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第5章 学院生活
2 穏やかな日
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「そういえばお前――」
「お前ではありませんよ。ちゃんと名前で呼んで下さい」
授業が終わり、お昼休み。私は早速レヴィ君を追いかけて外に出て行き、声をかけてみた。
ユキにも声を掛けたけど、「私がいると邪魔になると思うから二人で話してらっしゃい」と言い残して教室を後にしてしまった。
私は邪魔なんて思わないのに。ユキなりに気を使ってくれたんでしょうね。
「……エルシア」
「はい。エルで良いですよ。皆そう呼ぶので。それで何か言いかけてましたね」
「前から気になっていたんだが、何で敬語なんだ?」
「はぃっ?」
思いがけない質問の内容に変な声が出てしまう。
「えっと、何でと言われても……」
「誰に対してもその話し方なのか?」
「はい。これは元からこういう話し方なだけで、特にそうしろと言われたわけではないので。基本誰に対してもこの話し方ですよ?」
「そうなのか」
「何です?何か言いたいことでも?」
わざと頬を膨らませて怒っているアピールをしてみる。すると思った通り、焦ったような表情を彼がして、少し悪戯心が芽生えそうになるのをどうにかして抑え込む。
笑顔笑顔。
「いや、その家柄のわりに変わっているなと思っただけだ」
「家は関係ありませんよ。私は周りの人達と良好な関係を築きたいだけです。それにはまず挨拶や言葉遣いからでしょうと思ったまでです」
「そんなものか。考えたこともないがな」
「良いんですよ。私は好きでしている事ですから」
「やっぱり変わってるな」
あ、バカにされた。
さらっとバカにされた私はこれ以上は不利になると思い、話題を変えることにした。
「もう、私の話は良いです。それより、レヴィ君は侯爵家のご子息ですよね?」
「ああ。次男だがな。兄が一人いる」
「えっ!お兄様がいるのですか?初耳です」
勝手にレヴィ君って一人っ子だと思っていたから結構衝撃を受けた。
「知らなかったのか?兄は騎士団にも所属している優秀な人だ。まあローレンス家は騎士の家系だしな」
……まさかの騎士の家系。
ローレンス侯爵家が有名と言うのは騎士の家系であり、優秀な人材を送り出していたからという訳ね。
それを知らなかった私って、明らかに勉強不足……。世間を知らなすぎる……かな。
「そうだったんですね。お兄様が騎士団所属の騎士なんて、凄い事です」
思ったままを伝えてみたら何故かレヴィ君は俯いてしまう。
「……レヴィ君?」
何かまずいことでも言ってしまったのかと私は焦った。そして謝ろうと思い声を掛けようとしたら、それを遮るように彼が口を開いた。
「……すまない。何でもないんだ」
少しトーンの下がった声が返ってきて、様子がおかしいのは明らかなのに、その場の雰囲気に私が声を上げることを阻止されているようだった。
「そろそろ戻るか」
黙ってしまった私の代わりにレヴィ君が声をかけてくれた。
「えっ、あ、はいっ。そうですね」
さっきと違い、発せられた声はもういつも通りに戻っていて、そっと顔を上げると立ち上がった彼の横顔が見えた。声とは反対に悲しそうに見える。
何も言えないまま、ちょうどお昼休みの終わりを告げる鐘の音が響く。
それを聞いて慌てて立ち上がろうとしたら、横からレヴィ君が手を差し伸べてくれて、私はその手を素直に取った。
教室へと戻る最中、さっきの一瞬だけ寂しそうに見えたのは気のせいだったのか。そればかりが頭に浮かんではなれなかった。
結局その後はレヴィ君と話すことが出来ず、彼がどうしてあんな顔をしたのか分からなかった。
「お前ではありませんよ。ちゃんと名前で呼んで下さい」
授業が終わり、お昼休み。私は早速レヴィ君を追いかけて外に出て行き、声をかけてみた。
ユキにも声を掛けたけど、「私がいると邪魔になると思うから二人で話してらっしゃい」と言い残して教室を後にしてしまった。
私は邪魔なんて思わないのに。ユキなりに気を使ってくれたんでしょうね。
「……エルシア」
「はい。エルで良いですよ。皆そう呼ぶので。それで何か言いかけてましたね」
「前から気になっていたんだが、何で敬語なんだ?」
「はぃっ?」
思いがけない質問の内容に変な声が出てしまう。
「えっと、何でと言われても……」
「誰に対してもその話し方なのか?」
「はい。これは元からこういう話し方なだけで、特にそうしろと言われたわけではないので。基本誰に対してもこの話し方ですよ?」
「そうなのか」
「何です?何か言いたいことでも?」
わざと頬を膨らませて怒っているアピールをしてみる。すると思った通り、焦ったような表情を彼がして、少し悪戯心が芽生えそうになるのをどうにかして抑え込む。
笑顔笑顔。
「いや、その家柄のわりに変わっているなと思っただけだ」
「家は関係ありませんよ。私は周りの人達と良好な関係を築きたいだけです。それにはまず挨拶や言葉遣いからでしょうと思ったまでです」
「そんなものか。考えたこともないがな」
「良いんですよ。私は好きでしている事ですから」
「やっぱり変わってるな」
あ、バカにされた。
さらっとバカにされた私はこれ以上は不利になると思い、話題を変えることにした。
「もう、私の話は良いです。それより、レヴィ君は侯爵家のご子息ですよね?」
「ああ。次男だがな。兄が一人いる」
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勝手にレヴィ君って一人っ子だと思っていたから結構衝撃を受けた。
「知らなかったのか?兄は騎士団にも所属している優秀な人だ。まあローレンス家は騎士の家系だしな」
……まさかの騎士の家系。
ローレンス侯爵家が有名と言うのは騎士の家系であり、優秀な人材を送り出していたからという訳ね。
それを知らなかった私って、明らかに勉強不足……。世間を知らなすぎる……かな。
「そうだったんですね。お兄様が騎士団所属の騎士なんて、凄い事です」
思ったままを伝えてみたら何故かレヴィ君は俯いてしまう。
「……レヴィ君?」
何かまずいことでも言ってしまったのかと私は焦った。そして謝ろうと思い声を掛けようとしたら、それを遮るように彼が口を開いた。
「……すまない。何でもないんだ」
少しトーンの下がった声が返ってきて、様子がおかしいのは明らかなのに、その場の雰囲気に私が声を上げることを阻止されているようだった。
「そろそろ戻るか」
黙ってしまった私の代わりにレヴィ君が声をかけてくれた。
「えっ、あ、はいっ。そうですね」
さっきと違い、発せられた声はもういつも通りに戻っていて、そっと顔を上げると立ち上がった彼の横顔が見えた。声とは反対に悲しそうに見える。
何も言えないまま、ちょうどお昼休みの終わりを告げる鐘の音が響く。
それを聞いて慌てて立ち上がろうとしたら、横からレヴィ君が手を差し伸べてくれて、私はその手を素直に取った。
教室へと戻る最中、さっきの一瞬だけ寂しそうに見えたのは気のせいだったのか。そればかりが頭に浮かんではなれなかった。
結局その後はレヴィ君と話すことが出来ず、彼がどうしてあんな顔をしたのか分からなかった。
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