幸せな人生を目指して

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第5章 学院生活

6 夢の中の彼女…side??

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ここ最近良く夢を見る。それも同じ内容の夢を毎日。

その夢には決まってある人物が登場する。

癖のないストレートの真っ白い髪、珍しいアメジストの瞳を持ち合わせた美しい女性。

夢の中での彼女は毎回泣いていた。どうして泣いているのかなんて勿論分からないが、でも彼女の涙を見ていると無性に胸が苦しくなるのは何故だろう……。

そもそも俺はどうしてこんな夢を毎日のように見るんだ?

確か夢を見るようになったのは魔法学院である女と会ってからだ。
シェフィールド侯爵家の娘、名前はエルシア。
夢の中の彼女とどこか似ている気がする。髪型と言い瞳の色と言い。

夢の中の彼女とは違い、良く分からないがある日急に話しかけてきて話をしようと言い出す変な奴だ。
大抵の奴は俺の家柄を気にして遠慮するか、反対に媚を売ろうと近づいて来る連中が多いが、そんな中エルだけは違った。
それ以前に俺の家の事を全く知らなくて、教えたら大袈裟なほどに驚いていた。

……こいつも他の連中と同様、俺の家系を知ったら態度変えるんだろうな。

正直そう思った。だけどエルは態度を変える事はなく、しかも自分の事のように嬉しそうに話を聞いてくる。

俺にとって憧れであり誇りに思う一方、妬む気持ちを捨てきれないでいる騎士団に所属する兄の事を話してやると、やっぱり自分の事のように嬉しそうに笑って聞いていた。優秀なお兄様なんてとても自慢できますね。なんて言うから、自分で言っておきながら複雑な気持ちになった。

今までどんな奴にそう言われようと何とも思わなかったと言うのに、エルに言われて心がざわつくのは何故なのか……?
まあそれは未だに分からないが、考えたところで答えなんか出ないだろうから考えるのはよそう。

それよりも最近、エルと話をするのが楽だと気づいた。気を遣わずに話が出来る。エルの態度には偽りがなく、何を話してもちゃんと聞いてくれる。そう気づいた時には話をするのが心なしか楽しくなっていた。
エルの反応が面白くて少し意地の悪い事も言ってしまうが、俺がそう言う性格だと理解しているからか、不愉快には思っていないようだった。どこかそれにホッとしてしまっている自分がいて驚いた事もある。

俺は周りからこんなにも優しく接された事があまりない。だから分け隔てなく接してくれるのが単純に嬉しいんだろうな。なんて、思う事態恥ずかしいな。

何とも感じなかった学院生活は一人の少女との出会いで百八十度変わったと言えた。

そんな日々が続いたある日の事。

学院の訓練の授業がやってきた。外部からの講師もついての授業。
行うにあたってグループで、でなければせめて二人になって訓練しなくてはいけないものだったが、俺は誰とも組む気はなかったし、一人でやりたい魔法もあったからそれぞれ生徒がばらけて行くのに紛れて目立たないように壁際の方へと避けていた。
しばらく休んでからするかと思い休憩をしていると、そこに俺を探しに来たらしいエルが近づいて来て、一緒に組まないかと言い出すやいなや、俺の反対の声を無視して問答無用で腕を引かれた。そして友達が待つと言う場所まで強引に連れて行かれる。

連れて行かれた場所にいたのはクラスメイトのユキ・ルターシア。
彼女もエルや俺と同様家柄は侯爵だ。だからと言って仲が良いわけではないが。

白の長い髪にマゼンタ色の瞳。見た目と言い、雰囲気と言いエルとは違い侯爵家の令嬢と言われてもしっくりくる。
口うるさいエルに対して、物静かなユキ。性格が正反対なこの二人。本当にどうして仲が良いんだ、と思ってしまうくらい不思議な二人だった。はたから見たら分からないが、俺から見たら保護者と子どもだ。

まあそんな事は今は良い。とにかく俺には完成させたい魔法があるんだ。
しつこく聞いてくるから説明してやって、危険だからと止めて来るがそれは出来ないお願いだな。
何といわれようと完成させるんだ。
本気で止めようとするエルに申し訳なく思った事は本当だが、それでもそれを振り切って俺は呪文を唱えた。

今にして思えば本当に馬鹿な事をしたと思っている。それは後悔と言う形で俺の中に残る事になる。


魔法を発動させた直後身体に異変が現れ、息が苦しくなり、段々と呼吸が出来なくなってくる。
そして立っていることが出来ずに膝から崩れ落ちる。徐々に意識も薄れていき、自分でもこれは魔力が暴走しているためだと気づいたが、最早どうする事も出来なかった。
まずい……、そう思った時、エルが俺を呼ぶ声がかすかに聞こえた気がして。でもそれを最後に意識が途切れた――。





――くん。――レヴィ君っ――

意識が浮上するのが分かる。

誰かが俺を呼んでいる。目を開けなくてもすぐに誰の声が分かってしまうが。

瞼が重くて億劫だったが、心配そうに俺を呼ぶ彼女に答えたくて、俺はゆっくりと目を開けた。
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