「エル、後でまた話したい事がある」
「さっき話した事ですか?」
家の事でまだ何かあるのかな?と思い聞き返すと彼は首を横に振る。
「いや、俺の家の事じゃない。気になってる事があるんだ。それにそれはエルにも関係ない話じゃないと思うんだ」
理由は分からなくても何かを確信しているようでそう言いきるレヴィ君。
「分かりました。また日を改めて」
「ああ。今日はもう帰ろう。送ってく」
「ありがとうございます。優しいですね」
今日は一段と優しいレヴィ君に素直に感謝を述べると、あからさまに頬が赤くなっていき、つい可愛いなって思ってしまう。
「別に優しくなんかない。俺の話に付き合わせてしまって悪いと思ったからであって」
「ふふ、照れなくても良いんですよ」
「だ、誰が照れるかっ!」
可愛い顔を真っ赤にして声を上げて怒るレヴィ君。でもねレヴィ君、その表情は逆効果ですよ……。
言ったらまた怒られそうだから声に出しては言わない。ただこっそりと心の中で私はそう呟いたのだった。
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